iRC史上最速を謳い、鮮烈なデビューを果たしたSPEED EDGEシリーズ。開発を担当したスタッフの言葉で綴った前編に続き、プロライダーの目線からフィードバックを行ったチームユーラシアーiRCタイヤの吉岡直哉選手へのインタビューをお届けしよう。

吉岡直哉(チームユーラシアーiRCタイヤ) photo:Michinari Takagi
吉岡直哉(チームユーラシアーiRCタイヤ)
1991年生まれ。京都府出身。高校2年から本格的に自転車競技を開始し、2012年に京都産業大学から全日本学生選手権クリテリウムで優勝を飾る。2014年にチームユーラシアに所属しベルギーを拠点に活動。2015年には那須ブラ―ゼンへ移籍し、2016年ツール・ド・北海道総合6位、2017年Jプロツアー宇都宮ロードレース優勝。2018年~2022年にチーム右京、2023~2024年にさいたま佐渡サンブレイブを経て、2025年 チームユーラシアーiRCタイヤへ。
■主な経歴
2012年 全日本学生選手権クリテリウム 優勝
2016年 JBCF 群馬CSCロードレース Day 2 2位
ツール・ド・北海道総合6位
2017年 Jプロツアー 宇都宮ロードレース 優勝
2019年 ツアー・オブ・タイランド 総合6位
2024年 チャレンジサイクルロードレース 優勝
ー選手から見てSPEED EDGEの魅力とはどこにありますか?
吉岡:とにかく速い。シンプルですけど、わかりやすい魅力ですよね。このタイヤを使うと、まるで路面の凹凸が無くなったかのように、スーッと滑らかにどこまでも転がっていってくれるように感じます。
iRCの謳い文句通り、ヒルクライムやタイムトライアルにはもってこい。でも、ここまで走りが軽くなっているとロードレースでも使いたくなってしまいます。
実は昨日までFORMULA PRO RBCCを使っていて、昨夜SPEED EDGEに履き替えたんですが、そのことをすっかり忘れていて。今朝走り出して「なんか今日、調子いいな?」と思ったあとに、そういえばSPEED EDGEを履いてたんだった、と(笑)
それくらい、明らかに走りが軽いタイヤです。

SPEED EDGEシリーズにはテストの段階から関わってきたという吉岡。プロトンの中でも同モデルを最も知り尽くす一人だ photo:Michinari Takagi
ーiRC史上最速、とのキャッチコピーですが、実際にこれまでのiRCタイヤと比較してどの程度アドバンテージがありますか
吉岡:よくテストに使う2km弱の登り坂があるのですが、RBCCでの最速タイムに対して5~10秒ほど速くなりますね。数字にするとたったそれだけ?と感じるかもしれないですが、距離にすれば30m以上先行できる計算になります。登りの距離が長くなれば長くなるほどその差は大きくなります。20kmの本格的な峠なら1分は変わってくるでしょう。

おんたけヒルクライムにて4位に入った吉岡直哉 photo:Ryouhei Fujita
今年のおんたけヒルクライムでもSPEED EDGEを使用して、好成績を残せました。実は前輪が直前にパンクしてしてしまってリアにしか履けなかったのですが、それでも十分効果を感じられました。両輪履けていれば、更にタイムを縮められたかもしれません。
また、転がりが軽いというのは重量が軽いのと違って、速度域を問わずにメリットが感じられるのも大きいです。ヒルクライムを例に挙げましたが、より高速なタイムトライアルなどのレースでも確実なアドバンテージをもたらしてくれるでしょう。
ー吉岡選手自身、ヒルクライムだけでなく、広島クリテリウムでもSPEED EDGEを使用されていました。
吉岡:予選でFORMULA PRO SPEED EDGEを使ってみましたが、問題無く走れましたね。通常モデルに比べると気を遣うところがあるのは事実ですが、転がりの軽さはそれ以上にメリットとなるシーンも多いです。
長距離のロードレースであれば、パンクのリスクも増しますから耐パンクベルトを装備した通常モデルを使いたい。ですが、今回のクリテリウムのような短時間、短距離のレースならば「速さ」に賭けるのも悪くないですね。

180度ターンの続く広島クリテリウムも、吉岡はSPEED EDGEを装着し問題なくこなす photo:Satoru Kato
ープロの視点として転がりの軽さは、どれほど重要な要素なのでしょうか?
吉岡:それはもちろん軽ければ軽いほど嬉しいですよ(笑)グリップと転がりのどちらを取るかと聞かれれば、個人的には転がりの軽さを重要視しています。グリップ力はコーナーの進入速度を抑えればどうにかなりますが、転がりの重いタイヤは走っている間中ずっと重いですから。
登りでもその差は顕著に感じられますし、なにより転がりの良いタイヤを使っているとレース後半での疲労が明らかに少なくて、脚を温存できます。ただ、ウェット路面であればグリップの高いタイヤのメリットも大きくなってきますから、そこは天秤にかけつつ、というところですね。

「クリテリウムのような短時間、短距離のレースならば「速さ」に賭けるのも悪くない」吉岡直哉(チームユーラシア-iRCタイヤ) photo:Satoru Kato
もちろんグリップだけでなく、耐久性や耐パンク性とトレードオフの側面もあります。耐パンクベルトが無いことや、トレッドの薄さもあり、通常モデルと比べるとパンクや摩耗には弱いのは事実です。
ですので、路面が荒いコースや距離の長いレースであれば通常モデル、そういったリスクを織り込んでもリターンを得られるようなレースであればSPEED EDGEと、使い分けるのが良いでしょうね。
ー常用するようなタイヤではないと。
吉岡:その通り。完全にレース用のタイヤ、ここぞというシーンで投入したい秘密兵器のような存在ですね。耐久性という意味でも、美味しいところは1,000kmくらいなので、普段使いにはもったいない。

トレッドは薄く、耐久性という意味においても「決戦用」だと語る吉岡 photo:Michinari Takagi
FORMULA PROもASPITE PROも、通常モデルがあればほぼ全てのシーンをカバーできます。特にグリップや耐パンク性という面ではこれ以上なく信頼できる存在です。でも、そこまでの性能が必要じゃないシチュエーションもあります。
そんなシーンでSPEED EDGEを選べるというのは嬉しいですよ。新たな武器を手に入れたようなものですから。
ーSPEED EDGEはどういったセッティングがオススメですか
吉岡:体重が58kg程度の自分の場合、28Cの最低空気圧の4.5barで使っていました。ただ、サイドウォールがしなやかな恩恵か、思ったよりもグリップに余裕があったのでもう少しだけ空気圧を上げても気持ち良く走れそうです。
ケーシングが薄い分、空気圧の変化にも敏感に反応すると思いますので、普段より細かく調整していったほうが好みのセッティングを見つけやすいのではないでしょうか。

「細かく空気圧を調整して好みのセッティングを見つけてほしい」吉岡直哉(チームユーラシアーiRCタイヤ) photo:Michinari Takagi
また、FORMULA PRO SPEED EDGEは施工性の良さも光ります。iRCのチューブレス、チューブレスタイヤ全てに通じる特長でもありますが、ビードの上がりやすさは素晴らしい。
コンプレッサーやブースターを持っていないこともあり、正直チューブレスレディの運用には苦手意識があったのですが、このタイヤはフロアポンプで簡単にビードが上がったので驚きました。
ーFOLMURA PRO SPEED EDGEとASPITE PRO SPEED EDGEの2モデルが用意されますが、それぞれ違った特徴があるのでしょうか。
吉岡:その2本の比較は、冒頭に触れた坂でしっかりとテストしたことが有ります。登りでの走りの軽快感では、ASPITE PRO SPEED EDGEがわずかながら勝っている印象でしたね。実際、できるだけ条件を揃えて複数回タイムを計測した中で、最速タイムを出せたのはASPITE PRO SPEED EDGEでした。一方で、下りでの安定感はFOLMURA PRO SPEED EDGEが明らかに優っていました。
ですので、ヒルクライム一本勝負であればASPITE PRO SPEED EDGEに転がりの軽いラテックス、もしくは超軽量なTPUチューブを組み合わせるのが良いでしょう。一方で、よりハイスピードでコーナーも登場するタイムトライアルやクリテリウムなどであれば、より総合力に優れたFOLMURA PRO SPEED EDGEがオススメですね。

iRC FORMULA PRO SPEED EDGE photo:Makoto Ayano 
iRC ASPITE PRO SPEED EDGE photo:Makoto Ayano
ライダープロフィール

吉岡直哉(チームユーラシアーiRCタイヤ)
1991年生まれ。京都府出身。高校2年から本格的に自転車競技を開始し、2012年に京都産業大学から全日本学生選手権クリテリウムで優勝を飾る。2014年にチームユーラシアに所属しベルギーを拠点に活動。2015年には那須ブラ―ゼンへ移籍し、2016年ツール・ド・北海道総合6位、2017年Jプロツアー宇都宮ロードレース優勝。2018年~2022年にチーム右京、2023~2024年にさいたま佐渡サンブレイブを経て、2025年 チームユーラシアーiRCタイヤへ。
■主な経歴
2012年 全日本学生選手権クリテリウム 優勝
2016年 JBCF 群馬CSCロードレース Day 2 2位
ツール・ド・北海道総合6位
2017年 Jプロツアー 宇都宮ロードレース 優勝
2019年 ツアー・オブ・タイランド 総合6位
2024年 チャレンジサイクルロードレース 優勝
ー選手から見てSPEED EDGEの魅力とはどこにありますか?
吉岡:とにかく速い。シンプルですけど、わかりやすい魅力ですよね。このタイヤを使うと、まるで路面の凹凸が無くなったかのように、スーッと滑らかにどこまでも転がっていってくれるように感じます。
iRCの謳い文句通り、ヒルクライムやタイムトライアルにはもってこい。でも、ここまで走りが軽くなっているとロードレースでも使いたくなってしまいます。
実は昨日までFORMULA PRO RBCCを使っていて、昨夜SPEED EDGEに履き替えたんですが、そのことをすっかり忘れていて。今朝走り出して「なんか今日、調子いいな?」と思ったあとに、そういえばSPEED EDGEを履いてたんだった、と(笑)
それくらい、明らかに走りが軽いタイヤです。

ーiRC史上最速、とのキャッチコピーですが、実際にこれまでのiRCタイヤと比較してどの程度アドバンテージがありますか
吉岡:よくテストに使う2km弱の登り坂があるのですが、RBCCでの最速タイムに対して5~10秒ほど速くなりますね。数字にするとたったそれだけ?と感じるかもしれないですが、距離にすれば30m以上先行できる計算になります。登りの距離が長くなれば長くなるほどその差は大きくなります。20kmの本格的な峠なら1分は変わってくるでしょう。

今年のおんたけヒルクライムでもSPEED EDGEを使用して、好成績を残せました。実は前輪が直前にパンクしてしてしまってリアにしか履けなかったのですが、それでも十分効果を感じられました。両輪履けていれば、更にタイムを縮められたかもしれません。
また、転がりが軽いというのは重量が軽いのと違って、速度域を問わずにメリットが感じられるのも大きいです。ヒルクライムを例に挙げましたが、より高速なタイムトライアルなどのレースでも確実なアドバンテージをもたらしてくれるでしょう。
ー吉岡選手自身、ヒルクライムだけでなく、広島クリテリウムでもSPEED EDGEを使用されていました。
吉岡:予選でFORMULA PRO SPEED EDGEを使ってみましたが、問題無く走れましたね。通常モデルに比べると気を遣うところがあるのは事実ですが、転がりの軽さはそれ以上にメリットとなるシーンも多いです。
長距離のロードレースであれば、パンクのリスクも増しますから耐パンクベルトを装備した通常モデルを使いたい。ですが、今回のクリテリウムのような短時間、短距離のレースならば「速さ」に賭けるのも悪くないですね。

ープロの視点として転がりの軽さは、どれほど重要な要素なのでしょうか?
吉岡:それはもちろん軽ければ軽いほど嬉しいですよ(笑)グリップと転がりのどちらを取るかと聞かれれば、個人的には転がりの軽さを重要視しています。グリップ力はコーナーの進入速度を抑えればどうにかなりますが、転がりの重いタイヤは走っている間中ずっと重いですから。
登りでもその差は顕著に感じられますし、なにより転がりの良いタイヤを使っているとレース後半での疲労が明らかに少なくて、脚を温存できます。ただ、ウェット路面であればグリップの高いタイヤのメリットも大きくなってきますから、そこは天秤にかけつつ、というところですね。

もちろんグリップだけでなく、耐久性や耐パンク性とトレードオフの側面もあります。耐パンクベルトが無いことや、トレッドの薄さもあり、通常モデルと比べるとパンクや摩耗には弱いのは事実です。
ですので、路面が荒いコースや距離の長いレースであれば通常モデル、そういったリスクを織り込んでもリターンを得られるようなレースであればSPEED EDGEと、使い分けるのが良いでしょうね。
ー常用するようなタイヤではないと。
吉岡:その通り。完全にレース用のタイヤ、ここぞというシーンで投入したい秘密兵器のような存在ですね。耐久性という意味でも、美味しいところは1,000kmくらいなので、普段使いにはもったいない。

FORMULA PROもASPITE PROも、通常モデルがあればほぼ全てのシーンをカバーできます。特にグリップや耐パンク性という面ではこれ以上なく信頼できる存在です。でも、そこまでの性能が必要じゃないシチュエーションもあります。
そんなシーンでSPEED EDGEを選べるというのは嬉しいですよ。新たな武器を手に入れたようなものですから。
ーSPEED EDGEはどういったセッティングがオススメですか
吉岡:体重が58kg程度の自分の場合、28Cの最低空気圧の4.5barで使っていました。ただ、サイドウォールがしなやかな恩恵か、思ったよりもグリップに余裕があったのでもう少しだけ空気圧を上げても気持ち良く走れそうです。
ケーシングが薄い分、空気圧の変化にも敏感に反応すると思いますので、普段より細かく調整していったほうが好みのセッティングを見つけやすいのではないでしょうか。

また、FORMULA PRO SPEED EDGEは施工性の良さも光ります。iRCのチューブレス、チューブレスタイヤ全てに通じる特長でもありますが、ビードの上がりやすさは素晴らしい。
コンプレッサーやブースターを持っていないこともあり、正直チューブレスレディの運用には苦手意識があったのですが、このタイヤはフロアポンプで簡単にビードが上がったので驚きました。
ーFOLMURA PRO SPEED EDGEとASPITE PRO SPEED EDGEの2モデルが用意されますが、それぞれ違った特徴があるのでしょうか。
吉岡:その2本の比較は、冒頭に触れた坂でしっかりとテストしたことが有ります。登りでの走りの軽快感では、ASPITE PRO SPEED EDGEがわずかながら勝っている印象でしたね。実際、できるだけ条件を揃えて複数回タイムを計測した中で、最速タイムを出せたのはASPITE PRO SPEED EDGEでした。一方で、下りでの安定感はFOLMURA PRO SPEED EDGEが明らかに優っていました。
ですので、ヒルクライム一本勝負であればASPITE PRO SPEED EDGEに転がりの軽いラテックス、もしくは超軽量なTPUチューブを組み合わせるのが良いでしょう。一方で、よりハイスピードでコーナーも登場するタイムトライアルやクリテリウムなどであれば、より総合力に優れたFOLMURA PRO SPEED EDGEがオススメですね。


提供:iRCタイヤ、 photo:Satoru Kato、Michinari Takagi