2010/09/08(水) - 21:32
「イギリス人がイギリスのパイプを使い、イギリス国内でハンドメイドで造り上げるMTB」-カーティスというマウンテンバイクを端的に言い表すと、こういうことだという。1960年代よりオートバイのフレームをハンドメイドで造ってきたブライアン・カーティスが、今も自身の工房で手造りするMTBがこのカーティスだ。
カーティス XC100 photo:Makoto.AYANO
フレームビルダーとしてのブライアン・カーティスの歴史は、1960年代の後半から始まる。当時はホンダまたはファクトリー・ヤマハのモトクロス用フレームをハンドメイドで制作し、イギリス選手権やヨーロッパ選手権で好成績を残し、70年代には広くトップライダーに使用された。
その後80年代に入り、あるBMXライダーからの要請によりBMX用フレームを制作したことが、カーティスと自転車との最初の出会いだという。
当時供給されるメジャーブランドフレームの強度不足に悩んでいたそのBMXライダーが、偶然訪れたモトクロスのレースでブライアン・カーティスを知り、BMXフレームの制作を依頼。それまでフレームが折れるかどうか心配でライディングに集中できず、眠れない夜を過ごしていた彼も、それ以来ぐっすりと眠れるようになり、成績も飛躍的に伸びていったという逸話も残っている。
カーティスに最初にBMX制作を依頼したその張本人のゲーリー・ウッドハウス氏は、今でもカーティスでチームサポートや溶接デザインの仕事に携わっているという。
T45のプレーン管を使用するメインフレーム。そこには蓄積された多くのノウハウが注がれる
工房はロンドンから西に200kmの歴史のある静かな場所で作られる
通常は自転車のフレームに使用されるパイプは、位置により肉厚の変化するバテッド管が使用されることが多い。ところがカーティスは、厚みの変化しないT45という名称のプレーン管を使用している。剛性のコントロールや、重量面でもあえて不利なプレーン管を選択するのはなぜだろうか?
肉厚の変化するバテッド管は、長さや切る位置により肉厚が変わり剛性に違いが出てくる。もちろん適正に組み合わせて剛性を調整することも出来るし、剛性があまり要らない場所は肉厚が薄い部分を使えるので、より軽量に仕上がる。ところがパイプの長さごとにバテッドの入る位置は指定されてはいるが、果たして適正な位置からバテッドが入っているか?は、外から見ただけでは判らないのが現状である。
これは、パイプメーカーにオリジナルパイプを発注することが出来ない、カーティスのような小規模メーカーにとって、サイズ違いによるライディングフィールの差をなくすためには、大きな問題だという。
“HAND MADE IN ENGLAND”と誇らしげに入るヘッドマーク
イングランド国旗とT45のマークがフレームに入る。
リアステーもストレートで全く無駄のない作りだ
対してプレーン管は、パイプの肉厚は一定である。では、どうやってサイズの違いや、剛性の違いをコントロールするのか?それは、理想的なランディングフィールになるよう、パイプの長さから最適なプレーン管の厚みを見出して、フレームを造り上げることだという。
今までの膨大なケーススタディとローカルライダーのインプレッションから最適なプレーン管の厚みを見出して、フレームを造り上げる。このすばらしくアナログなテクノロジーは「小規模メーカーが出来る最善の策」と、ブライアン・カーティスは言い切っている。
もちろんサイズ違いによるライディングフィールの違いを無くすため、最新のCADなどを駆使して机上で強度計算させて、フレームを作り上げていく方法もある。しかしハンドメイドメーカーのカーティスが行なっているこのシンプルなやり方は、フレーム素材にモトクロス時代から使い慣れたT45パイプを使用し、なおかつ蓄積されたノウハウがあるからこそ、出来ることであろう。
BB回りの溶接もとてもキレイに仕上げられる
キレイな仕上げのエンド部分。ディスクブレーキ用のほか、Vブレーキ用もディスクとの兼用も選べる
カーティスのクロスカントリーモデルは、T45パイプを使ったXCシリーズと、レイノルズ853を使ったXC・SPRINTシリーズの2アイテム。このXC100はT45パイプを使ったモデルで、そのパイプ特性から日本の里山を気持ちよく走るのに適しているという。一方のレイノルズ853を使ったXC・SPRINTはレースも視野に入れ、ペダリングによりダイレクトに反応して前に進む設計として、差別化をしている。
このXC100は、特に意識しないで自転車なりに乗ると硬い印象があるものの、積極的に体を使い、コーナーでバームに押し当てるような走り方をすると適度にフレームがしなり、出口ではしなりを活かして伸びやかに加速していく感覚が味わえるということだ。
また上りや下りでも自転車の真中に乗ることを意識するようなセッティングを行なっている。その分スイートスポットは広くはないので、そこを外したときには走りづらくなるものの、逆にピンスポットでど真ん中に乗ったときには、自転車との大きな一体感が得られるという。
今でも手作りを貫き、制作も驚くほどの手作業で作られるという
シートステーより、トップチューブが一段下がることがカーティスの特徴
T45というパイプには制作者ブライアン・カーティスの拘りが詰まっている
カーティスはいわゆるイヤーモデルというサイクルでの製品展開はしていない。ブライアン・カーティスが自分でテストをし、ローカルライダーの意見を取り入れ、トライ&エラーを重ねて納得出来たときにモデルチェンジする。ただし、それらは改良と呼べる範囲のもので、大きな変更ではない。
ちなみにXCシリーズは初代モデルが出てから5年ほどのうち4回ほどのモデルチェンジをして、外観からは判らなくても日進月歩の進化を続けているという。
この英国人気質溢れるハンドメイドバイク、カーティスXC100を2人はどう評価したのだろうか?それでは、気になるインプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「路面状況を掴みやすいので日本の四季の様々な路面変化にも柔軟に対応できる」 鈴木祐一(Rise Ride)
「路面状況を掴みやすいので日本の四季の様々な路面変化にも柔軟に対応しやすい」鈴木祐一 里山のトレイルを走るには、これはもってこいのバイクという感じだ。オフロードでは、下り性能に振ったバイクでは登りが辛くなるし、逆に登り性能ばかりに長けたバイクでも下りが怖くなってしまう。
MTBの場合は、常に変化する山道の路面と対話しながら走ることも楽しさの一つとなる。路面から伝わってくるフィーリングを感じ取り、走るラインを変えたり、障害物を越えるアクションを起こしたり。登りも下りもどちらでも扱いやすいカーティスは、そういう場面でも自分のやりたい事が素直に出来てしまうことが印象的だった。
オフロードでの安定感もよい。もちろんサスペンションのセッティングや全体のジオメトリー、フレームの肉厚や硬さも含めて複合的に影響している部分だけれど、それらが日本の路面に見事にマッチしている。路面状況を掴みやすいので、日本の四季の様々な路面変化にも柔軟に対応しやすいだろう。それに路面状況が判りやすいと、バイクを操っていて怖くないし、結果として扱いやすいことに繋がる。
フレームは、いわゆる“クロモリの柔らかそうなイメージ"からすると、少し硬い印象がある。そういうと弾かれるようなイメージを抱くかもしれないが、実際に走ってみるとそんなことはなくて、硬さの中にも路面と対話して追従性をコントロールできる余地がちゃんと残っている。ペダルやハンドルから伝わる感触や、五感からもいろいろと感じ取れるバイクといえる。
このバイクはポジションも含めて、後輪を軸にして前輪や車体の前側をコントロールしやすい設計となっている。MTBの場合は障害物を超えたり、ラインを変更したりするときに、前側のコントロールが大切になってくる。カーティスはフレームの芯がしっかりと強いので、この硬さが良い方向でバイクコントロールのしやすさに繋がっている印象だった。これが柔らかいバイクだとブレが生じて、とても扱い難くなってしまう。芯がしっかりしたフレームは、初心者にはブレのない安心感に繋がるし、上級者にはピンポイントに攻めることが出来る鋭さにも繋がる。
滑りやすい路面でもフィーリングが掴みやすいバイクなので、登りでもトラクションのコントロールがしやすいところもいい。
いまは多くのカーボンフレームがある中で、カーティスは見た目がとてもシンプルなバイクだ。MTBには多くのカスタムパーツがあるので、自分の好みのパーツを組み合わせることで、楽しみも増してくるバイクだと思う。
「積極的に操作しようという明確な意思を持つと意のままに操れる」 三上和志(サイクルハウス ミカミ)
「積極的に操作しようという明確な意思をもっていると意のままに操れる」三上和志 この見た目が大好きなので、乗るのを楽しみにしていたバイク。
以前にバームのついたMTBコースでも乗ったことがあるけれど、最初の印象はすごく硬いバイクだった。
しなやかさのないダートジャンプ用のバイクだと思って下ってみると、予想に反して吸い付くように安定してくる。荒れた路面でも弾かれることもないし、ちょっと漕いだときにも、伸びやかさが生まれてくる。
クロモリフレームとは一口に言っても、実はクロモリにもいろいろあって、例えば代表的なクロモリパイプの“レイノルズ853”は、フレームがタワんだ後の戻りが早くて、反応もキビキビとした感じが特徴といえる。どちらかというと、こういう感覚の方に慣れてしまっている。
それに対して、カーティスに使われる“T-45”というパイプは、ゆっくりタワんでゆっくり戻る。しかもしっかりと戻ってくれるので、バンクに入ってタワんだ力を一旦溜め込んで、コーナーの出口に向かって伸びやかさを伴って進んでいく。ゆっくりな振幅だけど、バイクを前へ前へと押し出してくれる。もしこれが安いクロモリだと、タワんだ後の跳ね返りが弱くて腰砕けの感じとなるけど、それとは全く別物。
このバイクはレースに使うというよりも、路面と対話しながらフレームの伸びやかさを楽しんで乗ると面白い。一見するとダウンチューブはもの凄く細いし、これでハンドリングはどうなのか?と思ったけれど、よく見ればしっかりと補強が入っているし、まるで心配はいらない。走ってみても、例えば狙ったラインの先に障害物があって急に進路を変更する場合でも、すごくよく反応してくれる。だから乗り手の方がバイクを積極的に操作して行こうという、明確な意思をもっていると意のままに操れるけど、その反面フラついた操作で曖昧に乗っていると、むしろフラフラした印象の方が強いかもしれない。
レース用のバイクは世の中にイイものがいっぱいあるけれど、カーティスはそれらとは違って、里山でフレームの良さを味わいながら楽しんで乗っていく、そんなバイクだ。玄人がバイクを操る喜びとともに乗るには、とてもいいバイクだと思う。
フレームはサイズオーダーに対応しているので、各部分の長さを指定して、自分のフォームにぴったり合ったバイクを手にすることも出来る。ただリアセンターの長さなど、カーティスの考えるスケルトンだから出てくる味もあるので、過度の変更はしないで、カーティスらしさと自分らしく乗れる点を融合させていきたい。ただのオーダーフレームじゃなくて、どちらに傾くこと無く、お互いが対等な立場で乗ることが理想的。
細部の仕上げも綺麗だし、手作りの良さも味わいながら走りも楽しめるバイクだ。
カーティス XC100 photo:Makoto.AYANO
カーティス XC-80,100 フレーム
XC-80(フロントフォーク80mmストローク用)ハンドメイド・フレーム
XC-100(フロントフォーク100mmストローク用)ハンドメイド・フレーム
標準価格:228,000円(税込み)
フレーム:T45 ライトウェイト カスタム チューブ(イギリス製・特殊マンガン鋼 スチール)
ウエイト:約2.3kg(実測平均値ですが、サイズにより若干の個体差があります)
スペック:シートアングル73°
<選択可能なオプション>
トップチューブ:オーダー
ヘッドチューブ:オーダ―
シートチューブ:オーダー
ヘッドアングル:オーダ―
カラー:全7色パウダーコーティング
ブリティッシュ・レーシング グリーン、サテン ブラック、バトルシップ グレー、カーティス ブルー、Howies ブルー 、クリア オーバーベアメタル仕様(£20 extra)、カーティス・ホワイト
リアブレーキ:ディスクマウント&カンチマウント、ディスクマウントのみ、カンチマウントのみ
ボトルマウント:ダウンチューブのみ、シートチューブのみ、ダウン&シートチューブ
代理店からの注意:イギリス本国でハンドメイドされますので、製作に1、2ヶ月程掛かることをご了承下さい。
仕様は予告無く改良・変更される可能性があることをご了承下さい。
インプレライダーのプロフィール
鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
三上 和志 三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
text&edit :Takashi.KAYABA
photo:Makoto.AYANO
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フレームビルダーとしてのブライアン・カーティスの歴史は、1960年代の後半から始まる。当時はホンダまたはファクトリー・ヤマハのモトクロス用フレームをハンドメイドで制作し、イギリス選手権やヨーロッパ選手権で好成績を残し、70年代には広くトップライダーに使用された。
その後80年代に入り、あるBMXライダーからの要請によりBMX用フレームを制作したことが、カーティスと自転車との最初の出会いだという。
当時供給されるメジャーブランドフレームの強度不足に悩んでいたそのBMXライダーが、偶然訪れたモトクロスのレースでブライアン・カーティスを知り、BMXフレームの制作を依頼。それまでフレームが折れるかどうか心配でライディングに集中できず、眠れない夜を過ごしていた彼も、それ以来ぐっすりと眠れるようになり、成績も飛躍的に伸びていったという逸話も残っている。
カーティスに最初にBMX制作を依頼したその張本人のゲーリー・ウッドハウス氏は、今でもカーティスでチームサポートや溶接デザインの仕事に携わっているという。
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通常は自転車のフレームに使用されるパイプは、位置により肉厚の変化するバテッド管が使用されることが多い。ところがカーティスは、厚みの変化しないT45という名称のプレーン管を使用している。剛性のコントロールや、重量面でもあえて不利なプレーン管を選択するのはなぜだろうか?
肉厚の変化するバテッド管は、長さや切る位置により肉厚が変わり剛性に違いが出てくる。もちろん適正に組み合わせて剛性を調整することも出来るし、剛性があまり要らない場所は肉厚が薄い部分を使えるので、より軽量に仕上がる。ところがパイプの長さごとにバテッドの入る位置は指定されてはいるが、果たして適正な位置からバテッドが入っているか?は、外から見ただけでは判らないのが現状である。
これは、パイプメーカーにオリジナルパイプを発注することが出来ない、カーティスのような小規模メーカーにとって、サイズ違いによるライディングフィールの差をなくすためには、大きな問題だという。
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今までの膨大なケーススタディとローカルライダーのインプレッションから最適なプレーン管の厚みを見出して、フレームを造り上げる。このすばらしくアナログなテクノロジーは「小規模メーカーが出来る最善の策」と、ブライアン・カーティスは言い切っている。
もちろんサイズ違いによるライディングフィールの違いを無くすため、最新のCADなどを駆使して机上で強度計算させて、フレームを作り上げていく方法もある。しかしハンドメイドメーカーのカーティスが行なっているこのシンプルなやり方は、フレーム素材にモトクロス時代から使い慣れたT45パイプを使用し、なおかつ蓄積されたノウハウがあるからこそ、出来ることであろう。
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カーティスのクロスカントリーモデルは、T45パイプを使ったXCシリーズと、レイノルズ853を使ったXC・SPRINTシリーズの2アイテム。このXC100はT45パイプを使ったモデルで、そのパイプ特性から日本の里山を気持ちよく走るのに適しているという。一方のレイノルズ853を使ったXC・SPRINTはレースも視野に入れ、ペダリングによりダイレクトに反応して前に進む設計として、差別化をしている。
このXC100は、特に意識しないで自転車なりに乗ると硬い印象があるものの、積極的に体を使い、コーナーでバームに押し当てるような走り方をすると適度にフレームがしなり、出口ではしなりを活かして伸びやかに加速していく感覚が味わえるということだ。
また上りや下りでも自転車の真中に乗ることを意識するようなセッティングを行なっている。その分スイートスポットは広くはないので、そこを外したときには走りづらくなるものの、逆にピンスポットでど真ん中に乗ったときには、自転車との大きな一体感が得られるという。
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ちなみにXCシリーズは初代モデルが出てから5年ほどのうち4回ほどのモデルチェンジをして、外観からは判らなくても日進月歩の進化を続けているという。
この英国人気質溢れるハンドメイドバイク、カーティスXC100を2人はどう評価したのだろうか?それでは、気になるインプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「路面状況を掴みやすいので日本の四季の様々な路面変化にも柔軟に対応できる」 鈴木祐一(Rise Ride)
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MTBの場合は、常に変化する山道の路面と対話しながら走ることも楽しさの一つとなる。路面から伝わってくるフィーリングを感じ取り、走るラインを変えたり、障害物を越えるアクションを起こしたり。登りも下りもどちらでも扱いやすいカーティスは、そういう場面でも自分のやりたい事が素直に出来てしまうことが印象的だった。
オフロードでの安定感もよい。もちろんサスペンションのセッティングや全体のジオメトリー、フレームの肉厚や硬さも含めて複合的に影響している部分だけれど、それらが日本の路面に見事にマッチしている。路面状況を掴みやすいので、日本の四季の様々な路面変化にも柔軟に対応しやすいだろう。それに路面状況が判りやすいと、バイクを操っていて怖くないし、結果として扱いやすいことに繋がる。
フレームは、いわゆる“クロモリの柔らかそうなイメージ"からすると、少し硬い印象がある。そういうと弾かれるようなイメージを抱くかもしれないが、実際に走ってみるとそんなことはなくて、硬さの中にも路面と対話して追従性をコントロールできる余地がちゃんと残っている。ペダルやハンドルから伝わる感触や、五感からもいろいろと感じ取れるバイクといえる。
このバイクはポジションも含めて、後輪を軸にして前輪や車体の前側をコントロールしやすい設計となっている。MTBの場合は障害物を超えたり、ラインを変更したりするときに、前側のコントロールが大切になってくる。カーティスはフレームの芯がしっかりと強いので、この硬さが良い方向でバイクコントロールのしやすさに繋がっている印象だった。これが柔らかいバイクだとブレが生じて、とても扱い難くなってしまう。芯がしっかりしたフレームは、初心者にはブレのない安心感に繋がるし、上級者にはピンポイントに攻めることが出来る鋭さにも繋がる。
滑りやすい路面でもフィーリングが掴みやすいバイクなので、登りでもトラクションのコントロールがしやすいところもいい。
いまは多くのカーボンフレームがある中で、カーティスは見た目がとてもシンプルなバイクだ。MTBには多くのカスタムパーツがあるので、自分の好みのパーツを組み合わせることで、楽しみも増してくるバイクだと思う。
「積極的に操作しようという明確な意思を持つと意のままに操れる」 三上和志(サイクルハウス ミカミ)
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以前にバームのついたMTBコースでも乗ったことがあるけれど、最初の印象はすごく硬いバイクだった。
しなやかさのないダートジャンプ用のバイクだと思って下ってみると、予想に反して吸い付くように安定してくる。荒れた路面でも弾かれることもないし、ちょっと漕いだときにも、伸びやかさが生まれてくる。
クロモリフレームとは一口に言っても、実はクロモリにもいろいろあって、例えば代表的なクロモリパイプの“レイノルズ853”は、フレームがタワんだ後の戻りが早くて、反応もキビキビとした感じが特徴といえる。どちらかというと、こういう感覚の方に慣れてしまっている。
それに対して、カーティスに使われる“T-45”というパイプは、ゆっくりタワんでゆっくり戻る。しかもしっかりと戻ってくれるので、バンクに入ってタワんだ力を一旦溜め込んで、コーナーの出口に向かって伸びやかさを伴って進んでいく。ゆっくりな振幅だけど、バイクを前へ前へと押し出してくれる。もしこれが安いクロモリだと、タワんだ後の跳ね返りが弱くて腰砕けの感じとなるけど、それとは全く別物。
このバイクはレースに使うというよりも、路面と対話しながらフレームの伸びやかさを楽しんで乗ると面白い。一見するとダウンチューブはもの凄く細いし、これでハンドリングはどうなのか?と思ったけれど、よく見ればしっかりと補強が入っているし、まるで心配はいらない。走ってみても、例えば狙ったラインの先に障害物があって急に進路を変更する場合でも、すごくよく反応してくれる。だから乗り手の方がバイクを積極的に操作して行こうという、明確な意思をもっていると意のままに操れるけど、その反面フラついた操作で曖昧に乗っていると、むしろフラフラした印象の方が強いかもしれない。
レース用のバイクは世の中にイイものがいっぱいあるけれど、カーティスはそれらとは違って、里山でフレームの良さを味わいながら楽しんで乗っていく、そんなバイクだ。玄人がバイクを操る喜びとともに乗るには、とてもいいバイクだと思う。
フレームはサイズオーダーに対応しているので、各部分の長さを指定して、自分のフォームにぴったり合ったバイクを手にすることも出来る。ただリアセンターの長さなど、カーティスの考えるスケルトンだから出てくる味もあるので、過度の変更はしないで、カーティスらしさと自分らしく乗れる点を融合させていきたい。ただのオーダーフレームじゃなくて、どちらに傾くこと無く、お互いが対等な立場で乗ることが理想的。
細部の仕上げも綺麗だし、手作りの良さも味わいながら走りも楽しめるバイクだ。
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カーティス XC-80,100 フレーム
XC-80(フロントフォーク80mmストローク用)ハンドメイド・フレーム
XC-100(フロントフォーク100mmストローク用)ハンドメイド・フレーム
標準価格:228,000円(税込み)
フレーム:T45 ライトウェイト カスタム チューブ(イギリス製・特殊マンガン鋼 スチール)
ウエイト:約2.3kg(実測平均値ですが、サイズにより若干の個体差があります)
スペック:シートアングル73°
<選択可能なオプション>
トップチューブ:オーダー
ヘッドチューブ:オーダ―
シートチューブ:オーダー
ヘッドアングル:オーダ―
カラー:全7色パウダーコーティング
ブリティッシュ・レーシング グリーン、サテン ブラック、バトルシップ グレー、カーティス ブルー、Howies ブルー 、クリア オーバーベアメタル仕様(£20 extra)、カーティス・ホワイト
リアブレーキ:ディスクマウント&カンチマウント、ディスクマウントのみ、カンチマウントのみ
ボトルマウント:ダウンチューブのみ、シートチューブのみ、ダウン&シートチューブ
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仕様は予告無く改良・変更される可能性があることをご了承下さい。
インプレライダーのプロフィール
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サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
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埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
text&edit :Takashi.KAYABA
photo:Makoto.AYANO
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