強風のためカテゴリー山岳がなくなり、選手たちの抗議の末約28kmで争われたボルタ・ア・カタルーニャ第6ステージ。クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)が残り1km地点で飛び出し、ワールドツアー初勝利を掴んだ。



主催者の決定に異論を唱えるトム・パコ(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ) photo:A.S.O.

スペイン北東部カタルーニャ州を巡る7日間のボルタ・ア・カタルーニャ(UCIワールドツアー)もあと2日。この日は今大会3度目の登りフィニッシュを含む山岳ステージを予定していたものの、強風の影響でコースが大幅に変更。当初は超級山岳のみが削除されるところ、フィニッシュ地点である1級山岳も危険と判断されたため、ベルガを発着点に周回コースを2周する146kmに変更された。

1周目をニュートラルで走り、安全が確認された後に2周目からレースがスタートする予定だったが、これに選手たちが異議を唱える。2023年の総合優勝者であるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がレース主催者と話し合い、即時スタートの1周回を提案。主催者はその案を受け入れ、実質的に約28kmのレースが始まった。

プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がレース主催者と話し合う photo:A.S.O.

直後に形成されたのはカルロス・ベローナ(スペイン、リドル・トレック)ら4名による逃げ集団。メイン集団ではイネオス・グレナディアーズやモビスターが高速牽引し、レースはハイスピードな展開に。残り13km地点でレースの先頭ではベローナが加速してフランク・ファンデンブルーク(オランダ、ピクニック・ポストNL)以外を引き離した。

しかしファンデンブルークが先頭交代を拒否したため、ベローナ1人ではリードが保てず残り8.5km地点で吸収された。ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)も牽引するなか、総合タイムが計測される残り5km地点を通過。その結果、総合順位に変動はなくフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)がリーダージャージをキープした。

集団先頭でペースを作ったイネオス・グレナディアーズ photo:A.S.O.

残り5km地点を過ぎてからアタック合戦が繰り広げられた photo:A.S.O.

登り区間に入るとナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が先頭に出るシーンもありながら、それまでの静寂を破るようにアタックが散発的に起こる。しかしいずれも決め手に欠き、ひと塊の集団のまま残り1km地点に到着。すると直後にクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)が飛び出した。

後続が牽制し合う中、元アメリカ王者はひたすら高出力で踏み続ける。そしてカタルーニャの旗「サニェーラ」が振られる緩斜面の最終ストレートに到着。何度も背後を振り返り、迫るパヴェル・ビットネル(チェコ、ピクニック・ポストNL)との差を確かめながら、フィニッシュラインを通過した。

ワールドツアー初勝利を飾ったクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック) photo:A.S.O.

「選手キャリアで最も奇妙な日となった。レースが開始から1度中断し、2周だったはずが僅か28kmになった。僕は中止するべきだと思ったが、まさかそんなレースでワールドツアー初勝利を飾るとは思ってもいなかった」とシモンズは語る。「スタートで遅れ、2km地点で自分のレースは終わったのだと思っていた。そもそもこの大会も急遽出場が決まったんだ」と予想外の展開に戸惑いながらも、シモンズは満面の笑みでワールドツアー初勝利を喜んだ。

ボルタ・ア・カタルーニャ2025第6ステージ
1位 クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック) 25:04
2位 パヴェル・ビットネル(チェコ、ピクニック・ポストNL)
3位 アナス・フォレーヤ(デンマーク、ジェイコ・アルウラー)
4位 レナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット)
5位 イーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック)
6位 アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、デカトロンAG2Rラモンディアール)
7位 ドリアン・ゴドン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)
8位 アクセル・ローランス(フランス、イネオス・グレナディアーズ)
9位 パウ・ミケル(スペイン、エキポ・ケルンファルマ)
10位 ハロルド・ロペス(エクアドル、XDSアスタナ)
個人総合成績
1位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) 22:48:07
2位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:01
3位 エンリク・マス(スペイン、モビスター) +0:21
4位 ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) +0:22
5位 レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:28
6位 ローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ) +0:59
7位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)
8位 レナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット) +1:10
9位 サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) +1:14
10位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) +1:27
その他の特別賞
ポイント賞 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)
山岳賞 ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)
ヤングライダー賞 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)
チーム総合成績 ヴィスマ・リースアバイク
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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