ハイスピードなレースをリードしたのはオレンジのジャージの3人だった。今季絶好調ながら直前には調子を落としていたルシンダ・ブラントが5年ぶり2度目のアルカンシェルを獲得。 オランダは母国開催のフルストで4年連続の表彰台独占という記録を更新した。



プック・ピーテルセ(オランダ)を先頭にスタートした女子エリート31選手 photo:Nobuhiko Tanabe

1月31日(土)に行われたシクロクロス世界選手権2日目のトリを飾ったのは女子エリート。舞台であるオランダ・フルストの特設コースは窪んだ人工池周辺の激登り/激下りと平坦を組み合わせた高速レイアウトの1周3.3km。2年連続のシクロクロス大国オランダ開催に大観衆が詰めかけた。

フルストの1周3.3kmコースには斜面のキャンバーが続く photo:CorVos

その大舞台に世界のトップライダーである31名が集った。日本からは今季オランダをベースに欧州CXレースを転戦して経験を積んだ渡部春雅(Liv Racing Japan/OlandaBase/Watersley)が出場。

3年連続の世界チャンピオン、フェム・ファンエンペル(オランダ)は無期限引退を発表、それによりディフェンディングチャンピオンの居ないレースとなった。

オレンジジャージのオランダ3人がリードする photo:CorVos

気温は10°と、この時期にしては暖かい日を迎えたフルスト。スタートからのホールショットを決めたのは今季好調のプック・ピーテルセ(オランダ)。現マウンテンバイク世界チャンピオンがリードする集団はハイスピードで流れるようにコースに流れ込んでいく。渡部は最後尾2番目で続いた。

序盤からアグレッシブに攻めるプック・ピーテルセ(オランダ) photo:CorVos

1周目中盤、ピーテルセが牽引するグループにはセイリン・アルバラードとルシンダ・ブラントが続いてオランダの3人が前を固め、カタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー)、そしてマウンテンバイクの金メダリストであるヨランダ・ネフ(スイス)ら6人による先行グループが形成された。今季好調のアマンディーヌ・フークネ(フランス)はスタートでペダルを外すミスをしたが、着実に順位を上げて先行グループへ迫る。

ピーテルセとアルバラードを先頭に切れのある走りを披露する先頭を行くオランダ勢3人は、3周目には後続を引き離し、ブラントを加えた3人のリーディングパックが早くも形成される。レースは6周回の勝負に。

オランダの3トップを追う6人のグループ photo:CorVos

しばらくは協調するかに見えたオランダ3人だが、ピーテルセのアグレッシブな走り、そしてアタックは同国の2人を引き離すかのような動きで、しかしアルバラードもそれを許さず追従する。今季圧倒的な成績を残すブラントは直近は調子を落としたことで不安を抱えるが、少し間を空けつつも遅れはしない。

激しいクラッシュで肩を痛めたプック・ピーテルセ(オランダ) photo:CorVos

直近のW杯最終2連戦を連勝して絶好調のピーテルセは、MTB由来のテクニックを活かして攻め続けるが、ハイスピードの下りで泥にスリップして激しく転倒してしまう。起き上がるまでにロスも生じ、続いていたアルバラードが単独先行することに。4秒差でブラントが追う。

4周目にはペースを上げるブラントが単独先行に入る。しかし上りセクションでフロントをロックさせてジャックナイフの転倒を喫し、アルバラードが追いつくチャンスを与える。肩を泥で汚し勢いをなくしたピーテルセはペースが上がらず、追走グループに吸収される。

アマンディーヌ・フークネ(フランス)率いる追走グループ photo:Nobuhiko Tanabe

MTBの五輪金メダリスト、ヨランダ・ネフ(スイス)が好走を披露 photo:CorVos

オランダ2人の先頭に変わりはなく、追走パックはフークネ(フランス)、ヴァシュ(ハンガリー)、ネフ(スイス)、ピーテルセ(オランダ)の4人が40秒ほどの差で続く。先頭2人との差が開きすぎたことで、このグループでの3位争いモードへと入っていく。

2021年に続く5年ぶり2度目のアルカンシェルを獲得したルシンダ・ブラント(オランダ) photo:UCI

最終周回の6周目へ単独で入るブラント。アルバラードとのタイム差は17秒と大きく、リスクを取る必要は無い。安定した走りで最終ラップをこなしたブラントはフィニッシュラインで喜びを炸裂させ、大観衆の声援に応えるようにトレックのバイクを高々と持ち上げて自らを祝福した。

セイリン・アルバラードとハグを交わすルシンダ・ブラント photo:UCI

2位にアルバラード、3位には追走グループから抜け出したピーテルセが入り、オランダ勢によるポディウム独占となった。これでシクロクロス世界選手権の女子エリートでオランダ勢が表彰台を独占するのは4年連続となる。

優勝のルシンダ・ブラント、2位セイリン・アルバラード、3位プック・ピーテルセ。オランダが4年連続の表彰台独占 photo:CorVos

36歳。2021年に続く5年ぶり2度目のアルカンシェルを母国オランダで獲得したブラント。昨年のホーヘルハイデ世界選では同郷のフェム・ファンエンペルに敗れ2位だった。しかしファンエンペルの引退した今季はこれまで18勝という圧倒的な数字を叩き出してワールドカップの総合優勝を射止めた。しかしシーズン後半に調子を崩し、オランダ選手権で敗れて以来負けが続き、W杯でも直近のマースメヘレン大会では10位と「63回連続表彰台」という記録が途絶えた。W杯最終戦はふくらはぎの痛みによりDNSとなり、懸念材料を多く抱えたまま臨んだこのフルスト世界選だった。

ブラントは言う。「本当に信じられない。他とは違う大観衆の地元で素晴らしい雰囲気に包まれての勝利は凄く嬉しいもの。今季は1レースを除いて(直近のW杯マースメヘレン大会)素晴らしいリザルトで、もう何も言うことは無いわ」。

渡部春雅は28位、-1Lapだった photo:Nobuhiko Tanabe

渡部春雅は最下位の28位で、最終周回には入れなかった。
渡部は言う。「いつもの走りができなかったという悔しさはあります。10月に欧州のシクロクロスレースを転戦した際は自分と同じレベルの選手も居たけど、やはり世界選手権はレベルが違いました」。
シクロクロス世界選手権2026 女子エリート結果
1位 ルシンダ・ブラント(オランダ) 49:16
2位 セイリン・アルバラード(オランダ) + 27 
3位 プック・ピーテルセ(オランダ) + 51
4位 カタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー) + 56
5位 アマンディーヌ・フークネ(フランス) + 58
6位 ヨランダ・ネフ(スイス) + 01:02
7位 ゾーイ・バックステット(イギリス) + 01:05
8位 マノン・バッカー(オランダ) + 01:11
9位 シリン・ニンクアンローイ(オランダ) + 01:20
10位 マリー・シュライバー(ルクセンブルグ)  + 01:37
28位(-1Lap) 渡部春雅
text: AYANO
photo:Nobuhiko Tanabe, CorVos