けいはんなのメインイベントC1は「小嶋ファミリー」4人対岡崎陽介(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)の勝負に。絶体絶命のピンチにもかかわらず、なんとゴールを先に通過したのは岡崎だった。

C2 けいはんなプラザ前を周回C2 けいはんなプラザ前を周回 photo:Hideaki.TAKAGIC1 スタート前C1 スタート前 photo:Hideaki.TAKAGIC1 10周目へ、逃げる5人C1 10周目へ、逃げる5人 photo:Hideaki.TAKAGIC1 11周目へ 追走する辻善光(宇都宮ブリッツェン)らC1 11周目へ 追走する辻善光(宇都宮ブリッツェン)ら photo:Hideaki.TAKAGIC1 ゴール 岡崎陽介(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)が優勝C1 ゴール 岡崎陽介(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGIC4W  逃げていても笑顔ですC4W 逃げていても笑顔です photo:Kenji.TAKADA小学1,2年生 ゴールまで全力! 小学1,2年生 ゴールまで全力! photo:Kenji.TAKADAU-Spiritウエパー杯けいはんなサイクルレースは、京都府京田辺市の学研都市周辺公道を使う、京都府車連が行う人気のレースだ。
今年は7月18日(月)に行われ、900人のエントリーを数えて朝の7時ごろには駐車場が一杯になる。毎年梅雨明けごろで夏真っ盛りがけいはんなのイメージだが、今年は小雨が降って気温も高くなくすごしやすいほど。

大会名が示すように、大阪の人気ショップであるウエムラパーツが特別協賛で、さらに京都新聞社や岩井商会なども実行委員や協力団体に名を連ねる。レースに出るだけでなく、ブースめぐりも楽しみの一つだ。

クラス分けは、登録上級者のC1から小学1、2年生まで15に細分化されていて、自分にあったカテゴリーで安全に楽しく走ることができる。
ここでは登録上級者のC1のレースをレポートしよう。

コースは丘陵地帯の長方形で、長辺が緩い上りと下り。1周の標高差は26m、距離2.36kmで、C1は12周する28.32kmだ。
U23と同時出走で、参加資格はJCF登録者であることだ。いっぽうでほかのクラスは登録・未登録を問わない。20年以上続く京都車連のこの方式は、自転車競技をするにはJCF登録をすることが前提という理にかなった考えだ。登録することでかえって出られるレースが少なくなることは無いのだ。

有力選手はスプリンターの辻善光(宇都宮ブリッツェン)、澤田賢匠(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)、小嶋洋介(岩井商会GANWELL RACING)らだ。ただし辻は単騎参戦、シエルヴォ奈良と岩井商会はチームで参加。さらにクラブシルベスト、マサヒコミフネ、タクリーノなど関西拠点のクラブチームが揃う。

昨年は岩井商会が大塚航、秋山尚徳、小嶋洋介の3人でワン・ツー・スリーを達成。そして彼らや辻も前日の実業団石川ロードからの連戦だ。このなかでは大塚が石川で11位に入っている。

序盤からこれら選手が積極的に前へ出る。辻と澤田は誰もが一目置く、スプリント力、そして独走力を持っており絶えずマークされる。
ちょうど中盤にさしかかるときに小嶋洋介(岩井商会GANWELL RACING)、奥村将徳(京都大学)、岡崎陽介(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)の3人が抜け出す。さらに秋山尚徳(岩井商会GANWELL RACING)、大塚航(Team Eurasia-Fondriest Bikes)の2人が合流して先頭は5人に。

このなかで小嶋、秋山は同じチーム、大塚は昨年まで同じチーム、さらに奥村は小嶋の後輩で、「小嶋ファミリー」であり同じ意思を持つ4人と見ていい。対するはシエルヴォ奈良の岡崎ただ一人。小嶋らが圧倒的有利にレースを進める。

終盤までは先頭は逃げる意思で統一されて、メイン集団との差を広げる。そして最終周回、バック側の上りで秋山と大塚の2人が先行、岡崎が遅れる。しかしホーム側の下り区間に入って岡崎が差を詰めて、300m前では5人が一団に。小嶋がロングスパートで先頭でゴールかと思ったとき、右側から岡崎が抜け出して先着。なんと4対1の戦いに勝ったのだ。

優勝した岡崎はアタックや独走が得意な選手。トラクターRCから今年にシエルヴォ奈良へ移籍した。通常ならば4対1は圧倒的不利だが、レース中の辻貴光監督は岡崎を信じていた。「ここのところ岡崎の調子は上がっています。もちろん逃げて勝つためにその位置で走っています。必ずやってくれますよ」と自信を持って語っていたのだ。監督の期待に見事応えた岡崎は語る。
「4対1の絶体絶命だったけれど、自分でもよく勝ったと思います。ラスト300mからのロングスプリントです。チームメイトが序盤から動いたし、マークしていたライバル選手が集団に埋もれているときにアタックをかけたのが決まりました。逃げは様子を見ることなく、逃げ切ることを目標で走りました。このチームに誘ってもらったのもそれが理由です。勝たないといけないプレッシャーはありました。勝てて本当に嬉しいです」
シエルヴォ奈良は大会協力団体のひとつで、選手さえも出走時間以外は立哨などをこなしての結果だ。地元チームとして、責任と結果の両方をやり遂げるのは、地域チームのひとつの成功例だろう。

いっぽうで絶対優位に立ちながらも2位に甘んじた小嶋は語る。
「もちろん自分でも4人の誰かが勝つと思っていました。最終周回の上りで岡崎さんが離れて、追いつくために脚を使っているはずだったので、4人で勝ったと思ってしまった。詰めが甘かったです。なかなか去年のようにはうまくいかないですね」


結果
C1
1位 岡崎陽介(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)41分44秒57
2位 小嶋洋介(岩井商会GANWELL RACING)+0秒12
3位 大塚航(Team Eurasia-Fondriest Bikes)+0秒26
4位 秋山尚徳(岩井商会GANWELL RACING)+0秒57
5位 辻善光(宇都宮ブリッツェン)+40秒91 
6位 中田真琴(GRUPPO ACQUA TAMA)+40秒95

U23
1位 奥村将徳(京都大学)41分45秒30
2位 鬼頭拓也(クラブシルベスト)+40秒36
3位 北中悠貴 +40秒94

photo:Kenji.TAKADA Hideaki.TAKAGI
text:Hideaki.TAKAGI