2つの山岳を含む60.6kmのコースを舞台に争われたジロ・デ・イタリア第12ステージ、個人タイムトライアルは、並みいるライバルを退け、デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)が圧勝。マリアローザをも手に入れた。

リグーリア海と山々に挟まれた一帯がレースの舞台だリグーリア海と山々に挟まれた一帯がレースの舞台だ photo:Kei Tsuji戦前から重要ステージと位置付けられていたジロ・デ・イタリア第12ステージの個人タイムトライアル。60.6kmという長い距離に加え、リグリア海沿いの急峻な地形による無数のコーナー、標高600m級の山岳ポイント2つという難易度の高いコース設定。この難敵を乗りこなした者がマリアローザに近づくと予想されていた。

ステージ3位・1分03秒遅れのステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)ステージ3位・1分03秒遅れのステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) photo:Kei Tsuji第11ステージを終えての個人総合成績では、マリアローザのダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)のデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)に対するアドバンテージは1分20秒。個人TTを得意とするマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア)、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)らの走りにも注目が集まった。

メンショフに20秒遅れ、2位のリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)メンショフに20秒遅れ、2位のリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ) photo:CorVos第1走者のバルト・ドックス(ベルギー、サイレンス・ロット)を皮切りに、186名の選手が1分おきにスタートする。個人総合トップ20の選手は3分おきのスタートだ。

トップタイムをたたき出したデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)トップタイムをたたき出したデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) photo:CorVos半分ほどの選手が走り終えた時点で、それまでの暫定トップ、アレッサンドロ・ベルトリーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)に代わってトップに立ったのは、デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・スリップストリーム)だった。TTスペシャリスト向けではないとされたこのコースだったが、この後もチームメイトのブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン・スリップストリーム)が暫定トップに立つなど、TTスペシャリストが健闘を見せた。

ステージ6位・1分54秒遅れのダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)ステージ6位・1分54秒遅れのダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) photo:Kei Tsujiしかし、その後トップタイムを塗り替えたのは個人総合27位のステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)だった。ガルゼッリのタイムはなかなか塗り替えられないまま、レースは個人総合上位の選手がタイムを競う最終盤を迎えた。

マリアローザを獲得したデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)マリアローザを獲得したデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) photo:CorVos個人総合上位の選手で、この日快調な走りを見せたのは個人総合5位のフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)だった。クリップオンバーを装備したノーマルバイクを駆るペッリツォッティは、ガルゼッリ、ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)に次ぐ暫定3位でフィニッシュ。

続いてスタートしたリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)。前日の第11ステージでの落車の影響や、下りを不得手とすることなどが取り沙汰されていたライプハイマーだったが、この日素晴らしい走りを見せ、ガルゼッリのタイムを43秒上回るタイムで暫定トップに躍り出た。

一方で苦戦したのが個人総合3位のマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア)だ。袖に世界王者の証、アルカンシェルのカラーが入ったオーストラリアチャンピオンジャージを着たロジャースだったが、第1計測ポイントは1分19秒遅れの17位、第2計測ポイントも1分14秒遅れの14位とタイムが伸びない。この日ロジャースは、ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)より20秒遅い、2分46秒遅れの14位でゴールし、個人総合順位を6位まで落とした。

最初から飛ばしていたのがデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)だ。ここまで上位でゴールした選手のタイムを見てみると、最初の上りはゆっくり入り、徐々にペースを上げてタイムを伸ばす選手が多かった。しかし、メンショフは第1計測ポイントから暫定トップのタイムで通過。以降、1つ、また1つと記録を塗り替えていく。

そして満を持して登場したダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)。まばゆいばかりのマリアローザに身を包んだディルーカだったが、しかしタイムはあまり伸びない。第1計測ポイント、第2計測ポイントをメンショフより46秒遅れで通過。個人総合2位のメンショフとのタイム差は1分20秒。リードの貯金を徐々に食いつぶし、第3計測ポイントでは1分46秒遅れ、バーチャルリーダーがメンショフとなった。

淡々とペースを刻むメンショフに対して、なかなかペースの上がらないディルーカ。

メンショフはライプハイマーのタイムを20秒上回る、1時間34分29秒というタイムを叩き出し、ステージ優勝、そしてマリアローザをほぼ確定的なものにした。

ディルーカは歯を食いしばり、必死の形相でゴールを目指したが、メンショフより1分54秒遅れの6位でフィニッシュ。
ステージ13位・2分26秒遅れのランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)ステージ13位・2分26秒遅れのランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ) photo:Kei Tsujiメンショフは1分20秒のタイム差をひっくり返し、それどころか34秒のマージンを持ってマリアローザに袖を通すこととなった。

個人総合上位ではダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)が4分40秒遅れの26位、トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)が5分1秒遅れの28位と大きく遅れた中で、2分17秒遅れの11位のイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、2分18秒遅れの12位のカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)は比較的無難にまとめたといってもいいだろう。

「この勝利はオリッリョへの最高の贈り物だ。グランツールライダーの僕にとってマリアローザを着ることはとても重要。満足だよ」と語るメンショフ。
ライバルについては「ライプハイマーは強いね。ディルーカもまた上がってくる。土曜日からはまた彼はすべてをぶつけてくるだろう。でも僕はバッソとサストレもまだ勝負に絡んでいると思っている」とコメントしている。

また、ステージ2位、個人総合でも40秒差の3位につけたライプハイマーは「20秒は大きくない差だよ。メンショフは僕より今日強かった。彼を祝福するよ」と語る。そして「ホーナーがいなくなっても僕らは強いチームだ。ランスも調子がよくなっている。僕はまだ勝てると思っている」とも語っている。


ジロ・デ・イタリア第13ステージは、前半に212mの山岳ポイントが登場する他はほぼ平坦。ピュアスプリンターによる熾烈な争いが見られるだろう。


ジロ・デ・イタリア2009第12ステージ結果
1位デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)1h34'29"
2位リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+20"
3位ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)+1'03"
4位ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)+1'14"
5位フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)+1'27"
6位ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)+1'54"
7位ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン・スリップストリーム)+1'59"
8位ガブリエーレ・ボジージオ(イタリア、LPRブレークス)+2'04"
9位ホセ・セルパ(コロンビア、ディキジョヴァンニ)+2'13"
10位マルツィオ・ブルセギン(イタリア、ランプレ)+2'17"

個人総合成績
1位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) 50h27'17"
2位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) +34"
3位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ) +40"
4位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) +2'00"
5位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +2'52"
6位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア) +2'59"
7位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +3'00"
8位 ジルベルト・シモーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ) +4'38"
9位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、ランプレ) +5'26"
10位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア) +5'53"

ポイント賞 マリアチクラミーノ
ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)

山岳賞 マリアヴェルデ
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)

新人賞 マリアビアンカ
トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)

チーム総合成績
アスタナ

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