新城幸也が強烈にペースを上げた集団から、2級山岳レ・ジェでチームメイトのクリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー)が飛び立った。後方ではトマ・ヴォクレール(フランス)がライバルの動きをチェック。ユーロップカーが一丸となって山岳初日の頂上ゴールを制した。

マッカートニーの逃げを容認したメイン集団が山岳地帯を進むマッカートニーの逃げを容認したメイン集団が山岳地帯を進む photo:Cor Vosクリテリウム・ドゥ・ドーフィネの総合争いは、最終日まで3つ連続する山岳ステージで決する。2級山岳レ・ジェにゴールする第5ステージはその初戦。登坂距離10.7km・平均勾配4.7%という登りの先にゴールが待つ。

最初の2時間の平均スピードが48.1km/hをマークする高速アタック合戦の末、ようやく集団から先行を許されたのはジェイソン・マッカートニー(アメリカ、レディオシャック)ただ一人。総合で23分13秒遅れていたマッカートニーは、単独で12分30秒のリードを築いた。

マイヨジョーヌを着て走るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌを着て走るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vosメイン集団を率いたのは、ホアキン・ロドリゲス(スペイン)のステージ優勝を切に願うカチューシャ。レース後半に入るとガーミン・サーヴェロも集団牽引に加わり始め、やがてユーロップカーも集団先頭に。

ジャージの袖口に元全日本チャンピオンの証である日の丸を配した新城幸也は、迫力ある走りで献身的に集団を牽引。マッカートニーのリードを削り取り、最後の2級山岳レ・ジェを前にチームメイトにバトンを繋いだ。

105kmに渡って逃げ続けたジェイソン・マッカートニー(アメリカ、レディオシャック)105kmに渡って逃げ続けたジェイソン・マッカートニー(アメリカ、レディオシャック) photo:Cor Vos勾配の緩い登りではアタックが繰り返され、集団から飛び出したトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)らが先頭のマッカートニーをラスト9km地点でキャッチ。しかしマルティンのスピード走行は長続きせず、ラスト7kmでオリバー・ザウグ(スイス、レオパード・トレック)に先頭を譲る。

一時的にメイン集団を20秒ほど引き離したザウグだったが、ラスト3km地点でクリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー)を含む後続グループに吸収。そしてそのままケルヌが独走に持ち込んだ。

カチューシャとチームスカイがコントロールするメイン集団カチューシャとチームスカイがコントロールするメイン集団 photo:Cor Vosリゴベルト・ウラン(コロンビア)、ジェレイント・トーマス(イギリス)、そしてエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー)を揃えるチームスカイが徹底的にコントロールしたメイン集団からは、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)やユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、そしてロドリゲスが断続的にアタック。

しかしウィギンズは千切れない。それらのアタックには、ケルヌのチームメイトであるヴォクレールがすぐさまチェックに入る。

山岳賞ジャージのレオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)がアタック山岳賞ジャージのレオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)がアタック photo:Cor Vosバイクを左右に揺らしながら懸命にペースを保つケルヌは10秒リードでラスト1km。後方ではクリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク・サンガード)が追走を試みたが、その後ろには常にヴォクレールの姿が。

闘志溢れる走りでゴールまで突き進んだケルヌが、最終ストレートに入ってようやくその脚を止める。後続を7秒離しての独走勝利。充実感ある表情を浮かべながら、両手を広げてゴールした。

2級山岳レ・ジェでアタックするクリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー)2級山岳レ・ジェでアタックするクリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー) photo:Cor Vos今シーズン初勝利を飾ったケルヌは、チームの勝利であることを強調する。「逃げている間、ジャンルネ(ベルノドー監督)からずっと檄が飛んでいたよ。ユーロップカーチーム全体の走りにとても満足している。チームとして一つの仕事をこなし上げた。チーム内の雰囲気もファンタスティックなんだ。仮に掴まったとしても、後続にはスプリント力のあるトマ(ヴォクレール)が残っていると信じて、ラスト3kmでアタックした。全力で踏んだよ」。

現在30歳のケルヌはブイグテレコム、クレディアグリコル、コフィディスを経て、今年古巣であるジャンルネ・ベルノドー監督のチームに戻った。プロ入り前のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュU23レースで優勝しているが、プロ転向後の9年間は大きな勝利から見放されていた。

2級山岳レ・ジェに先頭でゴールするクリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー)2級山岳レ・ジェに先頭でゴールするクリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー) photo:Cor Vos「2年前のツール・ド・フランスでも、アルカリスのステージで惜しいところまで行った。ドーフィネのようなビッグレースの山岳ステージで勝つことができたなんて、本当にファンタスティックだ。今シーズンは早い時期に膝を痛めてしまったけど、今はもうベストなレベルまで回復している。ツールまで残り3週間のタイミングで、キャリア最高の勝利を手にすることができて良かったよ」。

集団牽引に力を使い、ケルヌの勝利をお膳立てしたユキヤは11分56秒遅れでゴールしている。

ライバルたちの動きを抑え込み、ステージ6位で山岳初日を終えたウィギンズは、総合リードを1秒も失うことなくマイヨジョーヌを守った。「序盤からハイスピードな展開だったが、チームメイトの素晴らしい走りが余計なアタックを抑え込んでいた。特にエドヴァルド(ボアッソン)とG(トーマス)の走りは素晴らしかったよ。最後の登りでも、彼らは平然と仕事をこなしてくれた。一度も不安になるようなことはなかったよ。とにかくタフな3日間の1日目が終わった。残りの2日間も作戦はシンプル。全力で走って、マイヨジョーヌを守るだけだ」。ウィギンズは毅然とした態度でドーフィネ総合優勝に向けての階段を登っている。

選手コメントはレース公式サイトより。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2011第5ステージ結果
1位 クリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー)         5h05'03"
2位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク・サンガード) +07"
3位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)           +09"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
6位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)
7位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)
8位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)
9位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
10位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック)
129位 新城幸也(日本、ユーロップカー)               +11'56"

個人総合成績
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)       18h02'30"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)    +1'11"
3位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)     +1'21"
4位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)      +1'56"
5位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)              +2'22"
6位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +2'28"
7位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)      +2'45"
8位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック)          +2'46"
9位 ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン)      +2'52"
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)  +2'52"
99位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                +21'25"

ポイント賞
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)

山岳賞
レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)

新人賞
ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)

チーム総合成績
アージェードゥーゼル

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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