2010/08/19(木) - 15:49
自動車やモーターサイクルの分野では、今ではラジアルタイヤがすっかり定番となっている。しかしスポーツバイク用のタイヤとしては、このマキシス ラディエールが世界で初めてラジアル構造を採用しての登場となる。クルマの世界を席巻したラジアルタイヤが、果たしてロードバイクタイヤとしては一体どのような効果を発揮するのか、とても興味深いところだ。
ラジアル構造を自転車用タイヤに初めて採用した
現在はタイヤの内部構造の違いにより、大きく分けて“バイアスタイヤ”と“ラジアルタイヤ”の2タイプが製造されている。2つの違いは、タイヤの骨格にあたるケーシングと呼ばれる細かな繊維による布の織り方により区別されている。
まずバイアスタイヤは、ケーシングが30〜40度の角度(バイアス)で交互に貼り合わせて作られる。構造がシンプルなバイアスタイアは、路面のギャップに対しても、タイヤ全体で吸収して、結果として乗り心地が良くなるというメリットがある。ラジアルタイヤに比べると、安価に出来ることもあって、従来の自転車用タイヤのほとんどは、バイアス構造を用いて作られている。
イラストで見るラジアル構造。オレンジ色の部分がシルクワームキャップ。これにより高い耐パンク性能も実現している
一方でラジアルタイヤは、バイアスタイヤに比べケーシングと呼ばれるタイヤの骨格自体を薄くできるが、それだけではタイヤの剛性が確保出来ないので、トレッド面に補強用のベルトを別に巻いて強度を高めている。つまりタイヤとして必要な柔軟性と、変形を抑える強度という2つの要求を、別々の部分が担うことになるので、設計の自由度が高くなり多くのメリットが生まれるのだ。その反面、構造が複雑になるので価格は高くなる傾向がある。
タイヤとしては、設計の自由度が高いラジアル構造の製品に有利な面が多くあるという。その証拠にスピード域の高いクルマやバイクでは今ではラジアルタイヤがすっかり主流となっている。特に乗用車ではほとんとがラジアルタイヤとなり、今ではバイアスタイヤはほぼ消滅していると言っても過言ではない。
マキシス ラディエール22c マキシス ラディエールは、そんなラジアル構造を自転車用タイヤに初めて採用したロードバイク用タイヤだ。ラジアル構造のメリットを存分に活かし「ソフトでしなやかな乗り心地」「高いコーナリンググリップ」「低い転がり抵抗」「長いタイヤ寿命」という相反する要素を高いレベルで実現しているという。またトレッドとカーカスの間には「シルクワームキャップ」を挟み込み、高い耐パンク性能も実現している。
このラディエールには、完全なスリックの「ラディエール22c」と、濡れた路面やコーナーでのグリップを高めるために、サイドにトレッドパターンを入れた「ラディエール23c」の2種類がある。今回テストしたのは、スリックの「ラディエール22c」だ。
世界初となるラジアル構造の自転車用タイヤ、マキシスラディエールとはどんなタイヤなのだろうか?早速インプレッションをお届けしよう。
見た目はかなりハイトが低くスパルタンだ ―インプレッション
まず、走り出す前にタイヤを確認してみると、ハイトが低く断面は尖った形状をしていて、かなりスパルタンな印象だ。テストの直前まで使用していたビットリアのオープンコルサ EVO CX 23とサイズを比較してみると。
ラディエール22c:幅 22.5mm、ハイト 18.3mm(実測値)
オープンコルサ EVO CX 23:幅 24.7mm、ハイト 22.0mm(実測値)
太さが違うので厳密な比較とはならないが、ハイトが随分と低く、直径では7mm強小さい。他社の22cタイヤと比較してもそれは言えそうだ。
ところが走り出してみると、見た目の予想とは裏腹に、落ち着いた走行感が印象的だ。ギャップや路面の荒れた場面でも、素早く不快な振動を抑えてくれる。細かなギャップを包み込むように飲み込んで、安定した走行に貢献する。
速度を上げるほどバイクの挙動が落ち着いてくるので、スピードを上げることが楽しくなってくる
撮影を行った道路の途中には路面が荒れているコーナーがある。いつもここは弾かれて、バイクをうまくバンクさせることが出来ないコーナーだ。ところが、このラディエールで通過すると、拍子抜けするほどスムーズにクリア出来る。振動吸収性がいいことに加え、独特のベッタリした走行感がグリップの高そうな安心感を生み、いつものような弾かれる不安感は無かった。
走行感は良くも悪くもベッタリしている。常にグリップが高そうで安心感はあるのだが、走行抵抗も大きそうだ。またタイヤハイトが低く重量も軽いため、ジャイロ効果が低く、スピードの持続性は高くない。決して軽い走行感のタイヤではないが、見た目のスパルタンな印象とは対照的に、直進安定性も高く、いつでも落ち着いている乗り心地だ。
と、ここまで自分の印象をまとめたところで、困ったことが起こった。撮影が終わって普段のバイクとホイールにラディエールを付け替えて走ったところ、まるで印象が変わってしまった。当たりはゴツゴツと硬く振動吸収は悪い。しかも落ち着きのないハンドリングまで顔を出す始末。グリップ感も希薄で、これではインプレと全く正反対だ。試しに空気圧を6.0bar付近まで下げてみると、乗り心地は多少回復したものの、前回のような感覚には到底及ばない。
フラット感が強いので、荒れた路面でも安心して走れる 撮影時との違いを考えてみると、バイクは違うしホイールも違う。そしてもう一つ大きな違いはチューブだった。撮影時には薄手の高性能チューブを使用していたが、このときはブランドも記憶に無いようなノーマルブチルチューブを使っていたのだ。そこで、さっそく高性能チューブを入れ替えてみたところ、あの落ち着いた乗り味が見事に戻ってきた。
試しに空気圧をいつもより0.5barほど高く設定してみたところ、また印象が変わった。気になっていた独特のベッタリした感じは姿を消し、軽い走行感が顔を出し、一気にスポーティなタイヤとなった。確かに独特の包み込むような吸収性は影を潜めるが、その代わりタイヤ全体に腰が出てきてギャップの吸収は素早く、フラットに保ってくれる。フラット感が強いので、荒れた路面でも安心して走ることができる。
しかもスピードを上げ、タイヤに大きな入力が掛かった場面の方がフラット感は高まる傾向にあり、感覚的には30km/h以上のスピード域になってから真価を発揮するように感じた。スピードを上げるほど、バイクの挙動が落ち着いてくるので、スピードを上げることが怖くなくなるのである。これがラジアルタイヤの特性ということだろうか。どうやらラディエールは、高めの空気圧のこの感覚の方が本来の性能なのだろう。
ただし良くも悪くも、チューブと空気圧の影響を大きく受ける傾向にあるようだ。だからもしラディエールを手に入れたときは、空気圧を調整したり、しなやかな高性能チューブを使うなど、少し工夫を加えて試してみてほしい。その組み合わせがうまくハマったときには、高い性能を発揮する。そんな潜在能力を秘めたタイヤだと思う。
マキシス ラディエール22c
マキシス ラディエール22c
サイズ:700×22c
カラー:BLK
コンパウンド:62a/58a/50a
TPI:120
ビード:フォルダブル
重量:210g
最高空気圧:145psi
価格:7,980円
マキシス ラディエール23c
マキシス ラディエール23c
サイズ:700×23c
カラー:BLK
コンパウンド:62a/58a/50a
TPI:120
ビード:フォルダブル
重量:225g
最高空気圧:145psi
価格:7,980円
impression & text :Takashi.KAYABA
photo:Makoto.AYANO
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現在はタイヤの内部構造の違いにより、大きく分けて“バイアスタイヤ”と“ラジアルタイヤ”の2タイプが製造されている。2つの違いは、タイヤの骨格にあたるケーシングと呼ばれる細かな繊維による布の織り方により区別されている。
まずバイアスタイヤは、ケーシングが30〜40度の角度(バイアス)で交互に貼り合わせて作られる。構造がシンプルなバイアスタイアは、路面のギャップに対しても、タイヤ全体で吸収して、結果として乗り心地が良くなるというメリットがある。ラジアルタイヤに比べると、安価に出来ることもあって、従来の自転車用タイヤのほとんどは、バイアス構造を用いて作られている。
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一方でラジアルタイヤは、バイアスタイヤに比べケーシングと呼ばれるタイヤの骨格自体を薄くできるが、それだけではタイヤの剛性が確保出来ないので、トレッド面に補強用のベルトを別に巻いて強度を高めている。つまりタイヤとして必要な柔軟性と、変形を抑える強度という2つの要求を、別々の部分が担うことになるので、設計の自由度が高くなり多くのメリットが生まれるのだ。その反面、構造が複雑になるので価格は高くなる傾向がある。
タイヤとしては、設計の自由度が高いラジアル構造の製品に有利な面が多くあるという。その証拠にスピード域の高いクルマやバイクでは今ではラジアルタイヤがすっかり主流となっている。特に乗用車ではほとんとがラジアルタイヤとなり、今ではバイアスタイヤはほぼ消滅していると言っても過言ではない。
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このラディエールには、完全なスリックの「ラディエール22c」と、濡れた路面やコーナーでのグリップを高めるために、サイドにトレッドパターンを入れた「ラディエール23c」の2種類がある。今回テストしたのは、スリックの「ラディエール22c」だ。
世界初となるラジアル構造の自転車用タイヤ、マキシスラディエールとはどんなタイヤなのだろうか?早速インプレッションをお届けしよう。
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まず、走り出す前にタイヤを確認してみると、ハイトが低く断面は尖った形状をしていて、かなりスパルタンな印象だ。テストの直前まで使用していたビットリアのオープンコルサ EVO CX 23とサイズを比較してみると。
ラディエール22c:幅 22.5mm、ハイト 18.3mm(実測値)
オープンコルサ EVO CX 23:幅 24.7mm、ハイト 22.0mm(実測値)
太さが違うので厳密な比較とはならないが、ハイトが随分と低く、直径では7mm強小さい。他社の22cタイヤと比較してもそれは言えそうだ。
ところが走り出してみると、見た目の予想とは裏腹に、落ち着いた走行感が印象的だ。ギャップや路面の荒れた場面でも、素早く不快な振動を抑えてくれる。細かなギャップを包み込むように飲み込んで、安定した走行に貢献する。
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走行感は良くも悪くもベッタリしている。常にグリップが高そうで安心感はあるのだが、走行抵抗も大きそうだ。またタイヤハイトが低く重量も軽いため、ジャイロ効果が低く、スピードの持続性は高くない。決して軽い走行感のタイヤではないが、見た目のスパルタンな印象とは対照的に、直進安定性も高く、いつでも落ち着いている乗り心地だ。
と、ここまで自分の印象をまとめたところで、困ったことが起こった。撮影が終わって普段のバイクとホイールにラディエールを付け替えて走ったところ、まるで印象が変わってしまった。当たりはゴツゴツと硬く振動吸収は悪い。しかも落ち着きのないハンドリングまで顔を出す始末。グリップ感も希薄で、これではインプレと全く正反対だ。試しに空気圧を6.0bar付近まで下げてみると、乗り心地は多少回復したものの、前回のような感覚には到底及ばない。
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試しに空気圧をいつもより0.5barほど高く設定してみたところ、また印象が変わった。気になっていた独特のベッタリした感じは姿を消し、軽い走行感が顔を出し、一気にスポーティなタイヤとなった。確かに独特の包み込むような吸収性は影を潜めるが、その代わりタイヤ全体に腰が出てきてギャップの吸収は素早く、フラットに保ってくれる。フラット感が強いので、荒れた路面でも安心して走ることができる。
しかもスピードを上げ、タイヤに大きな入力が掛かった場面の方がフラット感は高まる傾向にあり、感覚的には30km/h以上のスピード域になってから真価を発揮するように感じた。スピードを上げるほど、バイクの挙動が落ち着いてくるので、スピードを上げることが怖くなくなるのである。これがラジアルタイヤの特性ということだろうか。どうやらラディエールは、高めの空気圧のこの感覚の方が本来の性能なのだろう。
ただし良くも悪くも、チューブと空気圧の影響を大きく受ける傾向にあるようだ。だからもしラディエールを手に入れたときは、空気圧を調整したり、しなやかな高性能チューブを使うなど、少し工夫を加えて試してみてほしい。その組み合わせがうまくハマったときには、高い性能を発揮する。そんな潜在能力を秘めたタイヤだと思う。
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マキシス ラディエール22c
サイズ:700×22c
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コンパウンド:62a/58a/50a
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ビード:フォルダブル
重量:210g
最高空気圧:145psi
価格:7,980円
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マキシス ラディエール23c
サイズ:700×23c
カラー:BLK
コンパウンド:62a/58a/50a
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ビード:フォルダブル
重量:225g
最高空気圧:145psi
価格:7,980円
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photo:Makoto.AYANO
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