2009/01/10(土) - 10:04
3種目競技としてのトライアスロンはかなり知名度が上がってきたが、「デュアスロン」をご存知だろうか? 自転車+ラン。スイムがないぶんサイクリストが気軽に挑戦しやすいこの「面白・苦しい」競技を紹介しよう。
デュアスロンは『トライアスロンからスイムを抜いた2種目で行なう競技』などと定義されることが多いが、どっこい、ラン+バイク+ランという3部構成の第2ランは、第3の種目といっていいほど第1ランとは異質だ。
なにしろ脚を使い続けているので、とにかくキツイ! そして、そのキツさを越えた先の充実感…。この感覚、競技経験者なら、きっと分かってもらえるはず。そしてデュアスロン、日本ではまだまだマイナーながら、実はバイク持ちのサイクリストこそ、手軽に始められる競技でもあるのだ
今回ご紹介するのは、『カーフマン ジャパン デュアスロン グランプリ シーズン6』。年間数戦のシリーズ戦であり、今回で6シーズン目を迎えている。
Calfは「ふくらはぎ」の意味。「ラン・バイク・ランのこの複合競技における身体の特徴としての厳しさを痙攣するふくらはぎに例えました」と主催者が言うとおり、バッキンバッキンに脚が攣るかも?
秋から春にかけてのシリーズ戦なので、今GPの緒戦は2008年11月の近畿ステージ(兵庫県三木市・グリーンピア三木)。先頃開催の'09年1月18日開催の北関東ステージ(埼玉県比企郡・国営武蔵丘森林公園)は、都合4戦目に当たる。
距離は会場、及びクラスによって多少違うが、ラン5km+バイク30~40km+ラン5kmのケースが多い。
「ランが2回ならランナーに有利」と諦めるなかれ。40代ながらエリートクラスを引っ張る実力と、選手らの間で「尊敬しています」という声が多い人望の持ち主、高橋泰夫選手(TeamCW-X・BOMA・アミーゴ)をはじめ、サイクリスト出身のトップ選手は意外に多い。それに、第1ランで遅れても、そこからどんどん前をパスする楽しみ。これぞ、バイクパートに長けた者の醍醐味であろう。
自然の中、小刻みなアップダウンが特徴の北関東ステージ
ここでは別記事でレポートしたカーフマン北関東ステージを例に紹介しながら、デュアスロンならではの展開を追ってみよう。
開催クラスは、エリート、エイジ、MTB、ビギナー、ジュニア、キッズ。ジュニアやキッズは家族の応援で盛り上がるが、会場全員の注目を集めるのは、やはり華のエリートクラス。特に今回は、篠崎友(BODY TUNE/SUNNY FISH)が、いつにも増して積極的なスタートを切ってみせ、トップグループのペースを上げる。
いつもなら、前年シリーズチャンプの深浦裕哉(セサミ/BODY TUNE/ハリアーズ)、もしくはランに自信の選手が出てくるので、異例(?)の展開に会場は沸いた。それほど、この篠崎は「サイクリスト」のイメージが強いトライアスリートなのだ。
しかし、ほどなく、件の深浦、そして、島田敦史(ホンダ栃木)、栗原正明(国士舘大学エース)、濱由崇(十四侍)、河原勇人(トーシンパートナーズTEAM KEN'S )らが篠崎を飲み込み、トランジットへ。
しかし、バイクへ入ると、またも篠崎が粘ってきた。いつもならセカンドグループを引っ張っていくのが彼の役回りだが、この日は違った。アップダウンとコーナーが続く北関東ステージでは、エリートといえどもドラフティング禁止。自らの脚だけが頼みのタフなコースで、篠崎はグイグイと順位を上げて行く。そしてついにトップへ再浮上!元気でノリのいい、そして気配りの人でもある篠崎はもともと人気者だが、この日はいつも以上に応援が増えた。
第2ラン。トランジットを出たのは、篠崎、深浦の順。実はこの日の深浦、1週間前に風邪を引いて、体調が完全には戻っていなかった。そこへ篠崎に揺さぶりをかけられたせいか、いつもはスムーズなトランジットで珍しくシューズを履くのに手間取る。
その深浦がランへ飛び出すと、入れ替わりに入ってきたのが高橋。高橋は腰痛持ちで、第1ランを思うように飛ばせないネックがある。にも関わらず、バイクで追い上げて、いつも入賞圏内に入る、職人技とも思えるレーススタイル。今回も第1ランこそ11番手だったが、バイクは篠崎に次ぐ2番手で上がっている。
そしてエンジンの暖まった第2ランでは、残った力すべてを注いで走り切るのが高橋流。ゴールした時の完全燃焼ぶりが魅力で、観客の彼への声援はひときわ大きい。なにより、20代の選手らに40代でも負けない強さ、練習への真摯な取り組み方。ある意味、ミスター・デュアスロンともいえる存在が、この高橋だろう。
結果から言うと、高橋の追い上げで篠崎が3番手に落ち、深浦、高橋、篠崎のオーダーでフィニッシュ。深浦は、昨年に続きポイントリーダーとしてシリーズに君臨しているが、この上位3人中、2人がバイクの強みで勝ちあがってきた組だ。シクロワイアード読者のサイクリストの皆さんにも、ぜひ一度デュアスロンに挑戦してほしい、そう思う訳がここにある。
次のチャンスは2月8日と3月8日!
次回カーフマンGPは、南関東ステージ(東京都立川市・国営昭和記念公園)。首都圏からアクセスがいいので、例年もっとも人が集まる大会だ。数が集まれば、当然、強い選手も多い。そういう意味では非常にチャレンジングな大会。ただし、コースは基本的にフラット、道の交差などで緩やかな起伏がある程度だ。初デュアスロンのウデ試しにはもってこい。
そして、3月に控える中国ステージ(広島県東広島市・中央森林公園)。坂バカの皆さんには、こちらがイチオシ! ここは広島空港周辺を走る、地元サイクリストにも有名なタフコースなのだ。さらに、中国ステージは今年初開催なので、カーフマンGP常連にとっても初めてのコース。サイクリストのアドバンテージも大いに発揮できようというもの。会場は空港周りなので、地元のみならず、飛行機遠征組にとって却ってアクセスが楽…かも?!
そして、このコースをロードレースで走ったことのあるサイクリストは多いはず。ヒルクライムでモタモタする順デュアスリートをゴボウ抜きする快感はクセになるはず。ただし、その後のランでリベンジされるかどうかはランの練習次第。たまには異種競技に挑戦してみれば眠った筋肉の鍛錬にもなりますよ!
text:小峰眞実(マルチスポーツライター)
photo:MSPO
デュアスロンは『トライアスロンからスイムを抜いた2種目で行なう競技』などと定義されることが多いが、どっこい、ラン+バイク+ランという3部構成の第2ランは、第3の種目といっていいほど第1ランとは異質だ。
なにしろ脚を使い続けているので、とにかくキツイ! そして、そのキツさを越えた先の充実感…。この感覚、競技経験者なら、きっと分かってもらえるはず。そしてデュアスロン、日本ではまだまだマイナーながら、実はバイク持ちのサイクリストこそ、手軽に始められる競技でもあるのだ
今回ご紹介するのは、『カーフマン ジャパン デュアスロン グランプリ シーズン6』。年間数戦のシリーズ戦であり、今回で6シーズン目を迎えている。
Calfは「ふくらはぎ」の意味。「ラン・バイク・ランのこの複合競技における身体の特徴としての厳しさを痙攣するふくらはぎに例えました」と主催者が言うとおり、バッキンバッキンに脚が攣るかも?
秋から春にかけてのシリーズ戦なので、今GPの緒戦は2008年11月の近畿ステージ(兵庫県三木市・グリーンピア三木)。先頃開催の'09年1月18日開催の北関東ステージ(埼玉県比企郡・国営武蔵丘森林公園)は、都合4戦目に当たる。
距離は会場、及びクラスによって多少違うが、ラン5km+バイク30~40km+ラン5kmのケースが多い。
「ランが2回ならランナーに有利」と諦めるなかれ。40代ながらエリートクラスを引っ張る実力と、選手らの間で「尊敬しています」という声が多い人望の持ち主、高橋泰夫選手(TeamCW-X・BOMA・アミーゴ)をはじめ、サイクリスト出身のトップ選手は意外に多い。それに、第1ランで遅れても、そこからどんどん前をパスする楽しみ。これぞ、バイクパートに長けた者の醍醐味であろう。
自然の中、小刻みなアップダウンが特徴の北関東ステージ
ここでは別記事でレポートしたカーフマン北関東ステージを例に紹介しながら、デュアスロンならではの展開を追ってみよう。
開催クラスは、エリート、エイジ、MTB、ビギナー、ジュニア、キッズ。ジュニアやキッズは家族の応援で盛り上がるが、会場全員の注目を集めるのは、やはり華のエリートクラス。特に今回は、篠崎友(BODY TUNE/SUNNY FISH)が、いつにも増して積極的なスタートを切ってみせ、トップグループのペースを上げる。
いつもなら、前年シリーズチャンプの深浦裕哉(セサミ/BODY TUNE/ハリアーズ)、もしくはランに自信の選手が出てくるので、異例(?)の展開に会場は沸いた。それほど、この篠崎は「サイクリスト」のイメージが強いトライアスリートなのだ。
しかし、ほどなく、件の深浦、そして、島田敦史(ホンダ栃木)、栗原正明(国士舘大学エース)、濱由崇(十四侍)、河原勇人(トーシンパートナーズTEAM KEN'S )らが篠崎を飲み込み、トランジットへ。
しかし、バイクへ入ると、またも篠崎が粘ってきた。いつもならセカンドグループを引っ張っていくのが彼の役回りだが、この日は違った。アップダウンとコーナーが続く北関東ステージでは、エリートといえどもドラフティング禁止。自らの脚だけが頼みのタフなコースで、篠崎はグイグイと順位を上げて行く。そしてついにトップへ再浮上!元気でノリのいい、そして気配りの人でもある篠崎はもともと人気者だが、この日はいつも以上に応援が増えた。
第2ラン。トランジットを出たのは、篠崎、深浦の順。実はこの日の深浦、1週間前に風邪を引いて、体調が完全には戻っていなかった。そこへ篠崎に揺さぶりをかけられたせいか、いつもはスムーズなトランジットで珍しくシューズを履くのに手間取る。
その深浦がランへ飛び出すと、入れ替わりに入ってきたのが高橋。高橋は腰痛持ちで、第1ランを思うように飛ばせないネックがある。にも関わらず、バイクで追い上げて、いつも入賞圏内に入る、職人技とも思えるレーススタイル。今回も第1ランこそ11番手だったが、バイクは篠崎に次ぐ2番手で上がっている。
そしてエンジンの暖まった第2ランでは、残った力すべてを注いで走り切るのが高橋流。ゴールした時の完全燃焼ぶりが魅力で、観客の彼への声援はひときわ大きい。なにより、20代の選手らに40代でも負けない強さ、練習への真摯な取り組み方。ある意味、ミスター・デュアスロンともいえる存在が、この高橋だろう。
結果から言うと、高橋の追い上げで篠崎が3番手に落ち、深浦、高橋、篠崎のオーダーでフィニッシュ。深浦は、昨年に続きポイントリーダーとしてシリーズに君臨しているが、この上位3人中、2人がバイクの強みで勝ちあがってきた組だ。シクロワイアード読者のサイクリストの皆さんにも、ぜひ一度デュアスロンに挑戦してほしい、そう思う訳がここにある。
次のチャンスは2月8日と3月8日!
次回カーフマンGPは、南関東ステージ(東京都立川市・国営昭和記念公園)。首都圏からアクセスがいいので、例年もっとも人が集まる大会だ。数が集まれば、当然、強い選手も多い。そういう意味では非常にチャレンジングな大会。ただし、コースは基本的にフラット、道の交差などで緩やかな起伏がある程度だ。初デュアスロンのウデ試しにはもってこい。
そして、3月に控える中国ステージ(広島県東広島市・中央森林公園)。坂バカの皆さんには、こちらがイチオシ! ここは広島空港周辺を走る、地元サイクリストにも有名なタフコースなのだ。さらに、中国ステージは今年初開催なので、カーフマンGP常連にとっても初めてのコース。サイクリストのアドバンテージも大いに発揮できようというもの。会場は空港周りなので、地元のみならず、飛行機遠征組にとって却ってアクセスが楽…かも?!
そして、このコースをロードレースで走ったことのあるサイクリストは多いはず。ヒルクライムでモタモタする順デュアスリートをゴボウ抜きする快感はクセになるはず。ただし、その後のランでリベンジされるかどうかはランの練習次第。たまには異種競技に挑戦してみれば眠った筋肉の鍛錬にもなりますよ!
text:小峰眞実(マルチスポーツライター)
photo:MSPO