ピュアスプリンターにとって最後のチャンスとなったツール・ド・フランス第17ステージ。雨による落車が発生した混沌のスプリントで、ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が区間2勝目。着用するマイヨヴェール(ポイント賞)を大きく手繰り寄せた。

今大会は精彩に欠けるフルーネウェーヘン photo:CorVos 
一気に名を挙げたヴォークラン photo:A.S.O.

アルプスでの山岳決戦を見据えるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.
7月23日(水)第17ステージ
ボレーヌ〜ヴァランス(平坦)
距離:160.4km
獲得標高差:1,650m
天候:晴れのち雨
気温:26度

第17ステージ ボレーヌ〜ヴァランス image:A.S.O.
モンヴァントゥーでの山岳決戦を終えた翌日は、典型的な移動日ステージが設定された。ツール・ド・フランス第17ステージに登場するカテゴリー山岳は、中盤に設定された2つの4級山岳のみ。どちらも難易度は低く、逃げ切りには厳しいレイアウトだというのが大方の予想。さらに翌日から最終決戦まで険しい山岳が続き、またパリでの最終ステージも重量級の選手には厳しいため、これがピュアスプリンターにとってのラストチャンスと見られた。
この日は産まれた娘に会いに行くためにダニー・ファンポッペル(オランダ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が未出走となった。ヨルディ・メーウス(ベルギー)の重要なリードアウトマンであり、オランダ選手権では強豪スプリンターを退けた実力者がレースを去った一方、前日のフィニッシュ地点で胃痙攣のため病院へ搬送されたトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)は回復し、無事スタートラインに並んだ。

ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)ら4名による逃げグループ photo:A.S.O.

単独で合流を目指したアクセル・ローランス(フランス、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.
レースは連日に比べ、比較的スムーズに逃げ集団が形成された。その中に第11ステージの勝者ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が入り、一気に1分のリードを築く。2023年のロード世界選手権王者である24歳のアクセル・ローランス(フランス、イネオス・グレナディアーズ)がメイン集団から追走を試みたが、合流には至らなかった。
第17ステージで逃げた4名
ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)
カンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ)
マチュー・ビュルゴドー(フランス、トタルエネルジー)
ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
この日の優勝候補であるティム・メルリール(ベルギー)のスーダル・クイックステップと、ジョナタン・ミラン(イタリア)を擁するリドル・トレックがプロトンをコントロール。47.9km地点にある中間スプリントに向けて集団のペースが上がるなか、初出場のルイ・バレ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ)が落車するも、大事なく集団復帰を果たしている。

プロトンで脚を回すタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

1つ目の4級山岳でペースを上げたイネオス・グレナディアーズ photo:CorVos
中間スプリントはアブラハムセンが先頭通過。5番手通過者に与えられる11ポイントを巡りプロトンではミランとビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)が争う。ここはミランが先着し、着用するマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)のリードを僅かに拡げた。
その後に迎えた4級山岳では、前日も集団牽引したゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がハイペースに持ち込む。これにミランやメルリールなどスプリンターたちが狙い通り遅れ、逃げとの差は30秒まで縮まる。しかし残り75kmで後続が集団復帰すると、スーダル・クイックステップが集団のペースを抑制し始めた。
残り50kmでは、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング)やカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)を含む落車が発生。アラフィリップが憤りを見せる場面もあった。そしてこの日2つ目にして最後の4級山岳手前、プロトンから54秒先にいる逃げ集団を目指し、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)がアタックを敢行した。
メカトラから集団復帰した勢いそのままに飛び出したファンアールトだったが、逃げには届かず、クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)が牽引するプロトンに吸収された。

2つめの4級山岳で飛び出したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

雲行きが怪しくなるなか、逃げ続けた4名 photo:A.S.O.
残り30kmから雨が降りはじめ、プロトンのコントロールにロットやピクニック・ポストNLも加わる。タイム差が20秒まで縮まると、残り11kmで逃げからアブラハムセンが単独アタック。しかしこの試みも実らず、残り4.3kmで集団がすべてを吸収。レースは濡れた路面での集団スプリントへと持ち込まれた。
3kmから延長された残り5km地点の「救済措置区間」を通過し、残り1kmを表すフラムルージュの手前で落車が発生する。先頭から11番手辺りで起こったビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)らを含む集団落車によりメルリールは足止めを食らい、運良くこれを回避した10名のスプリントが始まる。エフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、XDSアスタナ)のリードアウトからダヴィデ・バッレリーニ(イタリア)がアーリースプリントを仕掛け、その背後からミランが力強く踏み込んだ。
フィニッシュ直前でメーウスが猛追し、同時にハンドルを投げたが、ミランには僅かに届かない。その結果、マイヨヴェールを着るミランが第8ステージに続く区間2勝目を手に入れた。

ハンドル投げの接戦を制し、勝利したジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:CorVos

チームメイトに感謝を伝えるジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:CorVos
「天候が終盤の難易度を上げたが、チームメイトが助けてくれたおかげで先頭で最後のラウンドアバウトをクリアできた。少し恐怖すら感じる展開だったが、これはチームで掴んだ勝利。心の底から彼らに感謝している」と語ったミラン。ポイント賞争いで2位につけるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)との差を72点に拡げたことに対し、「明日からも中間スプリントでポイントを狙い続け、最終日も勝利を狙う。今日の勝利で少し安心はしたが、変わらず戦い続ける」と意気込みを見せた。
3位には22歳のトビアスルンド・アンドレースン(デンマーク、ピクニック・ポストNL)、4位には23歳のアルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット)と若手が躍動。一方、チームメイトに背中を押されながらフィニッシュしたギルマイに、骨折等は見つからなかった。
そしてマイヨジョーヌのポガチャルら総合上位勢もトラブルなくフィニッシュ。翌日から始まるアルプスでの山岳決戦に向かう。

マイヨヴェール争いのリードを拡げたジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:A.S.O.

マイヨジョーヌのまま翌日からの山岳決戦に臨むタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.



7月23日(水)第17ステージ
ボレーヌ〜ヴァランス(平坦)
距離:160.4km
獲得標高差:1,650m
天候:晴れのち雨
気温:26度

モンヴァントゥーでの山岳決戦を終えた翌日は、典型的な移動日ステージが設定された。ツール・ド・フランス第17ステージに登場するカテゴリー山岳は、中盤に設定された2つの4級山岳のみ。どちらも難易度は低く、逃げ切りには厳しいレイアウトだというのが大方の予想。さらに翌日から最終決戦まで険しい山岳が続き、またパリでの最終ステージも重量級の選手には厳しいため、これがピュアスプリンターにとってのラストチャンスと見られた。
この日は産まれた娘に会いに行くためにダニー・ファンポッペル(オランダ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が未出走となった。ヨルディ・メーウス(ベルギー)の重要なリードアウトマンであり、オランダ選手権では強豪スプリンターを退けた実力者がレースを去った一方、前日のフィニッシュ地点で胃痙攣のため病院へ搬送されたトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)は回復し、無事スタートラインに並んだ。


レースは連日に比べ、比較的スムーズに逃げ集団が形成された。その中に第11ステージの勝者ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が入り、一気に1分のリードを築く。2023年のロード世界選手権王者である24歳のアクセル・ローランス(フランス、イネオス・グレナディアーズ)がメイン集団から追走を試みたが、合流には至らなかった。
第17ステージで逃げた4名
ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)
カンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ)
マチュー・ビュルゴドー(フランス、トタルエネルジー)
ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
この日の優勝候補であるティム・メルリール(ベルギー)のスーダル・クイックステップと、ジョナタン・ミラン(イタリア)を擁するリドル・トレックがプロトンをコントロール。47.9km地点にある中間スプリントに向けて集団のペースが上がるなか、初出場のルイ・バレ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ)が落車するも、大事なく集団復帰を果たしている。


中間スプリントはアブラハムセンが先頭通過。5番手通過者に与えられる11ポイントを巡りプロトンではミランとビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)が争う。ここはミランが先着し、着用するマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)のリードを僅かに拡げた。
その後に迎えた4級山岳では、前日も集団牽引したゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がハイペースに持ち込む。これにミランやメルリールなどスプリンターたちが狙い通り遅れ、逃げとの差は30秒まで縮まる。しかし残り75kmで後続が集団復帰すると、スーダル・クイックステップが集団のペースを抑制し始めた。
残り50kmでは、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング)やカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)を含む落車が発生。アラフィリップが憤りを見せる場面もあった。そしてこの日2つ目にして最後の4級山岳手前、プロトンから54秒先にいる逃げ集団を目指し、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)がアタックを敢行した。
メカトラから集団復帰した勢いそのままに飛び出したファンアールトだったが、逃げには届かず、クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)が牽引するプロトンに吸収された。


残り30kmから雨が降りはじめ、プロトンのコントロールにロットやピクニック・ポストNLも加わる。タイム差が20秒まで縮まると、残り11kmで逃げからアブラハムセンが単独アタック。しかしこの試みも実らず、残り4.3kmで集団がすべてを吸収。レースは濡れた路面での集団スプリントへと持ち込まれた。
3kmから延長された残り5km地点の「救済措置区間」を通過し、残り1kmを表すフラムルージュの手前で落車が発生する。先頭から11番手辺りで起こったビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)らを含む集団落車によりメルリールは足止めを食らい、運良くこれを回避した10名のスプリントが始まる。エフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、XDSアスタナ)のリードアウトからダヴィデ・バッレリーニ(イタリア)がアーリースプリントを仕掛け、その背後からミランが力強く踏み込んだ。
フィニッシュ直前でメーウスが猛追し、同時にハンドルを投げたが、ミランには僅かに届かない。その結果、マイヨヴェールを着るミランが第8ステージに続く区間2勝目を手に入れた。


「天候が終盤の難易度を上げたが、チームメイトが助けてくれたおかげで先頭で最後のラウンドアバウトをクリアできた。少し恐怖すら感じる展開だったが、これはチームで掴んだ勝利。心の底から彼らに感謝している」と語ったミラン。ポイント賞争いで2位につけるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)との差を72点に拡げたことに対し、「明日からも中間スプリントでポイントを狙い続け、最終日も勝利を狙う。今日の勝利で少し安心はしたが、変わらず戦い続ける」と意気込みを見せた。
3位には22歳のトビアスルンド・アンドレースン(デンマーク、ピクニック・ポストNL)、4位には23歳のアルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット)と若手が躍動。一方、チームメイトに背中を押されながらフィニッシュしたギルマイに、骨折等は見つからなかった。
そしてマイヨジョーヌのポガチャルら総合上位勢もトラブルなくフィニッシュ。翌日から始まるアルプスでの山岳決戦に向かう。


ツール・ド・フランス2025第17ステージ
1位 | ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 3:25:30 |
2位 | ヨルディ・メーウス(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
3位 | トビアスルンド・アンドレースン(デンマーク、ピクニック・ポストNL) | |
4位 | アルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット) | |
5位 | ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、XDSアスタナ) | |
6位 | アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、チューダー・プロサイクリング) | |
7位 | ポール・ペンウェット(フランス、グルパマFDJ) | |
8位 | エフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、XDSアスタナ) | |
9位 | クレマン・リュソ(フランス、グルパマFDJ) | |
10位 | ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、リドル・トレック) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 61:50:16 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +4:15 |
3位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +9:03 |
4位 | オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) | +11:04 |
5位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +11:42 |
6位 | ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) | +13:20 |
7位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) | +14:50 |
8位 | トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | +17:01 |
9位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +17:52 |
10位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | +20:45 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 312pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 240pts |
3位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 179pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 60pts |
2位 | レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 60pts |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | 48pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 61:59:19 |
2位 | オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) | +2:01 |
3位 | ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) | +4:17 |
チーム総合成績
1位 | ヴィスマ・リースアバイク | 186:11:57 |
3位 | UAEチームエミレーツXRG | +15:08 |
2位 | デカトロンAG2Rラモンディアール | +49:34 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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