レムコ・エヴェネプール(ベルギー)が今年限りでスーダル・クイックステップを離れ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエに移籍することが公になった。両チームが発表したことで、近年最も注目されていた移籍劇に終止符が打たれた。



レムコ・エヴェネプール(ベルギー、現スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

レムコ・エヴェネプールを巡る移籍の噂は実に2年以上前から繰り返されてきた。

2023年にはスーダル・クイックステップとユンボ・ヴィスマが合併するとの報道が浮上し、国際自転車競技連合(UCI)もこの「スーパー・チーム構想」について声明を発表するなど、自転車界全体を巻き込む事態となったが、結局この合併話は同年10月に破談となる。

一方、エヴェネプール本人は、2023年ジロ・デ・イタリアを途中リタイア、2024年ツール・ド・フランスでは個人TTで勝利するも総合争いには絡めず周囲からは「グランツールを狙う体制が整っていない」との批判が相次ぐ。さらにはイネオス・グレナディアーズやUAEチームエミレーツと接触している噂も報道されるなど、現チームを離れることは確定路線となってきた。

そして昨日2025年8月5日、スーダル・クイックステップは公式サイトおよびプレスリリースにて、エヴェネプールの離脱を発表。契約上は2026年末までチームに残るはずだったが、双方の合意により2025年末で契約を終了し、来季よりレッドブル・ボーラ=ハンスグローエに加わることが決定した。

移籍先となるレッドブル・ボーラ=ハンスグローエは、近年レッドブルの出資とともに、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を獲得するなどチーム構造の大規模な再編を進めており、生え抜きのフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ)はツールで総合3位&マイヨブランを獲得するなど波に乗っている。

ツール第14ステージでリタイアを選んだレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

この移籍には、エヴェネプールのコンディション不安も影響していると見られている。2024年末にはベルギー国内でのトレーニング中に自動車と接触事故を起こし、鎖骨脱臼と肺の損傷を負う重傷。2025年春に復帰するも、ツール・ド・フランスでは第14ステージで棄権。実はその時点で肋骨骨折を抱えながら走っていたことが後に明らかになり、本人も「準備を急ぎすぎた」と振り返っていた。このような状況下での移籍決断は、精神的な再スタートの意志でもあったと見る向きもある。

エヴェネプールの加入は、レッドブル・ボーラ=ハンスグローエにとってグランツール総合優勝を現実的に狙う第一歩。チームCEOを務めるラルフ・デンク氏は発表の中で「レムコは野心の象徴です。彼はただレースを走るだけでなく、サイクリングそのものを再定義したいのです。運動能力だけでなく並外れたメンタリティ持ち合わせており、彼の決意や、プロ意識、そして成功への飽くなき追求心は本当に刺激的なものです」と心境を語っている。

text:So Isobe