「天国のお父さんに優勝の報告がしたかった」 5月に父・昌樹さんを亡くしたばかりの小林あか里と、予想しなかった内野艶和との未知のつば競り合い。決意を胸に下りのテクニックを駆使した冷静な走りで引き離した小林の涙の連覇だった。

前年覇者の小林あか里(Kasseien Fiets Huis)に母の可奈子さんが付き添う photo:Makoto AYANO

今季急成長の田中麗奈(IGNTZONE Racing Team)、木下友梨菜、「妖怪ツケマツゲ」こと仲谷あい(Roppongi Express) 
所属チーム無し。背中には「鈴なり妖怪 オハヨウカイ!」
新潟県南魚沼市で開催された全日本選手権ロードレース。女子エリート+U23は朝8時のスタート。1周12kmの周回コースを7周する84kmで争われるレースにはエリートが24人、U23が12人の合計34人がエントリー。

朝8時にスタートした女子エリート+U23 photo:Satoru Kato
もっぱら注目は小林あか里(Kasseien Fiets Huis Cycling Team)と木下友梨菜(鈴なり妖怪)の対決。前回覇者の小林は今季はベルギーのクラブチームに所属して欧州で活動、本場のロードレースに参戦して研鑽を積んでいる。
いっぽうの木下も一昨年にスイスのチームに所属して欧州レースを走ったが、本場のレースの厳しさに心折れ、心機一転するために今季は自転車で国内・海外をツーリングして巡るユーチューバー的な活動に戻り、自転車を楽しむことに専念。しかし走る距離やその内容は「規格外」だ。

2周目、小林あか里(Kasseien Fiets Huis Cycling Team)がペースアップ photo:Satoru Kato
抜きん出た力があるのは確かだが、同じレースを走る機会の無い2人の対決に、誰も優劣の予測がつかない。そしてレースが始まってみると予想外に強いもう1人の選手が居た。

緑深いダム湖を行くメイン集団。内野艶和(HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR)が先頭を引く photo:Makoto AYANO
雨上がりの抜けるような青空のもとスタートしたレース。厳しいコースに早々に集団の人数は絞り込まれ、3周目には先頭は小林と木下、それに内野艶和(HPCJC-ブリヂストンアンカー)の3人に。

木下友梨菜(鈴なり妖怪)、小林あか里(Kasseien Fiets Huis Cycling Team)、内野艶和(HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR)の3人に絞られた photo:Makoto AYANO
HPCJC-ブリヂストンアンカーとは、HPCJC(ハイ・パフォーマンス・センター・オブ・ジャパン・サイクリング=JCF配下の選手強化組織)とブリヂストンサイクルのコラボによって今季よりスタートした強化チームで、パリ五輪トラック代表を含む女子選手が所属する。内野の主戦場はトラックレース中距離で、団体競技を入れると世界・アジアの国際大会で獲得した金・銀・銅メダル数は18に登る。
ロードも経験は少なくはなく、2025年からはスイスのNEXTISにも所属し、欧州のロードレースを走った経験がある。なおNEXTISはかつて木下も所属・活動したチームだ。

セカンドパックは石田唯(TRKWorks)、田中麗奈(IGNTZONE Racing Team)、阿部花梨(イナーメ信濃山形) photo:Makoto AYANO
淡々とハイペースを刻んで先頭を行く3人のレベルが拮抗しているのは明らかで、木下が長く先頭にたって引き、小林は2人を観察する走りだが、内野は離される気配も無かった。一定勾配の坂が続くダムの登りではアクセントとなる急勾配が無く、3人の差がどこで生じるかに注目が集まった。

木下、内野、小林の3人がお互いの脚を探りながら走り続ける photo:Makoto AYANO
下りのテクニック不足でやや遅れ気味の木下、登りで耐える体勢の内野に対し、登坂力と下りテクニックどちらもバランス良く備える小林が、その勝負どころを見極めるべく2人の様子を伺いながら走っているように見えた。

最終周回目前、木下友梨菜(鈴なり妖怪)が遅れる photo:Satoru Kato
変化が起きたのは6周目。長い登りに入ったと同時に木下が遅れ始める。補給所では「脚が攣っている〜!」と声に出した。ここからの勝負は小林と内野の2人に。

残り4km、短い登りで小林あか里(Kasseien Fiets Huis Cycling Team)がアタックするも、内野艶和(HPCJC-BRIDGETONE ANCHOR)を振り切れず photo:Satoru Kato
ラスト1周、残り4kmの上り区間で小林が軽くアタック。しかし内野も着いてくるためすぐに踏みやめる。
「どれくらい内野選手の脚があるか見たかったんですけど、内野選手は普通にシッティングだった」と小林。得意の下りで勝負を決めることを選択したという。

歓喜の声をあげてフィニッシュに飛び込む小林あか里(Kasseien Fiets Huis Cycling Team) photo:Makoto AYANO
2人の拮抗は最終周回まで続いたが、ダムからのダウンヒル区間で攻め込んだ小林に対して内野は離されてしまい、その後の平坦区間で追いつくものの、登りを前にして勝負はついてしまった。
小林はフィニッシュまでの登りを力強くスプリントして駆け上がり、大差をつけたフィニッシュラインではガッツポーズを見せ、オールアウトして倒れ込んだ。

フィニッシュ後、手を挙げて歓喜する小林あか里 photo: Yuichiro Hosoda
バリア外から駆け寄った母・可奈子さんはマウンテンバイク全日本選手権4回の覇者であり五輪やワールドカップで活躍したレジェンド。手には昌樹さんの遺影の盾があった。小林は可奈子さんと抱き合って号泣。

今年5月に膵臓がんで亡くなった父の遺影の前に、小林あか里が優勝の喜びを表す photo: Yuichiro Hosoda
倒れ込んだ小林に続きフィニッシュした内野。弱点を小林に見破られ、なす術がなかった。
「最後の局面はすでに脚が一杯で、最後の下りで離されてから追いついたけど、最後の左カーブで再び離されてしまって。そこからの踏みも小林選手が強かったですし、自分は踏み直しが全然出来なかったです」と話す。

フィニッシュ後倒れ込む小林あか里(Kasseien Fiets Huis Cycling Team)の脇を2位フィニッシュする内野艶和(HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR) photo:Makoto AYANO

3位フィニッシュと同時に脚を攣らせた木下友梨菜(鈴なり妖怪) photo:Makoto AYANO
4分11秒遅れでフィニッシュし、3位表彰台は守った木下は、フィニッシュラインで両脚を攣らせて動けなくなり、その後も長く悶絶を続ける。補給ミスか追い込み過ぎか?暑い環境での走りに強いことには自信があったし、脚を攣ることもめったに無いことだけに、自身でもその原因が分からない様子だった。しかし苦しみながらも「あ”〜勝ちたかった!くそぉぉおおお」という悔しい叫び声を何度も挙げた。

両脚が攣って動けない木下友梨菜(鈴なり妖怪) photo:Makoto AYANO
終盤にランデブーを続けた石田唯(TRKWorks)と田中麗奈(IGNTZONE Racing Team)の勝負はフィニッシュまでの上りで力強いスプリント力を見せた石田が4位で先着。5位の田中はU23のトップリザルトを獲得、U23日本王者に輝いた。

力強いスプリントで田中麗奈を引き離した石田唯(TRKWorks)が4位 photo:Makoto AYANO 
5位フィニッシュの田中麗奈(IGNTZONE Racing Team)がU23王者に photo:Makoto AYANO
小林あか里「父に優勝という最高の報告ができた」

女子エリート表彰 優勝は小林あか里(Kasseien Fiets Huis Cycling Team)、2位内野艶和(HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR)、3位木下友梨菜(鈴なり妖怪) photo:Makoto AYANO
膠着した3人の勝負を振り返って小林は言う。「たぶん3人とも同じくらい脚があって、どこで仕掛けられてもお互いに辛くなるというのはわかっていたんですけど、自分の得意とする下りで、残り2周で内野選手と逃げる形になり、そこからは(木下とは)1分以上差が開いたので、内野選手と脚を見ながらというかたちでした。
自分が仕掛けられるのは下りしかないと思ったので、ラストの下りで全開で仕掛けたんです。それが上手く決まって良かった。
(フィニッシュ前の直線では単独だったが)もう脚が攣っていて、後ろから内野選手が来ていたら、あれ以上スピードは上げられなかったので「早くゴールしてくれ」と思いながら、50mから先が長かった。
フィニッシュしてからは、父親が空から見てくれたと思うので「優勝したよ」と報告出来てすごく嬉しかったです」。

2025年の全日本選手権ロード優勝後、両親と揃って記念撮影した小林あか里。右が父の昌樹さん photo:Satoru Kato
全日本の連覇以上に、亡き父のためにどうしても勝ちたかったレースで勝った小林。最初の全日本ロード女子エリート優勝となった昨年の伊豆・修善寺の日本CSCには、昌樹さんの姿があった。
母・可奈子さんは「その時すでに動ける体調ではなかったんですが、あか里のレースが観たいと無理して現場に来たんです」と言う。手にする遺影は、消防士の正装と、主宰するMTBクラブ安曇野のチームジャージ姿のポートレートだった。

父・昌樹さんの遺影を手にする母の可奈子さんと小林あか里(Kasseien Fiets Huis Cycling Team) photo:Makoto AYANO
「闘病生活に入る前に、揃って家族写真も撮ったんです。最後まで用意周到な男でした。昌樹さんは、昨年開催された東京デフリンピックのMTBコースの造成にも関わり、最後の最後までMTB競技の裏方として働いていました」と可奈子さんは言う。
昌樹さんの癌との闘病生活は昨年5月から先月までの約1年間続いた。その間、小林はお別れの覚悟をもって欧州で走っていたということ。そんな小林はレース後、天国の父へ報告したことを話してくれた。
「父には、『頑張りました、優勝したよ!』というのと、最期の最期まで私のバイクの心配とかもしてくれていたので、『もう問題ないよ、安心してゆっくり休んでね』と伝えました。
正直もう辛くて。何が一番辛かったというと、自分もそうなんですけど、周りの人達、父と関わってくれていた人達がすごく悲しんでいて、『辛いのは私だけじゃないんだ』と言う想いがあったんです。ならば自分の走りと結果でみんなを元気付けられたらいいと思っていて、こうやって自分の走りをして優勝できたので、これが周りの人達に最高の報告、最高の恩返しかなと思っています」。
小林は7月に地元・安曇野で開催されるマウンテンバイク全日本選手権に出場するという。ロードに専念するために離れることを決めたMTBだが、小林家と自身も所属する「MTBクラブ安曇野」で作りあげてきたコースでのイベントに出場するのは、亡き父からの願いだという。
そして来シーズンは再びベルギーに戻り、欧州でのレース活動を再開する。チーム”Kasseien Fiets Huis Cycling Team”はオーストラリア人がメインでチームメイトとは英語で意思疎通ができ、去年より言葉の壁も無くストレスフリーだという。
「ここまでもフランスのUCIレースやチェコのステージレースなど、色々な経験が出来ました。またナショナルチャンピオンジャージを着てヨーロッパに戻れるのは、すごく嬉しいです」。
2位 内野艶和のコメント

2位の内野艶和(HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR) photo:Makoto AYANO
「レース当初は、残れたら頑張りたいという感じでした。最後まで残れると思っていなかったので、私が一番ビックリしています。
7周のうちで、木下選手や小林選手が強い走りをしてくるだろうなと思っていました。私は上りが得意と言うわけではないので、集中して着けるだけ頑張って着いて行って、平坦は自分の得意分野だったので、引けるところは引いて、というのを繰り返していて。でもやっぱり下りが全然攻められず、小林選手が上手くて離されて、を繰り返していたので、そこで脚を使ってしまい、もったいなかった。
調子自体は悪くなかったです。ロードレースは去年は海外でたくさん走っていたが、今年はまったく。(3月1日の)富士クリテくらいしか走ってなくて。久々にロードレースを走って楽しかったんですけど、すごくいい勉強になったし、この後、海外に1ヶ月半くらい行くので、自信もちょっとだけ付けて行ける点は良かったかなと思います」。
3位 木下友梨菜のコメント

「勝ちたかった」と繰り返した木下友梨菜(鈴なり妖怪) photo:Makoto AYANO
「脚が攣りだしたのは6周目。ヤバい、となって誤魔化しながら走っていましたが、ラスト周回に入って2人のペースについて行けず、普通のペースで走るのも辛くなって、なんとか誤魔化しながら走っていました。
後ろに追いつかれる恐怖や、なんとか3位は最低でも死守しないと…と思いながらも、脚が攣って何も出来ず。優勝したかったんですけど、2人が強かった。
これまでは脚を攣るとうことがあまりなかったんです。暑いとは聞いていたので意識的に補給はたくさん摂っていたつもりだったんですけど、ダメでしたね。悔しいです!」
5位 U23チャンピオンとなった田中麗奈(IGNTZONE Racing Team)のコメント

U23王者になった田中麗奈(IGNTZONE Racing Team) photo:Makoto AYANO
「3周目に脱落して、上位選手とは力の差を感じましたし、最後に石田選手にアタックされた時はもう脚が攣りかけていてスプリントできず、悔しかった。でもU23チャンピオンという目標は達成できたので、来年はもっと強くなってエリートでの1番を獲れるように頑張ります」。



新潟県南魚沼市で開催された全日本選手権ロードレース。女子エリート+U23は朝8時のスタート。1周12kmの周回コースを7周する84kmで争われるレースにはエリートが24人、U23が12人の合計34人がエントリー。

もっぱら注目は小林あか里(Kasseien Fiets Huis Cycling Team)と木下友梨菜(鈴なり妖怪)の対決。前回覇者の小林は今季はベルギーのクラブチームに所属して欧州で活動、本場のロードレースに参戦して研鑽を積んでいる。
いっぽうの木下も一昨年にスイスのチームに所属して欧州レースを走ったが、本場のレースの厳しさに心折れ、心機一転するために今季は自転車で国内・海外をツーリングして巡るユーチューバー的な活動に戻り、自転車を楽しむことに専念。しかし走る距離やその内容は「規格外」だ。

抜きん出た力があるのは確かだが、同じレースを走る機会の無い2人の対決に、誰も優劣の予測がつかない。そしてレースが始まってみると予想外に強いもう1人の選手が居た。

雨上がりの抜けるような青空のもとスタートしたレース。厳しいコースに早々に集団の人数は絞り込まれ、3周目には先頭は小林と木下、それに内野艶和(HPCJC-ブリヂストンアンカー)の3人に。

HPCJC-ブリヂストンアンカーとは、HPCJC(ハイ・パフォーマンス・センター・オブ・ジャパン・サイクリング=JCF配下の選手強化組織)とブリヂストンサイクルのコラボによって今季よりスタートした強化チームで、パリ五輪トラック代表を含む女子選手が所属する。内野の主戦場はトラックレース中距離で、団体競技を入れると世界・アジアの国際大会で獲得した金・銀・銅メダル数は18に登る。
ロードも経験は少なくはなく、2025年からはスイスのNEXTISにも所属し、欧州のロードレースを走った経験がある。なおNEXTISはかつて木下も所属・活動したチームだ。

淡々とハイペースを刻んで先頭を行く3人のレベルが拮抗しているのは明らかで、木下が長く先頭にたって引き、小林は2人を観察する走りだが、内野は離される気配も無かった。一定勾配の坂が続くダムの登りではアクセントとなる急勾配が無く、3人の差がどこで生じるかに注目が集まった。

下りのテクニック不足でやや遅れ気味の木下、登りで耐える体勢の内野に対し、登坂力と下りテクニックどちらもバランス良く備える小林が、その勝負どころを見極めるべく2人の様子を伺いながら走っているように見えた。

変化が起きたのは6周目。長い登りに入ったと同時に木下が遅れ始める。補給所では「脚が攣っている〜!」と声に出した。ここからの勝負は小林と内野の2人に。

ラスト1周、残り4kmの上り区間で小林が軽くアタック。しかし内野も着いてくるためすぐに踏みやめる。
「どれくらい内野選手の脚があるか見たかったんですけど、内野選手は普通にシッティングだった」と小林。得意の下りで勝負を決めることを選択したという。

2人の拮抗は最終周回まで続いたが、ダムからのダウンヒル区間で攻め込んだ小林に対して内野は離されてしまい、その後の平坦区間で追いつくものの、登りを前にして勝負はついてしまった。
小林はフィニッシュまでの登りを力強くスプリントして駆け上がり、大差をつけたフィニッシュラインではガッツポーズを見せ、オールアウトして倒れ込んだ。

バリア外から駆け寄った母・可奈子さんはマウンテンバイク全日本選手権4回の覇者であり五輪やワールドカップで活躍したレジェンド。手には昌樹さんの遺影の盾があった。小林は可奈子さんと抱き合って号泣。

倒れ込んだ小林に続きフィニッシュした内野。弱点を小林に見破られ、なす術がなかった。
「最後の局面はすでに脚が一杯で、最後の下りで離されてから追いついたけど、最後の左カーブで再び離されてしまって。そこからの踏みも小林選手が強かったですし、自分は踏み直しが全然出来なかったです」と話す。


4分11秒遅れでフィニッシュし、3位表彰台は守った木下は、フィニッシュラインで両脚を攣らせて動けなくなり、その後も長く悶絶を続ける。補給ミスか追い込み過ぎか?暑い環境での走りに強いことには自信があったし、脚を攣ることもめったに無いことだけに、自身でもその原因が分からない様子だった。しかし苦しみながらも「あ”〜勝ちたかった!くそぉぉおおお」という悔しい叫び声を何度も挙げた。

終盤にランデブーを続けた石田唯(TRKWorks)と田中麗奈(IGNTZONE Racing Team)の勝負はフィニッシュまでの上りで力強いスプリント力を見せた石田が4位で先着。5位の田中はU23のトップリザルトを獲得、U23日本王者に輝いた。


小林あか里「父に優勝という最高の報告ができた」

膠着した3人の勝負を振り返って小林は言う。「たぶん3人とも同じくらい脚があって、どこで仕掛けられてもお互いに辛くなるというのはわかっていたんですけど、自分の得意とする下りで、残り2周で内野選手と逃げる形になり、そこからは(木下とは)1分以上差が開いたので、内野選手と脚を見ながらというかたちでした。
自分が仕掛けられるのは下りしかないと思ったので、ラストの下りで全開で仕掛けたんです。それが上手く決まって良かった。
(フィニッシュ前の直線では単独だったが)もう脚が攣っていて、後ろから内野選手が来ていたら、あれ以上スピードは上げられなかったので「早くゴールしてくれ」と思いながら、50mから先が長かった。
フィニッシュしてからは、父親が空から見てくれたと思うので「優勝したよ」と報告出来てすごく嬉しかったです」。

全日本の連覇以上に、亡き父のためにどうしても勝ちたかったレースで勝った小林。最初の全日本ロード女子エリート優勝となった昨年の伊豆・修善寺の日本CSCには、昌樹さんの姿があった。
母・可奈子さんは「その時すでに動ける体調ではなかったんですが、あか里のレースが観たいと無理して現場に来たんです」と言う。手にする遺影は、消防士の正装と、主宰するMTBクラブ安曇野のチームジャージ姿のポートレートだった。

「闘病生活に入る前に、揃って家族写真も撮ったんです。最後まで用意周到な男でした。昌樹さんは、昨年開催された東京デフリンピックのMTBコースの造成にも関わり、最後の最後までMTB競技の裏方として働いていました」と可奈子さんは言う。
昌樹さんの癌との闘病生活は昨年5月から先月までの約1年間続いた。その間、小林はお別れの覚悟をもって欧州で走っていたということ。そんな小林はレース後、天国の父へ報告したことを話してくれた。
「父には、『頑張りました、優勝したよ!』というのと、最期の最期まで私のバイクの心配とかもしてくれていたので、『もう問題ないよ、安心してゆっくり休んでね』と伝えました。
正直もう辛くて。何が一番辛かったというと、自分もそうなんですけど、周りの人達、父と関わってくれていた人達がすごく悲しんでいて、『辛いのは私だけじゃないんだ』と言う想いがあったんです。ならば自分の走りと結果でみんなを元気付けられたらいいと思っていて、こうやって自分の走りをして優勝できたので、これが周りの人達に最高の報告、最高の恩返しかなと思っています」。
小林は7月に地元・安曇野で開催されるマウンテンバイク全日本選手権に出場するという。ロードに専念するために離れることを決めたMTBだが、小林家と自身も所属する「MTBクラブ安曇野」で作りあげてきたコースでのイベントに出場するのは、亡き父からの願いだという。
そして来シーズンは再びベルギーに戻り、欧州でのレース活動を再開する。チーム”Kasseien Fiets Huis Cycling Team”はオーストラリア人がメインでチームメイトとは英語で意思疎通ができ、去年より言葉の壁も無くストレスフリーだという。
「ここまでもフランスのUCIレースやチェコのステージレースなど、色々な経験が出来ました。またナショナルチャンピオンジャージを着てヨーロッパに戻れるのは、すごく嬉しいです」。
2位 内野艶和のコメント

「レース当初は、残れたら頑張りたいという感じでした。最後まで残れると思っていなかったので、私が一番ビックリしています。
7周のうちで、木下選手や小林選手が強い走りをしてくるだろうなと思っていました。私は上りが得意と言うわけではないので、集中して着けるだけ頑張って着いて行って、平坦は自分の得意分野だったので、引けるところは引いて、というのを繰り返していて。でもやっぱり下りが全然攻められず、小林選手が上手くて離されて、を繰り返していたので、そこで脚を使ってしまい、もったいなかった。
調子自体は悪くなかったです。ロードレースは去年は海外でたくさん走っていたが、今年はまったく。(3月1日の)富士クリテくらいしか走ってなくて。久々にロードレースを走って楽しかったんですけど、すごくいい勉強になったし、この後、海外に1ヶ月半くらい行くので、自信もちょっとだけ付けて行ける点は良かったかなと思います」。
3位 木下友梨菜のコメント

「脚が攣りだしたのは6周目。ヤバい、となって誤魔化しながら走っていましたが、ラスト周回に入って2人のペースについて行けず、普通のペースで走るのも辛くなって、なんとか誤魔化しながら走っていました。
後ろに追いつかれる恐怖や、なんとか3位は最低でも死守しないと…と思いながらも、脚が攣って何も出来ず。優勝したかったんですけど、2人が強かった。
これまでは脚を攣るとうことがあまりなかったんです。暑いとは聞いていたので意識的に補給はたくさん摂っていたつもりだったんですけど、ダメでしたね。悔しいです!」
5位 U23チャンピオンとなった田中麗奈(IGNTZONE Racing Team)のコメント

「3周目に脱落して、上位選手とは力の差を感じましたし、最後に石田選手にアタックされた時はもう脚が攣りかけていてスプリントできず、悔しかった。でもU23チャンピオンという目標は達成できたので、来年はもっと強くなってエリートでの1番を獲れるように頑張ります」。
全日本選手権ロードレース2026 女子エリート+U23 結果
| 1位 | 小林あか里(Kasseien Fiets Huis Cycling Team) | 2時20分57秒 |
| 2位 | 内野艶和(HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR) | +7秒 |
| 3位 | 木下友梨菜(鈴なり妖怪) | +4分11秒 |
| 4位 | 石田唯(TRKWorks) | +7分30秒 |
| 5位 | 田中麗奈(IGNTZONE Racing Team) | +7分36秒(U23) |
text&photo:Makoto AYANO
photo:Satoru Kato, Yuichiro Hosoda
photo:Satoru Kato, Yuichiro Hosoda