2025年12月27日に千葉県成田市のもりんぴあこうづでパラリンピック金メダリストの杉浦佳子が講演会「パラリンピックから見えたインクルーシブの未来」を開催した。講演会の模様を主催者のレポートより紹介していく。



会場となった「もりんぴあこうづ」は図書館、子育て支援機能を複合した市⺠の活動拠点となっている photo:NPO法人サイクリスト国際交流協会

パラリンピックから見えたインクルーシブの未来
=私を自然に受け入れてくれた自転車レース界の人・取組・共生・未来=


2025年12月27日・杉浦佳子:講演会

2020東京パラリンピックで、50歳にして個人ロードとロードTTの二冠を果たした表彰台で、「最年少記録は2度と作れないけれど、最年⻑記録は作れる」と宣った杉浦佳子選手をお招きした講演会を、千葉県成田市のもりんぴあこうづ(公津の杜コミュニティーセンター)MORI×MORI ホール」にて昨年末に開催。

これは、来る2月21日(土)に千葉県成田市・下総運動公園において「杉浦佳子杯・第1回インクルーシブ自転車レース」開催をアピールする意味も込めたイベント。その模様をご紹介。

ロビーに展示した杉浦がレース本番で使用するバイクの数々は、皆さんに間近でご覧いただいた photo:NPO法人サイクリスト国際交流協会

開場時間の午後1時過ぎになると聴衆の方々が早々にお集まりいただいた。ホール前のロビーには杉浦選手のご厚意で、レース本番で使用したロードレーサーやタイムトライアル専用バイクなど3台を持ち込まれた。また、東京で2つ、パリで1つ獲得した金メダルも御披露で、開演前から盛り上がる。

主催のNPO法人サイクリスト国際交流協会を代表して須藤むつみから、挨拶とともに、この講習会を開催した狙いを説明。そこで登壇した杉浦選手、「2月のインクルーシブレース対象者は、障がいを持つ人も、自転車レースが初めての人も、高齢者も、ママチャリでも誰でも何でもですね」と話し始める。

東京で2つ、パリで1つ獲得した金メダルを披露 photo:NPO法人サイクリスト国際交流協会

自転車レースへの道程

北里大学薬学部卒業後、薬剤師免許取得、スポーツファーマシストの資格も取得して、自転車ロードレースの世界に飛び込む。2016年4月、45歳のときに出場したロードレース大会でレース中に転倒。その時に負ったクモ膜下出血等で高次脳機能障害となってしまう。しかし諦めずにリハビリを積み重ね、翌年の2017年にパラサイクリング世界選手権のWC3クラス・タイムトライアルで金メダルを獲得。ここからパラサイクリストとしての本格的な活動が始まる

パラリンピック金メダリストの杉浦佳子が講演会「パラリンピックから見えたインクルーシブの未来」を開催 photo:NPO法人サイクリスト国際交流協会

障害を負ってからの気づき

インクルーシブという言葉は、自分が障害を負ってから知った言葉。その反語はエクスクルーシブで、排除。だからインクルーシブは多様な人を排除しないで隔てなく受け入れることだと理解した。また、できちゃった婚の若い私は妊娠・出産、子育てをしながらの大学再受験や国家資格受験など、これでもかと思うほどの試練の釣瓶落としの連続に、ややもすると放り投げてしまいたくなることもあった。

しかしそんな試練の数々を克服できたのは、私の生き方を理解して受け入れてくれた人たちの存在。保育園は私を尊重して子供を預けての薬剤師国家資格獲得を助けてくれた。ようやく薬剤師になっても、勤務と子育てとの両立が難しく就職先がなかなか決まらなかったけれど、とある経営者が受け入れを決め子育て中でも勤務できるように制度を変えてくれた。そういうことが、結果的に「誰も排除しない、一緒に取り組める」という年齢・性別・障がい・国籍などに関係なく、さまざまな人が自然に参加できている「状態=インクルーシブ」。

インクルーシブな未来をつくろう!

実体験を通して杉浦佳子選手は、「許容されるだけでなく還元することも大事」と語る。先ずは苦手なことがあれば、周囲の手助けを乞うだけでなく自分の工夫と努力で改善する。自分の向かう目標が決まったら、その手前から少しずつステップアップするように考え、無理なくクリアできるように工夫して、目標へ向かうことが良い。それでも、どうしても克服が難しいところでは、助けてもらうだけでなく「助け合う」のだという。「ありがとう」と感謝の気持ちを伝える実践も薦めていた。

北里大学薬学部卒業後、薬剤師免許取得、スポーツファーマシストの資格も取得している杉浦佳子 photo:NPO法人サイクリスト国際交流協会
パラサイクリストとしての活動について話していく photo:NPO法人サイクリスト国際交流協会


「幸せの定義」として、「目標や夢があること」と、それに向かって「やるべきことがある」こと、その過程で達成感や自分の成⻑を感じるとともに、誰かから喜ばれたりすることがポイントだと言う。「他人に嫌なことをする人は幸せでないからかも?自分が幸せならば、他の人の幸せも願うことができるはず!」。さまざまな仕組みを作るとき、いちばん大事なのは参加しやすい状況=インクルーシブな状態を作る事なのだと結んだ。

講演会の後に質疑応答

講演会の後に質疑応答が行われた photo:NPO法人サイクリスト国際交流協会

クモ膜下出血で高次脳機能障害を負い、出来ないことを体験して対処法を知ったからこそ逆に、事故以前より出来ることが多くなった。そのコメントを踏まえて「そのために、どのような工夫をしたのか具体的に教えてほしい」という質問。それに杉浦選手は、「とにかく、すぐやる!でも、そうはいかないことも多いので、To Do リストを作ってスケジュールを組んでいます。あと、すぐに出来ないことはリマインダーをつけています」と応えていた。

また、マメに記録を付けていることにも触れて「日記をつけたりしながら、睡眠時間や体重、トレーニングや食事内容など毎日の行動を記録するようにしています」と教えてくれた。事故直後は記憶が10分程度しかもたず、漢字も読めなくなるほどの障がいを追っていたところから、リハビリを重ねて、今は素晴らしい講演を出来るほどの回復をした言葉は非常に重く説得力があった。

貴重なパラリンピックの金メダル実物もお持ちいただき、皆さんには金メダルとの記念撮影に応じた photo:NPO法人サイクリスト国際交流協会

ファンが持ち込んだ雑誌などにも気軽にサインを応じてくれた杉浦選手の温かさに感動 photo:NPO法人サイクリスト国際交流協会

講演会の後は東京とパリのパラリンピックで獲得した金メダルも展示され、希望者には一緒に記念撮影も応じた。杉浦氏のポジティブパワーな講演で元気をいただき、温かい雰囲気の講演会となった。



インフォメーション

2月21日(土)、千葉県成田市・下総運動公園サイクリングコースで開催の「杉浦佳子杯・第1回インクルーシブ自転車レース」 photo:NPO法人サイクリスト国際交流協会

2月21日(土)、千葉県成田市・下総運動公園サイクリングコースで開催の「杉浦佳子杯・第1回インクルーシブ自転車レース」は「全ての人々に自転車レースの楽しさを!チャレンジする勇気を全ての人へ!」をテーマとして企画。「障碍者」と「健常者」が共に同じ大会で闘い交流を深めるレース。成⻑途上にあるキッズやジュニア、また自転車レースにチャレンジを志す初心者にも気軽にレース参加でき、また「Qリーグ・Nリーグシリーズ第12戦」も併催されるので、本格的なレースも観戦出来る内容となっている。

・ママチャリでも出場 OK!
ブレーキが付いている自転車ならママチャリやシティーサイクルなど普段から乗り慣れている自転車で参加出来ます。事前に自転車屋さんで整備してレースにチャレンジしてみよう!

・本格的なレースを体験・観戦!
インクルーシブ自転車レース併催の「Qリーグ・Nリーグシリーズ戦」は女子や中学生男女による本格的なロードレース。応援するもよし!このレース出場を目指してポイントリーダーも夢じゃない!

・いろんな自転車体験で遊ぼう!
レース会場内では、様々な自転車関連ブースも出展!ここで最新の自転車情報を知ったり、最新自転車の試乗も出来ます。地元・成田市の美味しい飲食ブースも楽しめる!

大会の詳細やレースガイド、参加エントリーは下記サイトからご覧ください。
皆様のご参加をお待ち申し上げております。

インクルーシブ自転車レース・公式ホームページ URL
http://www.jbrain.or.jp/inclusive-bicycle/

講演会:概要>
主催:NPO法人サイクリスト国際交流協会(J-BRAIN)
共催:QNリーグ実行委員会
後援:成田市、成田市教育委員会

レポート概要>
写真撮影:NPO法人サイクリスト国際交流協会、QNリーグ事務局
テキスト:須藤むつみ(NPO 法人サイクリスト国際交流協会)
構成:松本敦
協力:もりんぴあこうづ(公津の杜コミュニティーセンター)