アレッサンドロ・ファンチェル(JCL TEAM UKYO)の個人総合優勝で5月25日に閉幕した今年のツアー・オブ・ジャパン。ポイント賞の岡篤志(宇都宮ブリッツェン)を含む各賞ジャージを獲得した選手と、日本人最上位の金子宗平(日本ナショナルチーム)、RTA賞4回受賞の橋川丈(愛三工業レーシングチーム)、さらに久々の出場となった新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)のコメントを紹介する。



個人総合優勝 アレッサンドロ・ファンチェル(JCL TEAM UKYO)

個人総合優勝 アレッサンドロ・ファンチェル(JCL TEAM UKYO) photo:Satoru Kato

総合優勝出来てとても嬉しい。レースが終わった後はいつもこういう気持ちになるが、ハードだけれど素晴らしい8日間だった。途中落車することもなく、タイムロスも無く終えることが出来た。一番良かったのはステージ優勝したいなべ。その後はタイムロスをしないようにした。今日は最後のステージだったので、目を見開いて気を抜かずにレースをした。最後までリーダージャージを維持出来て本当に良かったと思う。



ポイント賞 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)

ポイント賞 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoru Kato

京都でステージ優勝出来て、目標のひとつはクリアできた。うまくいかないステージもあったが最終日にポイント賞ジャージを着ることが出来たので本当に良かったと思う。後半にかけて体調を崩してしまい、飯田で遅れてしまった。勝ったことのあるステージだったので、昨日の相模原もそうだけれど、もっと良い走りをしたかった。

今日は位置取り争いで風を受けてしまっていたので、万全のスプリントが出来ず埋もれてしまった。ポイント賞ジャージのベンジャミ・プラデス選手の前でフィニッシュすることを念頭に強いスプリンターをマークすることを考えていて、ポジション取りは悪く無かったと思うが中間スプリント3回すべてでモガいていたので脚が残っていなかった。結果として3回モガいたからポイント賞ジャージを獲れたが、モガいてなければステージを獲れたかもしれない。どっちが良かったのかは分からないけれど、結果として2点差だったので無駄ではなかったと思う。



山岳賞 ニコロ・ガリッポ(JCL TEAM UKYO)

山岳賞 ニコロ・ガリッポ(JCL TEAM UKYO) photo:Satoru Kato

とても良い気分だし、チームのパフォーマンスも本当に良かった。チームとしては総合優勝することを目標に来たが、最初はうまく行かなかった。その中で山岳賞ジャージを獲得したので、最後まで守り切ることにした。私にとっては第3べステージのいなべが一番良かった。富士山ステージはかなりハードで僕にとっては登りが長すぎると感じた。

このあとイタリア選手権があるので、疲れをとって臨みたい。これから今シーズンの第2ステージが始まるので、すこしゆっくりして疲れを取りたい。



新人賞 マクサンス・プラス(ワンティ・NIPPO・リユーズ)

新人賞 マクサンス・プラス(ワンティ・NIPPO・リユーズ) photo:Satoru Kato

昨日(相模原)落車してしまい、もう新人賞ジャージを着られないとも思ったが、最後にこうして着ることが出来て本当に良かったと思う。これもチームと応援してくれた人達のおかげ。ここでは素晴らしい経験をさせてもらった。

疲れてはいるが8日間はそれほど長くはないので、疲れすぎてはいない。どのステージも良かったので一番良いステージは選べないが、前半は体調が良く無かったので後半にかけて戻すことが出来た。富士山は厳しかったがそれなりに良いタイムで走れたと思う。



金子宗平「富士山は7割くらいの出来」

個人総合10位の金子宗平(日本ナショナルチーム)が日本人最上位 photo:Satoru Kato

日本ナショナルチームから出場した金子宗平。初めてのツアー・オブ・ジャパンを、日本人最高位の総合10位で終えた。自他共に認めるヒルクライマーにとってのステージレースはどのように感じたのか?

「思ったより疲れてないですね。疲れてはいるけれど反面調子は上がってきていて、初めてのステージレースにしては走れていると感じています。当初日本ナショナルチームとして総合10位以内を目指す目標を立てて、約3分50秒ほど遅れですけど総合10位につけているので、最後までこの順位を維持していきたいです(※最終日スタート前にインタビュー)。いなべと飯田は削られる展開でしたがしっかり喰らいついて行けました。その反面、自分から動いて展開を作るまでは出来ず、海外選手は強いなと感じました。

ふじあざみラインは初めて登ったと言う金子宗平(日本ナショナルチーム) photo:Satoru Kato

富士山は7割くらいの出来かなと思ってます。ふじあざみラインの登りだけで42分を切りたかったのですが、データを見たら42分50秒くらいで約1分遅れでした。自分のパワーメーターを見て淡々と行くか、先頭に喰らいついていくか、どちらにするかを迷って先頭に喰らいついて行く気合いの走りをしたのですが、結果としてそれが良かったのか悪かったのかはわからないです。先頭から2分40秒遅れという結果だったので、ちょっと納得出来ていないですね。

ふじあざみラインは初めて登りましたが、特に後半の旧馬返し以降は緩斜面と急勾配の繰り返しで、走り方が難しかったです。試走出来れば良かったのですけれど、もしもう一度走る機会があれば改善したいと思っています。機材的にはバイク重量を6.8kgに合わせ、ギア比は前34、後11-34にしました。それでも足りなかった気がします。

第1ステージの堺ではTT全日本チャンピオンジャージで走った photo:Satoru Kato

強くなりたいのはヒルクライム。ロードレースは慣れが必要で、位置取りとか改善するところはありますけれど、今回は分裂した後ろの集団に取り残されるようなことが無かったので、少しは良くなってきているのかなと思います。でも好きなのはヒルクライムです。

他のチームで総合を狙っていた選手がどれだけいたのかは分かりませんが、今回の結果は自信につながると思いますし、日本チームで組織的にサポートしてもらったこともあるので、それがうまくいったのかなと思います。

このTOJで刺激が入ってコンディションが一段階上がったと感じているので、終わったら休んで来週のフジヒルクライム3連覇を目指して頑張りたい。そして前半戦ピークの全日本があるので、修善寺は得意だしタイムトライアルはド平坦の渡良瀬遊水地なので、どちらも獲りたいと思っています」



橋川丈「自分のやり方でさらに強くなって上を目指したい」

RTA賞を4回受賞した橋川丈(愛三工業レーシングチーム) photo:Satoru Kato

世界での活躍を期待される走りをしたU23日本人選手に与えられる「RTA賞」を8ステージ中4回受賞した橋川丈。ハードなステージで先頭集団に残る走りを見せ、総合16位で終えた。日本人選手の中では、金子宗平に次ぐ順位だ。父はかつての名選手であり、現チームユーラシア監督の橋川健氏だ。

「ツアー・オブ・ジャパンは2年前にEFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム所属の時に出場して以来2回目。その時は日本で初めて走るレースで、思い通りに走れていなくて残念な結果でした。今年は冬にしっかり練習し、直前のツール・ド・熊野で良い成績を出せたので自信をもってTOJに臨みました。今年は昨年よりもさらに走れると感じているので、毎年強くなっていると実感出来ています。

サバイバルレースになった信州飯田で20名まで絞られたメイン集団に残った橋川丈(愛三工業レーシングチーム) photo:Satoru Kato

距離が長めでアップダウンのあるコースで、サバイバルな展開になるレースが自分に向いていると思っています。20分以上の長い登りになると才能とか高地育ちの選手が有利になりますが、力勝負で行ける10分くらいの登りのあるコースは意識して狙っていきます。ツール・ド・熊野の千枚田とか、TOJの飯田とか、登りと下りだけのようなコースは得意ですね。

富士山は周回コースが終わったところでメカトラがあって、ふじあざみラインに入る前に脚を使ってしまいました。チームのおかげで良い位置に戻れたけれど疲れてしまい、頑張って張り付いていきましたが力差がありました。それは今後の課題ですし、自分にとってもモチベーションになります。メカトラが無かったらと思いますが、出し切ったのでこれが今の自分の力だと思うし、絶対にもっと強くなって優勝したいと思っています。

メカトラで遅れながらも約5分遅れで富士山を登った橋川丈(愛三工業レーシングチーム) photo:Satoru Kato

これまでベルギーで生活していたので、日本を拠点にして日本のチームに所属して活動するのは今年が初めてです。チームメイトがみんな近所に住んでいるので、日本で分からないことを教えてもらったり助けてもらっているので、そのおかげでストレスなく生活出来てるし、レースのことも色々と教えてもらっているので良い成績を出せてきたと感じています。

今年はU23最後の年です。最近はアンダーのうちにヨーロッパでプロになれないとダメという考え方があるけれど、25歳、26歳になってからワールドツアーの選手になる人も少なくないし、24歳から26歳くらいの間にツアー・オブ・ジャパンで総合優勝出来るくらい強くなればヨーロッパでも戦えると思うので、それを目指したいと思っています。

父(橋川健)と比べてはいないし、父がこの歳でこの成績を出していたから自分も、というプレッシャーは感じていなくて、自分のペースでこのまま強くなっていけば世界と戦えると信じています。自分のやり方で強くなってさらに上を目指したいと思ってます。

RTA賞で頂いたTOEICの受験料もAACAの出場も活用させてもらいます。特にTOEICは、英語には自信はあるけど一度試験を受けてみたいと家族とも話をしていたので、この冬に受けてきたいと思います」



新城幸也「全日本やジャパンカップだけでは見えなかった部分が見えた」

最終日には「弱虫ペダル」作者の渡辺航氏が駆けつけて新城幸也を激励 photo:Satoru Kato

ツール・ド・熊野とツアー・オブ・ジャパンに連続して出場した新城幸也。日本のレースに連続して出場したことで見えてきたものもあると言う。

久しぶりのTOJで、前回出た2018年の時と比べて大会自体のアップデートがされて違った大会になっていると感じましたし、昨年までワールドツアーやプロチームで走っていた選手がコンチネンタルに来て走っているのもあってレース自体がキツくなってるのかなと感じました。

チームとしては総合順位とステージを出来るだけ取ろうというプランでした。最初の堺でドゥシャン(・ラヨビッチ)がリーダージャージを獲りましたが、ドゥシャンが遅れることがあればマーク(・スチュワート)がいるし、ダヴィデ(・バルダッチーニ)もいるし、富士山ではヴァレリオ(・コンティ)がいるし、僕は総合的なアシストとして働きました。

京都ステージ、チームメイトと集団コントロールする新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Satoru Kato

ツール・ド・熊野では千枚田でドゥシャンが遅れてもマークがステージ優勝して総合も取れたので、TOJでも同じようなことを考えていました。結果として堺以外にステージを取れなかったのは残念でしたし、今日もスプリントジャージを目指して頑張ったのですが、2点足りずに及びませんでした。それはしょうがないですね。マークがステージ優勝すれば総合3位になれる可能性はあったのですが、昨日(相模原)失敗したのが痛かったですね。

富士山ではトップから5分35秒遅れの23位で登った新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Satoru Kato

熊野、TOJと連続して日本のレースに出場してみて、主催者のレースの作り方や選手の走り方など、今の日本のレースを見られたことは僕的には良かったと思っています。TOJに関しては、主催者や出場する選手に対して「間違ってはいないけれどこうした方が良いのでは?」という点に意見させてもらいました。それを受け入れるかは相手次第ではありますけれど、全日本とジャパンカップだけでは見えなかった点がステージレースを続けて走ったことで見えてきました。

明後日にはヨーロッパに戻って2レース走り、そのあと全日本選手権に出ます。今日も昨日もいろいろな人達がレースを見に来てくれて、ジャパンカップは関東の方が多いけれど、今回は和歌山と大阪でレースがあったので、関西の皆さんに久々に会えました。お世話になっておるオージーケーさんも大阪でご挨拶出来たので、良かったですね。

チームは順調なので、今シーズンもう少し結果を出したいです。熊野はうまくいきましたけれど、TOJは総合4位とポイント賞2位だったので、もうひとつ何か欲しかったですね。まだ決まってませんが7月の多摩ロード、10月のツール・ド・九州やジャパンカップに是非招待を頂いて、TOJで足りなかった分を取り返して大暴れしたいです」


text&photo:Satoru Kato