2011/02/11(金) - 14:47
昨年サーヴェロが発表し、大きな話題を呼んだ“R”シリーズ。それまでツール・ド・フランスを制覇したモデルとしてロングセラーとなっていた「R3」を「プロジェクト・カリフォルニア」と呼ばれる専門開発チームによって刷新した。
プロジェクト・カリフォルニアで生み出されたのは、大幅な改良を加えた「R3」。フレーム重量675gという世界最軽量クラスの軽さを実現した「R5ca」。そしてR5caのテクノロジーを受け継ぎ、フレーム重量800g以下を達成した「R5」。この3台だ。
新生Rシリーズに共通するのは、大きく分けて三点。サーヴェロの“R”モデルの代名詞である「スクオーバルチューブ」。下側ベアリングを1・3/8インチ径にした上下異形テーパードヘッドチューブ。そして今回もっとも注目されているサーヴェロ独自の左右非対称BB設計規格「BBright」だ。
特にBBrightはこのRシリーズの中核をなす技術。ドライブ反対側のBBシェルの口径を11mm広げることでBB部に繋がるシートチューブ、ダウンチューブ、チェーンステーを大口径化。それによりフレーム全体の剛性を著しく向上させている。また「R5」と「R5ca」にはこのBBrightによって標準的な68mmから79mmになったBBサイズに合わせたクランク「ローター 3D BBright」が付属するのも特徴のひとつだ。
そして今回のテストバイクは豊富なトピックを持つRシリーズのミドルグレードにあたる「R5」だ。先にも挙げたとおり「R5」は「R5ca」の技術を受け継ぐ兄弟車。昨年のツール・ド・フランスで「サーヴェロテストチーム」のエース、カルロス・サントレによって実際にプロトタイプが使われたことでも知られている。
「R5ca」と重量以外に大きく異なるのは、オプションパーツであるプレスフィットBBを差し替えることでシマノやカンパニョーロをはじめ、ほかのクランクも装備することができる点。また「R5ca」の半額以下の価格設定になっているのも見逃せないポイントだ。R5caとの比較を行うため、この2台は今回同時にテストしている。ぜひ記事を読み比べて欲しい。
サーヴェロR5は、なにより上り下りのある山岳部で真価を発揮するために、名作「R3」を越えるために生まれたバイクだ。それだけに興味は尽きない。またその実力が本物なのか気になるユーザーも多いだろう。それではさっそくインプレッションに入ろう。
―インプレッション
「すべてにおいて卓越した性能を誇る1台」流郷克也(ユーキャン)
「こういうバイクに最初から乗ることができたのなら、それに勝る幸せはない」。そう言えるほど高い次元でバランスの取れているバイクだ。とにかく素直で、ライダーの意思をその走りにすぐ反映してくれる。自分がこのバイクを使ってレースに出場するとしたら、どんなミスをしてもバイクのせいにはできなくなる(笑)。
軽さ、剛性、操作性、安定性などあらゆる面でポジティブな印象しか受けなかったが、ヒルクライムバイクと聞いていたので、平坦でスピードのノリのいいその走りは意外だった。もちろん0発進や上りでのダンシング、シッティングでも素直に気持ちよく走ってくれる。
走行面でさらにいうなら、一見“ヤワ”な印象を受ける非常に細いシートステーも効果が発揮されている。その外見とは裏腹に、しっかりした作りで、その上、荒れた路面でも跳ねることなく素直な加速を見せてくれる。
路面追従性、振動吸収性、その剛性からくる反応即応性という面で高いレベルで整っているのは左右非対称のチェーンステーも加えて、このシートステーが大きな役割を果たしていると感じた。
そしてテストバイクは「イーストン・EC90」という軽いホイールを履いていたのだが、重量の軽いフレームであるにもかかわらずフラつかない。同時にハンドリングも思い通りのラインへスムースに入っていける。しかもレーシングモデルにありがちなクイックな感じではなく、初心者ですら扱えるような素直さを絶妙なさじ加減で実現している。安定感や操作感という意味でバランスのいいところがこの辺から感じられる。
またBBrightによる剛性アップは十分感じるが、その中心にあるBBにセットされた「ローター」のクランクも高剛性で回しやすく、個人的には好みだ。しかし、こうもBB周辺に加えてクランクも高剛性だと大抵足に疲労が溜まりやすくなるデメリットがあるものだが、それを感じない。基本設計の時点でかなり煮詰めていないと、これだけの性能を成しえるのは難しいだろう。
非常によくできており、ロングライドでもレースでもオールマイティに使えるバイクだ。しかも初心者からプロまでどんなライダーの要求にも応えてくれるバイクに仕上がっているのは特筆すべき点。ロードレーサーとして文句の付けようのない1台と言えるだろう。
「軽量バイクの代名詞になりそうなバイクだ」若生正剛(なるしまフレンド)
サーヴェロというとどのモデルでもその軽さが際立ったバイクを作る印象がある。この「R5」はその印象を一層裏付けるモデルだ。シフトアウターの受け部分、リアメカやフロントメカの直付けバンド部分もカーボンになっていることなど細部から軽量化への本気度合いが見て取れる。
そして見た目どおり、手に持ってみると実際に軽い。フレーム重量800g以下というのも納得できる軽さだ。しかし、それよりも走りの軽さに驚かされる。軽量化による影響もあるが、BBrightによってボリュームの増したBB部によってペダリングするとサクサク入っていく感じがあり、それが走りの軽さに繋がっている。
また極端に細くなっているシートステーも軽量化には一役買っている感があるが、その外見からは想像できないほどしっかりしており、腰のある伸びやかなしなりを感じさせてくれる。もちろん荒れ地での快適さも保っている。単純に軽さだけを求めたわけではない作りがバイク全体から伝わってくるようだ。
そしてコントロールの面でも優秀でクセのない素直なハンドリングをしている。特に下りの安定感は印象的。これについては上下異形のヘッドパーツの効果がでているように思う。下りの高速カーブでも狙ったラインがしっかり取れるのはその証拠だろう。
さらに平坦なコースもサーヴェロの“S”シリーズよろしくしっかり走るので、単なるヒルクライムバイクとして扱うのは少々もったいない気がする。
体重制限はないようだが、やはり「R5」の軽さを活かせる“体型”であったほうがいい。それならば上り、下り、平坦、荒れ地とあらゆるシチュエーションで満足できる走りをしてくれるので、レースからツーリングまでどんな使い方も許容してくれるだろう。
問題点を見つけることが困難なバイクだが、ヤワではない作りであっても“軽量バイク”なので、輪行時のパッケージングはほかのロードレーサーに比べて慎重にするべきだろう。気をつけつるべき点がそのくらいしか思い浮かばないほど高い完成度のバイクだ。
サーヴェロ R5
フレーム:サーヴェロ スクオーバル カーボンチュービング
フォーク:サーヴェロ FK30SL
ヘッドセット:FSA ORBIT IS カーボン
シートポスト:3T DORIC LTD
クランク:ローター 3D BBright
サイズ:48、51、54、56
重量:800g以下(フレーム)
希望小売価格(税込み):598,500円(フレームセット+クランク)
インプレライダーのプロフィール
流郷克哉(ユーキャン)
東京、神奈川、静岡、山梨で展開するサイクルショップ「YOU CAN(ユーキャン)」の多摩境店店長。選手時代は脱サラ後、複数チームを経て30歳で日本鋪道と契約。生涯成績は国内でジャパンカップアマチュア部門優勝、ツールド東北ステージ優勝など。フランスに単身渡仏後、1シーズンで60弱のロードレースに参戦。エリート4勝、ほか1勝を挙げるほか、10位以内フィニッシュが20レースを越えた。2004年に引退し、現在ユーキャン多摩境店にて店長をしながら高校生ら若手育成に努めている。
YOU CAN
若生正剛(なるしまフレンド)
自転車店「なるしまフレンド」店員。昭和第一学園在籍時に競技を始める。トラック競技で2年生時に初めてインターハイ出場を果たした。同じく3年生時は選抜、インターハイと大きな大会を連続出場。卒業後、自転車の楽しさを伝えたいと思い立ち、なるしまフレンドに入社。現在3年目を迎える。プロ選手としての経験が無いものの、ショップ店員としてはそれを逆手に一般自転車乗りの感覚を共有できることを強みにして接客している。
なるしまフレンド
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda
プロジェクト・カリフォルニアで生み出されたのは、大幅な改良を加えた「R3」。フレーム重量675gという世界最軽量クラスの軽さを実現した「R5ca」。そしてR5caのテクノロジーを受け継ぎ、フレーム重量800g以下を達成した「R5」。この3台だ。
新生Rシリーズに共通するのは、大きく分けて三点。サーヴェロの“R”モデルの代名詞である「スクオーバルチューブ」。下側ベアリングを1・3/8インチ径にした上下異形テーパードヘッドチューブ。そして今回もっとも注目されているサーヴェロ独自の左右非対称BB設計規格「BBright」だ。
特にBBrightはこのRシリーズの中核をなす技術。ドライブ反対側のBBシェルの口径を11mm広げることでBB部に繋がるシートチューブ、ダウンチューブ、チェーンステーを大口径化。それによりフレーム全体の剛性を著しく向上させている。また「R5」と「R5ca」にはこのBBrightによって標準的な68mmから79mmになったBBサイズに合わせたクランク「ローター 3D BBright」が付属するのも特徴のひとつだ。
そして今回のテストバイクは豊富なトピックを持つRシリーズのミドルグレードにあたる「R5」だ。先にも挙げたとおり「R5」は「R5ca」の技術を受け継ぐ兄弟車。昨年のツール・ド・フランスで「サーヴェロテストチーム」のエース、カルロス・サントレによって実際にプロトタイプが使われたことでも知られている。
「R5ca」と重量以外に大きく異なるのは、オプションパーツであるプレスフィットBBを差し替えることでシマノやカンパニョーロをはじめ、ほかのクランクも装備することができる点。また「R5ca」の半額以下の価格設定になっているのも見逃せないポイントだ。R5caとの比較を行うため、この2台は今回同時にテストしている。ぜひ記事を読み比べて欲しい。
サーヴェロR5は、なにより上り下りのある山岳部で真価を発揮するために、名作「R3」を越えるために生まれたバイクだ。それだけに興味は尽きない。またその実力が本物なのか気になるユーザーも多いだろう。それではさっそくインプレッションに入ろう。
―インプレッション
「すべてにおいて卓越した性能を誇る1台」流郷克也(ユーキャン)
「こういうバイクに最初から乗ることができたのなら、それに勝る幸せはない」。そう言えるほど高い次元でバランスの取れているバイクだ。とにかく素直で、ライダーの意思をその走りにすぐ反映してくれる。自分がこのバイクを使ってレースに出場するとしたら、どんなミスをしてもバイクのせいにはできなくなる(笑)。
軽さ、剛性、操作性、安定性などあらゆる面でポジティブな印象しか受けなかったが、ヒルクライムバイクと聞いていたので、平坦でスピードのノリのいいその走りは意外だった。もちろん0発進や上りでのダンシング、シッティングでも素直に気持ちよく走ってくれる。
走行面でさらにいうなら、一見“ヤワ”な印象を受ける非常に細いシートステーも効果が発揮されている。その外見とは裏腹に、しっかりした作りで、その上、荒れた路面でも跳ねることなく素直な加速を見せてくれる。
路面追従性、振動吸収性、その剛性からくる反応即応性という面で高いレベルで整っているのは左右非対称のチェーンステーも加えて、このシートステーが大きな役割を果たしていると感じた。
そしてテストバイクは「イーストン・EC90」という軽いホイールを履いていたのだが、重量の軽いフレームであるにもかかわらずフラつかない。同時にハンドリングも思い通りのラインへスムースに入っていける。しかもレーシングモデルにありがちなクイックな感じではなく、初心者ですら扱えるような素直さを絶妙なさじ加減で実現している。安定感や操作感という意味でバランスのいいところがこの辺から感じられる。
またBBrightによる剛性アップは十分感じるが、その中心にあるBBにセットされた「ローター」のクランクも高剛性で回しやすく、個人的には好みだ。しかし、こうもBB周辺に加えてクランクも高剛性だと大抵足に疲労が溜まりやすくなるデメリットがあるものだが、それを感じない。基本設計の時点でかなり煮詰めていないと、これだけの性能を成しえるのは難しいだろう。
非常によくできており、ロングライドでもレースでもオールマイティに使えるバイクだ。しかも初心者からプロまでどんなライダーの要求にも応えてくれるバイクに仕上がっているのは特筆すべき点。ロードレーサーとして文句の付けようのない1台と言えるだろう。
「軽量バイクの代名詞になりそうなバイクだ」若生正剛(なるしまフレンド)
サーヴェロというとどのモデルでもその軽さが際立ったバイクを作る印象がある。この「R5」はその印象を一層裏付けるモデルだ。シフトアウターの受け部分、リアメカやフロントメカの直付けバンド部分もカーボンになっていることなど細部から軽量化への本気度合いが見て取れる。
そして見た目どおり、手に持ってみると実際に軽い。フレーム重量800g以下というのも納得できる軽さだ。しかし、それよりも走りの軽さに驚かされる。軽量化による影響もあるが、BBrightによってボリュームの増したBB部によってペダリングするとサクサク入っていく感じがあり、それが走りの軽さに繋がっている。
また極端に細くなっているシートステーも軽量化には一役買っている感があるが、その外見からは想像できないほどしっかりしており、腰のある伸びやかなしなりを感じさせてくれる。もちろん荒れ地での快適さも保っている。単純に軽さだけを求めたわけではない作りがバイク全体から伝わってくるようだ。
そしてコントロールの面でも優秀でクセのない素直なハンドリングをしている。特に下りの安定感は印象的。これについては上下異形のヘッドパーツの効果がでているように思う。下りの高速カーブでも狙ったラインがしっかり取れるのはその証拠だろう。
さらに平坦なコースもサーヴェロの“S”シリーズよろしくしっかり走るので、単なるヒルクライムバイクとして扱うのは少々もったいない気がする。
体重制限はないようだが、やはり「R5」の軽さを活かせる“体型”であったほうがいい。それならば上り、下り、平坦、荒れ地とあらゆるシチュエーションで満足できる走りをしてくれるので、レースからツーリングまでどんな使い方も許容してくれるだろう。
問題点を見つけることが困難なバイクだが、ヤワではない作りであっても“軽量バイク”なので、輪行時のパッケージングはほかのロードレーサーに比べて慎重にするべきだろう。気をつけつるべき点がそのくらいしか思い浮かばないほど高い完成度のバイクだ。
サーヴェロ R5
フレーム:サーヴェロ スクオーバル カーボンチュービング
フォーク:サーヴェロ FK30SL
ヘッドセット:FSA ORBIT IS カーボン
シートポスト:3T DORIC LTD
クランク:ローター 3D BBright
サイズ:48、51、54、56
重量:800g以下(フレーム)
希望小売価格(税込み):598,500円(フレームセット+クランク)
インプレライダーのプロフィール
流郷克哉(ユーキャン)
東京、神奈川、静岡、山梨で展開するサイクルショップ「YOU CAN(ユーキャン)」の多摩境店店長。選手時代は脱サラ後、複数チームを経て30歳で日本鋪道と契約。生涯成績は国内でジャパンカップアマチュア部門優勝、ツールド東北ステージ優勝など。フランスに単身渡仏後、1シーズンで60弱のロードレースに参戦。エリート4勝、ほか1勝を挙げるほか、10位以内フィニッシュが20レースを越えた。2004年に引退し、現在ユーキャン多摩境店にて店長をしながら高校生ら若手育成に努めている。
YOU CAN
若生正剛(なるしまフレンド)
自転車店「なるしまフレンド」店員。昭和第一学園在籍時に競技を始める。トラック競技で2年生時に初めてインターハイ出場を果たした。同じく3年生時は選抜、インターハイと大きな大会を連続出場。卒業後、自転車の楽しさを伝えたいと思い立ち、なるしまフレンドに入社。現在3年目を迎える。プロ選手としての経験が無いものの、ショップ店員としてはそれを逆手に一般自転車乗りの感覚を共有できることを強みにして接客している。
なるしまフレンド
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda
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