2012/04/17(火) - 17:16
3月15日に初のJCF公認大会「第1回全日本トライアル選手権」が愛知県新城市桜淵運動公園で行われた。栄えある初回大会を制したのは、20インチ部門で他を圧倒した寺井一希。
桜咲く中行われた第1回全日本トライアル選手権大会
国内では初となる、UCIルールに乗っ取ったJCF公認大会として開催された「第1回全日本トライアル選手権」。長らくUCIとは別組織のBIU(国際バイクトライアル連盟)管理で国内トライアル競技を行っているBCJ・日本バイクトライアル連合(2011年まではBJU・日本バイクトライアル連盟)が運営してきたが、今回はそれとは別に、新たに発足したJBTA(日本自転車トライアル協会)が運営する大会として初開催された。
バランスを取りながら丸太の一本橋を渡る
トライアルはダニエルで移動するのが基本だ
今大会よりJCF公認大会となり、UCI世界トライアル選手権の出場選手の選考やナショナルチャンピオンジャージの獲得といった面でも、他のロード等の自転車競技と同じ扱いとなった。
日本のトライアル競技の歴史は、岐阜県関市板取(旧武儀郡板取村)においてBIU世界選手権が2008年までの17年間に渡り開催され、'96バイクトライアル世界選手権のエキスパートクラスチャンピオン、有薗啓剛やDHで活躍中の末政実緒など、世界で勝利した選手も。
そして現在は2009年のバイクトライアル・エリートクラス世界チャンピオンの寺井一希が活躍し、日本選手が世界チャンピオンになることも現実的に十分可能な競技だ。
トライアルのルール
トライアルは基本的に「セクション」と呼ばれる自然の地形や人工の障害のあるコースを、ペダルから脚を下ろさずに回る競技だ。
20inchクラス2位の柴田泰嵩(G-MAGIC)
巨大なタイヤを登る
「ダニエル」と呼ばれる後輪での立ち上がり、そこから人の背丈を超える高さをジャンプしたり、小さい着地点目がけて飛び降りるなど、自転車の動きとは思えないアクションで障害物を超えていくのが醍醐味。最もバランス感覚やテクニックが問われる自転車競技と言えるだろう。
セクション内では制限時間内にコースをクリアしなくてはならず、脚を着いた場合ポイントがつけられ、計5点で失格となる。バランスを崩して倒れたり、コースアウトした場合は即失格となる厳しいものだ。クラス毎にセクションへ向けて侵入する位置が決められ、上のクラスになるほど難易度は高くなる。会場に設置された複数のコースを、他の選手と共に規定コースを制限時間内に数周回り、加算点が少ない選手が勝利となる。
セクション5「土手の岩と丸太階段」desc
セクション6「岸壁の岩づたい」
試走はできないが、コースに立ち入って路面状況を見ることはできる。長く続けられたBIUルールのトライアルと今回のUCIルールのトライアルとでは微妙にルールが異なっている。使用する自転車はトライアル専用で、タイヤ径が20インチと26インチ。ワールドクラスでは20インチがメインとなっている。
26inch優勝の樺澤 工
20inchクラス3位の飯塚隆太(Gold Rush)
今大会は、6セクション×2周を他の選手と3時間以内に回り、エリートクラスは予選から行われる。クラスは年齢別で下からプッシン(9歳と10歳)・ベンジャミン(11歳と12歳)・ミニメ(13歳と14歳)・カデット(15歳と16歳)となり、使用車両はオープン。ジュニア(17歳と18歳)とエリート(19歳以上)はそれぞれ20インチと26インチに分かれる。女子のガールズ(15歳未満)とウィメン(15歳)は車両はオープンだ。
JCFの日本チャンピオンジャージはジュニア、エリート、ウィメンに授与され、今大会は2012年UCI世界トライアル選手権へ向けての選考大会となっている。
圧倒的な強さを見せた寺井一希
全日本トライアル選手権の会場となった新城市桜淵運動公園は、春は桜が咲き誇る名所。「さくら祭り」の一環として行われた。そのため一般客も多く、コースサイドからの歓声も多かった。
華麗なジャンプで障害物を渡る寺井一希
岩場を飛ぶ寺井一希
各コースはセクション1が「丸太を組み合わせた一本橋」、セクション2が「巨大タイヤとコンクリート構造物」、セクション3が「コンクリート構造物とセメント車」、セクション4が「自然の巨大岩」、セクション5が「土手の岩と丸太階段」、セクション6が「岸壁の岩づたい」とされた。
全日本で格の違いを見せた寺井一希
エリート20inch表彰 左から柴田 泰嵩(G-MAGIC)、寺井 一希、飯塚 隆太(Gold Rush)
長くBIUルールのトライアルに慣れ親しんだ選手たちにとっては勝手が違うようで、BIUだとペダルの裏側やフレームのBB部分につけてあるアンダーガードを接地してもペナルティは取られず、それを利用して移動する技ができた。しかしUCIルールではペナルティを取られるため、苦労が多かったようだ。そんな中、別次元の走りで他を圧倒したのは寺井一希。
予選では20インチクラスでのライバルと目されていた飯塚隆太(Gold Rush)と柴田泰嵩(G‐MAGIC)がペナルティを取られる中、寺井はノーミスでクリア。コースの難易度が上がった決勝では、他選手が大きくペナルティを取られる状況において、1ポイントで抑える完全勝利を上げた。
第一回全日本トライアル選手権大会 エリート20inch優勝 寺井一希
エリート26inch表彰
今年で27歳となる寺井は1998年、中学生時代からトライアルを始め、2001年にBIU世界選エリート3位、そして2009年世界チャンピオン、2010・2011年も2位となっている。
寺井一希のコメント
JBTA会長 有薗啓剛 「今回の決勝コースは走り応えのある楽しいレースでした。コースを一緒に回った飯塚選手とは動向を探りながら相談して走り、良い勉強になりました。応援も多くて気持ちよく走れましたね。これからはUCIの世界選が6月から9月にかけてあるので、その内で何戦かに出場する予定です」
有薗JBTA会長のコメント
「初めての大会だったので選手にとってルールが違っていたりとトラブルが多かったです。運営も手違いがあったりと、今後は改善していきたいと思います。今年は来年に向けた準備として、今回の大会が基準となっていきます。これを生かしシリーズ戦も計画していく予定です」
関西大学体育会自転車部BMX班 photo:Akihiro.NAKAOクラブ紹介
関西大学体育会自転車部BMX班
大学生の競技部の参加もあり、ウィミンで初代チャンピオンとなった胡中理沙が所属するのが関西大学体育会自転車部のBMX班だ。今大会には男性5人・女性2人で参加した。
班長さんからのひとこと;「世界を意識したセクションのつくりで、ハードな戦いになりましたが、貴重な経験ができたと思います。私たちは関西大学自転車部に所属し、トライアルに取り組んでいます。トライアル学生連盟を組織し、この競技の発展にも力を注いでいます。新入部員も募集中です」。
<リザルト>
エリート20inch決勝
1位 寺井 一希 total 1
2位 柴田 泰嵩(G-MAGIC) total 15
3位 飯塚 隆太(Gold Rush) total 16
4位 大竹 信太郎(千葉バイクトライアルクラブ) total 20.5
5位 竹内 康剛 total 27.5
エリート26inch決勝
1位 樺澤 工 total 21
2位 梶谷 隆太(バイク・ボンバー) total 24
3位 西窪 友海 total 26
4位 塩屋 力生(チームY工房) total29
5位 藤原 涼平(関西大学体育会自転車部) total29
6位 長谷中 勇 total30
ウィミン
1位 胡中 理沙 total 64.5
2位 水野 真美(関西大学自転車部) total 71.5
ジュニア20inc
1位 飯沼 裕慧 total6
2位 甘利 大斗(トライアルチーム輪道) total21.5
ジュニア26inc
1位 坂 元太 total89.5
text&photo:Akihiro.NAKAO
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国内では初となる、UCIルールに乗っ取ったJCF公認大会として開催された「第1回全日本トライアル選手権」。長らくUCIとは別組織のBIU(国際バイクトライアル連盟)管理で国内トライアル競技を行っているBCJ・日本バイクトライアル連合(2011年まではBJU・日本バイクトライアル連盟)が運営してきたが、今回はそれとは別に、新たに発足したJBTA(日本自転車トライアル協会)が運営する大会として初開催された。
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今大会よりJCF公認大会となり、UCI世界トライアル選手権の出場選手の選考やナショナルチャンピオンジャージの獲得といった面でも、他のロード等の自転車競技と同じ扱いとなった。
日本のトライアル競技の歴史は、岐阜県関市板取(旧武儀郡板取村)においてBIU世界選手権が2008年までの17年間に渡り開催され、'96バイクトライアル世界選手権のエキスパートクラスチャンピオン、有薗啓剛やDHで活躍中の末政実緒など、世界で勝利した選手も。
そして現在は2009年のバイクトライアル・エリートクラス世界チャンピオンの寺井一希が活躍し、日本選手が世界チャンピオンになることも現実的に十分可能な競技だ。
トライアルのルール
トライアルは基本的に「セクション」と呼ばれる自然の地形や人工の障害のあるコースを、ペダルから脚を下ろさずに回る競技だ。
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「ダニエル」と呼ばれる後輪での立ち上がり、そこから人の背丈を超える高さをジャンプしたり、小さい着地点目がけて飛び降りるなど、自転車の動きとは思えないアクションで障害物を超えていくのが醍醐味。最もバランス感覚やテクニックが問われる自転車競技と言えるだろう。
セクション内では制限時間内にコースをクリアしなくてはならず、脚を着いた場合ポイントがつけられ、計5点で失格となる。バランスを崩して倒れたり、コースアウトした場合は即失格となる厳しいものだ。クラス毎にセクションへ向けて侵入する位置が決められ、上のクラスになるほど難易度は高くなる。会場に設置された複数のコースを、他の選手と共に規定コースを制限時間内に数周回り、加算点が少ない選手が勝利となる。
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試走はできないが、コースに立ち入って路面状況を見ることはできる。長く続けられたBIUルールのトライアルと今回のUCIルールのトライアルとでは微妙にルールが異なっている。使用する自転車はトライアル専用で、タイヤ径が20インチと26インチ。ワールドクラスでは20インチがメインとなっている。
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今大会は、6セクション×2周を他の選手と3時間以内に回り、エリートクラスは予選から行われる。クラスは年齢別で下からプッシン(9歳と10歳)・ベンジャミン(11歳と12歳)・ミニメ(13歳と14歳)・カデット(15歳と16歳)となり、使用車両はオープン。ジュニア(17歳と18歳)とエリート(19歳以上)はそれぞれ20インチと26インチに分かれる。女子のガールズ(15歳未満)とウィメン(15歳)は車両はオープンだ。
JCFの日本チャンピオンジャージはジュニア、エリート、ウィメンに授与され、今大会は2012年UCI世界トライアル選手権へ向けての選考大会となっている。
圧倒的な強さを見せた寺井一希
全日本トライアル選手権の会場となった新城市桜淵運動公園は、春は桜が咲き誇る名所。「さくら祭り」の一環として行われた。そのため一般客も多く、コースサイドからの歓声も多かった。
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予選では20インチクラスでのライバルと目されていた飯塚隆太(Gold Rush)と柴田泰嵩(G‐MAGIC)がペナルティを取られる中、寺井はノーミスでクリア。コースの難易度が上がった決勝では、他選手が大きくペナルティを取られる状況において、1ポイントで抑える完全勝利を上げた。
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寺井一希のコメント
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関西大学体育会自転車部BMX班
大学生の競技部の参加もあり、ウィミンで初代チャンピオンとなった胡中理沙が所属するのが関西大学体育会自転車部のBMX班だ。今大会には男性5人・女性2人で参加した。
班長さんからのひとこと;「世界を意識したセクションのつくりで、ハードな戦いになりましたが、貴重な経験ができたと思います。私たちは関西大学自転車部に所属し、トライアルに取り組んでいます。トライアル学生連盟を組織し、この競技の発展にも力を注いでいます。新入部員も募集中です」。
<リザルト>
エリート20inch決勝
1位 寺井 一希 total 1
2位 柴田 泰嵩(G-MAGIC) total 15
3位 飯塚 隆太(Gold Rush) total 16
4位 大竹 信太郎(千葉バイクトライアルクラブ) total 20.5
5位 竹内 康剛 total 27.5
エリート26inch決勝
1位 樺澤 工 total 21
2位 梶谷 隆太(バイク・ボンバー) total 24
3位 西窪 友海 total 26
4位 塩屋 力生(チームY工房) total29
5位 藤原 涼平(関西大学体育会自転車部) total29
6位 長谷中 勇 total30
ウィミン
1位 胡中 理沙 total 64.5
2位 水野 真美(関西大学自転車部) total 71.5
ジュニア20inc
1位 飯沼 裕慧 total6
2位 甘利 大斗(トライアルチーム輪道) total21.5
ジュニア26inc
1位 坂 元太 total89.5
text&photo:Akihiro.NAKAO
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