今大会2度目の大集団スプリントで決着したブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージ。ベン・ターナー(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が踏み遅れたフィリプセンを退け、グランツール初勝利を飾った。一方、ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)は着順でヴィンゲゴーを抜き、自身初のマイヨロホに袖を通している。

区間2勝目を狙うヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:A.S.O.

第4ステージ スーザ〜ヴォワロン image:A.S.O.
8月26日(火)第4ステージ
スーザ〜ヴォワロン 206.7km(丘陵)
獲得標高差2,919m
第80回ジロ・デ・イタリアは4日目を迎えてもまだ、スペインには至らない。第4ステージはイタリアのスーザをスタートし、アルプスを越えてフランスのヴォワロンに至る丘陵ステージ。しかし山岳(3級、2級、2級)が登場するのは前半だけで、その後は約80kmにわたる長い下りを経て、フィニッシュまで平坦路が続いていく。
そのためステージ前半をスプリンターチームがコントロールし、集団スプリントでのステージ優勝を狙ってくる可能性が予想された。反対に逃げ集団は前半でできる限りリードを拡げ、その貯金を使いながらフィニッシュを目指したいところ。前半から逃げによる激しい展開が予想されたステージに、181名の選手たちが臨んだ。

スーザを出発した181名の選手たち photo:A.S.O.

マリオ・アパリシオ(スペイン、ブルゴス・ブルペレットBH)ら5名による逃げ photo:A.S.O.
追い風も手伝い、予想通りハイスピードで始まったレースは1つ目の登りで5名による逃げが決まる。前日も逃げ、最後まで粘り敢闘賞を獲得したショーン・クイン(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)が2日連続で乗り、最初の3級山岳はジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)が先頭で通過した。
第4ステージで逃げた5名
ルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
ショーン・クイン(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)
ジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
カミル・ボヌー(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)
マリオ・アパリシオ(スペイン、ブルゴス・ブルペレットBH)
続く2級山岳はフェルヴァーケ、そして最も難易度の高い最終2級山岳はクインが先頭通過。その2つ共を2位通過したニコラウが山岳賞ランキングでトップに立ち、白地に青い水玉模様のマイヨモンターニャを獲得。ワイルドカード枠で選出されたプロチームとして、存在をアピールする役割を果たした。

この日もマイヨロホを着て走るヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

カメラに笑顔を見せたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.
その後は長い下り坂に入り、残り91km地点でスプリンターたちが残るメイン集団は早くも逃げグループを吸収する。アパリシオが唯一抵抗したもののアタックは決まらず、カウンターでチームメイトのミゲル・フェルナンデス(スペイン、ブルゴス・ブルペレットBH)が飛び出し、単独先頭に立つ。大会2日目に逃げたフェルナンデスは2度のトレーニー(研修生)を経験し、昨年ようやくプロデビューした25歳で、グランツールデビューで見せ場を作った。
リドル・トレックがペースを作るプロトンに最大45秒を得たフェルナンデスだったが、カテゴリーのつかない丘(残り47km地点)で引き戻される。追う対象のいなくなった集団はコース幅いっぱいに選手たちが広がり、イージーペースで補給地点を通過。そしてこの日唯一の中間スプリント(残り32.2km)に迫ると、フィニッシュスプリントの前哨戦のごとく集団の緊張感が高まった。
盤石なリードアウトから先頭通過したのはマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)だった。この日が25歳の誕生日であるイーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック)らを退けたピーダスンは20ポイントを獲得。総合首位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)と同タイムで総合2位のダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)もボーナスタイムを狙ったが、5位通過でマイヨロホ獲得は叶わなかった。

単独アタックを試みたミゲル・フェルナンデス(スペイン、ブルゴス・ブルペレットBH) photo:A.S.O.
直後に今度はブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)が単独で仕掛けた。今年6月にフランスTT選手権で2連覇(3度目の優勝)を果たしたアルミライユは最大45秒のリードを得たものの、集団スプリントに向けてスピードを上げるプロトンが残り15kmで吸収される。そしてフィニッシュラインの引かれたヴォワロンに突入した。
残り10km地点ではジョージ・ベネット(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)やジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG)などを巻き込む落車が発生する。しかし誰にも大きな怪我はなく、テクニカルなコーナーを抜け、集団は残り1kmバナーを通過。今大会2度目となる集団スプリントが幕を開けた。

先頭に立ったベン・ターナー(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
緩斜面の最終ストレートでトレインを先頭に並べたのはアルペシン・ドゥクーニンクだった。しかし最終発射台であるエドワルト・プランカールトの背後にいたヤスペル・フィリプセン(共にベルギー)は左側のフェンスとヴァーノンに囲まれると踏み込みが遅れ、ヴァーノンの背後にいたベン・ターナー(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が真っ先にスプリントを開始。絶好のタイミングで先頭に立ったターナーをフィリプセンは懸命に追いかけたものの、フィニッシュまでの距離が足らずターナーが勝利した。

勝利の雄叫びをあげるベン・ターナー(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
体調不良のルーカス・ハミルトン(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)に代わり、出場中だったレネウィ・ツアーを途中棄権して強行出場したターナー。スピードではなく位置取りとタイミングで掴み取った勝利について、「正直、言葉がない。ジロ・デ・イタリア以降、脚の調子がおかしいながらレネウィ・ツアーを走っていた。そしたら急にチームに呼ばれ『もちろんだ』と答えてここに来た。初日のスプリントではチェーンが外れたが、今日は自分の力を信じることができた。(区間1勝した)ツール・ド・ポローニュでも僕を助けてくれたクフィアトコフスキら仲間のおかげだ」と嬉し涙を流しながら語った。
ターナーは名門トリニティレーシング出身の26歳で、2022年にイネオスでプロデビュー。初出場だった今年のジロでは集団スプリントで区間3位と勝利に迫り、8月のツール・ド・ポローニュで自身初のワールドツアー勝利を掴む。そしてプロ通算3勝目がグランツールでの初勝利となった。
この勝利によってイネオスは今シーズン、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスに続き、すべてのグランツールでのステージ優勝を果たした。
またゴデュが25位でフィニッシュし、ヴィンゲゴーが42位だったため、同タイムでゴデュが総合首位に立つ。その結果、母国フランスの地でゴデュはグランツールで自身初となる総合リーダージャージに袖を通した。マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)はジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)から、チームメイトで区間6位のピーダスンの手に渡っている。

急遽出場したブエルタでグランツール初勝利を飾ったベン・ターナー(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

マイヨロホを着用したダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos


8月26日(火)第4ステージ
スーザ〜ヴォワロン 206.7km(丘陵)
獲得標高差2,919m
第80回ジロ・デ・イタリアは4日目を迎えてもまだ、スペインには至らない。第4ステージはイタリアのスーザをスタートし、アルプスを越えてフランスのヴォワロンに至る丘陵ステージ。しかし山岳(3級、2級、2級)が登場するのは前半だけで、その後は約80kmにわたる長い下りを経て、フィニッシュまで平坦路が続いていく。
そのためステージ前半をスプリンターチームがコントロールし、集団スプリントでのステージ優勝を狙ってくる可能性が予想された。反対に逃げ集団は前半でできる限りリードを拡げ、その貯金を使いながらフィニッシュを目指したいところ。前半から逃げによる激しい展開が予想されたステージに、181名の選手たちが臨んだ。


追い風も手伝い、予想通りハイスピードで始まったレースは1つ目の登りで5名による逃げが決まる。前日も逃げ、最後まで粘り敢闘賞を獲得したショーン・クイン(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)が2日連続で乗り、最初の3級山岳はジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)が先頭で通過した。
第4ステージで逃げた5名
ルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
ショーン・クイン(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)
ジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
カミル・ボヌー(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)
マリオ・アパリシオ(スペイン、ブルゴス・ブルペレットBH)
続く2級山岳はフェルヴァーケ、そして最も難易度の高い最終2級山岳はクインが先頭通過。その2つ共を2位通過したニコラウが山岳賞ランキングでトップに立ち、白地に青い水玉模様のマイヨモンターニャを獲得。ワイルドカード枠で選出されたプロチームとして、存在をアピールする役割を果たした。


その後は長い下り坂に入り、残り91km地点でスプリンターたちが残るメイン集団は早くも逃げグループを吸収する。アパリシオが唯一抵抗したもののアタックは決まらず、カウンターでチームメイトのミゲル・フェルナンデス(スペイン、ブルゴス・ブルペレットBH)が飛び出し、単独先頭に立つ。大会2日目に逃げたフェルナンデスは2度のトレーニー(研修生)を経験し、昨年ようやくプロデビューした25歳で、グランツールデビューで見せ場を作った。
リドル・トレックがペースを作るプロトンに最大45秒を得たフェルナンデスだったが、カテゴリーのつかない丘(残り47km地点)で引き戻される。追う対象のいなくなった集団はコース幅いっぱいに選手たちが広がり、イージーペースで補給地点を通過。そしてこの日唯一の中間スプリント(残り32.2km)に迫ると、フィニッシュスプリントの前哨戦のごとく集団の緊張感が高まった。
盤石なリードアウトから先頭通過したのはマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)だった。この日が25歳の誕生日であるイーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック)らを退けたピーダスンは20ポイントを獲得。総合首位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)と同タイムで総合2位のダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)もボーナスタイムを狙ったが、5位通過でマイヨロホ獲得は叶わなかった。

直後に今度はブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)が単独で仕掛けた。今年6月にフランスTT選手権で2連覇(3度目の優勝)を果たしたアルミライユは最大45秒のリードを得たものの、集団スプリントに向けてスピードを上げるプロトンが残り15kmで吸収される。そしてフィニッシュラインの引かれたヴォワロンに突入した。
残り10km地点ではジョージ・ベネット(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)やジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG)などを巻き込む落車が発生する。しかし誰にも大きな怪我はなく、テクニカルなコーナーを抜け、集団は残り1kmバナーを通過。今大会2度目となる集団スプリントが幕を開けた。

緩斜面の最終ストレートでトレインを先頭に並べたのはアルペシン・ドゥクーニンクだった。しかし最終発射台であるエドワルト・プランカールトの背後にいたヤスペル・フィリプセン(共にベルギー)は左側のフェンスとヴァーノンに囲まれると踏み込みが遅れ、ヴァーノンの背後にいたベン・ターナー(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が真っ先にスプリントを開始。絶好のタイミングで先頭に立ったターナーをフィリプセンは懸命に追いかけたものの、フィニッシュまでの距離が足らずターナーが勝利した。

体調不良のルーカス・ハミルトン(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)に代わり、出場中だったレネウィ・ツアーを途中棄権して強行出場したターナー。スピードではなく位置取りとタイミングで掴み取った勝利について、「正直、言葉がない。ジロ・デ・イタリア以降、脚の調子がおかしいながらレネウィ・ツアーを走っていた。そしたら急にチームに呼ばれ『もちろんだ』と答えてここに来た。初日のスプリントではチェーンが外れたが、今日は自分の力を信じることができた。(区間1勝した)ツール・ド・ポローニュでも僕を助けてくれたクフィアトコフスキら仲間のおかげだ」と嬉し涙を流しながら語った。
ターナーは名門トリニティレーシング出身の26歳で、2022年にイネオスでプロデビュー。初出場だった今年のジロでは集団スプリントで区間3位と勝利に迫り、8月のツール・ド・ポローニュで自身初のワールドツアー勝利を掴む。そしてプロ通算3勝目がグランツールでの初勝利となった。
この勝利によってイネオスは今シーズン、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスに続き、すべてのグランツールでのステージ優勝を果たした。
またゴデュが25位でフィニッシュし、ヴィンゲゴーが42位だったため、同タイムでゴデュが総合首位に立つ。その結果、母国フランスの地でゴデュはグランツールで自身初となる総合リーダージャージに袖を通した。マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)はジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)から、チームメイトで区間6位のピーダスンの手に渡っている。


ブエルタ・ア・エスパーニャ2025第4ステージ
1位 | ベン・ターナー(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | 4:50:14 |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
3位 | エドワルト・プランカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
4位 | イーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック) | |
5位 | イエンセ・ビールマンス(ベルギー、アルケア・B&Bホテルズ) | |
6位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | |
7位 | ファビオ・クリステン(スイス、Q36.5プロサイクリング) | |
8位 | オールイス・アウラール(ベネズエラ、モビスター) | |
9位 | ギリェルモ・シルバ(ウルグアイ、カハルラル・セグロスRGA) | |
10位 | ニコロ・ブラッティ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 15:45:50 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | |
3位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +0:08 |
4位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | +0:14 |
5位 | トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) | +0:16 |
6位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロン・AG2Rラモンディアル) | |
7位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | |
9位 | セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | |
10位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 78pts |
2位 | イーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック) | 76pts |
3位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 75pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | ジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) | 11pts |
2位 | ショーン・クイン(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | 9pts |
3位 | アレッサンドロ・ヴェッレ(イタリア、アルケア・B&Bホテルズ) | 8pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) | 15:46:06 |
2位 | ウィリアムジュニア・ルセルフ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
3位 | マルコ・フリーゴ(イタリア、イスラエル・プレミアテック) |
チーム総合成績
1位 | ヴィスマ・リースアバイク | 47:18:16 |
2位 | UAEチームエミレーツXRG | +0:02 |
3位 | XDSアスタナ |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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