MTBワールドカップが8月14日に第6戦チェコ・Nove Mesto Na Moraveと、続く21日に第7戦イタリア・Val di soleで行われた。日本人選手が多数参戦し、山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)はチェコは44位・イタリアでは24位で自身最高位をマークした。

ワールドカップに参戦している日本人選手の成績は以下のとおりだ。

平野星矢(チームブリヂストン・アンカー)はチェコ88位(-3Lap)・イタリア85位(-1Lap)。
山本和弘(キャノンデールレーシングチーム)はチェコ78位(-2Lap)・イタリア74位(-1Lap)。
小野寺 健(TEAM SPECIALIZED)はチェコ81位(-3Lap)・イタリア92位(-2Lap)。
武井亨介(チーム・フォルツァ!)はチェコ91位(-3Lap)・イタリアはエントリーに不備があって不参加。

Val di Soleを終えて、UCIから発表されたオリンピック予選ランキングで日本は現在918ポイントで10位。9位カナダ(957ポイント)に続き、11位のベルギー(912ポイント)を上回っている。

自己最高位の「24位を獲得して自信になった」と語る山本幸平。山本一人で509ポイントを稼ぎ出し、有力ワールドカッパーの仲間入りを果たしたと行って過言ではない。9月3日に行われるMTB世界選手権に向けて上々の仕上がりだ。

山本幸平によるワールドカップ・チェコ、イタリア大会の参戦レポート

ワールドカップ第6戦チェコ ノヴェ・ムニュスト・ナモラヴィエ(Nove Mesto Na Morave)

山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) 山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)  photo:Akihiro.Nakao第6戦チェコはNove Mesto Na Moraveにて行われました。当日の会場には多くの観客がレースを見に訪れていました。こんなにもチェコがマウンテンバイクに関心があるとは知りませんでした。
チェコ国内のテレビ局が生放送を行っており、「見せ方が上手いなー」と関心しながらの遠征となりました。

レースはスタートループ+7周回で行われた。コースはアップダウンの繰り返しに加えて、木の根っこ、岩セクションがあり、とても走りごたえのあるコースになっていた。
1周は13分前半と言うスピードコースでもあった。スタートは、いつも行っているのにもかかわらず、うまく自転車をラインに寄せる事が出来ずに、ポジション取りミスで出遅れてしまう、その後の身体の反応も疲労感が残っておりキレが無くて、後退して行ってしまう。

約3分たってからようやく身体が動き出して、少しだけポジションを前に持って行き下りに入って行った。しかし、やはり70番台では混雑は避けられずに、かなりのタイムロスをしてしまう事になる。もう、仕方がないので呼吸を整えて抜ける箇所まで流れに任せる事にする。

スタートループを終えて、ようやく少しだけ流れるようになってきてポジションを上げようとするが、なかなか流れるような走りが出来なままレースが進んでしまう展開に追い込めていない事に気がつく。
「このままではいけない」と思い、強制的に追い込みをかけた。すると気持ちも入り身体も反応してきてくれて、ペースが整いだした。前には、多くのライダーが見えている。

山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) 写真はロンドンオリンピック・プレ大会山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) 写真はロンドンオリンピック・プレ大会 本人提供追い込むしかないと思い、前に前にと気持ちを持って行った。バイクは上手く進んでくれて僕を集中させてくれた。中盤になり多くのライダーを交わして順位を上げて行く事に成功しているのは分かっていたが、まだまだ追い込めると言い聞かせていた。世界のトップライダー達の走りをイメージして、それを真似して追い込む。苦しさは当たり前。その受け止める気持ちを持って挑んでいかなければならない。

後半へさしかかる。ペースは上げられない。もっとダウンシングを上手く取り入れて行きたいと思うがシックリとフォームが決まらなかった。最後は、スプリント勝負になって、前でゴールして、スタートの出遅れから追い上げてのゴールとなった。

今回は、初めての経験をした。こんなにも出遅れてから順位を上げる事が出来た。今までなら後退したまま終っていた場面が多くあったが、ペースを乱さないで走れた事が大きな収穫だと思う。かといって、こんなスタートの出遅れをしてはいけない事とも感じる。しっかりとポジション取りをして、前で展開出来るだけのパワーと勢いを付けなければ順位は付いてこない。走りでは、良い流れになってきていると思う、それを順位としても表して行かなければならないと感じます。もっと考えて感じて学んで取り組んで行こうと思います。


ワールドカップ第7戦イタリア ヴァル・ディ・ソーレ(Val di sole)

第7戦イタリアはトロントから山に入った所、Val di soleと言う街にてワールドカップ最終戦が行われました。
僕の好きな2週間連続でのレース。先週のワールドカップチェコ大会は、体調が合わなくてベストな走りが出来ずに終えてしまったので、今週は、しっかりと生活リズムを整えて過して行きました。コースは、斜度のキツイ登りと下りが続く、とてもハードなコースとなっていた。

しかし、今年からはクロスカントリーオリンピックのルール事態が変更になっており、競技時間が短くなったのと、コースを短縮しテクニカルにすると言う事で、どこのレースも似たようなコースの作りになっていると感じています。

レースは、スタートループ+6周回の14:00スタート。44番のゼッケンを付けて42番目にコールされ4列目に並んでスタート音を待ちました。
気温は、日差しの強いせいか暑く感じていたが、気持ちはしっかりと入っていて気にすること無く待機していました。
チェコではスタート位置取りがミスして上手くスタート出来なかったので、今回は上手い事スペースを作りスタートした。身体の反応も良くスタート。直後に先頭のライダーが、チェーン切れで邪魔になるが、遅れた分を取り返す足が今日はあり、うまく順位を上げつつスタートループを終えた。

乾燥した路面で先頭集団走って行くホコリがモノ凄いが前に行こうと必死に位置取りをして進む。スタートの重要性をチェコで学んだ為にイメージをスタート後のイメージ作りに力を入れていた。そのお陰で、大きな混雑に巻き込まれずにレースを進ませて行く。

ワールドカップ最終戦と言う事で、僕自身を試したい気持ちが強くて、全開で進んで行った。今までとは違う走りが出来ている。僕は通用出来るのだと、何度も言い聞かせてレースを進ませていた。

気がつくと20番代前半で走っていた。目の前には今までは憧れであったライダーの姿が多くいる。もう、同じ戦える位置にいる。自信も付いている。多くの歓声も聞こえている。前に進むしか僕には出来ない。

今までには感じなかった気持ちを感じながら進む。イメージした事が実際に走りに繋がっている、心の底から想えた事は、力となる事を知った瞬間でもあった。僕の心の器が、ようやくワールドカップで20番代になったのだ。

ワールドカップ第7戦イタリア大会で優勝したヤロスロフ・クルハヴィ(チェコ)ワールドカップ第7戦イタリア大会で優勝したヤロスロフ・クルハヴィ(チェコ) (c)CorVosレース中盤で身体の疲れを感じているが、練習の成果を感じる。身体が疲れた中でもパワーの出るポジションをキープしながらアンカーを進ませる。ラストラップに入った。前にはライダー1人見えて捉えられると感じる。後ろを見ると4,5人見える。ザバスのピッドインを飲み気合いを入れ直す。

パワーを出し続ける事は出来ているが、やはり20番前後で走っているライダーは、タレる事なくペース作りが上手いと感じる。僕は、ペースアップが出来ずに順位を落とすが、最後までパワーを出しながらのゴールとなった。

今回、ようやく自己最高順位を更新出来た。24位と言う順位。この結果は、自信につながる結果と捉える事が出来ると思う。戦える位置にきつつある。
トップにはまだ届かないが、それは時間が解決してくれると言い聞かせて、今を全開で出来る事をやって行く。その結果が、前進するパワーとなると信じて。

戦う事が楽しい。自分を信じて走って行きます。
2週間後、世界選手権がある。この場で、今の僕を見てもらいたいです。ありがとう。


text:山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)
edit:Akihiro.Nakao,Makoto.AYANO