2010/07/26(月) - 11:45
ツール・ド・フランス2010最終ステージとなる第20ステージは、集団スプリントをマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)が制し、無事にゴールしたアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が3度目の総合優勝の栄冠に輝いた。
昨ステージの個人タイムトライアルで総合優勝の行方は決したツール・ド・フランス2010。しかしまだわからないのはスプリンター賞のマイヨヴェールの行方。この日までにトップに立つアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)と2位のトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)との差はわずか10ポイント。3位のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)までは16ポイント差だ。
スタートラインでは確定した他の3賞が笑顔を見せる中、マイヨヴェールのペタッキだけが笑顔少なく集中した表情でスタートを切っていった。
アクチュアルスタートまでのパレード走行中に話題を振りまいたのはレディオシャック勢。この最終ステージに備えてブラック&イエローのスペシャルジャージでスタートしたが、オフィシャルからルール違反だとして着替え命令が下り、アームストロングを始めとする選手たちは立ち止まってノーマルジャージに着替え直す場面も。
少しまごつきながらも、アクチュアルスタートを切った集団だが、最終ステージの慣わしでスローペースで進んでいく。恒例のマイヨジョーヌのシャンパンタイムには、コンタドールをアスタナ勢が囲むようにして「乾杯!」。
残り92km地点で集団からアタックをかけたのはなんとコンタドール。これを追って飛び出したのはアンディ・シュレク。2人はツールマレ峠での攻防を思い出させるような抜きつ抜かれつのアタック合戦を披露するが、もちろんこれはパフォーマンス。ペースを下げた2人はお互い笑い合った。
ゆったりペースで進んでいく集団の目の前にエッフェル塔が見えてくると、パリ市街はもうすぐそば。セーヌ河沿いに進みながら、リーダーチームのアスタナが一列棒状に隊列を組み、シャンゼリゼ通りに入っていく。
この日のレースが始まるのはこのシャンゼリゼ通りに入ってから。凱旋門へ向かってゆるやかに登り、ヘアピンカーブを抜けたところでレース開始。口火を切ったのはグレゴリー・ラスト(スイス、レディオシャック)のアタックだ。
しかし逃げたい選手がたくさんの最終ステージ。逃げグループが形成されたのは残り42kmで、11人の選手が抜け出しに成功した。ここには今ツールでステージ優勝を挙げたサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)、クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)の姿も。
この逃げグループに入ったダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)はペタッキのマイヨヴェールのために中間スプリントポイントを潰すための動き。2度のスプリントポイントを逃げグループが獲得したため、マイヨヴェール争いは純粋にゴール勝負の結果に委ねられた。
メイン集団はカヴェンディッシュの区間5勝目を狙うチームHTCコロンビアがコントロールし、残り27km地点でその差は24秒。チームスカイ、カチューシャも協調してメイン集団を牽引する。
残り9kmで逃げグループからクリスチャン・クネース(ドイツ、ミルラム)がアタック。これを追えたのはニキ・ソレンセン(デンマーク、サクソバンク)、カルステン・クローン(オランダ、BMC)だけ。3人で逃げを続けるが、やはり分が悪く残り6kmで大集団に吸収されてしまう。
残り5kmを切って集団の先頭では激しいポジション取りが展開。新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)もうまくポジションを挙げ、集団の前方で最終局面を待つ。残り3kmでカルロス・バレード(スペイン、クイックステップ)がアタックするがすぐに潰され、残り1km。
ゴールまでのストレートに至る最終コーナー、昨年はマーク・レンショー(オーストラリア、チームHTCコロンビア)がカヴェンディッシュと2人で飛び出したこのコーナーを先頭で通過したのはブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロ・テストチーム)に導かれたフースホフト。
しかしその後ろからスプリントをかけたのはマイヨヴェールのペタッキ。フースホフトを置き去りにしたその瞬間、逆サイドからさらに爆発的な加速でカヴェンディッシュが飛び出す。カヴの勢いには誰も追随できず、昨年に続くシャンゼリゼでのスプリントを制した。
早めに仕掛けたペタッキはカヴにこそ及ばなかったものの、マイヨヴェールを決定づける粘り強いスプリントで2位に入った。最終的にフースホフトはポイント賞でカヴに逆転を許し3位でこのツールを終えた。
集団内で無事にゴールラインを切ったマイヨジョーヌのコンタドールは3勝目をアピールしながらのゴール。この4年で3度目の総合優勝に輝いた。新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は最後まで好位置につけ、区間16位で最終ステージを終えて2度目のツール完走を成し遂げた。今後の活躍にも期待したい。
新人賞は総合2位のアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、山岳賞はアントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)、総合敢闘賞には2度のステージ優勝とマイヨジョーヌ着用のシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、チーム総合成績はレディオシャックがそれぞれ輝いた。
ツール・ド・フランス2010第20ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)2h42'21"
2位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)
3位 ジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン・トランジションズ)
4位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
5位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
6位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、チームコロンビア)
7位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)
8位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)
9位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
10位 ダニエル・オス(イタリア、リクイガス・ドイモ)
16位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) 91h58'48"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) +39"
3位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +2'01"
4位 サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +3'40"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+6'54"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +9'31"
7位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ) +10'15"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +11'37"
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス・ドイモ) +11'54"
10位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +12'02"
112位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +3h13'20"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ) 243pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)232pts
3位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム) 222pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム) 143pts
2位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ) 128pts
3位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 116pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 91h59'27"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +8'52"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +11'15"
チーム総合成績
1位 レディオシャック 276h02'03"
2位 ケースデパーニュ +9'15"
3位 ラボバンク +27'49"
スーパー敢闘賞
シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)
text:Yufta Omata
photo:Makoto Ayano,Cor Vos
昨ステージの個人タイムトライアルで総合優勝の行方は決したツール・ド・フランス2010。しかしまだわからないのはスプリンター賞のマイヨヴェールの行方。この日までにトップに立つアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)と2位のトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)との差はわずか10ポイント。3位のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)までは16ポイント差だ。
スタートラインでは確定した他の3賞が笑顔を見せる中、マイヨヴェールのペタッキだけが笑顔少なく集中した表情でスタートを切っていった。
アクチュアルスタートまでのパレード走行中に話題を振りまいたのはレディオシャック勢。この最終ステージに備えてブラック&イエローのスペシャルジャージでスタートしたが、オフィシャルからルール違反だとして着替え命令が下り、アームストロングを始めとする選手たちは立ち止まってノーマルジャージに着替え直す場面も。
少しまごつきながらも、アクチュアルスタートを切った集団だが、最終ステージの慣わしでスローペースで進んでいく。恒例のマイヨジョーヌのシャンパンタイムには、コンタドールをアスタナ勢が囲むようにして「乾杯!」。
残り92km地点で集団からアタックをかけたのはなんとコンタドール。これを追って飛び出したのはアンディ・シュレク。2人はツールマレ峠での攻防を思い出させるような抜きつ抜かれつのアタック合戦を披露するが、もちろんこれはパフォーマンス。ペースを下げた2人はお互い笑い合った。
ゆったりペースで進んでいく集団の目の前にエッフェル塔が見えてくると、パリ市街はもうすぐそば。セーヌ河沿いに進みながら、リーダーチームのアスタナが一列棒状に隊列を組み、シャンゼリゼ通りに入っていく。
この日のレースが始まるのはこのシャンゼリゼ通りに入ってから。凱旋門へ向かってゆるやかに登り、ヘアピンカーブを抜けたところでレース開始。口火を切ったのはグレゴリー・ラスト(スイス、レディオシャック)のアタックだ。
しかし逃げたい選手がたくさんの最終ステージ。逃げグループが形成されたのは残り42kmで、11人の選手が抜け出しに成功した。ここには今ツールでステージ優勝を挙げたサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)、クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)の姿も。
この逃げグループに入ったダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)はペタッキのマイヨヴェールのために中間スプリントポイントを潰すための動き。2度のスプリントポイントを逃げグループが獲得したため、マイヨヴェール争いは純粋にゴール勝負の結果に委ねられた。
メイン集団はカヴェンディッシュの区間5勝目を狙うチームHTCコロンビアがコントロールし、残り27km地点でその差は24秒。チームスカイ、カチューシャも協調してメイン集団を牽引する。
残り9kmで逃げグループからクリスチャン・クネース(ドイツ、ミルラム)がアタック。これを追えたのはニキ・ソレンセン(デンマーク、サクソバンク)、カルステン・クローン(オランダ、BMC)だけ。3人で逃げを続けるが、やはり分が悪く残り6kmで大集団に吸収されてしまう。
残り5kmを切って集団の先頭では激しいポジション取りが展開。新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)もうまくポジションを挙げ、集団の前方で最終局面を待つ。残り3kmでカルロス・バレード(スペイン、クイックステップ)がアタックするがすぐに潰され、残り1km。
ゴールまでのストレートに至る最終コーナー、昨年はマーク・レンショー(オーストラリア、チームHTCコロンビア)がカヴェンディッシュと2人で飛び出したこのコーナーを先頭で通過したのはブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロ・テストチーム)に導かれたフースホフト。
しかしその後ろからスプリントをかけたのはマイヨヴェールのペタッキ。フースホフトを置き去りにしたその瞬間、逆サイドからさらに爆発的な加速でカヴェンディッシュが飛び出す。カヴの勢いには誰も追随できず、昨年に続くシャンゼリゼでのスプリントを制した。
早めに仕掛けたペタッキはカヴにこそ及ばなかったものの、マイヨヴェールを決定づける粘り強いスプリントで2位に入った。最終的にフースホフトはポイント賞でカヴに逆転を許し3位でこのツールを終えた。
集団内で無事にゴールラインを切ったマイヨジョーヌのコンタドールは3勝目をアピールしながらのゴール。この4年で3度目の総合優勝に輝いた。新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は最後まで好位置につけ、区間16位で最終ステージを終えて2度目のツール完走を成し遂げた。今後の活躍にも期待したい。
新人賞は総合2位のアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、山岳賞はアントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)、総合敢闘賞には2度のステージ優勝とマイヨジョーヌ着用のシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、チーム総合成績はレディオシャックがそれぞれ輝いた。
ツール・ド・フランス2010第20ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)2h42'21"
2位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)
3位 ジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン・トランジションズ)
4位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
5位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
6位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、チームコロンビア)
7位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)
8位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)
9位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
10位 ダニエル・オス(イタリア、リクイガス・ドイモ)
16位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) 91h58'48"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) +39"
3位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +2'01"
4位 サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +3'40"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+6'54"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +9'31"
7位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ) +10'15"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +11'37"
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス・ドイモ) +11'54"
10位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +12'02"
112位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +3h13'20"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ) 243pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)232pts
3位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム) 222pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム) 143pts
2位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ) 128pts
3位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 116pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 91h59'27"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +8'52"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +11'15"
チーム総合成績
1位 レディオシャック 276h02'03"
2位 ケースデパーニュ +9'15"
3位 ラボバンク +27'49"
スーパー敢闘賞
シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)
text:Yufta Omata
photo:Makoto Ayano,Cor Vos
フォトギャラリー
Amazon.co.jp
ツール・ド・フランス2009 スペシャルBOX [DVD]
ジェイ・スポーツ