ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が参戦したUCIシクロクロスワールドカップ第8戦でティボー・ネイス(ベルギー)とルシンダ・ブラント(オランダ)が快勝。バロワーズ・グローウィ・ライオンズが男女のトップカテゴリーを制した。



平坦コースに人口セクションを組み合わせたデンデルモンデ。毎年泥を名物とするレースだが、今年はドライコンディションの高速レースに photo:CorVos

12月26日にベルギーのガーフェレで開催されたシクロクロスワールドカップ第7戦から1日空けた12月28日(日)に、同じくベルギーのデンデルモンデでシクロクロスワールドカップ第8戦が連続開催。1周2640mのコースはこれまでと異なり平坦で、パリ〜ルーベの雰囲気を取り入れた石畳(パヴェ)やウォッシュボード、キャンバー、深い砂の下りなど、人口のテクニカル区間が多く設置されていることが特徴。この日は完全にドライコンディションとなったため、各カテゴリーでシーズン中屈指とも言えるクリテリウムのような超高速レースが繰り広げられた。

この日の注目は男子エリートレースにワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が出場したこと。マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)不出場のこの日はファンアールトにとって今季初優勝のチャンス。さらにトレーニング中の事故での右手首骨折していたゾーイ・バックステッド(イギリス、キャニオン・スラム・ゾンダクリプト)の復帰戦にもなった。

日本勢は全日本王者の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、オランダベース/ウォータスレイの岡山優太と梶鉄輝が連続出場を果たした。



女子エリート:ブラント圧勝、連勝記録は11に

アマンディーヌ・フークネ(フランス、アルケアB&Bホテルズ)とルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)が先頭グループを組む photo:CorVos

女子エリートレースは今季キャリアハイと呼べる成績を残しているアマンディーヌ・フークネ(フランス、アルケアB&Bホテルズ)が、いつものようにダッシュを決めてレースを引っ張った。スタートを課題としていたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)も3番手から順調な滑り出し。砂区間で4番手のレオニー・ベントフェルド(オランダ、パウェルスサウゼン・アルテスインダストリーバウ)が大転倒したことで、レース開始から5分を待たず、フークネとブラント、2023–2024シーズンのジュニア世界女王でロードU23世界女王である19歳のセリア・ジェリー(フランス)が先頭パックを作り上げた。

後方に取り残されたプック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)が一人15秒差を埋めようと試みたものの、2周目に入ってブラントが猛然と加速する。コーナーを抜けるたびにダッシュを繰り返したブラントはフークネとジェリーを振り落とし、3周目が終わる頃には独走体制を構築。フークネに追いついたピーテルセがブラントを追おうとしたものの、高速レースでの10秒差は如何ともし難いものだった。

敵なしの11連勝をマークしたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ) photo:CorVos

UCIシクロクロスワールドカップ2025-2026 第8戦 女子エリート表彰台 photo:CorVos

純粋なパワーが求められるドライコースで、水を得た魚のように走るブラントはレース中盤からの30分を独走してフィニッシュへ。テクニカルなオフキャンバー区間で抜け出したピーテルセの11秒前で、ブラントが敵なしの11連勝をマークした。

「複数人が争う戦術的なレースになる」という自分自身の予測を裏切る独走勝利。「1周目から(4番手以降と)あんなに差がつくとは思っていなかったけれど、アマンディーヌも速いペースだったし一緒に抜け出すにはいい状況だった」とブラントはレースを振り返る。「特にこの時期にここまで身体がコンディションを維持しているのは驚き。リカバリーは大変だけど上手くスケジュールできている」と、もはやライバル不在と言える好調ぶりについても話している。

2位はピーテルセで、3位はW杯表彰台を喜ぶフークネ。「まだ全然自分の臨むコンディションには仕上がっていない」と話すバックステッドは3分45秒遅れの27位で復帰戦を終えている。



男子エリート:ネイスがファンアールトらを打破、織田聖は完走に僅か届かず

後半まで大人数が数珠繋ぎの高速レースを展開。誰が勝ってもおかしくない緊張感溢れるレースになった photo:CorVos

先頭集団内で展開するワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

ファンアールトが出場した男子エリートレースは、序盤から中盤まで選手たちが数珠繋ぎになってハイペース進行。フェリペ・オルツ(スペイン、リドレーレーシングチーム)やティボール・デルフロッソ(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)、ティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)といったスピード自慢が積極的にテンポを上げた結果、60分レースで12周回という今季トップレベルのスピードレースが繰り広げられることに。

ベルギーの期待を背負うネイスが余裕を見せる一方、ファンアールトは少し苦しい表情を見せつつ先頭グループ内を維持。レース中盤からは自らペースメイクしてライバルを振り落とそうとしたものの「今日は絶好調とは言えず、残り2周回で簡単に先頭を譲ってしまった」と、終盤戦に向けて勢いづくライバルの背後に下がってしまう。隊列前方ではラスト2周からネイスとW杯リーダーのローレンス・スウェーク(ベルギー、クレラン・コレンドン)、パンクから復帰したデルフロッソが熾烈なバトルを展開した。

最終周回に仕掛けたティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)がフィニッシュまで逃げ切った photo:CorVos

UCIシクロクロスワールドカップ2025-2026 第8戦 男子エリート表彰台 photo:CorVos

数万人に及ぶ大観衆の目前で、最終周回に決定的なアタックを放ったのはネイスだった。小さな登り区間でスウェークを抜きさり、コーナーのたびに全力でペダルを踏み抜いてリードを維持。西陽が照らす最終ストレートまで逃げ切って劇的な勝利を納めた。

「完璧に走ることができて本当に興奮したよ。ジュニア時代から最終ラップで抜け出す展開が得意だったけれど、ここ数年はできていなかったんだ。こうやって最後を締めくくることができて本当に嬉しい」と、会心の走りで今季5勝目、W杯では今季3勝目を掴んだネイスは笑顔で言う。「相手の反応や距離を詰められるかを見極めるのに途中で何度もジャブを打ち、最後はテクニカル区間から狙い通りアタック。ティボールを前に出したくなかったので最後は本当に狙い通り事が運んだよ。最高のレースだった」と加えている。

ガーフェレから中一日で参戦した織田聖は、スタートダッシュを決めて20番手台まで浮上。パックに食らいつく走りで耐えていたものの、中盤から単独走行が増えてレース後半に転倒し、わずかに最終周回に入れず36位でラップアウト。「"あと10秒早ければ最終周回に入れた"と言われた。"あそこで転ばなければ"と正直めちゃくちゃ悔しい。UCIポイントも獲得できたし内容としては悪くない。この悔しさを忘れずに次に挑みたい」と自身のブログでレースを振り返っている。

織田をはじめ、トップ選手たちは本日12月29日に連戦開催されるX2Oトロフェー第5戦にスライド参戦。織田も「今年最後のレース!悔いのないように走ってきます!」と意気込みを話している。
UCIシクロクロスワールドカップ2025-2026 第8戦 女子エリート結果
1位 ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ) 51:06
2位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +0:11
3位 アマンディーヌ・フークネ(フランス、アルケアB&Bホテルズ) +0:23
4位 セイリン・アルバラード(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +0:35
5位 マリオン・ノーブルリブロール(ベルギー、クレラン・コレンドン) +0:47
6位 レオニー・ベントフェルド(オランダ、パウェルスサウゼン・アルテスインダストリーバウ) +0:58
7位 アニック・ファンアルフェン(オランダ、セブンレーシング) +1:03
8位 クリスティナ・ゼマノバ(チェコ) +1:09
9位 マノン・バッカー(オランダ、クレラン・コレンドン) +1:14
10位 セリア・ジェリー(フランス) +1:28
UCIシクロクロスワールドカップ2025-2026 第8戦 男子エリート結果
1位 ティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ) 1:01:29
2位 ティボール・デルフロッソ(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:02
3位 ローレンス・スウェーク(ベルギー、クレラン・コレンドン) +0:05
4位 エミエル・フェルストリンゲ(ベルギー、クレラン・コレンドン) +0:06
5位 ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:08
6位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)
7位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・アルテスインダストリーバウ) +0:12
8位 フェリペ・オルツ(スペイン、リドレーレーシングチーム) +0:15
9位 メース・ヘンドリクス(オランダ、ヘイゾマット・キューブ) +0:25
10位 トーン・アールツ(ベルギー、デスハフト・ヘンスCXチーム) +0:34
36位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) LAP
50位 岡山優太(オランダベース/ウォータスレイ) LAP
52位 梶鉄輝(オランダベース/ウォータスレイ) LAP
photo:UCI
text:So Isobe