2012/01/30(月) - 12:56
ベルギー・コクサイデで開催されたシクロクロス世界選手権男子エリートは、ニールス・アルベルト(ベルギー)が独走優勝し、ベルギー勢7人が上位を独占。日本の竹之内悠と辻浦圭一はタイムアウトで失格となった。
砂丘が名物のベルギー・コクサイデで開催されたシクロクロス世界選手権。最後のイベントは男子エリート。深い砂にタイヤをとられるこの難コースで鮮やかな走りを見せて独走優勝を飾ったのはベルギーのニールス・アルベルト(ベルギー、BKCP・パワープラス)だった。2月に26歳になるベルギーの貴公子が、3年ぶり2度目のアルカンシェルに袖を通した。
また、出場したベルギー人選手7人が上位を独占するという史上稀に見る結果となった。ジュニア、U23、女子とここまでのエリート男子以外の種目をすべてオランダが制覇していたが、最後にシクロクロス大国ベルギーの力を見せつけた。
日本の竹之内悠(チームユーラシア)と辻浦圭一(ブリヂストンアンカー)はそれぞれ45位・55位・マイナス5周回で相当走ったが、「80%ルール」によりタイムアウト失格の扱い。超スピードレースに完走は全体でもわずか24人という過酷なレースになった。
アルベルトの独走 ベルギー勢7人がレースを支配
この日ベルギーの海辺の町コクサイデのシクロクロス世界選手権の会場に詰めかけた観客は6万~7万人。レースのスタートが切られると、すぐにアルベルトが飛び出す。フランスのスティーブ・シェイネルらがいい位置につけたがほどなくベルギー勢が上位に集結しはじめる。
難所の砂丘でアルベルトに続くのは2011世界CX王者ゼネク・スティバル(チェコ)。以下、スヴェン・ネイス、ケヴィン・パウエルス、トム・メーウセンらベルギーの有力勢が続く。
1周を終える時点でアルベルトが後続に13秒のタイム差をつけて独走に入る。結局はこの独走が最後まで続くことになった。
アルベルトを追うのはパウエルスとネイス。少し遅れてメーウセン、ピーテルス、ファントルノートら。それに食い下がるスティバル。ベルギーのジャージばかりが目立つなか、スティバルの走りは次第に重くなり、位置を下げていく。
先頭のアルベルトの走りは冴え渡り、ますます独走状態を固める。ネイスとパウエルスがランデブーで追う展開。しかしその差はまったく縮まらなかった。レースは完全にベルギー勢7人の争いとなった。
3周目の時点で竹之内は48位、辻浦は58位前後につける。
アルベルトと後続の差は残り4周で39秒。残り2周で48秒差。もはや独走が堅くなった。後続の6人のベルギー人集団はこのなかでの表彰台をかけたレースを始め、チェコのシムネク、スティバルはすでに2分の遅れを喫してレースからは程遠い状況になった。
最後までペースの落ちない驚異的な走りを披露して余裕の独走勝利を飾ったアルベルト。自国ベルギーの地で大勢の観客が見守る中、2009年オランダ・ホーヘルハイデ世界選手権優勝に続く3年ぶり2度目のシクロクロス世界王者に輝いた。
アルベルトは言う。「今日はすごく調子が良く、いい脚だった。スタートも完璧だった。これはキャリア最大の勝利。これで僕の今シーズンは成功と言えるね」。
アルベルトは11月のトレーニング中に小菱形骨(しょうりょうけいこつ=掌にある小さな骨)を骨折。2011-2012シーズンの本格参戦への調整が遅れた。年明けすぐのベルギー選手権でネイスに次ぐ2位となったものの、52秒の遅れを喫していた。結果的にはここまでに走るレースが少なかったことも体調キープに役立ったのかもしれない。
また、優勝候補筆頭に挙げられていたスヴェン・ネイスが「たぶんこれが僕にとって最後の世界選手権」とコメントし、引退を匂わせた。ネイスは当初2013年アメリカで開催される世界選で引退する意向を表明していた。
竹之内と辻浦は80%ルールで失格
驚異的なスピードで進行したレース。アルベルトのタイムを元にした「80%ルール」が適応され、45位・55位相当で走っていた竹之内悠と辻浦圭一は降車を命じられた。最終的には完走者はわずか24人という厳しいレースとなった。
竹之内悠のコメント
レース後、竹之内悠は日本からの電話に応じて次のようにコメント。
「衝撃的だった。2年前にワールドカップを走った時、40分で足切りにあった。そのときに『世界のトップはこんなにも速いのか』と感じた。それからずっと練習を積み重ねてきて、今日を、それなりの自信とともに臨んだんです。それがいとも簡単に、ちょうど同じ40分で足切りという、同じ結果になってしまった。やっぱり世界は強いな、と思いました。
自分の中ではショックは大きいけれど、これからも同じように続けていくしかないと思っています。諦めずに、しっかり前を向いて走っていきたい」。
シクロクロス世界選手権2012男子エリート結果
1位 ニールス・アルベルト(ベルギー) 1:06:07
2位 ロブ・ピーテルス(ベルギー)+0:00:24
3位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー)+0:00:30
4位 トム・メーウセン(ベルギー)、+0:00:34
5位 バルト・アールノウト(ベルギー)+0:00:35
6位 クラース・ファントルノート(ベルギー)+0:01:09
7位 スヴェン・ネイス(ベルギー)+0:01:11
8位 ラドミール・シムネク(チェコ)+0:02:15
9位 フィリップ・ヴァルスレーベン(ドイツ)+0:02:25
10位 シモン・ツァーナー(スイス)+0:02:31
45位 竹之内悠(チームユーラシア) タイムアウト失格
55位 辻浦圭一(ブリヂストンアンカー) タイムアウト失格
text:Makoto.AYANO
photo:CorVos,Riccardo Scanferla
砂丘が名物のベルギー・コクサイデで開催されたシクロクロス世界選手権。最後のイベントは男子エリート。深い砂にタイヤをとられるこの難コースで鮮やかな走りを見せて独走優勝を飾ったのはベルギーのニールス・アルベルト(ベルギー、BKCP・パワープラス)だった。2月に26歳になるベルギーの貴公子が、3年ぶり2度目のアルカンシェルに袖を通した。
また、出場したベルギー人選手7人が上位を独占するという史上稀に見る結果となった。ジュニア、U23、女子とここまでのエリート男子以外の種目をすべてオランダが制覇していたが、最後にシクロクロス大国ベルギーの力を見せつけた。
日本の竹之内悠(チームユーラシア)と辻浦圭一(ブリヂストンアンカー)はそれぞれ45位・55位・マイナス5周回で相当走ったが、「80%ルール」によりタイムアウト失格の扱い。超スピードレースに完走は全体でもわずか24人という過酷なレースになった。
アルベルトの独走 ベルギー勢7人がレースを支配
この日ベルギーの海辺の町コクサイデのシクロクロス世界選手権の会場に詰めかけた観客は6万~7万人。レースのスタートが切られると、すぐにアルベルトが飛び出す。フランスのスティーブ・シェイネルらがいい位置につけたがほどなくベルギー勢が上位に集結しはじめる。
難所の砂丘でアルベルトに続くのは2011世界CX王者ゼネク・スティバル(チェコ)。以下、スヴェン・ネイス、ケヴィン・パウエルス、トム・メーウセンらベルギーの有力勢が続く。
1周を終える時点でアルベルトが後続に13秒のタイム差をつけて独走に入る。結局はこの独走が最後まで続くことになった。
アルベルトを追うのはパウエルスとネイス。少し遅れてメーウセン、ピーテルス、ファントルノートら。それに食い下がるスティバル。ベルギーのジャージばかりが目立つなか、スティバルの走りは次第に重くなり、位置を下げていく。
先頭のアルベルトの走りは冴え渡り、ますます独走状態を固める。ネイスとパウエルスがランデブーで追う展開。しかしその差はまったく縮まらなかった。レースは完全にベルギー勢7人の争いとなった。
3周目の時点で竹之内は48位、辻浦は58位前後につける。
アルベルトと後続の差は残り4周で39秒。残り2周で48秒差。もはや独走が堅くなった。後続の6人のベルギー人集団はこのなかでの表彰台をかけたレースを始め、チェコのシムネク、スティバルはすでに2分の遅れを喫してレースからは程遠い状況になった。
最後までペースの落ちない驚異的な走りを披露して余裕の独走勝利を飾ったアルベルト。自国ベルギーの地で大勢の観客が見守る中、2009年オランダ・ホーヘルハイデ世界選手権優勝に続く3年ぶり2度目のシクロクロス世界王者に輝いた。
アルベルトは言う。「今日はすごく調子が良く、いい脚だった。スタートも完璧だった。これはキャリア最大の勝利。これで僕の今シーズンは成功と言えるね」。
アルベルトは11月のトレーニング中に小菱形骨(しょうりょうけいこつ=掌にある小さな骨)を骨折。2011-2012シーズンの本格参戦への調整が遅れた。年明けすぐのベルギー選手権でネイスに次ぐ2位となったものの、52秒の遅れを喫していた。結果的にはここまでに走るレースが少なかったことも体調キープに役立ったのかもしれない。
また、優勝候補筆頭に挙げられていたスヴェン・ネイスが「たぶんこれが僕にとって最後の世界選手権」とコメントし、引退を匂わせた。ネイスは当初2013年アメリカで開催される世界選で引退する意向を表明していた。
竹之内と辻浦は80%ルールで失格
驚異的なスピードで進行したレース。アルベルトのタイムを元にした「80%ルール」が適応され、45位・55位相当で走っていた竹之内悠と辻浦圭一は降車を命じられた。最終的には完走者はわずか24人という厳しいレースとなった。
竹之内悠のコメント
レース後、竹之内悠は日本からの電話に応じて次のようにコメント。
「衝撃的だった。2年前にワールドカップを走った時、40分で足切りにあった。そのときに『世界のトップはこんなにも速いのか』と感じた。それからずっと練習を積み重ねてきて、今日を、それなりの自信とともに臨んだんです。それがいとも簡単に、ちょうど同じ40分で足切りという、同じ結果になってしまった。やっぱり世界は強いな、と思いました。
自分の中ではショックは大きいけれど、これからも同じように続けていくしかないと思っています。諦めずに、しっかり前を向いて走っていきたい」。
シクロクロス世界選手権2012男子エリート結果
1位 ニールス・アルベルト(ベルギー) 1:06:07
2位 ロブ・ピーテルス(ベルギー)+0:00:24
3位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー)+0:00:30
4位 トム・メーウセン(ベルギー)、+0:00:34
5位 バルト・アールノウト(ベルギー)+0:00:35
6位 クラース・ファントルノート(ベルギー)+0:01:09
7位 スヴェン・ネイス(ベルギー)+0:01:11
8位 ラドミール・シムネク(チェコ)+0:02:15
9位 フィリップ・ヴァルスレーベン(ドイツ)+0:02:25
10位 シモン・ツァーナー(スイス)+0:02:31
45位 竹之内悠(チームユーラシア) タイムアウト失格
55位 辻浦圭一(ブリヂストンアンカー) タイムアウト失格
text:Makoto.AYANO
photo:CorVos,Riccardo Scanferla
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