2011年2月26日、ベルギー・フランドル地方で開催された第66回オンループ・ヘットニュースブラッド(UCI1.HC)。石畳や急坂を含む203kmのコース終盤にアタックしたセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)が、遅れて合流したフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)をスプリントで沈めた。

雨のフランドル地方を駆け抜ける雨のフランドル地方を駆け抜ける photo:Cor Vosオンループ・ヘットニュースブラッドは、かつて「オンループ・ヘットフォルク」として開催されていた伝統の一戦。2009年のスポンサー変更に伴い、現在の名称に変更された。

このセミクラシック初戦オンループを皮切りに、ベルギーのクラシックシーズンが始動。4月3日に開催されるロンド・ファン・フラーンデレンに向け、ベルギー国内は盛り上がりを見せていく。

序盤から逃げたマチュー・ラダニュ(フランス、FDJ)ら8名序盤から逃げたマチュー・ラダニュ(フランス、FDJ)ら8名 photo:Cor Vosレースの舞台は、石畳を含むクラシックの代名詞ベルギー・フランドル地方。ヘントを発着する203kmのコースには、クルイスベルグやレベルグ、モーレンベルグなどの急坂9カ所と多くの石畳区間が詰め込まれている。

レース当日は生憎の、そして激しいクラシックシーズンの幕開けを予感させるような雨模様。レース前半はマチュー・ラダニュ(フランス、FDJ)やセバスティアン・シャヴァネル(フランス、ユーロップカー)ら8名の逃げが決まり、タイム差は最大8分まで開いた。

ラスト53km地点から独走するセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)ラスト53km地点から独走するセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vosコース中盤から始まる急坂と石畳区間に差し掛かると、クイックステップとチームスカイがメイン集団のペースアップを開始。5つ目の急坂ターインベルグ(石畳・登坂距離530m・最大勾配15.8%)でトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)が動くと、メイン集団はすぐさま縮小した。

序盤から逃げていた選手たちが吸収されると、ゴールまで53kmを残した6つ目の急坂エイケンベルグ(石畳・登坂距離1200m・最大勾配10%)でラングヴェルトがアタックして独走に持ち込む。昨年覇者のフレチャやボーネンを含むメイン集団からは、マヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシングチーム)らがアタックを仕掛け、追走グループを形成した先頭ラングヴェルトを追った。

単独でラングヴェルトを追走するフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)単独でラングヴェルトを追走するフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ) photo:Cor Vosしかし1分のリードを築いたラングヴェルトは独走をキープ。複数の追走グループは引き戻され、ここからフレチャがアタック。降りしきる雨の中、ディフェンディングチャンピオンのフレチャはラスト15km地点で先頭ラングヴェルトを捉えた。

後方ではヨアン・オフルド(フランス、FDJ)らがカウンターアタックを仕掛けたものの、フレチャのチームメイトであるマシュー・ヘイマン(オーストラリア)が抑え込む。タイム差が2分まで広がり、ゴールまで5kmを切ると先頭2名の中での優勝争いが始まった。

追走グループを形成するマヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシングチーム)ら追走グループを形成するマヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシングチーム)ら photo:Cor Vosフレチャが強力なアタックを仕掛け、ラングヴェルトが反応。結局最後までフレチャはラングヴェルトを引き離せない。ラスト1kmを切ると2人をスピードを落として牽制状態に。付き位置をキープしたラングヴェルトがラスト200mで先に仕掛け、フレチャがスプリントで応戦。しかしフレチャのスプリントは伸びず、ラングヴェルトが僅差で先着した。

ラングヴェルトは1985年生まれの26歳。2006年にスキル・シマノでプロデビューし、翌年ラボバンクに移籍した。間違いなくこれがキャリア最大の勝利だ。

ゴールに向かうフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)とセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)ゴールに向かうフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)とセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vosゴール53km手前で独走に持ち込み、追いついた元チームメイトフレチャを下したラングヴェルトは、ラボバンク公式サイトの中でレースを振り返る。「あんな早くから独走に持ち込む予定ではなかったけど、チャンスだと思って飛び出した。すると独走になってタイム差が広がったんだ。追い風だったとは言え、いつか集団に追いつかれると思っていた。でも集団は追いついてこなかった。」

「フレチャを待ったわけじゃない。でも先頭が2人になった時点で、フレチャは力を使い果たしているように見えた。彼がアタックするのは分かっていたので、それを封じ込めることができればチャンスが回ってくると思った。」

ハンドルを投げてゴールするセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)とフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)ハンドルを投げてゴールするセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)とフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ) photo:Cor Vos本格クラシックシーズンに向けて、ラボバンクは最高の滑り出し。チームメイトのラース・ボーム(オランダ)は10位でレースを終えた。

一方、僅差で大会連覇を逃したフレチャは悔しさを隠せない。「こんなに長くてハードなレースで、セバスティアン(ラングヴェルト)に10cm差で負けてしまった!ゴールラインを過ぎてすぐに彼は手を挙げたけど、自分はどちらが勝ったか確証を得ていなかった。それぐらい僅差だった。」

両手を広げてゴールするセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)両手を広げてゴールするセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vos今シーズン初勝利を逃したフレチャ。しかしクラシックシーズンに向けて調子の良さを証明する結果でもある。シーズン最大の目標レースに掲げるロンド・ファン・フラーンデレンやパリ〜ルーベではもちろん初優勝を狙う。

ライバルのチェックに徹したヘイマンが3位に入り、チームスカイが表彰台でラングヴェルトを挟み込む形に。フレチャはチームスカイの力に満足している。「チームとしては良いレース運びだった。近々勝利を手にすることが出来るだろう。」

レース展開はレース公式サイトならびにライブストリーミング映像より。


オンループ・ヘットニュースブラッド2011
1位 セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)     5h18'03"
2位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
3位 マシュー・ヘイマン(オーストラリア、チームスカイ)        +1'01"
4位 ヨアン・オフルド(フランス、FDJ)                +1'04"
5位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)           +1'21"
6位 ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップ)         +1'24"
7位 マルティン・マースカント(オランダ、ガーミン・サーヴェロ)    +1'30"
8位 マヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシングチーム)
9位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
10位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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