3月28日に行われたE3サクソ・クラシックは、終盤5名の精鋭集団に絞られた。ロンド前哨戦でマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が残り39kmからアタックし、2年連続の独走勝利を決めた。



連覇目指すマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

3度目の優勝狙うワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos
ロンド・ファン・フラーンデレンまで後9日に迫った3月28日、その前哨戦の1つとして数えられるE3サクソ・クラシック(UCIワールドツアー)が行われた。第67回目を迎えたベルギーのセミクラシックは、60年代に建設されたアントワープとフランスを結ぶ主要高速道路E3(現在のA14)がつけられ、「ミニロンド」とも呼ばれる石畳&急坂が見どころのレースだ。

ハーレルベーケがスタート&フィニッシュ地点である208.8kmコースには、計17箇所の急坂と10箇所の石畳区間が設定。レースにはミラノ〜サンレモを制し、昨年覇者マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)など役者が揃う。そして気温12度の中、175名の選手たちがスタートを切った。

E3サクソ・クラシック コースプロフィール photo:E3 Saxo Classic

序盤に発生した落車でスーダル・クイックステップは3名を失った photo:CorVos

直後に大規模落車が発生し、スーダル・クイックステップはヒル・ヘルダース(ベルギー)ら3名がリタイアする。またケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ、ピクニック・ポストNL)もレースを去る中、レース先頭では50名程度の集団がペースを上げ、それをアルペシンら後続集団が追いかける。ファンデルプールはレース後、意図的にペースを上げたグルパマFDJなど先頭集団を先導したチームに対し「フェアじゃないし、僕たちチームは絶対にやらない行為だ」と批判した。

そのまま1つ目の急坂と石畳をクリアし、残り137km地点で後続集団が先頭に合流する。そしてレースは急坂&石畳が連続するフィニッシュまでの120kmに突入。カスパー・ピーダスン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)とエメ・デヘント(ベルギー、コフィディス)が集団から飛び出し、2名による逃げグループを形成した。

プロトンではイネオスがハイペースに持ち込み、ライバルチームの人数を削っていく。過去4勝したトム・ボーネン(ベルギー)が好んだターイェンベルグ(距離0.7km/平均6.3%/残り80.6km)に入ると、アレックス・キルシュ(ルクセンブルク、リドル・トレック)が先頭で加速。そのリードアウトからピーダスンが残り80km地点でアタックし、ファンデルプールとフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が追従した。

先頭2名に合流し、5名となったファンデルプールら精鋭集団 photo:CorVos

優勝候補の3名はすぐさま先頭に合流。5名となった精鋭集団に対し、ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)など6名の追走集団が14秒で追いかける。一方、ファンアールトはこの動きを逃し、プロトンでチャンスを窺うことになった。

残り50km地点を通過する頃に、ファンデルプールら先頭は後続に1分18秒差をつける。さらにプロトンは2分28秒遅れという状況の中、昨年ファンアールトが落車し、ファンデルプールが独走を開始するきっかけとなったパテルベルグに突入。そしてデヘントが遅れ、4名が続くオウデクワレモントに入ると、ファンデルプールが動いた。

オウデクワレモントで単独先頭に立ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

ファンデルプールを追いかけるマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:Lidl - Trek

最大勾配11.6%の急坂で前世界王者は加速し、ピーダスンを除くガンナたちが引き離される。そして残り39km地点でピーダスンを引き離し、ファンデルプールがついに単独先頭に立つ。その後設定された2つの急坂と1つの石畳も難なくクリアしたファンデルプールは、単独追走するピーダスンとのリードを拡げていった。

この頃から雨粒が路面を濡らし始めたものの、2月のシクロクロス世界選手権で7度目の王者に輝いたファンデルプールには何の影響もなかった。最終的にピーダスンに対し1分5秒差をつけたファンデルプールが、ガッツポーズと共に大会連覇を達成した。

2年連続で独走勝利を決めたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

E3サクソ・クラシック2025表彰台:2位ピーダスン、1位ファンデルプール、3位ガンナ photo:INEOS Grenadiers

昨年は43.7km、そして今年は39kmの独走から勝利を掴んだファンデルプール。「チームが懸命な走りを見せてくれたので、勝利へのモチベーションは高かった。もちろん彼ら抜きにこの勝利はない。心から感謝している」とコメントし、「ターイェンベルグでのアタックは読まれていると思い、オウデクワレモントで人数を絞りにいった。単独となったのは予想外だったが、何とか1人でフィニッシュにたどり着くことができた」とレースを振り返った。

3位には2分4秒遅れでガンナが入る。そんなガンナは現状予定にないロンド・ファン・フラーンデレンへの出場可否が注目されている。
E3サクソ・クラシック2025結果
1位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) 4:38:11
2位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) +1:05
3位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) +2:04
4位 カスパー・ピーダスン(デンマーク、スーダル・クイックステップ) +2:33
5位 ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、リドル・トレック)
6位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)
7位 エメ・デヘント(ベルギー、コフィディス)
8位 ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG) +2:35
9位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +2:38
10位 マイク・トゥーニッセン(オランダ、XDSアスタナ) +2:43
15位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos