元プロロードレーサー・井上和郎さんが太鼓判を押す、ピレリ最新エアロタイヤがP ZERO Race TLR SL-Rだ。転がりの軽さ、空力性能はまさにトップクラス。実走インプレをお届けします。



ピレリが誇る最新ハイエンドタイヤ、P ZERO Race TLR SL-R。今年のツール・ド・フランスでも使用された

ロードバイクを取り巻く機材環境の中でも、ここ近年で最も急速な進化を遂げているのがタイヤカテゴリーだ。ディスクブレーキの普及とワイドリム化に伴って、今現在開催されているツール・ド・フランスでは28もしくは30cタイヤがスタンダードとなり、「太い+低圧=速い」という新時代の図式は今や多くのアマチュアライダーにまで浸透するようになってきた。

そんなロードタイヤ界にも、フレームやホイールを中心にあらゆるロードバイク機材を席巻している「エアロ化」がじわじわと、しかし確実にその足音を大きくしている。コンチネンタルは昨年ツール・ド・フランスでフロント専用の「AERO 111」をデビューさせ、エンヴィもTUFOとの協業によって自社リムと相性の良いタイヤをリリース。さらに今年3月にはピレリが今回紹介する「P ZERO Race TLR SL-R」を披露した。同社の最上級レーシングタイヤであるP ZERO Race TLRシリーズに加わったエアロタイヤは、トレッドパターンで整流効果を狙うAERO 111とは異なり、タイヤの断面形状を工夫してリムとの段差を低減し、大幅な空力向上を狙ったことが大きな違いだ。

「タイヤとリムの溝を均一にする」というテーマは今に始まったものではなく、かつてマヴィックがエアロフラップを用いたCXR80ホイールをリリースした(付加物となるためフラップのUCIレース使用は禁止された)実績を持つが、ピレリのP ZERO Race TLR SL-Rは追加パーツに頼ることなく、タイヤ自体の断面形状を最適化させることで空力性能を追求したことがポイント。しかも指定ホイールは存在せず、最新のワイドリムであれば空力と作業性の両面でアドバンテージを得られるというメリットを兼ね備えている。

P ZERO Race TLR SL-Rを履いてマスターズ全日本ロードを走る井上和郎さん photo:Yuichiro Hosoda

タイヤとリムがツライチ(面一)になることで、タイヤ側面からリムに至るまで空気が剥離することなく流れ続け、乱流の発生を抑制し、結果的に空気抵抗を低減する。あらゆる角度から吹き付ける風に対して、特に空力性能が重要となる中〜高速域で効果を発揮し、横方向からの風に対しては更に顕著な結果を見せた。ピレリによれば従来モデル(P ZERO Race TLR RS)との比較で平均20%以上の空気抵抗低減が確認されたという。

従来のP ZERO Race TLR RSシリーズとは異なり、トレッドパターンは完全スリック。ケーシングの重なりを少なくした左右対称設計によって、同社のTLRケーシングとして最軽量を実現した「LiteCore構造」を新規投入するなど、ピレリが最新技術をフル投入したレーシングタイヤに仕上げられている。

先進的なレーシングタイヤのインプレッションを伺ったのは、元プロロードレーサーであり、かつて全日本選手権で表彰台を獲得するなど屈指の実力を誇った井上和郎さん。バルバワークス イシカワストアのマネージャーを務める今現在もマスターズ全日本選手権で上位に食い込み、さらに一大目標に据えていたグランフォンド世界選手権では男子140km45-49歳カテゴリーで4位に入った。屈指の強豪ホビーレーサーとして走り続ける氏にとって、P ZERO Race TLR SL-Rは今最もお気に入りのレースタイヤだという。

「レース専用タイヤとして見れば、これ以上のものはないんじゃないか、って思います」と言う photo:So Isobe

現在プロレースで使用率が高いコンチネンタルのGRANDPRIXシリーズなど、様々なタイヤを替えながら感触を確かめてきたという井上氏。その中で当然ピレリのP ZERO Raceシリーズも使ってきたが、その際はコンパウンドの柔らかさゆえに路面にねばつくような感触が好みではなく、すぐに替えてしまったという。

「でも、P ZERO Race TLR SL-Rを試しに使ってみたらすごく良かった。とにかく転がりが軽くて、実際に空力の良さも感じます。レース用タイヤとしては素晴らしいレベル、これ一択しかないレベルまで達しているんじゃないでしょうか」と太鼓判を押す。

「転がりの軽さにおいて言うなら他社のTTタイヤと同じくらいかな、と思いますが、総合力で見ると僕はP ZERO Race TLR SL-Rがいいと思う。それに今のレースに欠かせない空力性能に関しては最先端じゃないですか。ここまで作り込んだタイヤってないし、機材好きという観点から見てもそそられますよね。グリップに関してもウェットでズルズルきちゃう感じもありませんし、安心して下りを攻めることができます」。

井上氏が組み合わせているホイールは、内幅23.5mmのエンヴィSES4.5。タイヤの脱着時の作業性にも問題はなく、体重68〜69kg程度の現在は、28cでフロント4.2bar、リア4.4barという空気圧を基準に設定しているという。

以前使用していたGRANDPRIX 5000 S-TRと比べると、前後とも0.3bar高い設定だ。「これはタイヤが全体的に柔らかいからですね」と井上氏。ただし、従来のピレリタイヤに感じていたような、路面に粘りつくような柔らかさは無いという。コンパウンド自体は変わっていないというから、この違いは形状やケーシングの作り込みによるものなのだろう。

ニセコで開催されたグランフォンド世界選手権。男子140km45-49の4位フィニッシュ photo:Makoto AYANO

転がり、グリップ、そしてエアロ性能など、走り面での総合評価は非常に高い一方、唯一の弱点として挙がったのが耐久性だ。「実際パンクしていなくても、トレッドもサイドも刺さり傷がすごくできやすい」と井上氏。トラクションのかかるリア側は摩耗も早く、抜重しきれないまま凹凸にぶつけてしまう場面も少なくないという。17,300円という価格帯のタイヤだけに、井上氏のスタッフもすでに後輪用として2本を使い切ってしまったそうだ。「常用は控えて、ここ一番の決戦用タイヤとして使うのが良い」というのが井上氏の見立てで、耐久性を求めるリアにはRSを、空力への影響が大きいフロントにはSL-Rを組み合わせるという使い分けも一つの手だという(井上氏は実際にこの組み合わせでニセコを戦った)。

それでも、「今のところ、僕にとっては他に選択肢がないくらいお気に入りのタイヤです」とレースタイヤとしての信頼度は揺るがない。シーズン後半戦のレース参戦を考えている方にとっては最有力候補となること間違いないタイヤと言えるだろう。



ピレリ P ZERO Race TLR SL-R
サイズ(重量):700x28C(275g)​、700x30C(295g)
ケーシング:120tpi
コンパウンド:SmartEVO2 Compound
ストラクチャー:LiteCORE
フックレス対応:対応(※最大空気圧制限あり)
税込価格:17,300円(ブラック)、17,500円(チーム)

text:So Isobe

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