総合首位のタデイ・ポガチャルが落車リタイアしたブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージ。落車が頻発する混沌の集団スプリントをブライアン・コカール(フランス、コフィディス)が制し、34歳にして悲願のグランツール区間初優勝を手に入れた。
第8ステージ 8月29日(土)
プソル〜ゼラコ 171km(平坦)

怪我明けのレースにもかかわらず、総合3位と好調のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

第8ステージ プソル〜ゼラコ image:A.S.O.
第81回ブエルタ・ア・エスパーニャで最初の平坦ステージ。大会8日目は、前日の過酷な山岳を越えたスプリンターたちが待ちわびたスプリントステージで、終盤にはコース唯一の3級山岳プエルト・デ・バルシュが立ちはだかる。しかし登坂距離4.7km、平均勾配5.6%と難易度は低いため、集団スプリントが最も有力なシナリオと予想された。
結果として今大会の悪い意味でのハイライトとなったステージは、選手たちの機材トラブルや落車の影響でスタートが遅延する不穏な始まりとなった。そしてレース前の予告通りシヌエ・フェルナンデス(スペイン、ブルゴス・ブルペレットBH)が飛び出し、これに追随する選手はおらず単独逃げとなる。それを追うメイン集団では、ここまで区間2勝しているマシュー・ブレナン(イギリス)、そしてマイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るワウト・ファンアールト(ベルギー)のため、ヴィスマ・リースアバイクが集団牽引に選手を送った。

単独逃げとなったシヌエ・フェルナンデス(スペイン、ブルゴス・ブルペレットBH) photo:CorVos

スタート前から落車が多発し、多くの選手がメディカルカーで治療を受けた photo:CorVos 
プロトンはヴィスマ・リースアバイクがコントロールした photo:A.S.O.
ブエルタ初出場だった昨年は体調不良で完走できなかったフェルナンデスは、プロトンとの差を最大5分50秒まで拡大させる。しかし今季限りでの引退を発表しているステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)のペースメイクは正確で、徐々にフェルナンデスとの差を縮めていく。イーサン・ヘイター(イギリス、スーダル・クイックステップ)らを巻き込む集団落車が発生した直後、中間スプリントポイントを前にした残り38km地点でフェルナンデスを吸収。レースは振り出しに戻った。
中間スプリントではファンアールトが争うことなく先着し、満点の20ポイントを獲得。しかしその直後、再び集団落車が発生し、その中にはマイヨロホを纏うタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)の姿があった。

カメラに笑顔を見せたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)だが、ラスト33km地点で落車リタイアした photo:A.S.O.

ポガチャル落車後、一定のペースで3級山岳を登るプロトン photo:CorVos
落車後、しばらく立ち上がることができなかったポガチャル。一度は自転車に跨がろうとしたものの、顔の左側や肩、左腕から出血しており、医療スタッフの治療を受けたが、そのまま歩いて救急車に乗り込んだ。怪我の詳細は別記事で伝えるが、検査の結果、脳震盪に加えて左鎖骨と第7頸椎の骨折と発表されている。
初日の個人タイムトライアルからここまで区間3勝し、総合2位に3分50秒の大幅リードで総合首位に立っていたポガチャルのリタイア。動揺が広がるプロトンは一定のペースで3級山岳プエルト・デ・バルシュに入り、残るUAEチームエミレーツXRGの選手たちがまとまって集団から遅れて登るなか、争うことなく頂上をファンアールトが先頭通過。ポガチャルのリタイアが知れ渡ったプロトンから、残り25km地点の下り区間でシャビエル・アスパレン(スペイン、ピナレロQ36.5プロサイクリング)が飛び出した。

下りでアタックしたシャビエル・アスパレン(スペイン、ピナレロQ36.5プロサイクリング) photo:CorVos
残り10km地点では再び複数の選手を巻き込む落車が発生し、その後、左腕から血を流し、左肩のジャージが破けたローランド・テールマン(スイス、チューダープロサイクリング)がフィニッシュを目指す姿が中継映像に映し出される。選手たちはフィニッシュラインの引かれたゼラコに到着し、残り1.5km地点でアスパレンを引き戻す。ベン・ターナー(イギリス)のためにネットカンパニー・イネオスが綺麗な隊列を集団先頭で組み、最終ストレートではファンアールトがリードアウトを務めた。
その後先頭はクリストフ・ラポルト(フランス)に引き継がれたものの、その背後にブレナンの姿はなく、集団の前方で再び落車が起こる。しかし、その前方にいた約20名ほどに影響はなく、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が真っ先にスプリントを開始し、先頭に立つ。コース左側から追い上げるブレナンのスピードが伸びない一方、2番手のヨルディ・メーウス(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の背後からブライアン・コカール(フランス、コフィディス)がスピードに乗る。
一気に加速したコカールはメーウスを抜き、フィニッシュ直前でピーダスンを上回ると、ハンドルを投げて先着。プロ通算56勝目にして、自身初のグランツール区間優勝を掴んだ。

ハンドル投げの僅差を制したブライアン・コカール(フランス、コフィディス) photo:CorVos

バイクを掲げ、勝利を喜ぶブライアン・コカール(フランス、コフィディス) photo:CorVos
「ここまで長い道のりだった。グランツールでは何度も2位に終わってきたし、僕はもう34歳。本当に誇らしいし、嬉しいよ。残り500mでジョルディ・メーウスが見えた。このタイプのフィニッシュでは彼がとても速いことは分かっていた。だから待って、待って、向かい風だったのでスリップストリームを使いながら、ちょうどいいタイミングで仕掛けた」と、2014年に初出場したツール・ド・フランスから13度目のグランツールにして、ようやく勝利を掴んだコカールは喜びを語った。
一方、ポガチャルのリタイアによってマイヨロホはエンリク・マス(スペイン、モビスター)の手に渡ることとなった。しかしマスは表彰台でマイヨロホを着用するのではなく、手に持ったまま表彰式を終えた。その理由をマスは「タデイ(ポガチャル)が落車し、僕は勝ってマイヨロホを手にしたわけではない。だから今それを着ないことが、彼への敬意を示すことになると思った」とコメント。「ここからは別のレースが始まる。明日は第20ステージと並んで今大会でも最も厳しいステージの1つだ。ステージとこの場所を楽しみながら走りたい」と語っている。

悲願のグランツール区間優勝を達成したブライアン・コカール(フランス、コフィディス) photo:CorVos

マイヨロホを手に表彰式に臨んだエンリク・マス(スペイン、モビスター) photo:CorVos

遅れでフィニッシュしたUAEチームエミレーツXRGの選手たち photo:CorVos
第8ステージ 8月29日(土)
プソル〜ゼラコ 171km(平坦)


第81回ブエルタ・ア・エスパーニャで最初の平坦ステージ。大会8日目は、前日の過酷な山岳を越えたスプリンターたちが待ちわびたスプリントステージで、終盤にはコース唯一の3級山岳プエルト・デ・バルシュが立ちはだかる。しかし登坂距離4.7km、平均勾配5.6%と難易度は低いため、集団スプリントが最も有力なシナリオと予想された。
結果として今大会の悪い意味でのハイライトとなったステージは、選手たちの機材トラブルや落車の影響でスタートが遅延する不穏な始まりとなった。そしてレース前の予告通りシヌエ・フェルナンデス(スペイン、ブルゴス・ブルペレットBH)が飛び出し、これに追随する選手はおらず単独逃げとなる。それを追うメイン集団では、ここまで区間2勝しているマシュー・ブレナン(イギリス)、そしてマイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るワウト・ファンアールト(ベルギー)のため、ヴィスマ・リースアバイクが集団牽引に選手を送った。



ブエルタ初出場だった昨年は体調不良で完走できなかったフェルナンデスは、プロトンとの差を最大5分50秒まで拡大させる。しかし今季限りでの引退を発表しているステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)のペースメイクは正確で、徐々にフェルナンデスとの差を縮めていく。イーサン・ヘイター(イギリス、スーダル・クイックステップ)らを巻き込む集団落車が発生した直後、中間スプリントポイントを前にした残り38km地点でフェルナンデスを吸収。レースは振り出しに戻った。
中間スプリントではファンアールトが争うことなく先着し、満点の20ポイントを獲得。しかしその直後、再び集団落車が発生し、その中にはマイヨロホを纏うタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)の姿があった。


落車後、しばらく立ち上がることができなかったポガチャル。一度は自転車に跨がろうとしたものの、顔の左側や肩、左腕から出血しており、医療スタッフの治療を受けたが、そのまま歩いて救急車に乗り込んだ。怪我の詳細は別記事で伝えるが、検査の結果、脳震盪に加えて左鎖骨と第7頸椎の骨折と発表されている。
初日の個人タイムトライアルからここまで区間3勝し、総合2位に3分50秒の大幅リードで総合首位に立っていたポガチャルのリタイア。動揺が広がるプロトンは一定のペースで3級山岳プエルト・デ・バルシュに入り、残るUAEチームエミレーツXRGの選手たちがまとまって集団から遅れて登るなか、争うことなく頂上をファンアールトが先頭通過。ポガチャルのリタイアが知れ渡ったプロトンから、残り25km地点の下り区間でシャビエル・アスパレン(スペイン、ピナレロQ36.5プロサイクリング)が飛び出した。

残り10km地点では再び複数の選手を巻き込む落車が発生し、その後、左腕から血を流し、左肩のジャージが破けたローランド・テールマン(スイス、チューダープロサイクリング)がフィニッシュを目指す姿が中継映像に映し出される。選手たちはフィニッシュラインの引かれたゼラコに到着し、残り1.5km地点でアスパレンを引き戻す。ベン・ターナー(イギリス)のためにネットカンパニー・イネオスが綺麗な隊列を集団先頭で組み、最終ストレートではファンアールトがリードアウトを務めた。
その後先頭はクリストフ・ラポルト(フランス)に引き継がれたものの、その背後にブレナンの姿はなく、集団の前方で再び落車が起こる。しかし、その前方にいた約20名ほどに影響はなく、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が真っ先にスプリントを開始し、先頭に立つ。コース左側から追い上げるブレナンのスピードが伸びない一方、2番手のヨルディ・メーウス(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の背後からブライアン・コカール(フランス、コフィディス)がスピードに乗る。
一気に加速したコカールはメーウスを抜き、フィニッシュ直前でピーダスンを上回ると、ハンドルを投げて先着。プロ通算56勝目にして、自身初のグランツール区間優勝を掴んだ。


「ここまで長い道のりだった。グランツールでは何度も2位に終わってきたし、僕はもう34歳。本当に誇らしいし、嬉しいよ。残り500mでジョルディ・メーウスが見えた。このタイプのフィニッシュでは彼がとても速いことは分かっていた。だから待って、待って、向かい風だったのでスリップストリームを使いながら、ちょうどいいタイミングで仕掛けた」と、2014年に初出場したツール・ド・フランスから13度目のグランツールにして、ようやく勝利を掴んだコカールは喜びを語った。
一方、ポガチャルのリタイアによってマイヨロホはエンリク・マス(スペイン、モビスター)の手に渡ることとなった。しかしマスは表彰台でマイヨロホを着用するのではなく、手に持ったまま表彰式を終えた。その理由をマスは「タデイ(ポガチャル)が落車し、僕は勝ってマイヨロホを手にしたわけではない。だから今それを着ないことが、彼への敬意を示すことになると思った」とコメント。「ここからは別のレースが始まる。明日は第20ステージと並んで今大会でも最も厳しいステージの1つだ。ステージとこの場所を楽しみながら走りたい」と語っている。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2026第8ステージ結果
| 1位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | 3:47:06 |
| 2位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | |
| 3位 | ヨルディ・メーウス(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
| 4位 | ベン・ターナー(イギリス、ネットカンパニー・イネオス) | |
| 5位 | ジョルダン・ラブロース(フランス、デカトロンCMA CGM) | |
| 6位 | アレッサンドロ・ロメレ(イタリア、XDSアスタナ) | |
| 7位 | バスティアン・トロンション(フランス、グルパマFDJユナイテッド) | |
| 8位 | ユーゴ・オフステテール(フランス、NSNサイクリングチーム) | |
| 9位 | オールイス・アウラール(ベネズエラ、モビスター) | |
| 10位 | マシュー・ブレナン(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) |
マイヨロホ(個人総合成績)
| 1位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 23:23:33 |
| 2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +1:00 |
| 3位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンCMA CGM) | +1:11 |
| 4位 | セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +2:15 |
| 5位 | オスカー・オンリー(イギリス、ネットカンパニー・イネオス) | +2:16 |
| 6位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | +2:22 |
| 7位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | +3:25 |
| 8位 | アロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ) | +3:56 |
| 9位 | グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、デカトロンCMA CGM) | +5:39 |
| 10位 | ヤコブ・オムルゼル(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +6:04 |
マイヨプントス(ポイント賞)
| 1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | 124pts |
| 2位 | マシュー・ブレナン(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) | 67pts |
| 2位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 58pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
| 1位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 19pts |
| 1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | 16pts |
| 3位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 14pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
| 1位 | オスカー・オンリー(イギリス、ネットカンパニー・イネオス) | 23:25:49 |
| 2位 | ヤコブ・オムルゼル(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +3:48 |
| 3位 | レオ・ビジオー(フランス、デカトロンCMA CGM) | +6:07 |
チーム総合成績
| 1位 | デカトロンCMA CGM | 70:22:47 |
| 2位 | ヴィスマ・リースアバイク | +20:35 |
| 3位 | ネットカンパニー・イネオス | +25:25 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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