日本のヘルメットブランドであるカブトのフラッグシップモデル「FLEX-AIR」。UCIプロチームのソリューションテック・ヴィーニファンティーニやJプロツアーの9チームが使用し、空冷性能に優れる軽量レーシングヘルメットをインプレッションしていく。



カブト FLEX-AIR(マットトランス) photo:Michinari TAKAGI

国内サイクリングイベントに行けば必ず見かけるカブトのヘルメット。日本ブランドだけあって、日本人の頭部形状を知り尽くしたシェルデザインは抜群のフィット感を実現し、その被り心地の良さから多くのファンを有している。

エントリーモデルからフラッグシップモデルまで幅広いラインアップを取りそろえる中から、今回は軽量ハイエンドヘルメットに位置づけられる「FLEX-AIR」を紹介していく。

「軽量」という開発コンセプトを掲げる photo:Michinari TAKAGI

最先端のCFD解析を活用し、ライディングポジションとホール角度の関係性を最適化 photo:Michinari TAKAGI

FLEX-AIRが重要視するのが軽量性。安全性を確保した上で、余分な重量を可能な限り削減するため、球体をベースにしたフォルムを採用した。同じ体積の中で最も表面積が小さくなる球体をデザインコンセプトとすることで、必要とする部材を最小限に抑える設計だ。

加えて、アウターシェルの強度が不要となる箇所にはパンチング加工が施されるなど、徹底的な軽量化が図られている。その結果、FLEX-AIRはXS/Sサイズで185g、S/Mで195g、L/XLで215gとカブトのロード用ヘルメットラインアップとして最軽量の一着に仕上げられた。

Y字型の3点固定フローティング構造のエアフローパッドを搭載 photo:Michinari TAKAGI

軽量性に加え、通気性の高さもFLEX-AIRの特徴だ。最先端のCFD解析を活用し、あらゆるライディングポジションにおいてベンチレーションホールが有効に働くように最適化。特に、低速となるヒルクライム時に多用するアップライトポジションでも十分な量の空気を取り込むことを可能とした。


更に、ヘルメット内部のエアルート設計は空気の流れに沿った自然なデザインが与えられており、頭部全体を効率的に冷却可能。Y字型の3点固定フローティング構造の「エアフローパッド」を搭載することで、頭部とヘルメットの間に空間を確保し通気性を格段に向上させた。インナーパッドには汗を素早く蒸散させる「COOLMAX」素材を採用し、常にドライな着け心地を実現した。

BOAフィットシステムを採用したKBF-2アジャスターを搭載 photo:Michinari TAKAGI

両サイドへの2段階調整が可能な新機構「ヘッドレスト(PAT.)」を採用 photo:Michinari TAKAGI

定評あるアジアンフィットの帽体形状に加え、BOAフィットシステムを採用したKBF-2アジャスターを搭載することで、優れたフィット感を更に磨き上げた。細かな調整と均一な締め付けが可能なBOAフィットシステムにより、頭を包み込むような高いホールド性を実現している。

KBF-2アジャスターの後頭部と接触するヘッドレスト部には、幅を2段階で調整できる機構を搭載。締付けの強さだけではなく、個人差の大きい後頭部形状に合わせた調整が可能となった。また、頭頂部から後頭部にかけてアジャスターアームが上下4段階に調整できる。

FLEX-AIR A.I.ネットとFLEX-AIR ウィンターインナーパッド、ウルトラスウェットパッド-04、ノンスリップラバー-03が同梱されている photo:Michinari TAKAGI

カラーはG-2 ホワイトレッド、G-2 レッド、G-2 ネイビーコパー、マットホワイトシルバー、マットブラックガンメタ、マットバーガンディ、マットアクア、マットトランス、マットゴールドの9色がラインアップされている。

サイズはXS/SやS/M、L/XLの3サイズ展開。価格は29,700円(税込)だ。それではインプレッションに移っていこう。



―編集部インプレッション

CW編集部員の高木がシーズンを通してFLEX-AIRをテスト photo:Gakuto Fujiwara

新城幸也や岩村元嗣が所属するプロチームのソリューションテック・ヴィーニファンティーニをサポートするカブト。Jプロツアーではブリヂストンサイクリングやマトリックスパワータグ、ヴィクトワール広島などの合計9チームをサポートしていることもあり、国内レースではまさしくスタンダードな存在だ。

そして私、CW編集部員の高木が所属するJプロツアーの稲城FIETSクラスアクトではカブトのヘルメットを被り、2025年シーズンも全日本選手権をはじめ、全国各地で開催されたロードレースやクリテリウムを走ってきた。

S/Mサイズで195gと、手に取った瞬間から軽さを感じる photo:Gakuto Fujiwara

レース中のプロトン内でサポートチームの選手たちを見ていると、エアロヘルメット「AERO R2」と軽量モデル「FLEX-AIR」をコースや天候に合わせて使い分けている様子。私自身もクリテリウムや平均時速の速いロードレースでは「AERO R2」を、ヒルクライムレースや真夏のレースでは「FLEX-AIR」を使い分けてきた。

自転車競技を始めた高校生の頃は「MOSTRO」が大人気で私も愛用していた。大学生の頃は「REDIMOS」へと移行し、最近では稲城FIETSクラスアクトに所属し、IZANAGIやAERO R2を使用してきたが、全てのモデルでS/Mサイズがジャストサイズ。FLEX-AIRも全サイズを試着してみたが、やはりS/Mサイズがジャストフィットだった。

BOAダイヤルを採用し、細かく締め付けることができる photo:Gakuto Fujiwara

FLEX-AIRは額や後頭部までしっかり深く被る事ができるため、頭が守られている感覚が強く、安心感がある被り心地だ。それでいてエアフローパッドにより、頭頂部付近にヘルメット自体が当たらず、まるで浮いているようで圧迫感のない被り心地が特徴である。

ヘッドレストの位置調整の自由度が高いため、自身の頭の形状に合わせて細かくカスタマイズできる。また、クロージャーにはBOAダイヤルを採用し、細かく締め付けることができるのがポイントだ。

6月開催の全日本選手権ロードレースでは、日本CSCの8kmサーキットを走ったが、急勾配の長い登りがあり、10km/hほどの低速でヒルクライムするシーンが多かった。スピードが出ていないためヘルメット内部に熱がこもるが、エアフローパッドにより、ヘルメットと頭が直接触れることなく、その隙間を風が駆け抜けていくため、熱気が効率的に排出されていく。

エアフローパッドによりヘルメット内部の熱気が逃げやすい photo:Gakuto Fujiwara

エアロ性能で言えばエアロヘルメット「AERO R2」に軍配が上がるが、FLEX-AIRも一定のエアロ性能を備えていることは感じ取れる。クリテリウムやロードレースなどのレーススピードにおいても、後ろに引っ張られるような感覚はなかった。

FLEX-AIRはカブトのヘルメットで最軽量モデルとあって、手に持った瞬間から明らかに軽い。被ってからも、この軽さは大きなメリットとなる。ライド中の首への負担や疲労感も圧倒的に少なく、特にレースやトレーニングでは周囲の確認をするために頭を動かすことが多いこともあり、軽量性の恩恵は非常に大きい。

ライド中の首への負担や疲労感も圧倒的に少ない photo:Gakuto Fujiwara

FLEX-AIRは通気口が多く、涼しいヘルメットであるため、肌寒い秋や冬には寒すぎるのではと心配する向きもあるだろう。しかし、その点はしっかり対策済みで、同梱品のFLEX-AIR ウィンターインナーパッドに張り替えれば冷たい空気を凌げるため、キャップなどを被る必要も少ない。さらに、春や夏など虫が多い時期などはFLEX-AIR A.I.ネットに張り替えれば虫対策にもなる。

FLEX-AIRは軽量性と空冷性能、そしてフィット感を徹底的に追求し、まさにカブトのフラッグシップモデルに相応しい一着だ。レーサーやヒルクライマーはもちろんのこと、軽さや快適さを求めるサイクリストにおすすめしたい。

レーサーやヒルクライマーはもちろんのこと、軽さや快適さを求めるサイクリストにおすすめしたい photo:Gakuto Fujiwara



カブト FLEX-AIR
サイズ:XS/S、S/M、L/XL
重量:185g(XS/S)、195g(S/M)、215g(L/XL)
カラー:G-2 ホワイトレッド、G-2 レッド、G-2 ネイビーコパー、マットホワイトシルバー
マットブラックガンメタ、マットバーガンディ、マットアクア、マットトランス、マットゴールド
価格:29,700円(税込)
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