2011/03/26(土) - 23:36
遂に2011年の「北のクラシック」が動き出す。初戦は今年で開催73回目を迎えるヘント〜ウェベルヘム(UCIワールドツアー)。名物ケンメルベルグの石畳坂がスプリンターとアタッカーにチャンスを与えるこの伝統レースに、今年は別府史之(レディオシャック)と新城幸也(ユーロップカー)が出場する。
平坦基調、だがケンメルベルグは要注意
昨年開催日が水曜日からロンド・ファン・フラーンデレン1週間前の日曜日に移されたヘント〜ウェベルヘム。ロンドやパリ〜ルーベと比べると歴史は浅い。浅いと言っても1934年にスタートした歴史あるクラシックだ。
レース名の通り、コースは概ねヘントからウェベルヘムまで。ヘントの南西15kmに位置するデインセをスタートし、一路北海沿いのデパンヌに向かって西進。そこから内陸部へと進路を変え、ウェベルヘムにゴールする。
全長204kmのコースの大部分は平坦で、数あるクラシックレースの中ではピュアスプリンター向きだ。かと言って単純に真っ平らなコースでスプリントに持ち込まれるわけではない。今年は短い急坂が14カ所登場。レース後半にはモンテベルグやケンメルベルグなど、6つの急坂を含む周回コースが設定されている。
しかも、勾配のキツいケンメルベルグの大部分は石畳で覆われている。難所ケンメルベルグ通過後、毎年落車を誘発するリスキーな下りを経てモンテベルグにアタック。あとは平坦な35kmをゴールまでまっしぐらだ。
急勾配の上りやテクニカルな下りで飛び出した選手が逃げ切るか、それとも戦線に復帰したスプリンターたちによるスプリント勝負に持ち込まれるのか。北海から吹き付ける強風が集団を破壊し、思わぬ展開をもたらす可能性もある。移り気なベルギーの天候もレース展開に影響を及ぼすだろう。
出場するのは、全プロチームと7つのプロコンチネンタルチーム。今年はランドバウクレジット、トップスポート・フラーンデレン、ベランダス・ヴィレムス、コフィディス、FDJ、スキル・シマノ、ユーロップカーがワイルドカード枠での出場を果たす。
3名の優勝候補を抱えるHTCに注目
スプリンターにチャンスがあるだけに、どのチームもスプリンターを中心に据えた布陣で挑む。中でも、チームとして現在2連勝中のHTC・ハイロードは屈強だ。前身のTモバイル時代を含めると、ここ4年間で3回勝っている。
まずは昨年大会の覇者ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)。普段エーススプリンターの牽引役を務めるアイゼルは、昨年の大会で6名によるスプリントを制し、クラシック初制覇を果たした。今年も展開によってはチャンスが回ってくるだろう。しかしチームにはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)とマシュー・ゴス(オーストラリア)という2人のエースがいる。
カヴェンディッシュは、言わずと知れた世界最速スプリンター。ツール・ド・フランス区間15勝男は、2009年のミラノ〜サンレモに次ぐクラシックタイトルを狙う。ヘント〜ウェベルヘムの過去最高位は2008年大会の17位だ。
しかし現在HTC・ハイロードの中ではミラノ〜サンレモを制したゴスの存在が際立っている。ゴスはサクソバンク時代の2009年ヘント〜ウェベルヘムで3位に入り、一躍その名を広めた選手。現在UCIワールドツアーリーダーのゴスはクラシック連勝を目指す。
全力でヘント〜ウェベルヘムに挑むHTC・ハイロードと比べると、他チームは残る2戦(ロンドとパリ〜ルーベ)に向けて戦力を貯めているような印象。ガーミン・サーヴェロはタイラー・ファラー(アメリカ)にエーススプリンターの座を託す。現在ファラーはヘント在住であり、ヘント〜ウェベルヘムはまさに地元レース。2006年大会覇者のトル・フースホフト(ノルウェー)は欠場する(後日フースホフトの出場が決定)。
2008年大会でスペイン人選手として始めて優勝したオスカル・フレイレ(ラボバンク)は体調不良により欠場。ラボバンクはマイケル・マシューズ(オーストラリア)とラース・ボーム(オランダ)の若手2名で勝負を挑むだろう。特にボームは「北のクラシック」でダークホースに数えられる選手だ。
2004年大会覇者トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)はシルヴァン・シャヴァネル(フランス)とのタッグで2勝目を目指す。昨年のロンドとパリ〜ルーベでカンチェラーラに惨敗しているだけに、このヘント〜ウェベルヘムに完璧に照準を合わせている可能性も。
近年「北のクラシック」で猛威を振るっているファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)は、連覇が懸かったロンドとパリ〜ルーベを見据えて欠場する。レオパード・トレックはダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)のスプリント狙いだ。
2009年大会で優勝してブレイクしたエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)も怪我の悪化により欠場。チームスカイはフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)が果敢なアタックで突破口を開くはず。
2人の優勝経験者を擁するのがBMCレーシングチーム。2001年大会覇者のジョージ・ヒンカピー(アメリカ)と2007年大会覇者マークス・ブルグハート(ドイツ)と言ったクラシックハンターがスタートラインに並ぶ。更にアレッサンドロ・バッラン(イタリア)やフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)、マヌエル・クインツィアート(イタリア)がバックアップする充実のラインナップだ。
ベルギーチームとしてオメガファーマ・ロットも要チェック。アタックが連発するタフな展開にめっぽう強いフィリップ・ジルベール(ベルギー)と、昨シーズン最多勝のエーススプリンター・アンドレ・グライペル(ドイツ)を擁している。他にもバーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク・サンガード)やロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)らがスプリント勝負に絡んでくるはずだ。
また、日本からは別府史之(レディオシャック)と新城幸也(ユーロップカー)が出場。長年ヨーロッパを舞台に闘ってきた2人が、日の丸を背負って「北のクラシック」に挑戦する。
text:Kei Tsuji
平坦基調、だがケンメルベルグは要注意
昨年開催日が水曜日からロンド・ファン・フラーンデレン1週間前の日曜日に移されたヘント〜ウェベルヘム。ロンドやパリ〜ルーベと比べると歴史は浅い。浅いと言っても1934年にスタートした歴史あるクラシックだ。
レース名の通り、コースは概ねヘントからウェベルヘムまで。ヘントの南西15kmに位置するデインセをスタートし、一路北海沿いのデパンヌに向かって西進。そこから内陸部へと進路を変え、ウェベルヘムにゴールする。
全長204kmのコースの大部分は平坦で、数あるクラシックレースの中ではピュアスプリンター向きだ。かと言って単純に真っ平らなコースでスプリントに持ち込まれるわけではない。今年は短い急坂が14カ所登場。レース後半にはモンテベルグやケンメルベルグなど、6つの急坂を含む周回コースが設定されている。
しかも、勾配のキツいケンメルベルグの大部分は石畳で覆われている。難所ケンメルベルグ通過後、毎年落車を誘発するリスキーな下りを経てモンテベルグにアタック。あとは平坦な35kmをゴールまでまっしぐらだ。
急勾配の上りやテクニカルな下りで飛び出した選手が逃げ切るか、それとも戦線に復帰したスプリンターたちによるスプリント勝負に持ち込まれるのか。北海から吹き付ける強風が集団を破壊し、思わぬ展開をもたらす可能性もある。移り気なベルギーの天候もレース展開に影響を及ぼすだろう。
出場するのは、全プロチームと7つのプロコンチネンタルチーム。今年はランドバウクレジット、トップスポート・フラーンデレン、ベランダス・ヴィレムス、コフィディス、FDJ、スキル・シマノ、ユーロップカーがワイルドカード枠での出場を果たす。
3名の優勝候補を抱えるHTCに注目
スプリンターにチャンスがあるだけに、どのチームもスプリンターを中心に据えた布陣で挑む。中でも、チームとして現在2連勝中のHTC・ハイロードは屈強だ。前身のTモバイル時代を含めると、ここ4年間で3回勝っている。
まずは昨年大会の覇者ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)。普段エーススプリンターの牽引役を務めるアイゼルは、昨年の大会で6名によるスプリントを制し、クラシック初制覇を果たした。今年も展開によってはチャンスが回ってくるだろう。しかしチームにはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)とマシュー・ゴス(オーストラリア)という2人のエースがいる。
カヴェンディッシュは、言わずと知れた世界最速スプリンター。ツール・ド・フランス区間15勝男は、2009年のミラノ〜サンレモに次ぐクラシックタイトルを狙う。ヘント〜ウェベルヘムの過去最高位は2008年大会の17位だ。
しかし現在HTC・ハイロードの中ではミラノ〜サンレモを制したゴスの存在が際立っている。ゴスはサクソバンク時代の2009年ヘント〜ウェベルヘムで3位に入り、一躍その名を広めた選手。現在UCIワールドツアーリーダーのゴスはクラシック連勝を目指す。
全力でヘント〜ウェベルヘムに挑むHTC・ハイロードと比べると、他チームは残る2戦(ロンドとパリ〜ルーベ)に向けて戦力を貯めているような印象。ガーミン・サーヴェロはタイラー・ファラー(アメリカ)にエーススプリンターの座を託す。現在ファラーはヘント在住であり、ヘント〜ウェベルヘムはまさに地元レース。2006年大会覇者のトル・フースホフト(ノルウェー)は欠場する(後日フースホフトの出場が決定)。
2008年大会でスペイン人選手として始めて優勝したオスカル・フレイレ(ラボバンク)は体調不良により欠場。ラボバンクはマイケル・マシューズ(オーストラリア)とラース・ボーム(オランダ)の若手2名で勝負を挑むだろう。特にボームは「北のクラシック」でダークホースに数えられる選手だ。
2004年大会覇者トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)はシルヴァン・シャヴァネル(フランス)とのタッグで2勝目を目指す。昨年のロンドとパリ〜ルーベでカンチェラーラに惨敗しているだけに、このヘント〜ウェベルヘムに完璧に照準を合わせている可能性も。
近年「北のクラシック」で猛威を振るっているファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)は、連覇が懸かったロンドとパリ〜ルーベを見据えて欠場する。レオパード・トレックはダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)のスプリント狙いだ。
2009年大会で優勝してブレイクしたエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)も怪我の悪化により欠場。チームスカイはフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)が果敢なアタックで突破口を開くはず。
2人の優勝経験者を擁するのがBMCレーシングチーム。2001年大会覇者のジョージ・ヒンカピー(アメリカ)と2007年大会覇者マークス・ブルグハート(ドイツ)と言ったクラシックハンターがスタートラインに並ぶ。更にアレッサンドロ・バッラン(イタリア)やフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)、マヌエル・クインツィアート(イタリア)がバックアップする充実のラインナップだ。
ベルギーチームとしてオメガファーマ・ロットも要チェック。アタックが連発するタフな展開にめっぽう強いフィリップ・ジルベール(ベルギー)と、昨シーズン最多勝のエーススプリンター・アンドレ・グライペル(ドイツ)を擁している。他にもバーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク・サンガード)やロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)らがスプリント勝負に絡んでくるはずだ。
また、日本からは別府史之(レディオシャック)と新城幸也(ユーロップカー)が出場。長年ヨーロッパを舞台に闘ってきた2人が、日の丸を背負って「北のクラシック」に挑戦する。
text:Kei Tsuji
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