2010/11/26(金) - 08:47
2011年シーズンに向けて、水面下でスーパーチームが動き出している。その名はルクセンブルク・プロサイクリングチーム。シュレク兄弟を中心に形成されるチームは、UCI(国際自転車競技連合)のトップカテゴリーであるプロチームのライセンスを獲得し、その勢力を広げつつある。イタリア在住のグレゴー・ブラウンがレポート。
UCIは今月初旬、2011年度のチーム所属選手トップ15の過去2年間の成績を基にした複雑なチームランキングを発表した。そこでチームスカイやガーミン、レディオシャックと言った強豪を抑えてトップに立ったのが、ルクセンブルク・プロサイクリングチーム。その高い戦力が認められ、同チームは設立初年度ながらプロチームライセンスを獲得し、トップチームの仲間入りを果たした。
まだ実戦で1勝も飾っていないチームがチームランキングでトップに立つという事態。一体どうやってそんなチームが生まれたのだろうか?
チームの構想は、ルクセンブルクではなく、ベルギーで動き始めた。新チームのマネージャーを務めるデンマーク人のブライアン・ニガード氏と、ルクセンブルクの実業家フラヴィオ・ベッカ氏は、ロードレースの中心地であるベルギー・コルトレイクで初めて接触した。
「そこで何時間も話し合った。刺激的な話が続いたので、半時間ぐらいの感覚だったよ。僕がマネージャーを任されると聞いてビックリ仰天だった」。当時チームスカイのプレス担当を務めていたニガード氏は、迷うことなく新チームに関わることを決めた。
長らくスーパーチームの構想を練っていたベッカ氏は、当時サクソバンクのディレクターを務めていたキム・アンデルセン氏とも秘密裏に面会。スーパーチーム構築のため、ニガード氏とアンデルセン氏は6月にそれぞれの所属チームとの契約を打ち切った。
新チームでニガード氏はジェネラルマネージャーを、アンデルセン氏はチームマネージャーを務める。サクソバンクで一緒に働いた経験から、2人の息はピッタリ合っている。
そんなチームの中枢を担うのは、紛れもなくルクセンブルクのシュレク兄弟だ。弟アンディは、総合2位に入った今年のツール・ド・フランス期間中に「ツール後のことは何も話したくない。サクソバンクにはとても満足しているんだ」とコメントしながらも、兄フランクとともにサクソバンクを離脱。母国スーパーチームでのエースの座を選んだ。ニガード氏によると、シュレク兄弟のチーム合流はツール前にすでに決まっていた。
ニガード氏はツール期間中にアメリカのトレック社と契約交渉を行なうなど奔走。ランス・アームストロング(アメリカ)とアルベルト・コンタドール(スペイン)によってツールを9回制しているトレックのバイクが、新しいスーパーチームに打ってつけだとニガード氏は考えた。
目玉選手はシュレク兄弟だけではない。解散するチームミルラムからファビアン・ウェーグマン(ドイツ)とリーナス・ゲルデマン(ドイツ)を獲得。更にダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)を獲得して対応レースの幅を広げた。直近ではオリバー・ザウグ(スイス)とヨースト・ポストゥーマ(オランダ)のチーム加入が発表されている。
元所属チームという利点を活かして、ニガード氏はサクソバンクから実に7名の選手を引き抜くことに成功。ヤコブ・フグルサング(デンマーク)やスチュアート・オグレディ(オーストラリア)、イェンス・フォイクト(ドイツ)と言ったトップ選手がそこに含まれる。そして現在、8人目の選手との契約交渉が進行中だ。
9月17日、ファビアン・カンチェラーラ(スイス)がサクソバンクとの契約を破棄し、1年前倒しでチームを離れると発表した。カンチェラーラは契約破棄の違約金として183万ユーロ(約2億円)をサクソバンクに支払ったとされている。年俸120万ユーロ(約1億3400万円)の1.5倍に相当する額だ。
契約破棄の前に、カンチェラーラはニガード氏の新チームが183万ユーロを肩代わりする確約を得ていたとの報道もあり、チーム加入が有力視されている。
今は正式は発表を待つのみ。残りのスタッフや選手、そしてスポンサー企業の名前が徐々に明らかにされるだろう。ベルギーの大手通信会社ベルガコムと、デンマークのワイヤレスヘッドセットメーカー・ジャブラ社がスポンサー契約交渉の最終段階。合計5社がメインスポンサーとして名前を連ねる予定で、“ルクセンブルク”という国籍を強調したチーム名になる。
ルクセンブルクのスーパーチームは12月6日から12日までスイスアルプス一帯でトレーニングギャンプを行なう予定。それまでに所属選手が全て明らかにされているはずだ。
text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji
UCIは今月初旬、2011年度のチーム所属選手トップ15の過去2年間の成績を基にした複雑なチームランキングを発表した。そこでチームスカイやガーミン、レディオシャックと言った強豪を抑えてトップに立ったのが、ルクセンブルク・プロサイクリングチーム。その高い戦力が認められ、同チームは設立初年度ながらプロチームライセンスを獲得し、トップチームの仲間入りを果たした。
まだ実戦で1勝も飾っていないチームがチームランキングでトップに立つという事態。一体どうやってそんなチームが生まれたのだろうか?
チームの構想は、ルクセンブルクではなく、ベルギーで動き始めた。新チームのマネージャーを務めるデンマーク人のブライアン・ニガード氏と、ルクセンブルクの実業家フラヴィオ・ベッカ氏は、ロードレースの中心地であるベルギー・コルトレイクで初めて接触した。
「そこで何時間も話し合った。刺激的な話が続いたので、半時間ぐらいの感覚だったよ。僕がマネージャーを任されると聞いてビックリ仰天だった」。当時チームスカイのプレス担当を務めていたニガード氏は、迷うことなく新チームに関わることを決めた。
長らくスーパーチームの構想を練っていたベッカ氏は、当時サクソバンクのディレクターを務めていたキム・アンデルセン氏とも秘密裏に面会。スーパーチーム構築のため、ニガード氏とアンデルセン氏は6月にそれぞれの所属チームとの契約を打ち切った。
新チームでニガード氏はジェネラルマネージャーを、アンデルセン氏はチームマネージャーを務める。サクソバンクで一緒に働いた経験から、2人の息はピッタリ合っている。
そんなチームの中枢を担うのは、紛れもなくルクセンブルクのシュレク兄弟だ。弟アンディは、総合2位に入った今年のツール・ド・フランス期間中に「ツール後のことは何も話したくない。サクソバンクにはとても満足しているんだ」とコメントしながらも、兄フランクとともにサクソバンクを離脱。母国スーパーチームでのエースの座を選んだ。ニガード氏によると、シュレク兄弟のチーム合流はツール前にすでに決まっていた。
ニガード氏はツール期間中にアメリカのトレック社と契約交渉を行なうなど奔走。ランス・アームストロング(アメリカ)とアルベルト・コンタドール(スペイン)によってツールを9回制しているトレックのバイクが、新しいスーパーチームに打ってつけだとニガード氏は考えた。
目玉選手はシュレク兄弟だけではない。解散するチームミルラムからファビアン・ウェーグマン(ドイツ)とリーナス・ゲルデマン(ドイツ)を獲得。更にダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)を獲得して対応レースの幅を広げた。直近ではオリバー・ザウグ(スイス)とヨースト・ポストゥーマ(オランダ)のチーム加入が発表されている。
元所属チームという利点を活かして、ニガード氏はサクソバンクから実に7名の選手を引き抜くことに成功。ヤコブ・フグルサング(デンマーク)やスチュアート・オグレディ(オーストラリア)、イェンス・フォイクト(ドイツ)と言ったトップ選手がそこに含まれる。そして現在、8人目の選手との契約交渉が進行中だ。
9月17日、ファビアン・カンチェラーラ(スイス)がサクソバンクとの契約を破棄し、1年前倒しでチームを離れると発表した。カンチェラーラは契約破棄の違約金として183万ユーロ(約2億円)をサクソバンクに支払ったとされている。年俸120万ユーロ(約1億3400万円)の1.5倍に相当する額だ。
契約破棄の前に、カンチェラーラはニガード氏の新チームが183万ユーロを肩代わりする確約を得ていたとの報道もあり、チーム加入が有力視されている。
今は正式は発表を待つのみ。残りのスタッフや選手、そしてスポンサー企業の名前が徐々に明らかにされるだろう。ベルギーの大手通信会社ベルガコムと、デンマークのワイヤレスヘッドセットメーカー・ジャブラ社がスポンサー契約交渉の最終段階。合計5社がメインスポンサーとして名前を連ねる予定で、“ルクセンブルク”という国籍を強調したチーム名になる。
ルクセンブルクのスーパーチームは12月6日から12日までスイスアルプス一帯でトレーニングギャンプを行なう予定。それまでに所属選手が全て明らかにされているはずだ。
text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji