今までスピードマンが有利な大会だったが、今年は厳しい山岳コースが彼らの前に立ちはだかる。ハイライトはその第2ステージ。そして最終日のクリテリウムも昨年は劇的なレース展開で沸かせた。ツール・ド・北海道が9月16日(木)から始まる。

大自然をバックに走るのが最大の魅力大自然をバックに走るのが最大の魅力 photo:HIdeaki.TAKAGI第24回の今年は、道南エリアが舞台のツール・ド・北海道。初日にプロローグ、公道レースが3日間、そして最終日は恒例のクリテリウムで、合計1プロローグ、4ステージの5日間636kmだ。
UCIアジアツアー2.2に位置づけられ、ステージの発着点が違う、町から町へのライン・ステージレースとしては国内唯一のもの。毎日の移動がつきもので、選手だけでなくメカニックやマッサージャーも重要なポイントとなり、まさにチームの総合力が問われるレースだ。

国内コンチネンタルチームはすでに試走を済ませており、各ステージの戦略を立てている真っ最中。
景色の変化の大きい道南でのレースは、イコール毎ステージ全く違うタイプのコースだ。
今年のハイライトはずばり第2ステージ。倶知安町とニセコ町を中心に8の字型に取るコースは山岳から丘陵地帯を通る。平地がほとんどないといってよいほどのハードコースで、今年の大勢はここで決まる。

シクロワイアードでは、これら公道コースのすべてを事前に自動車ないし自転車で調査した。コースから今年の見どころを紹介しよう。


第1ステージ100km付近、海岸沿いの道が続く第1ステージ100km付近、海岸沿いの道が続く photo:HIdeaki.TAKAGIプロローグ 9月16日(木)0.8km 個人タイムトライアル 函館市営函館競輪場
午前中に監督会議等終えて14時30分からいよいよレースが始まる。
400mトラックを2周する個人タイムトライアルで、ノーマルロードバイクのみ使用できる。DHバーやディスクホイールは使えない。800mと言えどもおろそかにできない。全日程通じて唯一、1秒未満が記録されるからだ。集団ゴールのタイム差なしが続いたときに重要度が増す。
バンクでの走りは経験がモノを言うが、日本選手のほとんどはトラックレースの経験があるためこの点で大きな差はない。優勝候補はトラックと掛け持ちの盛一大(愛三工業レーシングチーム)、そして宮澤崇史(TEAM NIPPO)。鹿屋体育大学をはじめとする大学生の走りも注目だ。


第2ステージ110km付近、上りきるとそこにはこんな景色が第2ステージ110km付近、上りきるとそこにはこんな景色が photo:HIdeaki.TAKAGI第1ステージ 9月17日(金)218km 北斗市~寿都町
初日からいきなり今大会最長ステージだ。その半分以上は海岸沿いの国道。スタートから30km地点で標高差400m弱の中山峠があるが、その後の平坦が長いため決定的な逃げにはならないだろう。海岸沿いの国道はトンネルが多く、小さなアップダウンも少しある。ゴール前は数%のゆるい上り坂。
問題は当日の天候だ。もしも海側から吹く西風ならばまともに横風となり、いくつもの斜めの列ができる。いったん千切れたら取り返しのつかない差ができることも。今大会ではセンターラインを越えてはならないので、ぎりぎりのところでの攻防が続く。昨年のオロロンラインでは同じような状況下で集団がいくつにも分断、落車も多発。いっぽうで多くの選手やチームがペナルティを受けた。
悪天候ならば少人数でのゴールスプリント、好天でも小集団の可能性がある。


第2ステージ ゴール地点のひらふ坂。羊蹄山をバックに第2ステージ ゴール地点のひらふ坂。羊蹄山をバックに photo:HIdeaki.TAKAGI第2ステージ 9月18日(土)186km 倶知安町~倶知安町
タウン・トゥ・タウンのレースにあって、この日はスタートとゴールが同じ場所、倶知安町ひらふスキー場前だ。大小さまざまな坂が延々と繰り返される、平坦のない186km。標高差合計は3000mほどだが、体感レベルはそれ以上。一番の坂は1つ目のKOM・チセヌプリへの標高差700m強だが、きついのはそれ以外の上りだ。2つ目のKOMは直線状の10%で厳しい。そして地図では平易に見える南半分が実は曲者で、峠らしい峠はないものの、常に数十mのアップダウンを繰り返す精神的に応えるもの。
そしてゴールまでの600mは10%の一直線の上り。上位でもばらばらにゴール、1秒以上のタイム差がつくこと必至。総合狙いの選手は、タイム差をとられないように集団でのゴールが必要だ。
長いのぼりは序盤にあるため、軽量ヒルクライマーがそこで抜け出せても、中盤以降の大小の坂で追いつかれる可能性がある。山岳ステージだが、何度でもアタックを繰り出せるタフな選手が上位にくるだろう。
おそらくかなりの数の選手がふるいにかけられるステージ。できればヒルクライマーたちの華麗な逃げを見たいものだ。


第3ステージ35km付近、オロフレ峠への道は長く厳しい第3ステージ35km付近、オロフレ峠への道は長く厳しい photo:HIdeaki.TAKAGI第3ステージ 9月19日(日)169km 室蘭市~恵庭市
今大会最大の峠、オロフレ峠が聳え立つのが公道コース最終の第3ステージだ。オロフレ峠は海抜ほぼゼロメートルから一気に878mまで上るもの。登別温泉あたりで少し下るが、この序盤区間がきつい。全体としては北海道の峠らしく急勾配ではないものの、ヒルクライマーたちが活躍する場面だ。この後は緩やかな峠や平坦が続くので、少しのタイム差ならば吸収されるだろう。
一番きついのは支笏湖を過ぎてからの2段階に上る2つ目のKOMだ。ここからゴールまでは下り基調の32km。力のある選手が逃げ切るには丁度の距離。3年前は似たコースで外国選手2人に逃げ切られ、総合トップだった新城幸也(当時梅丹本舗)が逆転されてしまった場面だ。
今年の恵庭市内へ下るコースは、大会始まって以来はじめて通る道。最後は自衛隊敷地内の700m直線のゴール。小集団でのゴールになるだろう。ここで総合首位に立った選手が総合優勝へ王手をかける。

第4ステージ 9月20日(月)63km 札幌市モエレ沼公園クリテリウム
例年とコースが変わり、1周4.17kmと少し長くなった。そのぶん周回も15周に減った。モエレ山を越える坂がなくなり、公園全体近くを回るコース。
例年ならば前日までのリーダージャージがそのまま悠々とゴールするステージ。しかし昨年は大きなドラマがあった。総合3位だった鈴木真理(シマノレーシング)が逃げ続けて途中のボーナスタイムを取り続け、総合トップに立つ宮澤崇史(当時梅丹本舗)にあわや大逆転の5秒差にまでつめたのだ。これは凱旋出場となった阿部嵩之(シマノレーシング)の独走力によるところが大きかった。
今年もこのボーナスタイムはある。全部取れば19秒。果たして今年はどんな展開になるだろうか。


見どころ チーム・選手編はのちほど掲載します。

photo&text:高木秀彰
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