オランダ生まれ、九十九里育ち。海と風と砂のオフロードレース「BEACH CROSS 99」が3年目を迎えた。今年はUCIレースも行われ、トップ選手も参加。九十九里浜に根づき始めた新しい自転車文化をレポート。

ゲスト参加した片山右京さん(使用前) photo:So Isobe 
栗村修さんも参戦。「最近シクロクロスも参戦してますからね。僕の走りを見せつけてやります!」と気合十分(笑) photo:So Isobe

9時にスタートした午前の部。100名以上が一斉に砂浜を駆け出した photo:So Isobe
突然ですが、「ビーチレース」って知ってます?
そう、ビーチレースはその名の通り、真っ平らな海岸線の砂浜(ビーチ)を自転車で走り、スピードや持久力、風を読む力やテクニックを競うオフロードレース。起源は諸説あるものの、2000年頃にオランダの北海沿いで始まってから隣国ベルギーやフランスにも波及し、それぞれの国でナショナル選手権が開催され、一番大きな大会は参加者3000人を超える(!)ほどまでに定着したカテゴリーだ。
パワーに溢れる北ヨーロッパの選手達がエシュロン(横風隊列)を組んで、だだっぴろい海岸線を爆走するハイスピードレースは、シクロクロスと並ぶオランダとベルギーの冬の風物詩。でも一方で、シクロクロス以上にナショナルカラーが強く、他国ではあまり開催実績がない。海と風と砂が競技そのものを形作るこのレースは、北海沿岸の地形と気候があってこそ育まれた文化なのだ。

前日の雨で硬く締まった砂浜。パワー重視のスピードレースになった photo:So Isobe

サーファーとビーチレース。日本全国ここだけでしか見れない光景 photo:So Isobe 
一直線コースの往路は砂混じりのグラベル区間。砂浜よりもスピードが乗ります photo:So Isobe

メイン会場前はちょっとふかふか。シクロクロスっぽいですね photo:So Isobe
そんなビーチレースを日本で唯一味わえるのが、千葉・九十九里の片貝中央海岸で今年3回目を迎えた「BEACH CROSS 99(通称ビーチクロス)」。日本最大級の砂浜海岸としても有名な九十九里浜を思いっきり走れる貴重なレースイベントとして、特にシクロクロスやMTBを親しむ層からじわじわと人気を得ている大会だ。
元はといえば、シクロクロス東京や幕張クロスなど、競技とエンターテインメントを高度に融合させたシクロクロスイベントを多く手掛けてきたチャンピオンシステムの棈木代表が、「ここでシクロクロスやれない?」と相談を受けたのがきっかけ。現地を視察して「まっ平らでシクロクロスは無理!でも、話に聞いたことのあるビーチレースなら最高かもしれない」と閃いたという。棈木代表自身も今年1月にオランダの大会へ視察に赴いて得たノウハウが、たっぷりとこの大会に取り入れられている。

片山右京さんと栗村修さんはトークショーにも登壇。実際に走った感想を話してくれました photo:So Isobe

会場ではビーチライフin九十九里町のステージライブも。ダンスも行われて終始賑やか photo:So Isobe 
かなりハイレベルなダンス発表会 photo:So Isobe

ヴィットリアのおすすめタイヤは、スピードとコントロール性能を両立したTERRENO T30 photo:So Isobe 
メリダのイチオシモデルは新型XTRを搭載したBIG.NINE 10K photo:So Isobe
砂の上をどう走るか、どんなバイクで挑むかは極めて自由だ。本場がそうであるように、EバイクでなければMTBでも良いし、グラベルバイクでも良いし、シクロクロスバイクでも、砂の上を走れるならなんでもOK。
ちょっと本場の機材事情を説明すると、「真っ平らな海岸線を高速で突っ走る」というちょっと特殊な競技だから、オランダ/ベルギーでは機材も独自の進化を遂げてきた。砂を掘らず、埋まらないハイボリュームのスリックタイヤを取り付けるためにハードテールMTBが基本で、サスペンションはリジッドフォークに替えて、エアロポジションを取るためにステムを思いっきり伸ばしたり、ドロップハンドル化してみたり。現地ブランドにはビーチレース専用モデルだってラインナップされていることもある(ベルギーブランドのリドレーは、サポート選手を起用してビーチレースの機材と醍醐味を紹介するコラムを掲載しているので、興味のある方はぜひ確認を)。
3年目を迎えてビーチクロスの参加者側もノウハウが貯まってきたようで、機材選びもだいぶこなれてきたような感じ。バイクを見ていると、700cのグラベルバイクならタイヤはできるだけスリックパターン寄りで、幅は45-50mm程度がスタンダードだろうか? 高岡亮寛さん(Roppongi Express)のように、中にはタイヤボリュームを稼ぐために650b/27.5インチのホイールにワイドタイヤをセットアップする人もチラホラ。ちなみに、取材班が見かけた「一番本場っぽかったで賞」はリジッドフォークとファットなスリックタイヤを組み合わせたMTBで参戦した森本彰人さん(Team轍屋)でした。

CW取材班の「一番本場っぽいバイクで賞(勝手)」を受賞した森本彰人さん(Team轍屋)。ビーチレース特化型のカスタムMTBだ photo:So Isobe

「ちょっとカッコ悪いですが...」と言う上向きステムは、ハンドル荷重を少なくして砂に埋まらないための工夫 photo:So Isobe 
リジッドフォークとセミファットタイヤをセット。車重は9kg程ととても軽い photo:So Isobe

リッチーマニアを自称する田河慎也さん(Team轍屋)のバイクは往年の26インチMTB、プレクサス。超こだわり仕様だったのでお声がけ photo:So Isobe

「リッチーのデカールがよく見えるように」とフロントシングルに photo:So Isobe 
塗装もフルオリジナルでとても綺麗。「このロゴが残っている車体は少ないんです!」とのこと photo:So Isobe

栗村修さんのバイクはメリダのシクロクロスバイクで参戦 photo:So Isobe

高岡亮寛さん(Roppongi Express)は27.5インチのホイールとワイドタイヤをセット photo:So Isobe

イベント運営と先導モトの担当は内嶋亮さん。かつてMTBダウンヒルではホンダチームに所属し、日本チャンピオンに輝いた経歴を持つ photo:So Isobe 
ご当地ゆるキャラもたくさん登場(ワンコに吠えられまくっていました) photo:So Isobe
3回目を迎えた2025年大会の砂浜は、前日にしっかりと雨が降ったおかげで硬く締まったイージーコンディション。パフパフ砂だった昨年には「先導モトの轍をたどるのが最速」という攻略法が編み出されたらしいけれど、今年はそんな必要まるでなしのハイスピードレースになった。参加した人の声を聞いていると「ひたすらに踏まされるので超キツかった」とか「ズイフトしてるみたいだった」とか「踏んでるのに眠くなってきた」なんて声も...。でもそんな声とは裏腹に、みんな一様に、ここでしか味わえない爽快感を楽しんでいるご様子でした。
今回の特別ゲストは、カミカゼ右京こと元F1ドライバーの片山右京さんと、J SPORTSの解説でもお馴染みの栗村修さん。「このためにグラベルバイク借りてきました!」な右京さんは「めちゃくちゃキツかったけど、脚もテクニックも身につくからキッズ選手の育成には最高ですね」とおっしゃっていて、実はかつて選手時代にMTBレースにも出ていた栗村さんは、最近楽しんでいるというシクロクロスバイクで流石の走り。レース後にはトークショーに出演されたりと、忙しくも存分に楽しんでいらっしゃいました。

石田唯(TRKWorks)と、フィリピンから遠征中のニコル・キノネス(Asia union tcs racing team)も参戦 photo:So Isobe 
前回チャンピオンの城野謙次(RoppongiExpress)と、今回優勝した北林力(MASSIデベロップメントチーム) photo:So Isobe

ホールショットでエリートレースを引っ張る城野謙次(RoppongiExpress) photo:So Isobe

男子エリートレースを制した北林力(MASSIデベロップメントチーム) photo:So Isobe

北林を追いかける第2グループ photo:So Isobe 
優勝した石田唯と小林輝紀さん(TRK WORKS) photo:So Isobe
今年の大きな変更ポイントは、UCIのMTB-XCO クラスに設定された男女エリートレースが行われたこと。フォーマットはビーチレースだけど、MTBのUCIポイントが獲得できるとあって海外遠征を行う選手たちも参戦。エントラントの中で一つ抜けた力を持つ北林力(MASSIデベロップメントチーム)と石田唯(TRK WORKS)がそれぞれ力強い走りを披露して男女レースを制したのだった。
心配されていた台風の影響もまるでなく、爽やかな海風の中開催された「第3回BEACH CROSS 99」は、最終種目のキッズレースのフィニッシュを持って閉幕に。主催の棈木代表によれば、すでに来年大会の開催も決定しているとのことで気になる方は心待ちに!どうやらUCIレースのフォーマットではなく、もっと幅広い層のエントラントが楽しめる内容を考えているとのことで、日本唯一のビーチレースはもっともっと進化しそうな勢いです。

男子エリートレース表彰台 photo:So Isobe 
女子エリート表彰台 photo:So Isobe

エリートのメダルはかなり手の込んだ作り。「これはもらって嬉しいです!」とのこと photo:So Isobe

優勝メダルをゲットした石田唯(TRKWorks) photo:So Isobe
text&photo:So Isobe



突然ですが、「ビーチレース」って知ってます?
そう、ビーチレースはその名の通り、真っ平らな海岸線の砂浜(ビーチ)を自転車で走り、スピードや持久力、風を読む力やテクニックを競うオフロードレース。起源は諸説あるものの、2000年頃にオランダの北海沿いで始まってから隣国ベルギーやフランスにも波及し、それぞれの国でナショナル選手権が開催され、一番大きな大会は参加者3000人を超える(!)ほどまでに定着したカテゴリーだ。
パワーに溢れる北ヨーロッパの選手達がエシュロン(横風隊列)を組んで、だだっぴろい海岸線を爆走するハイスピードレースは、シクロクロスと並ぶオランダとベルギーの冬の風物詩。でも一方で、シクロクロス以上にナショナルカラーが強く、他国ではあまり開催実績がない。海と風と砂が競技そのものを形作るこのレースは、北海沿岸の地形と気候があってこそ育まれた文化なのだ。




そんなビーチレースを日本で唯一味わえるのが、千葉・九十九里の片貝中央海岸で今年3回目を迎えた「BEACH CROSS 99(通称ビーチクロス)」。日本最大級の砂浜海岸としても有名な九十九里浜を思いっきり走れる貴重なレースイベントとして、特にシクロクロスやMTBを親しむ層からじわじわと人気を得ている大会だ。
元はといえば、シクロクロス東京や幕張クロスなど、競技とエンターテインメントを高度に融合させたシクロクロスイベントを多く手掛けてきたチャンピオンシステムの棈木代表が、「ここでシクロクロスやれない?」と相談を受けたのがきっかけ。現地を視察して「まっ平らでシクロクロスは無理!でも、話に聞いたことのあるビーチレースなら最高かもしれない」と閃いたという。棈木代表自身も今年1月にオランダの大会へ視察に赴いて得たノウハウが、たっぷりとこの大会に取り入れられている。





砂の上をどう走るか、どんなバイクで挑むかは極めて自由だ。本場がそうであるように、EバイクでなければMTBでも良いし、グラベルバイクでも良いし、シクロクロスバイクでも、砂の上を走れるならなんでもOK。
ちょっと本場の機材事情を説明すると、「真っ平らな海岸線を高速で突っ走る」というちょっと特殊な競技だから、オランダ/ベルギーでは機材も独自の進化を遂げてきた。砂を掘らず、埋まらないハイボリュームのスリックタイヤを取り付けるためにハードテールMTBが基本で、サスペンションはリジッドフォークに替えて、エアロポジションを取るためにステムを思いっきり伸ばしたり、ドロップハンドル化してみたり。現地ブランドにはビーチレース専用モデルだってラインナップされていることもある(ベルギーブランドのリドレーは、サポート選手を起用してビーチレースの機材と醍醐味を紹介するコラムを掲載しているので、興味のある方はぜひ確認を)。
3年目を迎えてビーチクロスの参加者側もノウハウが貯まってきたようで、機材選びもだいぶこなれてきたような感じ。バイクを見ていると、700cのグラベルバイクならタイヤはできるだけスリックパターン寄りで、幅は45-50mm程度がスタンダードだろうか? 高岡亮寛さん(Roppongi Express)のように、中にはタイヤボリュームを稼ぐために650b/27.5インチのホイールにワイドタイヤをセットアップする人もチラホラ。ちなみに、取材班が見かけた「一番本場っぽかったで賞」はリジッドフォークとファットなスリックタイヤを組み合わせたMTBで参戦した森本彰人さん(Team轍屋)でした。










3回目を迎えた2025年大会の砂浜は、前日にしっかりと雨が降ったおかげで硬く締まったイージーコンディション。パフパフ砂だった昨年には「先導モトの轍をたどるのが最速」という攻略法が編み出されたらしいけれど、今年はそんな必要まるでなしのハイスピードレースになった。参加した人の声を聞いていると「ひたすらに踏まされるので超キツかった」とか「ズイフトしてるみたいだった」とか「踏んでるのに眠くなってきた」なんて声も...。でもそんな声とは裏腹に、みんな一様に、ここでしか味わえない爽快感を楽しんでいるご様子でした。
今回の特別ゲストは、カミカゼ右京こと元F1ドライバーの片山右京さんと、J SPORTSの解説でもお馴染みの栗村修さん。「このためにグラベルバイク借りてきました!」な右京さんは「めちゃくちゃキツかったけど、脚もテクニックも身につくからキッズ選手の育成には最高ですね」とおっしゃっていて、実はかつて選手時代にMTBレースにも出ていた栗村さんは、最近楽しんでいるというシクロクロスバイクで流石の走り。レース後にはトークショーに出演されたりと、忙しくも存分に楽しんでいらっしゃいました。






今年の大きな変更ポイントは、UCIのMTB-XCO クラスに設定された男女エリートレースが行われたこと。フォーマットはビーチレースだけど、MTBのUCIポイントが獲得できるとあって海外遠征を行う選手たちも参戦。エントラントの中で一つ抜けた力を持つ北林力(MASSIデベロップメントチーム)と石田唯(TRK WORKS)がそれぞれ力強い走りを披露して男女レースを制したのだった。
心配されていた台風の影響もまるでなく、爽やかな海風の中開催された「第3回BEACH CROSS 99」は、最終種目のキッズレースのフィニッシュを持って閉幕に。主催の棈木代表によれば、すでに来年大会の開催も決定しているとのことで気になる方は心待ちに!どうやらUCIレースのフォーマットではなく、もっと幅広い層のエントラントが楽しめる内容を考えているとのことで、日本唯一のビーチレースはもっともっと進化しそうな勢いです。




text&photo:So Isobe
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