イギリスのシューズブランドであるクオックがロードシューズラインアップに追加したミドルグレードモデル「M3 SPORT」。クオックらしい洗練されたデザインの中に高いパフォーマンスを秘めた一足をテストしていく。



クオック M3 SPORT photo:Michinari TAKAGI

創業15年のイギリスのシューズブランド、クオック。ハイパフォーマンスかつデザイン性に優れたサイクリングシューズを手掛けている。また、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)とパートナーシップを結び、プロトンの中でも一際存在感を増してきた気鋭のブランドだ。

クオックのロードシューズの中で、最新のレーシングモデルとして用意されているのがM3シリーズ。軽量で通気性に優れたメッシュアッパーを採用したM3 AIRを皮切りに、前面にTPUアッパーを採用し、優れたホールド力と耐久性を発揮するM3 PROをゲラント・トーマスと共同開発。そして、その流れを汲みつつ、より価格を抑えた戦略モデルとして用意されるのが、今回紹介するM3 SPORTだ。

柔軟性に優れたポリウレタンアッパーに2つのダイヤルを搭載 photo:Michinari TAKAGI

M3 SPORTにはM3 PRO同様のラストを採用し、シリーズで共通した履き心地を実現。柔軟性に優れたPU(ポリウレタン)素材を採用したアッパーは、ラップ構造によって足全体を包み込むようにフィットする。シュータン部にパッドを配置することで、クッション性を確保し快適性を高めた。

クロージャーシステムにはBOAダイヤルを2つ採用。それぞれ一つのワイヤー受けと対応するシンプルな配置によって、シューズ全体へ均等にテンションを掛けられるよう設計されている。

職人の手作業で重ねられたカーボンファイバーソール photo:Michinari TAKAGI

つま先には通気口を備え、通気性に優れる photo:Michinari TAKAGI

ペダリング効率に大きな影響をあたえるアウトソールは、職人が手作業でレイヤリングを行う"M3レースソール"を搭載。レースシーンで証明された高い剛性を有する一方で、長時間に及ぶライドやトレーニングセッションにおいても足に過度な負担を掛けない柔軟性を兼ね備えた。

アウトソール前方にはベンチレーションホールが設置されており、アッパーのパンチングホールと合わせて必要十分な通気性を確保。インソールは3つのアーチインサートを備え、カスタムインソールのようなフィット感を実現した。

インソールは3つのアーチインサートでカスタムソールのようなフィット感を実現 photo:Michinari TAKAGI

アッパーには波型プリントボーダーデザインがプリントされる photo:Michinari TAKAGI

カラーはホワイトとチョークの2色展開。アッパー下部、つま先から踵にかけて施された波型のボーダーデザインが、M3 SPORTの個性を際立たせる。

ホワイトがEU38(23.9cm)~EU44(27.3cm)、チョークがEU38(23.9cm)~EU43(27.9cm)で展開。ブランドロゴがプリントされたシューズバックも付属し、価格は35,200円(税込)。取扱いはフカヤ。

クオックロゴが大きく書かれたお洒落なシューズバックも付属してくる photo:Michinari TAKAGI

それでは編集部インプレッションに移っていこう。



―編集部インプレッション

クオック M3 SPORTをインプレッションするのはCW編集部の高木 photo:Gakuto Fujiwara

今回、クオック M3 SPORTをインプレッションするのはCW編集部の高木。足のサイズは27.0cm、普段のレースやトレーニングで着用しているジャイアントやシマノ、スペシャライズドのシューズでは42サイズ、ジロでは43サイズ、スニーカーでは27.0~27.5cmといったサイズ感の足の持ち主である。

また、筆者の足は土踏まずのアーチは高め、親指の厚みがあり、母指球から小指球まで幅があるため、横幅が広めのブランドのシューズとの相性が良い。

アッパーと一体成型のようなデザインであるため、足の甲を包み込むようにフィットしてくれる photo:Gakuto Fujiwara

クオックのシューズをテストするのは今回が初めて。まずはサイズ感を確かめるため、42と43サイズのサンプルをお借りした。足を通してみると、心配していた足幅も問題なく、タイトに履ける42サイズが丁度良さそう。

アッパーとシュータンが一体となった設計のおかげで、足全体を包み込むようにフィットしてくれる。この構造はシュータンの位置ズレを気にしなくて良いので着用時にひと手間少なくなるのも嬉しいポイント。踵のホールド感も良く、シューズ全体のフィット感は非常に優れた印象だ。

踏み込めば高い剛性を感じる photo:Gakuto Fujiwara

クロージャーとワイヤー受けが一対となったフィッティングシステムは、細かくかつ正確にシューズのフィット感を調整可能。ラップデザインのアッパーとはベストマッチで、ホールド力を自在にコントロールできる。締め込む方向とは逆に回せば、テンションが一気に解放され、すぐにシューズを脱げるようにもなっている。

滑らかなデザインのアウトソールは、他のシューズとは一線を画した印象。凹凸を取り払ったデザインはエアロ性能にも優れていそうだ。つま先側に設けられた大きなベンチレーションホールからはフレッシュな空気が流れ込んでくるのが分かる。アッパーの前方やインソールにも無数のパンチング加工が施されており、暑さが増してきた今時分においても靴内は快適に保たれていた。

アウトソールはエアロ性能に優れる photo:Gakuto Fujiwara

アウトソールの剛性感は硬すぎず柔らかすぎず、バランスが取れている印象だ。強めに踏み込んでもパワーをロスしている感覚は無いが、日々の通勤やロングライドで着用しても足裏が疲れにくく、長時間履き続けられる。ちょうど良い所を突いた剛性調整で、多くのサイクリストにマッチするはず。

また、軽量なのもこのシューズの美点。通常、ハイエンドモデルよりもセカンドグレードは重くなってしまうものだが、このM3 SPORTでは逆転現象が生じている。旗艦モデルであるM3 PROと同サイズ比較で10g軽く仕上げられているというのだから驚きだ。

初心者からベテランライダーまでおすすめできる1足だ photo:Gakuto Fujiwara

今回はM3 PROをテストすることは出来なかったので想像となるが、ワールドツアーのレースシーンで求められるアッパー剛性を追求したのが上位モデルなのだろう。アッパー素材をより柔軟なものへと変更したM3 SPORTは、より多くのサイクリストのパフォーマンスを引き出すための一足として最適なバランスを備えた結果、上位モデルよりも軽量となったのではないだろうか。

まとめると、クオック M3 SPORTはライダーのパフォーマンス向上と快適性を両立させた設計と、クオックらしいユニークで洗練されたデザインが魅力の一足。クオックのスタイルに惚れ込んだ方はもちろん、快適な履き心地のミドルグレードを求める方にとって有力な候補となるだろう。



クオック M3 SPORT
カラー:ホワイト、チョーク
重量:230g(EU42)
サイズ(ホワイト):38~44
サイズ(チョーク):38~43
価格:35,200円(税込)
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