2009/05/26(火) - 02:56
一日の獲得標高差が4800mに達したジロ・デ・イタリア第16ステージ。頂上ゴールが設定された正真正銘最難関山岳ステージは、カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ)が会心のアタックを成功させて優勝。イタリアのディルーカ&バッソのアタックにメンショフは沈まなかった。
獲得標高差4800mのタッポーネ!
昨日の第15ステージはアペニン山脈のアンティパスト(前菜)。休息日前の第16ステージは、そのアペニン山脈が牙を剥く。2級山岳モンテ・デッレ・チェザーネ、1級山岳モンテ・ネローネ、1級山岳モンテ・カトリアを越え、最後はモンテ・ペトラーノの頂上ゴールだ!
いずれも標高1500mに満たないが、渓谷の底から上り始めるため、峠一つ一つの標高差は大きい。一日で上る標高差は実に4800mに達する!
休息日明け第17ステージのブロックハウス頂上ゴールは残雪の影響で、登坂距離が23.5kmから18.0kmに、標高差が1630mから1240mに短縮。大会最後の頂上ゴールである第19ステージのヴェスヴィオは平均勾配7.4%で登坂距離13kmだ。
有力選手の多くはこれら残り2つの頂上ゴールの破壊力が小さいことから、第16ステージでマリアローザの行方がある程度決すると見ている。アルプスの第10ステージがコース変更により難易度が下がったため、このモンテ・ペトラーノゴールの第16ステージが「タッポーネ(最難関山岳ステージ)」の称号を得た。
厳しい山岳でも太陽は容赦ない
あとから聞いたのだが、出走サインに登場したデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)は、ステージでMCの要求に応じてマイクを握り、歌を一曲披露したそうだ。生憎その時は撮影ポイントを探して2級山岳モンテ・デッレ・チェザーネへと向かっていた! 残念!
「なにも1級山岳が連続する山岳ステージで2級を選ぶ必要は無いのでは?」と思われるかも知れないが、チェザーネを舐めちゃいけない。上り始めの2kmの平均勾配は11.4%。最大勾配18%の激坂が数百メートル続くのだ(後半の1級山岳で撮影しているとゴールに辿り着けないのが最大の理由だが)。どうも「急勾配」という言葉に弱い。
チリチリと照りつける太陽にフラフラになりながらレースの到着を待つ。目の前でパトカーがエンストしてから数分後、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)を先頭に大きな逃げグループがやってきた。
今日のスタート地点ペルゴーラは、スカルポーニの出身地から30kmほどしか離れていない。モチヴェーションが高いのは明らかだ。
ここまで目立った成績を残せていないガーミン・スリップストリームは、2人(ダニエルソンとウィギンズ)を逃げグループに送るこむことに成功。ガーミンはすでにファラー、マイヤー、ミラー、ヴァンデヴェルデがレースを去っているため、残っているのはダニエルソン、ウィギンズ、ペイト、ザブリスキーの4人だけ。メンバーの半分が逃げに乗った計算だ。
しかし急勾配区間での走りを見る限りダニエルソンとウィギンズはかなり苦しそう。撮影を終えてゴール地点モンテ・ペトラーノのプレスルームに到着したときには、すでにメイン集団に吸収されていた。
ステージ2勝目が期待されたスカルポーニも、落車の影響もあって先頭から脱落。すでに総合で遅れ、山岳ステージでの勝利が欲しいダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)も周囲の期待をよそに脱落。ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、アスタナ)のみが生き残った。
サストレの狙いすましたアタック
「メンショフ、ディルーカ、ライプハイマーの3人は強力だ。脚の調子によるけど、タイム差を挽回するためには山岳でアタックするしかない」と、レース直前のインタビューに険しい表情で答えていたバッソ。そのバッソがモンテ・ペトラーノの上りで真っ先にアタックした時、ゴール地点の観客のテンションは一気に上がった。
バッソは何度もアタックを繰り返したが、いまいち決定力に欠ける。続いてマリアチクラミーノのダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)がアタックしたとき、観客のテンションは最高潮に。しかし、このダブル・イタリアンアタックの後方には常にマリアローザの姿があった。
マリアローザを振り切ったのは、ツール・ド・フランス総合優勝のタイトルを引っさげてジロに挑んだカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ)。
サストレは昨年のラルプ・デュエズでの独走を彷彿とさせる走りでマリアローザを引き離したばかりか、ステージ優勝濃厚と思われていた(勝手に自分が思っていた)先頭のポポヴィッチをも射落とした。
サーヴェロが頂上ゴール2連勝を飾るその一方で、イタリア勢の攻撃は失敗に終わった。CSC時代の元アシストであるサストレを追って飛び出していたバッソは、ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)を徹底マークするメンショフに吸収。バッソとディルーカは、メンショフからタイムを奪うどころか、最後にはメンショフに数秒差&ボーナスタイムを奪われてしまった。
第16ステージを終えて、メンショフと総合2位ディルーカのタイム差は39秒、総合3位に浮上したサストレとのタイム差は2分19秒。リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)は山岳でブレーキがかかり、ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)にアシストされながらも3分近く遅れ、総合6位に転落している。
このままメンショフがローマまでマリアローザを守り抜くのか? 個人TTを得意とするメンショフから、イタリア勢が最終日ローマでマリアローザを奪うのは困難を極める。残り2つの頂上ゴール(ブロックハウスとヴェスヴィオ)で再びイタリア勢は総攻撃を仕掛けるだろう。
明日は今大会2回目の、そして最後の休息日。今からモンテ・ペトラーノ山頂のプレスルームを出て、アドリア海に沿って250kmほど離れたペスカラまで移動します。着くのは何時だ?? こりゃ夕飯は高速のサービスエリアになりそう。
text&photo:Kei Tsuji
獲得標高差4800mのタッポーネ!
昨日の第15ステージはアペニン山脈のアンティパスト(前菜)。休息日前の第16ステージは、そのアペニン山脈が牙を剥く。2級山岳モンテ・デッレ・チェザーネ、1級山岳モンテ・ネローネ、1級山岳モンテ・カトリアを越え、最後はモンテ・ペトラーノの頂上ゴールだ!
いずれも標高1500mに満たないが、渓谷の底から上り始めるため、峠一つ一つの標高差は大きい。一日で上る標高差は実に4800mに達する!
休息日明け第17ステージのブロックハウス頂上ゴールは残雪の影響で、登坂距離が23.5kmから18.0kmに、標高差が1630mから1240mに短縮。大会最後の頂上ゴールである第19ステージのヴェスヴィオは平均勾配7.4%で登坂距離13kmだ。
有力選手の多くはこれら残り2つの頂上ゴールの破壊力が小さいことから、第16ステージでマリアローザの行方がある程度決すると見ている。アルプスの第10ステージがコース変更により難易度が下がったため、このモンテ・ペトラーノゴールの第16ステージが「タッポーネ(最難関山岳ステージ)」の称号を得た。
厳しい山岳でも太陽は容赦ない
あとから聞いたのだが、出走サインに登場したデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)は、ステージでMCの要求に応じてマイクを握り、歌を一曲披露したそうだ。生憎その時は撮影ポイントを探して2級山岳モンテ・デッレ・チェザーネへと向かっていた! 残念!
「なにも1級山岳が連続する山岳ステージで2級を選ぶ必要は無いのでは?」と思われるかも知れないが、チェザーネを舐めちゃいけない。上り始めの2kmの平均勾配は11.4%。最大勾配18%の激坂が数百メートル続くのだ(後半の1級山岳で撮影しているとゴールに辿り着けないのが最大の理由だが)。どうも「急勾配」という言葉に弱い。
チリチリと照りつける太陽にフラフラになりながらレースの到着を待つ。目の前でパトカーがエンストしてから数分後、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)を先頭に大きな逃げグループがやってきた。
今日のスタート地点ペルゴーラは、スカルポーニの出身地から30kmほどしか離れていない。モチヴェーションが高いのは明らかだ。
ここまで目立った成績を残せていないガーミン・スリップストリームは、2人(ダニエルソンとウィギンズ)を逃げグループに送るこむことに成功。ガーミンはすでにファラー、マイヤー、ミラー、ヴァンデヴェルデがレースを去っているため、残っているのはダニエルソン、ウィギンズ、ペイト、ザブリスキーの4人だけ。メンバーの半分が逃げに乗った計算だ。
しかし急勾配区間での走りを見る限りダニエルソンとウィギンズはかなり苦しそう。撮影を終えてゴール地点モンテ・ペトラーノのプレスルームに到着したときには、すでにメイン集団に吸収されていた。
ステージ2勝目が期待されたスカルポーニも、落車の影響もあって先頭から脱落。すでに総合で遅れ、山岳ステージでの勝利が欲しいダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)も周囲の期待をよそに脱落。ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、アスタナ)のみが生き残った。
サストレの狙いすましたアタック
「メンショフ、ディルーカ、ライプハイマーの3人は強力だ。脚の調子によるけど、タイム差を挽回するためには山岳でアタックするしかない」と、レース直前のインタビューに険しい表情で答えていたバッソ。そのバッソがモンテ・ペトラーノの上りで真っ先にアタックした時、ゴール地点の観客のテンションは一気に上がった。
バッソは何度もアタックを繰り返したが、いまいち決定力に欠ける。続いてマリアチクラミーノのダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)がアタックしたとき、観客のテンションは最高潮に。しかし、このダブル・イタリアンアタックの後方には常にマリアローザの姿があった。
マリアローザを振り切ったのは、ツール・ド・フランス総合優勝のタイトルを引っさげてジロに挑んだカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ)。
サストレは昨年のラルプ・デュエズでの独走を彷彿とさせる走りでマリアローザを引き離したばかりか、ステージ優勝濃厚と思われていた(勝手に自分が思っていた)先頭のポポヴィッチをも射落とした。
サーヴェロが頂上ゴール2連勝を飾るその一方で、イタリア勢の攻撃は失敗に終わった。CSC時代の元アシストであるサストレを追って飛び出していたバッソは、ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)を徹底マークするメンショフに吸収。バッソとディルーカは、メンショフからタイムを奪うどころか、最後にはメンショフに数秒差&ボーナスタイムを奪われてしまった。
第16ステージを終えて、メンショフと総合2位ディルーカのタイム差は39秒、総合3位に浮上したサストレとのタイム差は2分19秒。リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)は山岳でブレーキがかかり、ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)にアシストされながらも3分近く遅れ、総合6位に転落している。
このままメンショフがローマまでマリアローザを守り抜くのか? 個人TTを得意とするメンショフから、イタリア勢が最終日ローマでマリアローザを奪うのは困難を極める。残り2つの頂上ゴール(ブロックハウスとヴェスヴィオ)で再びイタリア勢は総攻撃を仕掛けるだろう。
明日は今大会2回目の、そして最後の休息日。今からモンテ・ペトラーノ山頂のプレスルームを出て、アドリア海に沿って250kmほど離れたペスカラまで移動します。着くのは何時だ?? こりゃ夕飯は高速のサービスエリアになりそう。
text&photo:Kei Tsuji
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