2011/07/25(月) - 13:21
鉄壁のHTCトレインに発射されたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)が5勝目をマーク。3年連続で恒例のパリ・シャンゼリゼゴールを制したカヴが、マイヨヴェールを初受賞した。カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)はマイヨジョーヌを着て念願のシャンゼリゼ凱旋を果たす。
ツール・ド・フランスを締めくくるのは毎年恒例、花の都パリの目抜き通り・シャンゼリゼ通りを舞台にしたゴールスプリントだ。3週間を闘い抜いた167名の選手たちを、気温24度、快晴のパリが迎え入れた。
スタート前には、4賞ジャージとノルウェー出身選手2名(フースホフトとボアッソン)が先頭に並び、ノルウェー連続テロ事件の犠牲者に捧げる1分間の黙祷。まったりとパリ郊外のクレテイユをスタートした一行は、まったりとしたペースで95kmのコースに繰り出した。
走りながらシャンパンで乾杯するマイヨジョーヌ。そして互いの健闘を讃え合う選手たち。シャンゼリゼ周回コースが近づくと、マイヨジョーヌ擁するBMCレーシングチームがメイン集団を牽引。赤と黒のBMCボーイズが、メンバー9名全員でマイヨジョーヌをシャンゼリゼにエスコートした。
合計8周する6.5kmのシャンゼリゼ周回コース。1周目のフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)のアタックを合図に闘いのゴングが鳴る。
2周目でベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)が抜け出し、これに総合敢闘賞のジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)やラルスイティング・バク(デンマーク、HTC・ハイロード)ら5名が合流。この6名がメイン集団にハイスピードバトルを挑んだ。
3周目に設定されたスプリントポイントでは、マイヨヴェールを着るカヴェンディッシュが集団先頭通過を果たし、9ポイント獲得でマイヨヴェール初獲得への執念を見せる。しかしHTC・ハイロードは先頭グループにバクを送り込んでいたため集団牽引には参加しない。
先頭6名のリードは最大45秒まで広がったが、さすがにスプリンターチームは総力を上げてこれを封じ込めにかかる。ガーミン・サーヴェロやオメガファーマ・ロット、ランプレ・ISD、クイックステップが牽引するメイン集団は、最終周回に差し掛かる残り6kmの時点でタイム差を13秒に。
射程距離に捉えられた先頭グループからは、ローテーションに加わらずに力を貯めていたバクがアタック。バクはラスト3kmで吸収されたが、HTC・ハイロードは最後までライバルチームに集団牽引を強いることに成功。そしてラスト1kmでHTC・ハイロードが先頭に。
そこからはHTC・ハイロードの独壇場。主導権を握ったHTCトレインは、アイゼル、ゴス、レンショー、カヴェンディッシュの順でゴールに向かう。最終コーナーを抜け、レンショーに発射されたカヴェンディッシュが他を寄せ付けずに勝利した。
カヴェンディッシュは3年連続シャンゼリゼステージ制覇。しかし過去2年との違いはマイヨヴェールを着ているということ。ステージ5勝目を経て初めて手にしたマイヨヴェールの胸元を両手でつかみ、天を仰いでゴールした。
「ようやくマイヨヴェールを手に入れた!かなり手こずったよ」と、ポイント賞初受賞のカヴェンディッシュ。「最後のフィニッシュラインまで(ポイントを狙って)ずっと闘い続けたので疲労困憊だ。でもその努力がこうして報われた。今年もファンタスティックな8名のチームメイトにずっと助けられた。ここ2年間惜しいところで逃してきたマイヨヴェールがようやく回ってきた。本当に嬉しいよ。信じられない気分だ。ツールを最高の形で締めくくることができて、ものすごくエモーショナルな一日になった」。
26歳のカヴェンディッシュはこれがステージ通算19勝目。チームTTでの勝利を含めると20勝目で、これは歴代6位の勝利数。2008年4勝、2009年6勝、2010年5勝、そして2011年5勝。エディ・メルクスがもつ歴代最高34勝の記録が見えてきた。
両手を挙げたカヴェンディッシュの後方、およそ集団の中程でエヴァンスはゴールラインを切った。ツール通算16回出場(そのうち9回が総合優勝チーム)のジョージ・ヒンカピー(アメリカ)を始め、勝利に貢献したチームメイトと喜びを分かち合うエヴァンス。凱旋門をバックにした表彰台で、マイヨジョーヌを受け取った。
オーストラリア国旗をまとい、シュレク兄弟を脇に抱え、オーストラリアの女性歌手ティナ・アリーナが高らかに歌う1オーストラリア国歌に聴き入るエヴァンス。同国出身者として初めてツールの頂点に立った喜びを噛み締める。「ツールに出場している選手の究極の夢は、シャンゼリゼの表彰台の真ん中に立って国歌を聴くこと。この勝利を全てのオーストラリア人に捧げたい。国旗をなびかせてシャンゼリゼを歩くのは最高の幸せだ」。
第98代チャンピオンに輝いたエヴァンスは、来年またツールに戻ってくる。そしてシュレク兄弟と再びバトルを繰り広げる。シュレク兄弟はともにエヴァンスの勝利を祝福。リベンジを誓った。「カデルがベストだった。我々は戻ってくる。マイヨジョーヌへの挑戦は終わらない(フランク)」「カデルはずっとマイヨジョーヌを追い求めていた。勝利に値するよ。自分も全力で闘ったけど、彼のほうが強かった。また戻ってくる(アンディ)」。
コメントはレース公式サイト、ならびにHTC・ハイロード公式サイトより。
ツール・ド・フランス2011第21ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) 2h27'02"
2位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
5位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)
6位 ダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
7位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 トーマス・ヴァイクス(リトアニア、アスタナ)
9位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)
10位 ジミー・アングルヴァン(フランス、ソール・ソジャサン)
個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) 86h12'22"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +1'34"
3位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +2'30"
4位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) +3'20"
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) +3'57"
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +4'55"
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) +6'05"
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +7'23"
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) +8'15"
10位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、オメガファーマ・ロット) +10'11"
ポイント賞 マイヨ・ヴェール
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) 334pts
2位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター) 272pts
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 236pts
山岳賞 マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ
1位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) 108pts
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) 98pts
3位 イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 74pts
新人賞 マイヨ・ブラン
1位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) 86h23'05"
2位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス) +46"
3位 ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン) +7'53"
チーム総合成績
1位 ガーミン・サーヴェロ 258h18'49"
2位 レオパード・トレック +11'04"
3位 アージェードゥーゼル +11'20"
総合敢闘賞
ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)
text:Kei Tsuji
photo:Makoto Ayano, Cor Vos
ツール・ド・フランスを締めくくるのは毎年恒例、花の都パリの目抜き通り・シャンゼリゼ通りを舞台にしたゴールスプリントだ。3週間を闘い抜いた167名の選手たちを、気温24度、快晴のパリが迎え入れた。
スタート前には、4賞ジャージとノルウェー出身選手2名(フースホフトとボアッソン)が先頭に並び、ノルウェー連続テロ事件の犠牲者に捧げる1分間の黙祷。まったりとパリ郊外のクレテイユをスタートした一行は、まったりとしたペースで95kmのコースに繰り出した。
走りながらシャンパンで乾杯するマイヨジョーヌ。そして互いの健闘を讃え合う選手たち。シャンゼリゼ周回コースが近づくと、マイヨジョーヌ擁するBMCレーシングチームがメイン集団を牽引。赤と黒のBMCボーイズが、メンバー9名全員でマイヨジョーヌをシャンゼリゼにエスコートした。
合計8周する6.5kmのシャンゼリゼ周回コース。1周目のフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)のアタックを合図に闘いのゴングが鳴る。
2周目でベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)が抜け出し、これに総合敢闘賞のジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)やラルスイティング・バク(デンマーク、HTC・ハイロード)ら5名が合流。この6名がメイン集団にハイスピードバトルを挑んだ。
3周目に設定されたスプリントポイントでは、マイヨヴェールを着るカヴェンディッシュが集団先頭通過を果たし、9ポイント獲得でマイヨヴェール初獲得への執念を見せる。しかしHTC・ハイロードは先頭グループにバクを送り込んでいたため集団牽引には参加しない。
先頭6名のリードは最大45秒まで広がったが、さすがにスプリンターチームは総力を上げてこれを封じ込めにかかる。ガーミン・サーヴェロやオメガファーマ・ロット、ランプレ・ISD、クイックステップが牽引するメイン集団は、最終周回に差し掛かる残り6kmの時点でタイム差を13秒に。
射程距離に捉えられた先頭グループからは、ローテーションに加わらずに力を貯めていたバクがアタック。バクはラスト3kmで吸収されたが、HTC・ハイロードは最後までライバルチームに集団牽引を強いることに成功。そしてラスト1kmでHTC・ハイロードが先頭に。
そこからはHTC・ハイロードの独壇場。主導権を握ったHTCトレインは、アイゼル、ゴス、レンショー、カヴェンディッシュの順でゴールに向かう。最終コーナーを抜け、レンショーに発射されたカヴェンディッシュが他を寄せ付けずに勝利した。
カヴェンディッシュは3年連続シャンゼリゼステージ制覇。しかし過去2年との違いはマイヨヴェールを着ているということ。ステージ5勝目を経て初めて手にしたマイヨヴェールの胸元を両手でつかみ、天を仰いでゴールした。
「ようやくマイヨヴェールを手に入れた!かなり手こずったよ」と、ポイント賞初受賞のカヴェンディッシュ。「最後のフィニッシュラインまで(ポイントを狙って)ずっと闘い続けたので疲労困憊だ。でもその努力がこうして報われた。今年もファンタスティックな8名のチームメイトにずっと助けられた。ここ2年間惜しいところで逃してきたマイヨヴェールがようやく回ってきた。本当に嬉しいよ。信じられない気分だ。ツールを最高の形で締めくくることができて、ものすごくエモーショナルな一日になった」。
26歳のカヴェンディッシュはこれがステージ通算19勝目。チームTTでの勝利を含めると20勝目で、これは歴代6位の勝利数。2008年4勝、2009年6勝、2010年5勝、そして2011年5勝。エディ・メルクスがもつ歴代最高34勝の記録が見えてきた。
両手を挙げたカヴェンディッシュの後方、およそ集団の中程でエヴァンスはゴールラインを切った。ツール通算16回出場(そのうち9回が総合優勝チーム)のジョージ・ヒンカピー(アメリカ)を始め、勝利に貢献したチームメイトと喜びを分かち合うエヴァンス。凱旋門をバックにした表彰台で、マイヨジョーヌを受け取った。
オーストラリア国旗をまとい、シュレク兄弟を脇に抱え、オーストラリアの女性歌手ティナ・アリーナが高らかに歌う1オーストラリア国歌に聴き入るエヴァンス。同国出身者として初めてツールの頂点に立った喜びを噛み締める。「ツールに出場している選手の究極の夢は、シャンゼリゼの表彰台の真ん中に立って国歌を聴くこと。この勝利を全てのオーストラリア人に捧げたい。国旗をなびかせてシャンゼリゼを歩くのは最高の幸せだ」。
第98代チャンピオンに輝いたエヴァンスは、来年またツールに戻ってくる。そしてシュレク兄弟と再びバトルを繰り広げる。シュレク兄弟はともにエヴァンスの勝利を祝福。リベンジを誓った。「カデルがベストだった。我々は戻ってくる。マイヨジョーヌへの挑戦は終わらない(フランク)」「カデルはずっとマイヨジョーヌを追い求めていた。勝利に値するよ。自分も全力で闘ったけど、彼のほうが強かった。また戻ってくる(アンディ)」。
コメントはレース公式サイト、ならびにHTC・ハイロード公式サイトより。
ツール・ド・フランス2011第21ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) 2h27'02"
2位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
5位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)
6位 ダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
7位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 トーマス・ヴァイクス(リトアニア、アスタナ)
9位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)
10位 ジミー・アングルヴァン(フランス、ソール・ソジャサン)
個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) 86h12'22"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +1'34"
3位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +2'30"
4位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) +3'20"
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) +3'57"
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +4'55"
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) +6'05"
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +7'23"
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) +8'15"
10位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、オメガファーマ・ロット) +10'11"
ポイント賞 マイヨ・ヴェール
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) 334pts
2位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター) 272pts
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 236pts
山岳賞 マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ
1位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) 108pts
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) 98pts
3位 イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 74pts
新人賞 マイヨ・ブラン
1位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) 86h23'05"
2位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス) +46"
3位 ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン) +7'53"
チーム総合成績
1位 ガーミン・サーヴェロ 258h18'49"
2位 レオパード・トレック +11'04"
3位 アージェードゥーゼル +11'20"
総合敢闘賞
ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)
text:Kei Tsuji
photo:Makoto Ayano, Cor Vos
フォトギャラリー
Amazon.co.jp