2010/10/07(木) - 18:22
先週オーストラリア・ジーロングで開催されたロード世界選手権で、アメリカのタイラー・フィニーはタイムトライアル優勝、ロードレース3位という結果を残した。現在フィニーは20歳。来シーズンはランス・アームストロングのトレック・リブストロングU23チームを離れ、BMCレーシングチームへと移籍する。
フィニーは、これまでアマチュア選手として申し分ないキャリアを歩んできた。
今年に限って見ても、フィニーはパリ〜ルーベのU23レースを始め、ツアー・オブ・ユタとツール・ド・ラヴニールでステージ優勝、全米選手権タイムトライアル優勝、トラック世界選手権個人追い抜き優勝という輝かしい成績を残している。
「本当に自分でも感心するような成績だ。予想以上の成績で驚いている。今回更にタイムトライアルのタイトルとロードレースの銅メダルを手にした。大成功のシーズンだ」。フィニーはそう振り返る。
コロラド州・ボルダー出身のフィニーは、周囲の期待に応えるように成長を続けてきた。トラック競技をベースに走りを磨き、昨年からロードレースに積極的に参戦。2年連続のパリ〜ルーベU23レース制覇で頭角を現した。このU23レースでは過去にステファン・ロッシュ(アイルランド)やトル・フースホフト(ノルウェー)が優勝している。しかし大会連覇はフィニーが初だ。
いつプロチームデビューしてもおかしくないほどの好成績を残したにも関わらず、フィニーは2010年もトレック・リブストロングU23チームに残った。そして2011年、ついにフィニーはプロ選手としての一歩を踏み出す。アームストロングのレディオシャックではなく、アメリカのBMCレーシングチームのメンバーとして。
「BMCレーシングチームでプロ選手のキャリアをスタートさせることを心待ちにしている」。フィニーは自信に溢れた表情で語る。
「チームに順応して、エースたちの活躍に貢献したい。いずれチームリーダーを任されるときが来ると思うけど、今はアシストとして走る覚悟は出来ている。パリ〜ルーベのプロレースを走れると考えただけでワクワクする。ジョージ(ヒンカピー)にパヴェの極意を教わりながら経験を積みたい」。
トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)は過去の自分をフィニーの姿に投影している。ボーネンは2002年にアメリカのUSポスタルでプロデビュー。同年パリ〜ルーベでヒンカピーをアシストし、自らも3位に入った。その後ボーネンはクイックステップに移籍し、チームリーダーとしてパリ〜ルーベで3勝(2005年、2008年、2009年)を飾る。
フィニーにはボーネンと同等の、もしくはそれ以上のカリスマ性を感じさせる。何と言っても、ツール・ド・フランスでステージ2勝した名選手デーヴィスを父に、ロサンゼルス五輪ロードレース金メダリストのコニーを母にもつ正真正銘のサラブレッドなのだ。
「好運なことに、僕は素晴らしい両親のもとに生まれ育った。彼らは素晴らしい遺伝子を与えてくれたばかりでなく、手厚くサポートも与えてくれている。今回の世界選手権でも、母親がわざわざジーロングに駆けつけてくれた。パーキンソン病の慈善活動の資金調達に忙しい父親は、朝4時からテレビに食いついているらしい」。
父親デーヴィスのように、フィニーはツール・ド・フランスのスターになり得る。2012年のロンドン五輪のトラック競技種目から個人追い抜きが取り払われたことで、フィニーは五輪金メダル獲得の夢を諦めざるをえなくなった。
「個人追い抜きは長年情熱をもって打ち込んできた競技。でももうプログラムの中に存在しない。情熱が削がれてしまった。だからこれからはロードレースとタイムトライアルに打ち込みたいと思っている」。
「個人タイムトライアルの秘訣は、他のどの選手よりも追い込めるかに懸かっている。苦痛を手なずけながら、高い精神力を維持し続けなければならない。変人に思われるかも知れないけど、自分にぴったりの競技だ」。
ロードレースに傾倒するフィニーはロンドン五輪のオムニアム出場を決めかねている。ロードレースへの情熱は計り知れない。その情熱が、世界選手権U23個人タイムトライアル優勝、ロードレース銅メダルとう結果をもたらした。
彼のタイムトライアル能力を見ると、父親が成し遂げたツールのステージ2勝を軽々と抜きそうな勢いを感じる。もしかしたらツールで総合優勝を狙えるようなオールラウンダーに化ける可能性もある。タイラー・フィニー。その名前は覚えておいて損はしないだろう。
text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji
フィニーは、これまでアマチュア選手として申し分ないキャリアを歩んできた。
今年に限って見ても、フィニーはパリ〜ルーベのU23レースを始め、ツアー・オブ・ユタとツール・ド・ラヴニールでステージ優勝、全米選手権タイムトライアル優勝、トラック世界選手権個人追い抜き優勝という輝かしい成績を残している。
「本当に自分でも感心するような成績だ。予想以上の成績で驚いている。今回更にタイムトライアルのタイトルとロードレースの銅メダルを手にした。大成功のシーズンだ」。フィニーはそう振り返る。
コロラド州・ボルダー出身のフィニーは、周囲の期待に応えるように成長を続けてきた。トラック競技をベースに走りを磨き、昨年からロードレースに積極的に参戦。2年連続のパリ〜ルーベU23レース制覇で頭角を現した。このU23レースでは過去にステファン・ロッシュ(アイルランド)やトル・フースホフト(ノルウェー)が優勝している。しかし大会連覇はフィニーが初だ。
いつプロチームデビューしてもおかしくないほどの好成績を残したにも関わらず、フィニーは2010年もトレック・リブストロングU23チームに残った。そして2011年、ついにフィニーはプロ選手としての一歩を踏み出す。アームストロングのレディオシャックではなく、アメリカのBMCレーシングチームのメンバーとして。
「BMCレーシングチームでプロ選手のキャリアをスタートさせることを心待ちにしている」。フィニーは自信に溢れた表情で語る。
「チームに順応して、エースたちの活躍に貢献したい。いずれチームリーダーを任されるときが来ると思うけど、今はアシストとして走る覚悟は出来ている。パリ〜ルーベのプロレースを走れると考えただけでワクワクする。ジョージ(ヒンカピー)にパヴェの極意を教わりながら経験を積みたい」。
トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)は過去の自分をフィニーの姿に投影している。ボーネンは2002年にアメリカのUSポスタルでプロデビュー。同年パリ〜ルーベでヒンカピーをアシストし、自らも3位に入った。その後ボーネンはクイックステップに移籍し、チームリーダーとしてパリ〜ルーベで3勝(2005年、2008年、2009年)を飾る。
フィニーにはボーネンと同等の、もしくはそれ以上のカリスマ性を感じさせる。何と言っても、ツール・ド・フランスでステージ2勝した名選手デーヴィスを父に、ロサンゼルス五輪ロードレース金メダリストのコニーを母にもつ正真正銘のサラブレッドなのだ。
「好運なことに、僕は素晴らしい両親のもとに生まれ育った。彼らは素晴らしい遺伝子を与えてくれたばかりでなく、手厚くサポートも与えてくれている。今回の世界選手権でも、母親がわざわざジーロングに駆けつけてくれた。パーキンソン病の慈善活動の資金調達に忙しい父親は、朝4時からテレビに食いついているらしい」。
父親デーヴィスのように、フィニーはツール・ド・フランスのスターになり得る。2012年のロンドン五輪のトラック競技種目から個人追い抜きが取り払われたことで、フィニーは五輪金メダル獲得の夢を諦めざるをえなくなった。
「個人追い抜きは長年情熱をもって打ち込んできた競技。でももうプログラムの中に存在しない。情熱が削がれてしまった。だからこれからはロードレースとタイムトライアルに打ち込みたいと思っている」。
「個人タイムトライアルの秘訣は、他のどの選手よりも追い込めるかに懸かっている。苦痛を手なずけながら、高い精神力を維持し続けなければならない。変人に思われるかも知れないけど、自分にぴったりの競技だ」。
ロードレースに傾倒するフィニーはロンドン五輪のオムニアム出場を決めかねている。ロードレースへの情熱は計り知れない。その情熱が、世界選手権U23個人タイムトライアル優勝、ロードレース銅メダルとう結果をもたらした。
彼のタイムトライアル能力を見ると、父親が成し遂げたツールのステージ2勝を軽々と抜きそうな勢いを感じる。もしかしたらツールで総合優勝を狙えるようなオールラウンダーに化ける可能性もある。タイラー・フィニー。その名前は覚えておいて損はしないだろう。
text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji