2009/05/16(土) - 19:51
チームの経済危機が明るみになったアスタナは15日、ジロ第7ステージでスポンサー企業名のロゴが消えかけたチームジャージでレースを走った。それはアームストロングが先導を切る、給与支払を滞らせているスポンサーへのアピール。しかも最後通告だ。
カザフ企業からKCF(カザフ自転車競技連盟)へ支払われるスポンサー費。それをチームへ支払うことに対し、チーム運営母体からはタイムリミットが設けられていた。それが15日の朝9時。それが守られなかったため、チームはノースポンサーのジャージでジロ第7ステージを走ることになった。唯一人、カザフ出身のアンドレイ・ゼイツを除いては。
この日用意されたジャージは、トレック、ナイキ、カザウムナイガスの3社の文字はそのままに、支払いが滞っているスポンサー名を消える寸前まで薄くしたもの。これでは宣伝効果は無く、むしろ元の文字が読めることで企業にとってはダメージにさえなる。
ヨハン・ブリュイネール監督も、ランス・アームストロングも、スポンサー企業とは直接話ができないという。チーム運営会社との間にKCF(カザフ自転車競技連盟)が立つからだ。UCIに納める保証金の支払い期限が5月31日ということで、チームはその日に最終日を迎えるジロまでは確実に走ることができる。しかしそれ以降にチームが存続するためには支払いか代替新スポンサーが必要だ。
-ベルギーのテレグラアフ紙に寄稿されたヨハン・ブリュイネール監督の声明コラムを紹介する。
(-ブリュイネール) 2009年の初めから、カザフスタンからの支払いは滞りがちになっていた。今の時点でKCF(カザフ自転車競技連盟)からチームを運営しているマネジメント会社へは2ヶ月間の給与の支払いしかない。
KCF側から受けている説明は、カザフの経済危機でスポンサーからの支払いが無いということだけ。彼らは解決策を探していると言っているが、私にはどんな行動がとられているか知る由も無い。
UCI(国際自転車競技連盟)は私に「KCFへ与えた支払い期限は5月31日。それができないとプロツアーライセンスは消える。ジロが終わるまで我々には手だてが無い。
もちろん投げ出すことはできない。6月1日からチームを存続させる方法を、なんとか探さなくてはならない。昨年我々はチームを再構築した。そしていまや最も愛されるチームになっている。このチームが消えるようなことがあってはならない!
私個人にとっても状況は選手たちと同じだ。私はチームのオーナーではない。そして私は「支払われる側」の人間だ。年の初めから私への支払いは遅く、まったくなくなった状態だ。私にとってここでやめてしまうことはたやすいのです。
2007年のツール・ド・フランスで、私はこの世界から引退することをアナウンスした。そしてこのアスタナ・プロジェクトが浮上した。私はUSポスタルとディスカバリーチャンネルのスタッフによってアスタナチームを作り上げたんだ。彼らは今でもチームのベースだ。この集団を壊してしまうことなど考えられない。
5月31日までにいくつか選択肢があるだろう。KCFが義務を果たせれば、私たちはこのチームとスポンサーで続けるつもりだ。 それができなければライセンスは取り消され、アスタナチームも無くなる。そうなればこのチームを生かすための他の解決法を見つけなければならない。
現在、私たちはいくつかのマーケティング代理人やグローバル企業と交渉しています。 今回の財政危機問題のニュースが流れたとき、多くの会社からコンタクトがありました。私たちの最も大きなアドバンテージは、私たちにはもっとも市場価値のあるアスリートがいるということです。 彼らが産業へのドアを開けるでしょう。とくにアメリカでは多くの企業がランスの名と関わりたいと考えている。
ランスは無給で走っているので、彼が支払い問題に対処する必要はまったくない。しかしチームメートが支払われていないのを見て、彼は苦しんでいる。皆が一緒に続けらるようにと思っているが、確かにそれがチームを圧迫している。
私はこのチームがモナコでのツール・ド・フランス2009のプロローグの場にいると確信している。それはたぶん、別のスポンサー名と共にだろう。私たちはツールに行く。新しいスポンサーはもっとも大きなスポーツイベントの直前に決まるだろうか。その企業はアルベルト・コンタドール、ランス・アームストロング、リーヴァイ・ライプハイマーらを「大使」として、シーズン半ばにしてこの世界に飛び込むというユニークな機会を得ることができるだろう。
何という機会でしょう…。
UCIから選手たちへの未払い分給与の代替支払いに当てられる保証金はまだ使われておらず、それは5月31日時点での最後の手段となる。つまり5月末までの給与分はほぼ保障されているわけで、未払いがもとで選手がジロを無償で走るという事態にはない。しかし6月1日後の活動については何もなくなる。チームが新たな運営体制を築けなければ、活動に必要なライセンスさえ取り消されてしまう。
カザフ側からも「ジロがチームにとって最後のレースになるだろう」と伝えられたという。
アームストロングやコンタドール、ライプハイマーら世界最強アスタナチームがツール・ド・フランスに出場できるかは、新たなスポンサーを見つけることができるかどうかにかかっている。チームの魅力は十分。しかしそれに十分投資できる企業が集まるかどうかはこれからの1ヵ月半余りが勝負だ。
text:綾野 真
photo:辻 啓,CorVos
ジャージからロゴが消えた
カザフ企業からKCF(カザフ自転車競技連盟)へ支払われるスポンサー費。それをチームへ支払うことに対し、チーム運営母体からはタイムリミットが設けられていた。それが15日の朝9時。それが守られなかったため、チームはノースポンサーのジャージでジロ第7ステージを走ることになった。唯一人、カザフ出身のアンドレイ・ゼイツを除いては。
この日用意されたジャージは、トレック、ナイキ、カザウムナイガスの3社の文字はそのままに、支払いが滞っているスポンサー名を消える寸前まで薄くしたもの。これでは宣伝効果は無く、むしろ元の文字が読めることで企業にとってはダメージにさえなる。
ヨハン・ブリュイネール監督も、ランス・アームストロングも、スポンサー企業とは直接話ができないという。チーム運営会社との間にKCF(カザフ自転車競技連盟)が立つからだ。UCIに納める保証金の支払い期限が5月31日ということで、チームはその日に最終日を迎えるジロまでは確実に走ることができる。しかしそれ以降にチームが存続するためには支払いか代替新スポンサーが必要だ。
5月31日が期限。それ以降は新たな体制が必要
-ベルギーのテレグラアフ紙に寄稿されたヨハン・ブリュイネール監督の声明コラムを紹介する。
(-ブリュイネール) 2009年の初めから、カザフスタンからの支払いは滞りがちになっていた。今の時点でKCF(カザフ自転車競技連盟)からチームを運営しているマネジメント会社へは2ヶ月間の給与の支払いしかない。
KCF側から受けている説明は、カザフの経済危機でスポンサーからの支払いが無いということだけ。彼らは解決策を探していると言っているが、私にはどんな行動がとられているか知る由も無い。
UCI(国際自転車競技連盟)は私に「KCFへ与えた支払い期限は5月31日。それができないとプロツアーライセンスは消える。ジロが終わるまで我々には手だてが無い。
もちろん投げ出すことはできない。6月1日からチームを存続させる方法を、なんとか探さなくてはならない。昨年我々はチームを再構築した。そしていまや最も愛されるチームになっている。このチームが消えるようなことがあってはならない!
私個人にとっても状況は選手たちと同じだ。私はチームのオーナーではない。そして私は「支払われる側」の人間だ。年の初めから私への支払いは遅く、まったくなくなった状態だ。私にとってここでやめてしまうことはたやすいのです。
2007年のツール・ド・フランスで、私はこの世界から引退することをアナウンスした。そしてこのアスタナ・プロジェクトが浮上した。私はUSポスタルとディスカバリーチャンネルのスタッフによってアスタナチームを作り上げたんだ。彼らは今でもチームのベースだ。この集団を壊してしまうことなど考えられない。
5月31日までにいくつか選択肢があるだろう。KCFが義務を果たせれば、私たちはこのチームとスポンサーで続けるつもりだ。 それができなければライセンスは取り消され、アスタナチームも無くなる。そうなればこのチームを生かすための他の解決法を見つけなければならない。
現在、私たちはいくつかのマーケティング代理人やグローバル企業と交渉しています。 今回の財政危機問題のニュースが流れたとき、多くの会社からコンタクトがありました。私たちの最も大きなアドバンテージは、私たちにはもっとも市場価値のあるアスリートがいるということです。 彼らが産業へのドアを開けるでしょう。とくにアメリカでは多くの企業がランスの名と関わりたいと考えている。
ランスは無給で走っているので、彼が支払い問題に対処する必要はまったくない。しかしチームメートが支払われていないのを見て、彼は苦しんでいる。皆が一緒に続けらるようにと思っているが、確かにそれがチームを圧迫している。
私はこのチームがモナコでのツール・ド・フランス2009のプロローグの場にいると確信している。それはたぶん、別のスポンサー名と共にだろう。私たちはツールに行く。新しいスポンサーはもっとも大きなスポーツイベントの直前に決まるだろうか。その企業はアルベルト・コンタドール、ランス・アームストロング、リーヴァイ・ライプハイマーらを「大使」として、シーズン半ばにしてこの世界に飛び込むというユニークな機会を得ることができるだろう。
何という機会でしょう…。
ヨハン・ブリュイネール
UCIから選手たちへの未払い分給与の代替支払いに当てられる保証金はまだ使われておらず、それは5月31日時点での最後の手段となる。つまり5月末までの給与分はほぼ保障されているわけで、未払いがもとで選手がジロを無償で走るという事態にはない。しかし6月1日後の活動については何もなくなる。チームが新たな運営体制を築けなければ、活動に必要なライセンスさえ取り消されてしまう。
カザフ側からも「ジロがチームにとって最後のレースになるだろう」と伝えられたという。
アームストロングやコンタドール、ライプハイマーら世界最強アスタナチームがツール・ド・フランスに出場できるかは、新たなスポンサーを見つけることができるかどうかにかかっている。チームの魅力は十分。しかしそれに十分投資できる企業が集まるかどうかはこれからの1ヵ月半余りが勝負だ。
text:綾野 真
photo:辻 啓,CorVos