2012/05/10(木) - 14:12
シェイクスピアの戯曲ロミオとジュリエットの舞台、ヴェネト州のヴェローナ。多くの観客が訪れる世界遺産の観光地で、ジロ・デ・イタリアがリスタートした。活気に満ちたレース会場に、ようやくジロを感じたイタリア初日。最速チームの称号は、下馬評通りガーミン・バラクーダが手中におさめた。
最高気温10度のデンマークから、最高気温25度のイタリアへ。異例の早さで迎えた1回目の休息日を終え、ヴェローナのチームタイムトライアルで長い長い第2週がスタートする。
次の休息日は12日後の5月21日。なんとこれから11日連続でレースが行なわれる。その間にジロはイタリア半島の足首あたりまで南下し、そして北部のアルプスまで戻ってくる。昨年のようなステージ間の長距離移動が少ないのが救いだ。
寒くて観客が静かなデンマークと相反する、暖かくて観客がやかましいイタリア。「ようやくジロが始まる」という会話が関係者の間で飛び交う。キャラバンの数やヴィラッジョの規模も大幅にアップ。報道陣の数もイタリアに入ってどっと増えた。
ヴェローナの中心部を発着する33.2kmのコースは平坦基調。中盤にかけて登りがあり、街中を右に左に駆け抜けるテクニカルな区間もある。前日のジロ特集番組に出演したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)によると、「スピードを殺さずテクニカル区間を抜け、あとはひたすら踏み抜くのみ」というコースだ。
ゴール地点は、アレーナ・ディ・ヴェローナと呼ばれる円形劇場の前。2010年大会の最終個人タイムトライアルと全く同じゴール地点。外国人観光客が多いため、会場にはイタリア語と英語の実況が響き渡る。
どの選手に聞いても、どのジャーナリストに聞いても、優勝候補の筆頭に挙げられていたガーミン・バラクーダ。長身でスピードのある選手を集めた布陣で、登りを含むコースを53.7km/hで駆け抜けた。
この日の最も大きなサプライズは、ロシアのカチューシャが2位に入ったことだろう。しかもガーミン・バラクーダに肉薄する好タイムで、3位以下を大きく引き離した。
驚いたのは観客だけではなく、カチューシャのハンスミカエル・ホルツァー代表も同じく。ホルツァー氏は朝の時点で「カチューシャはタイムトライアル向きの選手を揃えていないので、15位前後が妥当だろう」と語っている。それがいざ蓋を開けてみれば2位に。
ガーミン・バラクーダのライダー・ヘジダル(カナダ)とカチューシャのホアキン・ロドリゲス(スペイン)の2人が、マリアローザ争いにおける勝ち組。アスタナやリクイガス・キャノンデール、レディオシャック・ニッサン、ランプレ・ISDはタイムを奪うこともなく失うこともなく。クライマーを揃えたアンドローニ・ジョカトリやコルナゴ・CSFイノックスが負け組となっている。
このチームタイムトライアルを大きな目標に掲げていたオリカ・グリーンエッジは、メカニック6人を揃え、万全の体制でチームタイムトライアルに挑んだ。
スタート台に登る前の選手たちは、息をしているのか心配になるほど言葉を発さずに集中している。メカニックはスタート直前までタイヤに何かが刺さっていないかをチェックする。
満を持して、16時22分、最後から3番目のオリカ・グリーンエッジがスタート。しかしスタート直前に無線が使用不能になるなどのトラブルに見舞われ、レース中にはこの日が誕生日のスヴェイン・タフト(カナダ)がパンク。オーストラリアから駆けつけたチームのパトロンへの勝利のプレゼントは実現しなかった。
「コンディションが悪かったわけではなく、トラブルを回避出来なかったことがタイムロスに繋がってしまった。トラブルさえ無ければ少なくとも5秒は縮められたと思う。でもこればかりは仕方が無い。明日からもステージを狙っていきます」と、全日本チャンピオンジャージで走ったフミ。
マシュー・ホワイト監督は「トップスリーに入ると予想していただけに、少しガッカリしている」と正直に打ち明ける。
「ステージ3位まで小さな差(5秒)しかない。もう少し良いタイムが出たはずだ。勝つ日もあれば、思うように行かない日もある。それがスポーツ。明日は明日でまたマット(ゴス)の日が来る」。オリカ・グリーンエッジは結局ステージ6位に終わった。
そして最後にショッキングな話を。第3ステージでテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)のマリアローザ表彰写真を提供してくれたオーストラリア人フォトグラファーのレンタカーを含め、ヴェローナのプレスセンターに駐車していた多くの車が車上荒らしに遭った。
誰でもパス無しでアクセス可能な駐車場だったので、危険と判断して自分はプレスセンター内に機材を持ち込んでいた。しかしレース後で機材を車内に放置していたフォトグラファーも多く、オーストラリアの彼は、100万円以上する500mmのレンズなど機材一式、実に数百万円の被害を被った。
レースディレクターのミケーレ・アックアローネ氏は大会側の警備に非があったことを認め、被害を受けたフォトグラファーたちが仕事を続行出来るよう、機材を新たに購入するとしている。しかし撮影データは戻って来ない。考えただけでゾッとする。
text&photo:Kei Tsuji in Verona, Italy
最高気温10度のデンマークから、最高気温25度のイタリアへ。異例の早さで迎えた1回目の休息日を終え、ヴェローナのチームタイムトライアルで長い長い第2週がスタートする。
次の休息日は12日後の5月21日。なんとこれから11日連続でレースが行なわれる。その間にジロはイタリア半島の足首あたりまで南下し、そして北部のアルプスまで戻ってくる。昨年のようなステージ間の長距離移動が少ないのが救いだ。
寒くて観客が静かなデンマークと相反する、暖かくて観客がやかましいイタリア。「ようやくジロが始まる」という会話が関係者の間で飛び交う。キャラバンの数やヴィラッジョの規模も大幅にアップ。報道陣の数もイタリアに入ってどっと増えた。
ヴェローナの中心部を発着する33.2kmのコースは平坦基調。中盤にかけて登りがあり、街中を右に左に駆け抜けるテクニカルな区間もある。前日のジロ特集番組に出演したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)によると、「スピードを殺さずテクニカル区間を抜け、あとはひたすら踏み抜くのみ」というコースだ。
ゴール地点は、アレーナ・ディ・ヴェローナと呼ばれる円形劇場の前。2010年大会の最終個人タイムトライアルと全く同じゴール地点。外国人観光客が多いため、会場にはイタリア語と英語の実況が響き渡る。
どの選手に聞いても、どのジャーナリストに聞いても、優勝候補の筆頭に挙げられていたガーミン・バラクーダ。長身でスピードのある選手を集めた布陣で、登りを含むコースを53.7km/hで駆け抜けた。
この日の最も大きなサプライズは、ロシアのカチューシャが2位に入ったことだろう。しかもガーミン・バラクーダに肉薄する好タイムで、3位以下を大きく引き離した。
驚いたのは観客だけではなく、カチューシャのハンスミカエル・ホルツァー代表も同じく。ホルツァー氏は朝の時点で「カチューシャはタイムトライアル向きの選手を揃えていないので、15位前後が妥当だろう」と語っている。それがいざ蓋を開けてみれば2位に。
ガーミン・バラクーダのライダー・ヘジダル(カナダ)とカチューシャのホアキン・ロドリゲス(スペイン)の2人が、マリアローザ争いにおける勝ち組。アスタナやリクイガス・キャノンデール、レディオシャック・ニッサン、ランプレ・ISDはタイムを奪うこともなく失うこともなく。クライマーを揃えたアンドローニ・ジョカトリやコルナゴ・CSFイノックスが負け組となっている。
このチームタイムトライアルを大きな目標に掲げていたオリカ・グリーンエッジは、メカニック6人を揃え、万全の体制でチームタイムトライアルに挑んだ。
スタート台に登る前の選手たちは、息をしているのか心配になるほど言葉を発さずに集中している。メカニックはスタート直前までタイヤに何かが刺さっていないかをチェックする。
満を持して、16時22分、最後から3番目のオリカ・グリーンエッジがスタート。しかしスタート直前に無線が使用不能になるなどのトラブルに見舞われ、レース中にはこの日が誕生日のスヴェイン・タフト(カナダ)がパンク。オーストラリアから駆けつけたチームのパトロンへの勝利のプレゼントは実現しなかった。
「コンディションが悪かったわけではなく、トラブルを回避出来なかったことがタイムロスに繋がってしまった。トラブルさえ無ければ少なくとも5秒は縮められたと思う。でもこればかりは仕方が無い。明日からもステージを狙っていきます」と、全日本チャンピオンジャージで走ったフミ。
マシュー・ホワイト監督は「トップスリーに入ると予想していただけに、少しガッカリしている」と正直に打ち明ける。
「ステージ3位まで小さな差(5秒)しかない。もう少し良いタイムが出たはずだ。勝つ日もあれば、思うように行かない日もある。それがスポーツ。明日は明日でまたマット(ゴス)の日が来る」。オリカ・グリーンエッジは結局ステージ6位に終わった。
そして最後にショッキングな話を。第3ステージでテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)のマリアローザ表彰写真を提供してくれたオーストラリア人フォトグラファーのレンタカーを含め、ヴェローナのプレスセンターに駐車していた多くの車が車上荒らしに遭った。
誰でもパス無しでアクセス可能な駐車場だったので、危険と判断して自分はプレスセンター内に機材を持ち込んでいた。しかしレース後で機材を車内に放置していたフォトグラファーも多く、オーストラリアの彼は、100万円以上する500mmのレンズなど機材一式、実に数百万円の被害を被った。
レースディレクターのミケーレ・アックアローネ氏は大会側の警備に非があったことを認め、被害を受けたフォトグラファーたちが仕事を続行出来るよう、機材を新たに購入するとしている。しかし撮影データは戻って来ない。考えただけでゾッとする。
text&photo:Kei Tsuji in Verona, Italy
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