2009/04/23(木) - 10:43
最大勾配25%の「ユイの壁」にゴールする第73回フレーシュ・ワロンヌ(UCIヒストリカル)は、序盤から別府史之(スキル・シマノ)が逃げを試みた。逃げ吸収後、最後は激坂スプリント勝負に持ち込まれ、ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)が3度目の優勝。土井雪広(スキル・シマノ)は143位で完走した。
逃げを試みた別府史之とモロー
別府史之と土井雪広(スキル・シマノ)、新城幸也(Bboxブイグテレコム)の日本人3選手が出場した第73回フレーシュ・ワロンヌ。最大勾配25%の「ユイの壁」の先にある栄光をかけ、198名の選手たちが好天の195kmコースに繰り出した。
開始早々アタックを仕掛けたブレーベン・ファンヘッケ(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)が吸収されると、7km地点で飛び出したのはクリストフ・モロー(フランス、アグリチュベル)と別府史之(スキル・シマノ)。メイン集団はこの逃げを容認した。
袖口に国旗カラーを配したこの元ナショナルチャンピオンの2人は、協力してメイン集団との差を広げ、計3回通過するうちの1回目「ユイの壁」通過時点(67km地点)でタイム差は15分30秒に。土井雪広はこの1回目のユイを集団前方でクリアした。
やがてメイン集団はランプレ、サクソバンク、ケースデパーニュ、サイレンス・ロットを始めとする有力チームが牽引を始め、それに伴い逃げる2人もペースアップ。
連続する上りがボディーブローのように選手を襲い、2回目の「ユイの壁」通過時(96km地点)で別府史之は脱落。別府はモローに一旦は合流したが、ゴールまで78kmを残して完全に遅れた。
別府史之を飲み込んだメイン集団は更にペースを上げ、先頭モローとのタイム差は4分を切ったラスト45kmでクリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)のアタックをキッカケに活性化。
一時はエンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)を含む17名の追走グループが形成されたが、集団に引き戻され、逃げ続けていたモローもラスト24kmで吸収。その後もアタックは止まなかった。
単独逃げを試みたホセ・セルパ(コロンビア、ディキジョヴァンニ)や、ラスト10kmで形成されたクリスティアン・ファンバーガー(オーストリア、カチューシャ)とミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)を含む逃げグループもラスト3kmまでに全て吸収。集団はハイスピードのまま「ユイの壁」に突入した。
上りが始まってすぐニキ・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)がペースを上げ、そこからダヴィ・ルレイ(フランス、アグリチュベル)がアタック。勢いある飛び出しを見せたルレイは単独で「Huy」とペイントされた上りを進むが、有力選手ひしめくメイン集団に封じ込められた。
急勾配区間でペースを作ったカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)先頭で上りを進み、ラスト150kmでアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)とレベッリンが先頭に。
最後はAシュレクとレベッリンの勝負に持ち込まれ、パワー溢れるダンシングで伸び続けたレベッリンが、Aシュレクを置き去りにしてゴール。2004年と2007年に続く、フレーシュ・ワロンヌ3勝目を達成した。
最高タイ記録の3勝を成し遂げたレベッリン
1週間前に風邪をひき、トレーニングが間に合わなかったというレベッリンは、“トレーニング”としてアムステル・ゴールドレースを完走。徐々にコンディションを上げ、3度目のフレーシュ制覇に至った。まだ風邪は尾を引いており、レース後のインタビューでは咳き込む場面も見られた。
インタビューの中でレベッリンは「これまでの3勝で、もっとも価値のある勝利。アムステルはリエージュのために完走したのであって、このフレーシュのためじゃなかった。リエージュを見据えて、フレーシュまでに調子が戻っていればいいなと思っていたから、これは予想外の勝利」と、冷静なコメント。
37歳のレベッリンは、歴代のチャンピオン、マルセル・キント('43年・'44年・'45年)、エディ・メルクス('67年・'70年・'72年)、モレーノ・アルジェンティン('90年・'91年・94年)に並ぶ3勝目をマーク。
その強さの秘訣は「トレーニングと情熱」と語る。「歳をとるにつれ、長いトレーニングが必要になる。長距離を走り抜く持久力と耐久力が僕の持ち味。ここ数年で衰えた爆発力を補うトレーニングを積んできた」。年齢を感じさせない力強い走りの裏には、たゆまぬ努力の積み重ねがある。
これまで数々のタイトルを手にしてきたレベッリンは、ワンディレーサーとしての資質を今一度見せつけた。「ステージレースでは1週間が過ぎたあたりから回復力が落ちてしまう。だからこれまでワンディレースに集中してきた。あと1年か2年は現役で走るつもり。僕のキャリアに欠けているタイトル、そう、世界選手権のタイトルを狙いたい」と語る。パオロ・ベッティーニ(イタリア)が引退した今、この日表彰台に上ったクネゴとレベッリンのコンビがイタリアチームのエースだ。
3位のクネゴは「レースの内容には満足している。チームの動きは完璧だったし、いい感触を得ることが出来たよ。ユイの上りでは常に集団前方に位置するように心がけたけど、レベッリンのアタックは強烈だった。とにかくリエージュに向けて3位という結果を残せたことは満足だ」と語っている。
この日、序盤から逃げた別府史之は途中リタイア。ボトル運びなどのアシストに徹した新城幸也も途中リタイアを喫している。土井雪広は5分38秒遅れの143位で完走した。日本人選手のコメントは現地レポートby岩佐千穂をご覧下さい。
選手コメントはイタリア・ガゼッタ紙、およびランプレ公式サイトより。
フレーシュ・ワロンヌ2009結果
1位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)4h42'15"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+02"
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)
4位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+07"
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)
6位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケスデパーニュ)+11"
8位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、サーヴェロ)
9位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、チームコロンビア)
10位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)+15"
143位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)+5'38"
DNF 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
DNF 別府史之(日本、スキル・シマノ)
逃げを試みた別府史之とモロー
別府史之と土井雪広(スキル・シマノ)、新城幸也(Bboxブイグテレコム)の日本人3選手が出場した第73回フレーシュ・ワロンヌ。最大勾配25%の「ユイの壁」の先にある栄光をかけ、198名の選手たちが好天の195kmコースに繰り出した。
開始早々アタックを仕掛けたブレーベン・ファンヘッケ(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)が吸収されると、7km地点で飛び出したのはクリストフ・モロー(フランス、アグリチュベル)と別府史之(スキル・シマノ)。メイン集団はこの逃げを容認した。
袖口に国旗カラーを配したこの元ナショナルチャンピオンの2人は、協力してメイン集団との差を広げ、計3回通過するうちの1回目「ユイの壁」通過時点(67km地点)でタイム差は15分30秒に。土井雪広はこの1回目のユイを集団前方でクリアした。
やがてメイン集団はランプレ、サクソバンク、ケースデパーニュ、サイレンス・ロットを始めとする有力チームが牽引を始め、それに伴い逃げる2人もペースアップ。
連続する上りがボディーブローのように選手を襲い、2回目の「ユイの壁」通過時(96km地点)で別府史之は脱落。別府はモローに一旦は合流したが、ゴールまで78kmを残して完全に遅れた。
別府史之を飲み込んだメイン集団は更にペースを上げ、先頭モローとのタイム差は4分を切ったラスト45kmでクリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)のアタックをキッカケに活性化。
一時はエンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)を含む17名の追走グループが形成されたが、集団に引き戻され、逃げ続けていたモローもラスト24kmで吸収。その後もアタックは止まなかった。
単独逃げを試みたホセ・セルパ(コロンビア、ディキジョヴァンニ)や、ラスト10kmで形成されたクリスティアン・ファンバーガー(オーストリア、カチューシャ)とミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)を含む逃げグループもラスト3kmまでに全て吸収。集団はハイスピードのまま「ユイの壁」に突入した。
上りが始まってすぐニキ・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)がペースを上げ、そこからダヴィ・ルレイ(フランス、アグリチュベル)がアタック。勢いある飛び出しを見せたルレイは単独で「Huy」とペイントされた上りを進むが、有力選手ひしめくメイン集団に封じ込められた。
急勾配区間でペースを作ったカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)先頭で上りを進み、ラスト150kmでアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)とレベッリンが先頭に。
最後はAシュレクとレベッリンの勝負に持ち込まれ、パワー溢れるダンシングで伸び続けたレベッリンが、Aシュレクを置き去りにしてゴール。2004年と2007年に続く、フレーシュ・ワロンヌ3勝目を達成した。
最高タイ記録の3勝を成し遂げたレベッリン
1週間前に風邪をひき、トレーニングが間に合わなかったというレベッリンは、“トレーニング”としてアムステル・ゴールドレースを完走。徐々にコンディションを上げ、3度目のフレーシュ制覇に至った。まだ風邪は尾を引いており、レース後のインタビューでは咳き込む場面も見られた。
インタビューの中でレベッリンは「これまでの3勝で、もっとも価値のある勝利。アムステルはリエージュのために完走したのであって、このフレーシュのためじゃなかった。リエージュを見据えて、フレーシュまでに調子が戻っていればいいなと思っていたから、これは予想外の勝利」と、冷静なコメント。
37歳のレベッリンは、歴代のチャンピオン、マルセル・キント('43年・'44年・'45年)、エディ・メルクス('67年・'70年・'72年)、モレーノ・アルジェンティン('90年・'91年・94年)に並ぶ3勝目をマーク。
その強さの秘訣は「トレーニングと情熱」と語る。「歳をとるにつれ、長いトレーニングが必要になる。長距離を走り抜く持久力と耐久力が僕の持ち味。ここ数年で衰えた爆発力を補うトレーニングを積んできた」。年齢を感じさせない力強い走りの裏には、たゆまぬ努力の積み重ねがある。
これまで数々のタイトルを手にしてきたレベッリンは、ワンディレーサーとしての資質を今一度見せつけた。「ステージレースでは1週間が過ぎたあたりから回復力が落ちてしまう。だからこれまでワンディレースに集中してきた。あと1年か2年は現役で走るつもり。僕のキャリアに欠けているタイトル、そう、世界選手権のタイトルを狙いたい」と語る。パオロ・ベッティーニ(イタリア)が引退した今、この日表彰台に上ったクネゴとレベッリンのコンビがイタリアチームのエースだ。
3位のクネゴは「レースの内容には満足している。チームの動きは完璧だったし、いい感触を得ることが出来たよ。ユイの上りでは常に集団前方に位置するように心がけたけど、レベッリンのアタックは強烈だった。とにかくリエージュに向けて3位という結果を残せたことは満足だ」と語っている。
この日、序盤から逃げた別府史之は途中リタイア。ボトル運びなどのアシストに徹した新城幸也も途中リタイアを喫している。土井雪広は5分38秒遅れの143位で完走した。日本人選手のコメントは現地レポートby岩佐千穂をご覧下さい。
選手コメントはイタリア・ガゼッタ紙、およびランプレ公式サイトより。
フレーシュ・ワロンヌ2009結果
1位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)4h42'15"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+02"
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)
4位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+07"
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)
6位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケスデパーニュ)+11"
8位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、サーヴェロ)
9位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、チームコロンビア)
10位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)+15"
143位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)+5'38"
DNF 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
DNF 別府史之(日本、スキル・シマノ)
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