イル・ロンバルディアに向けた最後の前哨戦、グラン・ピエモンテでイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG)が17.6kmの独走勝利。タデイ・ポガチャルと共に挑む大一番に向けて、これ以上ない弾みを得た。



グラン・ピエモンテの優勝トロフィーを見つめるマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) photo:RCS Sport

今年最後のモニュメント、イル・ロンバルディアの2日前である10月9日、同じイタリアで最後の前哨戦と位置づけられた「グラン・ピエモンテ(UCI1.Pro)」が行われた。コースはイタリア・ピエモンテ州を走る179kmのワンデーで、中盤からアップダウンが連続。勝負所と目されたのは後半に2度登坂するカステッレット・デッロ(距離6.1km/平均5.3%)で、特に序盤の最大勾配15%区間が鍵と見られた。

109回大会には昨年覇者ニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)をはじめ、イル・ロンバルディアに臨むクライマーやパンチャーの有力勢が揃った。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)は出場しなかったものの、チームのセカンドエースであるイサーク・デルトロ(メキシコ)が初優勝を狙った。

イタリアのピエモンテ州を走る「グラン・ピエモンテ」 photo:RCS Sport

レースは序盤からヤン・トラトニク(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)ら6名が逃げグループを形成し、UAEチームエミレーツXRGが牽引するメイン集団が追走。後半に入ると、1度目のカステッレット・デッロを前に、逃げはトラトニクとオドネ・ホルテル(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)、クインテン・ヘルマンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)の3名に絞られる。UAEの牽引にはモビスターやXDSアスタナも加わり、プロトンのペースが上がった。

最初の登坂ではデルトロのアタックにパウレスやエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が反応する場面もあったが、決定打には至らず、プロトンは一団のまま峠を越える。その後ヤルディ・ファンデルリー(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)の再三の動きから6名の第1追走集団が形成された。

そして2度目のカステッレット・デッロ手前で、プロトンからデルトロが飛び出す。直近のジロ・デッレミリア(UCI1.Pro)を含め今季14勝を挙げている若きエースは、逃げと追走がシャッフルされ、マルク・ヒルシ(スイス、チューダー・プロサイクリング)とバウケ・モレマ(オランダ、リドル・トレック)の2名となった先頭に合流。中腹で再加速し、残り17.6km地点で単独先頭に立った。

残り17.6kmで単独先頭に立ったイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

17.6kmの独走勝利を決めたイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

その後デルトロは、同じロンバルディア前哨戦であるトレ・ヴァッリ・ヴァレジーネで独走勝利したポガチャルを彷彿とさせる安定した走りを披露。追走するヒルシらに最大40秒の差をつけ、悠々とフィニッシュラインを通過した。

「(カステッレット・デッロの)最も勾配が厳しい箇所でアタックし、それでダメならしょうがないと思った。なぜなら僕には失うものは何もないからね。今シーズンは僕自身、またチームとしても予想以上の結果を得ている。普通ではないと理解しつつも、信じられない気持ちだ」と、デルトロはレース後に語った。

2位は同じくイル・ロンバルディアに臨むヒルシ、そしてモレマが3位に入った。

グラン・ピエモンテ2025表彰台:2位ヒルシ、1位デルトロ、3位モレマ photo:RCS Sport
グラン・ピエモンテ2025結果
1位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) 4:08:24
2位 マルク・ヒルシ(スイス、チューダー・プロサイクリング) +0:40
3位 バウケ・モレマ(オランダ、リドル・トレック) +0:44
4位 ファビオ・クリステン(スイス、Q36.5プロサイクリング) +1:07
5位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)
6位 エドアルド・ザンバニーニ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 ニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)
8位 クインテン・ヘルマンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
9位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)
10位 アンドレア・バジオーリ(イタリア、リドル・トレック)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos