春のクラシック最終戦をUAEチームエミレーツXRGが掌握。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が2度目のアタックでポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM)を振り切り、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ3連覇を達成した。



3連覇を目指す世界王者タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

レムコ・エヴェネプール photo:A.S.O.
ポール・セクサス photo:A.S.O.


ストラーデビアンケで幕を開けた本格的な春のクラシックシーズンは、今年もリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで締めくくられる。今季4戦目のモニュメント(5大クラシック)であり、アルデンヌ3連戦の最終戦でもある同レース。ベルギー東部ワロン地方のリエージュを発着し、バストーニュを経て戻る259.5kmには獲得標高差4,100m超、計11箇所の登りが待ち受ける。

史上4人目となる3連覇を目指す世界王者、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が笑顔を見せるなかレースはスタート。序盤から動いたレースは、まず52名による先頭集団が形成される。そのなかに2022年、23年優勝者レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)やエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)ら有力選手たちが入ったため、ポガチャルの残る後続集団の牽引は、UAEチームエミレーツXRGに任された。

この好機を活かすべく、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエが先頭集団のペースを作る。しかしレッドブルの他に積極的に協力するチームは現れず、UAEによる高速牽引も功を奏し、最大3分40秒あった差は徐々に縮まり、残り120km地点で1分40秒に。エヴェネプールによる早い段階でのアタックを恐れたUAEは、惜しみなくアシスト陣を牽引に投入。特に通常のワンデーレースならば終盤に出番が回ってくるティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)がハイペースに持ち込んだため、残り94km地点でメイン集団はひと塊に戻った。

今年もレース序盤に設定されたコート・ド・サンロシュ photo:CorVos

序盤に形成された先行集団を引き戻し、ハイペースに持ち込んだUAEチームエミレーツXRG photo:A.S.O.

その約20km前には、追走する集団のなかにいたトーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング)がメカトラに見舞われる。素早くバイク交換したピドコックだったが、UAEが強烈に牽引する集団に戻ることはできず、4強の1人に挙がるピドコックが勝負から脱落。そして吸収される直前に先頭集団からは、ユーゴ・ウル(カナダ、アルペシン・プレミアテック)ら5名が飛び出し、逃げ集団を形成した。

バストーニュに達し、リエージュまでの折り返しに入り、ようやくレースは逃げとそれを追うプロトンという王道の展開となった。しかしエディ・メルクスの記念碑が建てられたコート・ド・ストック(距離1km/平均12.5%)で逃げ集団は引き戻されると、その後はUAEによる無慈悲な高速牽引によって人数は絞られる。その後はデカトロンCMA CGMやバーレーン・ヴィクトリアスなどが先頭交代しながら、ついに選手たちはコート・ド・ラ・ルドゥット(距離1.6km/平均9.4%)に突入した。

2022年から4年連続で決定的な動きが生まれているこの登りでは、ポガチャルのアタックを宣言するように、最終アシストであるブノワ・コスヌフロワ(フランス、UAEチームエミレーツXRG)が集団先頭で踏み込む。ポガチャルの背後にはフランス期待の19歳、ポール・セクサス(デカトロンCMA CGM)がつける一方、10番手のエヴェネプールが早くも遅れる。そして頂上まで残り1km、フィニッシュまで35kmという距離で、ポガチャルが腰を上げてアタックした。

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)のアタックに唯一追従したポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) photo:A.S.O.

世界王者の加速に唯一反応できたのはセクサスただ1人。何度もダンシングで加速するポガチャルにセクサスは食らいつき、大幅なリードを得た2名は頂上を通過し、残す登りは2つのみ。単独で追走していたマティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)は現役最後のリエージュを走るペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)ら追走集団に合流し、先頭2名を7名集団が追いかけ、その15秒後方にエヴェネプールらさらに大きな集団が控えるという展開となった。

ここまで4戦3勝と好調のポガチャルと、ラ・フレーシュ・ワロンヌを史上最年少で制したセクサスはローテーションを回し、残り22km地点で後続との差を1分まで拡大させる。しかし最後のラ・ロッシュ・オ・フォーコン(距離1.3km/平均11%)でこの協調体制は崩壊した。頂上手前600mで加速したポガチャルはセクサスを引き離し、残り14km地点から独走に持ち込んだ。

ラ・ロッシュ・オ・フォーコンでセクサスを引き離したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

追走を強いられたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

両者の差はあっという間に1分弱まで広がり、ポガチャルは悠々とフィニッシュラインの引かれたリエージュの最終ストレートに到着する。2020年大会ではアシストも務めた元チームメイトであり、4月24日に亡くなったクリスティアン・ムニョス(コロンビア)を追悼する喪章を左腕に巻いたポガチャルは、左手を胸に、そして右手の人差し指を突き上げフィニッシュ。大会最多タイとなる3連覇を達成し、自身4度目の優勝を果たした。

人差し指を突き上げ、独走勝利を決めたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

初出場で堂々の2位だったポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) photo:CorVos
集団スプリントで先着し、3位に入ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos


セクサスと抱擁するタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

45秒後にフィニッシュしたのはセクサス。優勝候補の1人と注目を集め、2位ながら期待通りの走りを見せた。そして激しいスプリントで争われた3位争いは、意地のロングスプリントでエヴェネプールが先着。春のクラシックシーズンを締めくくるにふさわしい、この春を盛り上げた3名が表彰台に上がった。

「僕らは状況をコントロールし続け、途中からはデカトロンも協力してくれた。レムコ(エヴェネプール)を逃してはいけなかったからね。ラ・ルドゥットでは本当に強く踏み込んだのだが、彼(セクサス)がギリギリでついてきて、頂上では僕の隣に並んだ。本当に驚いたし、その後は彼もかなり強く牽引していた。頭のなかではスプリントに備えていたが、ラ・ロッシュ・オ・フォーコンで幸い彼が遅れていった。でも、僕はずっとスプリントに備える準備をしていたよ」と、ポガチャルはセクサスを称えた。

3連覇で通算4勝目の優勝を手に入れたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

パリ〜ルーベでは2位と敗れながらも、今春は5戦4勝でモニュメント通算13勝目と、世界王者にふさわしい圧倒的な強さを誇示したポガチャル。2日後に開幕するツール・ド・ロマンディに初参戦する予定だ。

選手たちのフィニッシュ後のコメントは別記事にてお伝えします。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2026結果
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 5:50:28
2位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) +0:45
3位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +1:42
4位 エミル・フェルストリンヘ(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)
5位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)
6位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 ロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJユナイテッド)
8位 クリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ)
9位 トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
10位 フィリッポ・ザナ(イタリア、スーダル・クイックステップ)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos