ヨーロッパのワールドツアーを締めくくり、モニュメント最終戦となったイル・ロンバルディア。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)がパッソ・ディ・ガンダ峠で仕掛け、33.7kmの独走勝利。史上初となる5連覇と、同一年のモニュメント全戦での表彰台を達成した。

初制覇を狙うエヴェネプール photo:RCS Sport 
史上初の5連覇を目指すポガチャル photo:RCS Sport

花道を通り、現役最終レースに向かうラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

イル・ロンバルディア2025 コースプロフィール image:RCS Sport
2月に始まったヨーロッパでのUCIワールドツアーも、10月11日のイル・ロンバルディアにて一区切り。別名「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」は今年、コモを出発してベルガモにフィニッシュする総距離241kmで争われた。サイクリストの聖地「マドンナ・デル・ギザッロ教会」の丘を含めて6つの主要な登りをこなすため、獲得標高差が4,400mを超えるクライマーのためのワンデーレースだ。
スタート前には選手たちによって作られた花道を、このレース限りで引退するラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツXRG)を筆頭にルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ)ら7名が通過。4連覇中のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)を先頭に、現地時間午前10時55分にスタートの旗が振られると、星条旗があしらわれたアメリカ王者ジャージを着た、クイン・シモンズ(リドル・トレック)が勢いよく飛び出した。
その動きをきっかけに形成された逃げグループは14名。イネオス・グレナディアーズはフィリッポ・ガンナ(イタリア)ら3名を入れ、この後ジャパンカップにも参戦予定のマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)はアスビャアン・ヘレモース(デンマーク)と共に乗る。追走するメイン集団ではUAEチームエミレーツXRGが中心に牽引し、ライバルチームであるレッドブル・ボーラ・ハンスグローエやデカトロンAG2Rラモンディアールも手を貸した。

マドンナ・デル・ギザッロ教会の横を通過する167名の選手たち photo:RCS Sport

序盤の下りで落車したトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) photo:CorVos 
10名に絞られた逃げグループ photo:RCS Sport
選手たちは丘を登りギザッロ教会の横を通過し、その下りでトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)が落車するシーンも。その後メカトラにも見舞われたピドコックはチームカーを使って復帰を図り、集団分裂の煽りを受けながらもプロトンに戻る。レースが半分を過ぎると逃げから遅れる選手が現れ始め、パッソ・デッラ・クロチェッタ(距離11.0km/平均6.2%)に入る頃までに先頭は10名に絞られた。
プロトンと3分差を保った逃げから、頂上まで残り6km以上、フィニッシュまでなお82kmもある地点でシモンズがアタック。それをガンナとマシューズ、ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)、ルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)の4名が追走。しかし差は縮まらず、アメリカ王者は単独先頭のままクロチェッタ峠を越え、続くザンブラ・アルタ(距離9.5km/平均3.5%)に突入。一方でUAEによる計算されたメイン集団の牽引が、その差をじわじわと縮めていった。

プロトンは終始、UAEチームエミレーツXRGを中心に牽引した photo:RCS Sport

パッソ・デッラ・クロチェッタで仕掛け、単独先頭に立ったクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック) photo:RCS Sport
残り40.7km地点から始まるパッソ・ディ・ガンダ(距離9.2km/平均7.3%)に、シモンズは2分20秒のリードで突入。プロトンではジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG)が作るハイペースに人数は絞られ、ポガチャルの背後にはエヴェネプールやピドコックなど優勝候補が並ぶ。さらにヴァインがもう一段踏みを強めるとピドコックらが遅れ、その後ろにはポガチャルとイサーク・デルトロ(メキシコ)の他に、エヴェネプールとマイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング)、ポール・セクサス(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)しか残らなかった。
残り36km地点でヴァインが脚を緩めると、すかさずポガチャルが加速。デルトロの牽引を待たずに自ら動き、それにエヴェネプールを含め誰も反応できなかった。
パッソ・ディ・ガンダの半分にも満たない地点でアタックしたポガチャルは、すぐに1分先行のシモンズに合流。さらに頂上まで3kmを切った残り33.7km地点で再加速し、単独先頭に立つ。ガンダの登坂は21分21秒で、自身が2023年に打ち立てた最速記録を1分52秒も短縮。そして2年前にアタックした下りへと入った。

シモンズを振り切り、残り33.7km地点で独走態勢に入ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

コッレ・アペルトを越えるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:RCS Sport
後続ではライバルたちの抑え役を担うはずだったデルトロが遅れ、エヴェネプールとシモンズ、ストーラーの3名が追走集団を形成。しかし頂上手前でシモンズが遅れ、続く19個のヘアピンが続く下りでストーラーが脱落。レースは9月28日のロード世界選手権、10月5日のロードヨーロッパ選手権と同様に、単独先頭のポガチャルをエヴェネプールが追う構図になった。
その2つのビッグレースと同じく、最後までポガチャルのペースは落ちず、エヴェネプールも合流することはできなかった。世界王者は大観衆が詰めかけた登坂距離の短いコッレ・アペルトを越え、ベルガモに到着。アルカンシエルを纏ったポガチャルが、大会史上初の5連覇を達成し、ファウスト・コッピ(イタリア)に並ぶ最多優勝記録に並んだ。

独走で5連覇を達成したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos
5連覇という大記録と共に、同一年でのモニュメント(5大クラシック)全てで表彰台に立つという史上初の選手となったポガチャル。「毎回スタートラインに立つ度、自分はこのコースとレースとの適性を感じている。僕がこういう結果を出せているのは、素晴らしいチームメイトに囲まれているから。皆には本当に感謝しているし、ドメン(ノヴァク)やパヴェル(シヴァコフ)、最後のリードアウト(をしてくれたヴァイン)など、みんながトップクラスの走りをしてくれた。毎年言っていることだが、7年連続で『今季がこれまでで最高のシーズンだ』と言っている。そして今年もまた、間違いなく最高のシーズンだった」と語り、プロ7年目のシーズンを締めくくった。
2位は1分48秒遅れでフィニッシュし、スーダル・クイックステップでの7年間を締めくくったエヴェネプール。3位はストーラーが入り、スタート直後から動き、最後まで粘ったシモンズは4位と惜しくも表彰台には届かなかった。
選手たちのコメントは別記事にてお伝えします。

2位にはエヴェネプール、3位にはストーラーが入った photo:CorVos

史上初の大記録を打ち立てたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos




2月に始まったヨーロッパでのUCIワールドツアーも、10月11日のイル・ロンバルディアにて一区切り。別名「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」は今年、コモを出発してベルガモにフィニッシュする総距離241kmで争われた。サイクリストの聖地「マドンナ・デル・ギザッロ教会」の丘を含めて6つの主要な登りをこなすため、獲得標高差が4,400mを超えるクライマーのためのワンデーレースだ。
スタート前には選手たちによって作られた花道を、このレース限りで引退するラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツXRG)を筆頭にルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ)ら7名が通過。4連覇中のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)を先頭に、現地時間午前10時55分にスタートの旗が振られると、星条旗があしらわれたアメリカ王者ジャージを着た、クイン・シモンズ(リドル・トレック)が勢いよく飛び出した。
その動きをきっかけに形成された逃げグループは14名。イネオス・グレナディアーズはフィリッポ・ガンナ(イタリア)ら3名を入れ、この後ジャパンカップにも参戦予定のマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)はアスビャアン・ヘレモース(デンマーク)と共に乗る。追走するメイン集団ではUAEチームエミレーツXRGが中心に牽引し、ライバルチームであるレッドブル・ボーラ・ハンスグローエやデカトロンAG2Rラモンディアールも手を貸した。



選手たちは丘を登りギザッロ教会の横を通過し、その下りでトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)が落車するシーンも。その後メカトラにも見舞われたピドコックはチームカーを使って復帰を図り、集団分裂の煽りを受けながらもプロトンに戻る。レースが半分を過ぎると逃げから遅れる選手が現れ始め、パッソ・デッラ・クロチェッタ(距離11.0km/平均6.2%)に入る頃までに先頭は10名に絞られた。
プロトンと3分差を保った逃げから、頂上まで残り6km以上、フィニッシュまでなお82kmもある地点でシモンズがアタック。それをガンナとマシューズ、ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)、ルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)の4名が追走。しかし差は縮まらず、アメリカ王者は単独先頭のままクロチェッタ峠を越え、続くザンブラ・アルタ(距離9.5km/平均3.5%)に突入。一方でUAEによる計算されたメイン集団の牽引が、その差をじわじわと縮めていった。


残り40.7km地点から始まるパッソ・ディ・ガンダ(距離9.2km/平均7.3%)に、シモンズは2分20秒のリードで突入。プロトンではジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG)が作るハイペースに人数は絞られ、ポガチャルの背後にはエヴェネプールやピドコックなど優勝候補が並ぶ。さらにヴァインがもう一段踏みを強めるとピドコックらが遅れ、その後ろにはポガチャルとイサーク・デルトロ(メキシコ)の他に、エヴェネプールとマイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング)、ポール・セクサス(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)しか残らなかった。
残り36km地点でヴァインが脚を緩めると、すかさずポガチャルが加速。デルトロの牽引を待たずに自ら動き、それにエヴェネプールを含め誰も反応できなかった。
パッソ・ディ・ガンダの半分にも満たない地点でアタックしたポガチャルは、すぐに1分先行のシモンズに合流。さらに頂上まで3kmを切った残り33.7km地点で再加速し、単独先頭に立つ。ガンダの登坂は21分21秒で、自身が2023年に打ち立てた最速記録を1分52秒も短縮。そして2年前にアタックした下りへと入った。


後続ではライバルたちの抑え役を担うはずだったデルトロが遅れ、エヴェネプールとシモンズ、ストーラーの3名が追走集団を形成。しかし頂上手前でシモンズが遅れ、続く19個のヘアピンが続く下りでストーラーが脱落。レースは9月28日のロード世界選手権、10月5日のロードヨーロッパ選手権と同様に、単独先頭のポガチャルをエヴェネプールが追う構図になった。
その2つのビッグレースと同じく、最後までポガチャルのペースは落ちず、エヴェネプールも合流することはできなかった。世界王者は大観衆が詰めかけた登坂距離の短いコッレ・アペルトを越え、ベルガモに到着。アルカンシエルを纏ったポガチャルが、大会史上初の5連覇を達成し、ファウスト・コッピ(イタリア)に並ぶ最多優勝記録に並んだ。

5連覇という大記録と共に、同一年でのモニュメント(5大クラシック)全てで表彰台に立つという史上初の選手となったポガチャル。「毎回スタートラインに立つ度、自分はこのコースとレースとの適性を感じている。僕がこういう結果を出せているのは、素晴らしいチームメイトに囲まれているから。皆には本当に感謝しているし、ドメン(ノヴァク)やパヴェル(シヴァコフ)、最後のリードアウト(をしてくれたヴァイン)など、みんながトップクラスの走りをしてくれた。毎年言っていることだが、7年連続で『今季がこれまでで最高のシーズンだ』と言っている。そして今年もまた、間違いなく最高のシーズンだった」と語り、プロ7年目のシーズンを締めくくった。
2位は1分48秒遅れでフィニッシュし、スーダル・クイックステップでの7年間を締めくくったエヴェネプール。3位はストーラーが入り、スタート直後から動き、最後まで粘ったシモンズは4位と惜しくも表彰台には届かなかった。
選手たちのコメントは別記事にてお伝えします。


イル・ロンバルディア2025結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 5:45:53 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +1:48 |
3位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) | +3:14 |
4位 | クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック) | +3:39 |
5位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | +4:16 |
6位 | トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) | |
7位 | ポール・セクサス(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール) | |
8位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | |
9位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) | +4:18 |
10位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | +4:30 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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