川口うらら(Team TATSUNO)が参戦したMTB W杯レンツァーハイデ。ニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム)の引退レースとなったこの日、世界選2連覇を達成したアラン・ハザリー(南アフリカ、ジャイアントファクトリー・オフロードチームXC)が強いレース運びで勝利した。

現役最終レースに臨むニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム) photo:UCI

XCCを制したジェニー・リスヴェッズ(キャニオン・CLLCTV XCO) photo:UCI 
ヴィクトル・コレツキー(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング)がXCCを制覇 photo:UCI
スイスアルプスの山岳リゾート地、クラン・モンタナを舞台にしたMTB世界選手権(XCO)から1週間。UCI MTBワールドカップが同じスイスの名門コース、レンツァーハイデに場所を移して連戦開催された。
ジェニー・リスヴェッズ(キャニオン・CLLCTV XCO)がXCOの、アレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン)がXCC(ショートトラック)のアルカンシエル姿を披露したこの大会の注目は、なんといってもニノ・シューター(スイス)の引退レースであること。世界選手権10勝、ワールドカップ36勝、オリンピックメダル3度獲得という稀代の名選手のラストレースを見るべく、34回目のワールドカップ優勝、8回目の世界選手権制覇を果たしたレンツァーハイデには数万人のファンが詰めかけた。
また、女子エリートレースには個人合宿を経て渡欧した川口うらら(Team TATSUNO)が参戦。7月に獲得したばかりの全日本チャンピオンジャージを欧州の舞台で披露している。
女子エリート:ケラーがリスヴェッズを下して今季W杯XCOレース初勝利

食い下がるリスヴェッズを徐々に引き離すアレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) photo:UCI
女子エリートレースはアルカンシエル初披露となったリスヴェッズが、普段通り1周目から飛ばしてメイン集団を木っ端微塵にする展開。新世界女王に対してサヴィリア・ブランク(デカトロン・フォードレーシングチーム)と新XCC世界女王のケラーが追いついて激しい鍔迫り合いを繰り広げたものの、ブランクは芝生の下り区間でアイウェアを直そうとした瞬間にバランスを崩して大転倒。幸いすぐ再乗車したものの、先頭集団に復帰することは叶わなかった。
こうして勝負権はリスヴェッズとケラーの2人に委ねられ、残り2周回の登坂区間に入るとケラーがアタックする。母国スイスファンの声援を一身に浴びたケラーが「少しリードができていたので全力で踏み込んだ」と、苦しい表情でペースダウンしたリスヴェッズを振り落とす。ラストラップでも攻めの走りを続けて勝利した。

母国ファンの前で独走勝利を挙げたアレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) photo:UCI

W杯のXCOで今季初勝利を挙げたアレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) photo:UCI
「厳しいレースだったけど、ファンや、スタッフや、みんなのおかげで勝つことができた。完璧だった」と振り返るケラーが、今季W杯のXCOレースで初勝利。2位にリスヴェッズ、3位には落車後に怒涛の追い上げを見せたブランクが入っている。
後方からスタートした川口うららは、スタートした57人中52位、フルラップ完走には届かなかった。
男子エリート:強いハザリーが独走勝利、シューターは大声援の中ラストレースを終える
ルカ・マルタン(フランス、キャノンデールファクトリーレーシング)のダッシュで幕開けた男子エリートレースは序盤からハイペース進行。ランキング首位のクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング)は機材トラブルで姿を消し、3周目には世界選XCC2連覇を遂げたばかりの好調ヴィクトル・コレツキー(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング)もリアホイールを歪め、タイヤが外れによって離脱。今季序盤に覇権を担っていたスペシャライズド勢のエース2人が揃って姿を消すことになった。

ライバル勢を置き去りにしたアラン・ハザリー(南アフリカ、ジャイアントファクトリー・オフロードチームXC) photo:UCI
大人数の先頭グループがスローダウンしたタイミングを付いてアタックしたのは、世界選XCO2連覇を達成したアラン・ハザリー(南アフリカ、ジャイアントファクトリーレーシング)だった。先頭に出てからハイペースを刻み、続く登坂区間で一気に後続を突き放す。今季自身最後のW杯に好調を維持したまま臨んだ世界チャンピオンが瞬く間に30秒リードを築き上げた。
キャノンデールファクトリーレーシングのシモン・アンドレイアッセン(デンマーク)やチャーリー・アルドリッジ(イギリス)が追走し、観客の「ニノ」コールに応えながらラストレースを楽しむシューターは20番手前後。様々なドラマが交錯するレンツァーハイデで、ハザリーの勢いは最後まで止まらなかった。

防衛したアルカンシエル姿で勝利したアラン・ハザリー(南アフリカ、ジャイアントファクトリー・オフロードチームXC) photo:UCI

UCI MTBワールドカップ2025 レンツァーハイデ大会 XCO男子エリート表彰台 photo:UCI
終盤に2回チェーン落ちに見舞われたものの、既に十分なリードを得ていたハザリーが独走勝利を飾った。「ここは僕がU23タイトルを奪った場所だし、アルカンシエルで良い走りを見せたかったらモチベーションは高かった。ロードと兼業した初年度だったのでタフだったけど、ようやく普段通りの実力が戻ってきた。嬉しいよ」と言うハザリーは、今後ロードバイクに乗り換えて中国開催のワールドツアー最終戦、ツアー・オブ・グワンシーに参戦する予定だ。
大声援を浴び続けながら走ったシューターは、ハザリーから3分半遅れの24位でフィニッシュ。待ち構えていたチームスタッフからシャンパンを浴び、現役ラストレースを締め括った。

待ち構えていたチームスタッフに歓迎されるニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム) photo:UCI

現役最後のレースを走り終えたニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム) photo:UCI



スイスアルプスの山岳リゾート地、クラン・モンタナを舞台にしたMTB世界選手権(XCO)から1週間。UCI MTBワールドカップが同じスイスの名門コース、レンツァーハイデに場所を移して連戦開催された。
ジェニー・リスヴェッズ(キャニオン・CLLCTV XCO)がXCOの、アレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン)がXCC(ショートトラック)のアルカンシエル姿を披露したこの大会の注目は、なんといってもニノ・シューター(スイス)の引退レースであること。世界選手権10勝、ワールドカップ36勝、オリンピックメダル3度獲得という稀代の名選手のラストレースを見るべく、34回目のワールドカップ優勝、8回目の世界選手権制覇を果たしたレンツァーハイデには数万人のファンが詰めかけた。
また、女子エリートレースには個人合宿を経て渡欧した川口うらら(Team TATSUNO)が参戦。7月に獲得したばかりの全日本チャンピオンジャージを欧州の舞台で披露している。
女子エリート:ケラーがリスヴェッズを下して今季W杯XCOレース初勝利

女子エリートレースはアルカンシエル初披露となったリスヴェッズが、普段通り1周目から飛ばしてメイン集団を木っ端微塵にする展開。新世界女王に対してサヴィリア・ブランク(デカトロン・フォードレーシングチーム)と新XCC世界女王のケラーが追いついて激しい鍔迫り合いを繰り広げたものの、ブランクは芝生の下り区間でアイウェアを直そうとした瞬間にバランスを崩して大転倒。幸いすぐ再乗車したものの、先頭集団に復帰することは叶わなかった。
こうして勝負権はリスヴェッズとケラーの2人に委ねられ、残り2周回の登坂区間に入るとケラーがアタックする。母国スイスファンの声援を一身に浴びたケラーが「少しリードができていたので全力で踏み込んだ」と、苦しい表情でペースダウンしたリスヴェッズを振り落とす。ラストラップでも攻めの走りを続けて勝利した。


「厳しいレースだったけど、ファンや、スタッフや、みんなのおかげで勝つことができた。完璧だった」と振り返るケラーが、今季W杯のXCOレースで初勝利。2位にリスヴェッズ、3位には落車後に怒涛の追い上げを見せたブランクが入っている。
後方からスタートした川口うららは、スタートした57人中52位、フルラップ完走には届かなかった。
男子エリート:強いハザリーが独走勝利、シューターは大声援の中ラストレースを終える
ルカ・マルタン(フランス、キャノンデールファクトリーレーシング)のダッシュで幕開けた男子エリートレースは序盤からハイペース進行。ランキング首位のクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング)は機材トラブルで姿を消し、3周目には世界選XCC2連覇を遂げたばかりの好調ヴィクトル・コレツキー(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング)もリアホイールを歪め、タイヤが外れによって離脱。今季序盤に覇権を担っていたスペシャライズド勢のエース2人が揃って姿を消すことになった。

大人数の先頭グループがスローダウンしたタイミングを付いてアタックしたのは、世界選XCO2連覇を達成したアラン・ハザリー(南アフリカ、ジャイアントファクトリーレーシング)だった。先頭に出てからハイペースを刻み、続く登坂区間で一気に後続を突き放す。今季自身最後のW杯に好調を維持したまま臨んだ世界チャンピオンが瞬く間に30秒リードを築き上げた。
キャノンデールファクトリーレーシングのシモン・アンドレイアッセン(デンマーク)やチャーリー・アルドリッジ(イギリス)が追走し、観客の「ニノ」コールに応えながらラストレースを楽しむシューターは20番手前後。様々なドラマが交錯するレンツァーハイデで、ハザリーの勢いは最後まで止まらなかった。


終盤に2回チェーン落ちに見舞われたものの、既に十分なリードを得ていたハザリーが独走勝利を飾った。「ここは僕がU23タイトルを奪った場所だし、アルカンシエルで良い走りを見せたかったらモチベーションは高かった。ロードと兼業した初年度だったのでタフだったけど、ようやく普段通りの実力が戻ってきた。嬉しいよ」と言うハザリーは、今後ロードバイクに乗り換えて中国開催のワールドツアー最終戦、ツアー・オブ・グワンシーに参戦する予定だ。
大声援を浴び続けながら走ったシューターは、ハザリーから3分半遅れの24位でフィニッシュ。待ち構えていたチームスタッフからシャンパンを浴び、現役ラストレースを締め括った。


UCI MTBワールドカップ2025 レンツァーハイデ大会 XCO女子エリート結果
1位 | アレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) | 1:24:10 |
2位 | ジェニー・リスヴェッズ(キャニオン・CLLCTV XCO) | 1:24:26 |
3位 | サヴィリア・ブランク(デカトロン・フォードレーシングチーム) | 1:24:36 |
4位 | イヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシング・ピレリ) | 1:24:54 |
5位 | ラウラ・スティガー(オーストリア、スペシャライズドファクトリーレーシング) | 1:25:00 |
UCI MTBワールドカップ2025 レンツァーハイデ大会 XCO男子エリート結果
1位 | アラン・ハザリー(南アフリカ、ジャイアントファクトリー・オフロードチームXC) | 1:20:23 |
2位 | チャーリー・アルドリッジ(イギリス、キャノンデールファクトリーレーシング) | 1:20:55 |
3位 | アドリアン・ボワシ(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング) | 1:21:02 |
4位 | シモーネ・アボンデット(イタリア、ウィリエール・ヴィットリアファクトリーチーム) | 1:21:10 |
5位 | マルティン・ヴィダウレ(チリ・スペシャライズドファクトリーレーシング) | 1:21:15 |
text:So Isobe
photo:UCI
photo:UCI
Amazon.co.jp