2011/09/21(水) - 02:12
最終ステージは天津で開催された85kmのクリテリウム。アーロン・カンプス(オーストラリア、Vオーストラリア)が集団スプリントを制し、ステージ優勝。ムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)が総合優勝した。愛三は盛一大がステージ10位でゴールしている。
天津駅前で開催されたクリテリウム
飛行機で成都から約2,000km移動し、港街天津で開催されたツアー・オブ・チャイナ、最終ステージは、ニュートラル走行で周回コースに入り、8.5kmの周回コースを10周する85kmのクリテリウムだ。運河沿いの平坦コースだが、急なコーナーやトンネル、橋などが含まれテクニカルなコースになっている。
特に最終周回ではゴール手前300mに位置する“解放橋”は、かつて船を通すために中央部が開く跳開橋だったため、中央に運河を見下ろすことができる約7-8cmの大きな溝がある。かつ路面は鉄板という状況でスプリントを仕掛ける際にキーとなる。
天津はかつて港街として栄えた街で、旧市街とともに再開発されたキレイな街並みが多くの観光客を集めている。最終ステージのためだけに、レースを四川省から呼んでいることを考えると、街の財政事情はかなり裕福だと言えるだろう。
ようやく気持ちのいい秋空が広がった最終ステージ。気温は30度近くにまで上がり、雨が降って寒い日が続いた四川省でのレースから一転、選手はたくさんの水分を摂り、暑さ対策をしてスタートラインに並んだ。
カンプスが昨年に引き続く区間優勝
テクニカルなクリテリウムで、序盤から先行する選手はいても、決定的な逃げには繋がらず、85kmの短いレースは大集団のままゴールスプリントを迎えることとなる。ラスト300mの解放橋を抜け、ゴールラインに飛び込んできたのは、アーロン・カンプス(オーストラリア、Vオーストラリア)。2位にも同チームの ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、Vオーストラリア)が入り、スプリントながら後続にやや差をつけてのゴールとなった。
アーロン・カンプスは昨年のツアー・オブ・チャイナで区間3勝を挙げているスプリンターで、同コースで開催された天津ステージも制している。コースを熟知していた同チームは解放橋の手前から集団の先頭をキープ。キャントウェルが橋のカーブから加速し、残り150mでカンプスが発射。完璧なチームワークで1、2フィニッシュを達成した。
カンプスは「ようやく得意な暑い日のレースになった。寒いレースは苦手なので、今年のツアー・オブ・チャイナは天候面を言うなら、自分向きではなかった。でもここで勝てたこと、1位2位を独占できたことを嬉しく思っているよ」と笑顔で話した。
ハルムラトフがイエロージャージを守る
総合優勝は、当初「チーム力がないから守れない」と言われていたジャイアント・ケンダのムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン)が見事に獲得。強いチームや選手はほかにも多くあったはずだが、圧倒的な強さを誇る選手、チームがなかったこと、また同等レベルにある強豪チームが互いに潰し合いをしたため、山岳の第8ステージを除き、彼は集団に付いていくだけでジャージをキープすることができたという、ロードレースの面白さを感じさせてくれる結果となった。
なかなか笑顔を見せず、シャイな印象を受ける29歳のハルムラトフ。「今日ゴールする瞬間まで、ジャージを守れるか心配だったんだ。今は嬉しいというかホッとしているよ」と、苦手な英語で話す。今年のアジア選手権2位というキャリア以外に目立った成績はないが、今回の脚光を受けて、アジアを代表する選手に育ってほしいと思う。
愛三工業、結果を次のステップへ
区間優勝をめざした愛三工業レーシングチームは、残り300m、橋の入り口のカーブでエース西谷泰治が落車に巻き込まれてしまう。スプリントに向けて西谷を待っていたという盛一大がスプリントに挑んだが、仕掛けるのが遅かったこともあり、ステージ10位でレースを終えた。幸い落車した西谷は軽傷と言うが、目標のステージ優勝は叶わなかった。
別府匠監督のコメント
「期待と現実との差を感じる結果になってしまいましたが、次につなげることができれば、プラスになる結果だと思っています。課題としては選手たちにはもっとレースを読む力をつけてほしいと思います。たとえば第2ステージで逃げが決まり、その結果が最終的な結果になったことなど、タイムキーパーがうまく動かなくても、自分たちで考えて動くべきだった。他のチームが動かなくても、仕掛けて良かったと思います。
次のレースではリベンジをしていきたいです。スプリントの局面で欧米選手の中に入って、ラインを確保するのは大変なこと。しかし、結果を出せば彼らからのリスペクトが得られますし、口コミでチームの評価が広がります。決して弱くはないチームなので、次は彼らをビックリさせるような結果を出したいと思います。
良かったことをあげれば、鈴木謙一選手が第8ステージで区間5位に入ったこと。山岳でいい走りをしましたし、この結果は彼にとっていい経験になったはずです。
チームのモットーはアジアのレースを盛り上げていくこと。レースを走らさせてもらっている立場でオーガナイズについて、安全にレースが開催できているので何も不満はありませんが、レースをさらにいいものにするという点で気がついたことはフィードバックしますし、自分たちもそれに協力しないといけないと感じています。アジアツアーなので、ヨーロッパのレースとは違います。アジアでのベストなレースを協力して作り上げていきたいんです」。
アジアの1番をめざす、という目標をもって活動している同チーム。今大会の招待が主催者側から届いたこともこれまでの成果があってのことだろう。別府監督のもと、新体制になって1年目。すべてがうまくいくわけではないが、試行錯誤しながらも上をめざすチームの姿がある。次の国際レースはジャパンカップ(1.HC)とツアー・オブ・ハイナン(2.HC)だ。高い目的意識をもつ愛三工業レーシングチームの挑戦に注目してほしい。
ツアー・オブ・チャイナ2011第9ステージ結果
1位 アーロン・カンプス(オーストラリア、Vオーストラリア) 1h46'05"
2位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、Vオーストラリア)
3位 イワン・コヴァレフ(ロシア、ロシアナショナル)
4位 ジャン・スンジェ(韓国、韓国ナショナル)
5位 ボリス・シュピレフスキ(ロシア、タブリーズ・ペトロケミカル)
6位 ミッシェルパスカル・ジュール(フランス、ラポム・マルセイユ)
7位 グリシア・ヤノルシュケ(ドイツ、ニュートリション)
8位 アレクサンドル・セロフ(ロシア、ロシアナショナル)
9位 コワ・ホーチン(香港、香港ナショナル)
10位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
14位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
32位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
63位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
64位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)
112位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
個人総合成績(イエロージャージ)
1位 ムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)26h21'28"
2位 イワン・コヴァレフ(ロシア、ロシアナショナル)+3'08"
3位 アレクサンドル・セロフ(ロシア、ロシアナショナル)+3'12"
4位 マテイ・ムジェルリ(スロベニア、プルティニナ)+3'17"
5位 ダニエルホルム・ホーダー(デンマーク、グラッド&マーストランドLPO)+3'25"
6位 パブロ・ルシュガ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)+3'27"
7位 クリスター・レイク(ノルウェー、ジョーカー・メリダ)+3'29"
8位 ディルク・ミューラー(ドイツ、ニュトリキシオン)+3'31"
9位 ウラディミール・エフィムキン(ロシア、タイプ1)+3'32"
10位 マニュエル・オルテガ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)+3'33"
20位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+3'45"
42位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)+9'55"
75位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+21'11"
77位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+22'07"
84位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+26'42"
96位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+30'15"
ポイント賞(ブルージャージ)
ボリス・シュピレフスキ(ロシア、タブリーズ・ペトロケミカル)
山岳賞(ポルカドットジャージ)
ガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
チーム総合成績
ジョーカー・メリダ
photo&text:Sonoko.Tanaka
天津駅前で開催されたクリテリウム
飛行機で成都から約2,000km移動し、港街天津で開催されたツアー・オブ・チャイナ、最終ステージは、ニュートラル走行で周回コースに入り、8.5kmの周回コースを10周する85kmのクリテリウムだ。運河沿いの平坦コースだが、急なコーナーやトンネル、橋などが含まれテクニカルなコースになっている。
特に最終周回ではゴール手前300mに位置する“解放橋”は、かつて船を通すために中央部が開く跳開橋だったため、中央に運河を見下ろすことができる約7-8cmの大きな溝がある。かつ路面は鉄板という状況でスプリントを仕掛ける際にキーとなる。
天津はかつて港街として栄えた街で、旧市街とともに再開発されたキレイな街並みが多くの観光客を集めている。最終ステージのためだけに、レースを四川省から呼んでいることを考えると、街の財政事情はかなり裕福だと言えるだろう。
ようやく気持ちのいい秋空が広がった最終ステージ。気温は30度近くにまで上がり、雨が降って寒い日が続いた四川省でのレースから一転、選手はたくさんの水分を摂り、暑さ対策をしてスタートラインに並んだ。
カンプスが昨年に引き続く区間優勝
テクニカルなクリテリウムで、序盤から先行する選手はいても、決定的な逃げには繋がらず、85kmの短いレースは大集団のままゴールスプリントを迎えることとなる。ラスト300mの解放橋を抜け、ゴールラインに飛び込んできたのは、アーロン・カンプス(オーストラリア、Vオーストラリア)。2位にも同チームの ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、Vオーストラリア)が入り、スプリントながら後続にやや差をつけてのゴールとなった。
アーロン・カンプスは昨年のツアー・オブ・チャイナで区間3勝を挙げているスプリンターで、同コースで開催された天津ステージも制している。コースを熟知していた同チームは解放橋の手前から集団の先頭をキープ。キャントウェルが橋のカーブから加速し、残り150mでカンプスが発射。完璧なチームワークで1、2フィニッシュを達成した。
カンプスは「ようやく得意な暑い日のレースになった。寒いレースは苦手なので、今年のツアー・オブ・チャイナは天候面を言うなら、自分向きではなかった。でもここで勝てたこと、1位2位を独占できたことを嬉しく思っているよ」と笑顔で話した。
ハルムラトフがイエロージャージを守る
総合優勝は、当初「チーム力がないから守れない」と言われていたジャイアント・ケンダのムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン)が見事に獲得。強いチームや選手はほかにも多くあったはずだが、圧倒的な強さを誇る選手、チームがなかったこと、また同等レベルにある強豪チームが互いに潰し合いをしたため、山岳の第8ステージを除き、彼は集団に付いていくだけでジャージをキープすることができたという、ロードレースの面白さを感じさせてくれる結果となった。
なかなか笑顔を見せず、シャイな印象を受ける29歳のハルムラトフ。「今日ゴールする瞬間まで、ジャージを守れるか心配だったんだ。今は嬉しいというかホッとしているよ」と、苦手な英語で話す。今年のアジア選手権2位というキャリア以外に目立った成績はないが、今回の脚光を受けて、アジアを代表する選手に育ってほしいと思う。
愛三工業、結果を次のステップへ
区間優勝をめざした愛三工業レーシングチームは、残り300m、橋の入り口のカーブでエース西谷泰治が落車に巻き込まれてしまう。スプリントに向けて西谷を待っていたという盛一大がスプリントに挑んだが、仕掛けるのが遅かったこともあり、ステージ10位でレースを終えた。幸い落車した西谷は軽傷と言うが、目標のステージ優勝は叶わなかった。
別府匠監督のコメント
「期待と現実との差を感じる結果になってしまいましたが、次につなげることができれば、プラスになる結果だと思っています。課題としては選手たちにはもっとレースを読む力をつけてほしいと思います。たとえば第2ステージで逃げが決まり、その結果が最終的な結果になったことなど、タイムキーパーがうまく動かなくても、自分たちで考えて動くべきだった。他のチームが動かなくても、仕掛けて良かったと思います。
次のレースではリベンジをしていきたいです。スプリントの局面で欧米選手の中に入って、ラインを確保するのは大変なこと。しかし、結果を出せば彼らからのリスペクトが得られますし、口コミでチームの評価が広がります。決して弱くはないチームなので、次は彼らをビックリさせるような結果を出したいと思います。
良かったことをあげれば、鈴木謙一選手が第8ステージで区間5位に入ったこと。山岳でいい走りをしましたし、この結果は彼にとっていい経験になったはずです。
チームのモットーはアジアのレースを盛り上げていくこと。レースを走らさせてもらっている立場でオーガナイズについて、安全にレースが開催できているので何も不満はありませんが、レースをさらにいいものにするという点で気がついたことはフィードバックしますし、自分たちもそれに協力しないといけないと感じています。アジアツアーなので、ヨーロッパのレースとは違います。アジアでのベストなレースを協力して作り上げていきたいんです」。
アジアの1番をめざす、という目標をもって活動している同チーム。今大会の招待が主催者側から届いたこともこれまでの成果があってのことだろう。別府監督のもと、新体制になって1年目。すべてがうまくいくわけではないが、試行錯誤しながらも上をめざすチームの姿がある。次の国際レースはジャパンカップ(1.HC)とツアー・オブ・ハイナン(2.HC)だ。高い目的意識をもつ愛三工業レーシングチームの挑戦に注目してほしい。
ツアー・オブ・チャイナ2011第9ステージ結果
1位 アーロン・カンプス(オーストラリア、Vオーストラリア) 1h46'05"
2位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、Vオーストラリア)
3位 イワン・コヴァレフ(ロシア、ロシアナショナル)
4位 ジャン・スンジェ(韓国、韓国ナショナル)
5位 ボリス・シュピレフスキ(ロシア、タブリーズ・ペトロケミカル)
6位 ミッシェルパスカル・ジュール(フランス、ラポム・マルセイユ)
7位 グリシア・ヤノルシュケ(ドイツ、ニュートリション)
8位 アレクサンドル・セロフ(ロシア、ロシアナショナル)
9位 コワ・ホーチン(香港、香港ナショナル)
10位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
14位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
32位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
63位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
64位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)
112位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
個人総合成績(イエロージャージ)
1位 ムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)26h21'28"
2位 イワン・コヴァレフ(ロシア、ロシアナショナル)+3'08"
3位 アレクサンドル・セロフ(ロシア、ロシアナショナル)+3'12"
4位 マテイ・ムジェルリ(スロベニア、プルティニナ)+3'17"
5位 ダニエルホルム・ホーダー(デンマーク、グラッド&マーストランドLPO)+3'25"
6位 パブロ・ルシュガ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)+3'27"
7位 クリスター・レイク(ノルウェー、ジョーカー・メリダ)+3'29"
8位 ディルク・ミューラー(ドイツ、ニュトリキシオン)+3'31"
9位 ウラディミール・エフィムキン(ロシア、タイプ1)+3'32"
10位 マニュエル・オルテガ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)+3'33"
20位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+3'45"
42位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)+9'55"
75位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+21'11"
77位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+22'07"
84位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+26'42"
96位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+30'15"
ポイント賞(ブルージャージ)
ボリス・シュピレフスキ(ロシア、タブリーズ・ペトロケミカル)
山岳賞(ポルカドットジャージ)
ガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
チーム総合成績
ジョーカー・メリダ
photo&text:Sonoko.Tanaka
フォトギャラリー