2025/01/29(水) - 18:32
元日本選手権王者である佐野淳哉の引退を受け、かつてのライバル西薗良太が主宰するポッドキャスト『Side by Side Radio』で公開収録が実施された。満員の会場で20年に及ぶキャリアを振り返り、優勝した2014年全日本や海外挑戦の秘話も。会場の様子をレポートする。
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満員御礼の20名が公開収録を見届けた
2024年6月5日、佐野淳哉がSNSで引退を表明した。既に開幕していたレースシーズンのプロトンの中に佐野の姿は無かったため、その去就が注目されていた。そして全日本選手権が目前に迫ったタイミングで、佐野は言葉を紡いだ。
「事実上引退していたのですが、心の中でそれを受け入れたくなかった自分がいました。時間はかかりましたが、ようやく皆様に報告できる気持ちになれました」という言葉には、次のステージへ向かう決意と、支えてくれたファンへの感謝が込められていた。
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日本代表ジャージも掲げられた 
全日本選手権を制したエピソードをまとめたエスケープは必読
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寄せられた写真のパネルをくまなくチェックする 
佐野の愛車にはエンヴィやローター、フィドロックなどが装備されていた
2014年に全日本選手権ロードレースを制した、レジェンド選手である佐野。数々の実績を残してきた彼の新たな門出を祝おうと、全日本選手権タイムトライアルでライバルとして激しい戦いを繰り広げた西薗良太が立ち上がった。
1月24日、西薗が主宰を務めるポッドキャスト番組「side by side radio(サイドバイサイド・レディオ、以下sxsradio)」で公開収録が行われたのだ。長年佐野をサポートしてきたダイアテックが運営するCOG TOKYOには20人のファンが集結。二人の軽快なトークにより、会場は終始和やかな雰囲気に包まれた。
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二人の掛け合いで会場も笑いで包まれる場面も
満員御礼の会場で西薗と佐野はスタンディングで収録を開始。リスナーたちがメインパーソナリティとゲストである佐野の表情とともに、話を聞けるのは公開収録ならでは。普段は耳だけで聴いていたsxsradioを目でも楽しめる至福の時間となった。
収録内容はポッドキャストを聴いてもらいたいが、二人のトークは終始軽妙で笑いが絶えなかった。会場のリスナーたちの笑い声が響きながら会話が進んでいく様子は、二人が立ったままということもあり、まるで漫才を見ているかのよう。
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常に笑いが絶えない収録が続いた
そして場が温まってきたところで、ニッポ時代を共に走った中根英登が急遽駆けつけ、花束を手渡した。こうしてかつての仲間たちが集まってくれるのも、佐野の人柄があってのことだろう。
西薗が今回のイベントを企画した理由は、佐野への想いだったという。「(ピークを過ぎるとサッと引退する選手もいる中)淳哉さんはピークからジリジリと後退していく選手人生でした。それでも彼の偉業は消えるわけでもない。だから引退に際して何かをやりたいなと考えていました」。
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急遽公開収録に現れた中根英登
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花束をプレゼントしてくれた中根英登と一緒に
過去sxsradioにゲスト出演した初山翔や中根英登、畑中勇介が現役を退く際、盛大な引退パーティが行われていたことも西薗の頭にはあったという。「ロードレースはチームスポーツではあるものの、チーム全体で選手の引退を祝う機会は少ないから」と。「淳哉さんのおかげでsxsradioのリスナーが増えたこともあり、何か恩返しをできればなと思い、今回の公開収録を企画させていただきました」。
西薗が表現する佐野の「ジリジリと後退していく生き方」に対し、佐野は「しつこいんだよね。レースを見ていても、そう思うでしょ?」と返す。その粘り強さや、ここ一番で発揮される集中力こそが佐野の選手としての生き方であり、キャリアの通奏低音として流れ続けていたことが、語られたエピソードの節々で感じさせられる。
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side by side radioを主宰する西薗良太
収録では同じプロトンで鎬を削りあった二人の、思い出深いレースが公開収録ではフィーチャーされた。一つは二人が邂逅した2009年の大町美麻ロード。当時、学生だった西薗への印象を佐野は刻銘に覚えており、西薗はその時のレース結果を「誇らしい成績」だったと振り返る。
他にも西薗は佐野の活躍したエピソードを写真と共に披露。なかでも海外挑戦中の話はこれまで明かされていないため、トロフェオ・マテオッティやコッパ・チッタ・ディ・ストレーザーなどUCI1.1クラスで好成績を収めた時の話に、リスナーは真剣な眼差しで耳を傾けていた。そして最後には門外不出の画像や動画が公開されてしまう事態も…。
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UCIレース初優勝となったツール・ド・熊野2010 第2ステージ photo:Hideaki.TAKAGI 
2011年のツール・ド・北海道 第3ステージにて。西薗がステージ優勝の佐野を祝福する photo:Hideaki.TAKAGI
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2014年、全日本選手権を制した佐野淳哉 (c)Makoto.AYANO 
ツール・ド・おきなわ2017、男子チャンピオンレースを制した佐野淳哉 photo:Satoru Kato
度々脇道に逸れながらも、海外チャレンジ後の2014年全日本選手権、そして西薗の引退レースかつ佐野が優勝した2017年ツール・ド・おきなわの話もたっぶりと披露された。そして、いま佐野はヘッドコーチとしてデフジャパンに携わり、東京2025デフリンピックに向けて準備しているという。
話題が盛りだくさんな約1時間半の公開収録はあっという間に終わり、宴がたけなわとなった後もリスナーと記念撮影の時間が設けられた。
独特なファッションセンスやグッズ選び、SNSでの親しみやすいキャラクター、ファンへの気さくな接し方で、多くの人々を魅了してきた佐野の魅力が、存分に発揮されたイベントとなったのは間違いない。最後は会場に来たリスナーへはもちろん、ポッドキャストの視聴者に対して佐野からメッセージが送られたので、ぜひ聴いてみてほしい。
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リスナーの皆さんと最後に記念撮影
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エスケープにサインを入れてもらうリスナーも 
優しい笑顔で接してくれる佐野さんにはファンがたくさん
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マイスマホで記念撮影 
収録後も佐野はリスナーとのひと時を楽しんだ
2005年から20年余り、プロ選手として活動した佐野淳哉。「これからも自転車に携わっていきたい」という本人の強い願いがあるため、きっとまたどこかで佐野淳哉に出会うことができるだろう。
今回、公開収録したエピソードは既に公開済み。Apple純正のポッドキャストアプリやSpotifyなどで「Side by Side Radio」と検索するか、こちらのリンクから聴くことができる。
公開収録のエピソード
おわりに
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リスナーの皆さんが協力してくれた寄せ書きが手渡された
今回の公開収録が行われたのは東京・芝公園にあるダイアテックのCOG TOKYO。「公開収録を行う場所を探すのはとても大変だったのですが、ダイアテックさんにご協力していただき感謝しています」と西薗。準備は根本製作所のマツドさんがサポートした。sxsradioでは今後もイベント開催に前向きであると話しており、今後の展開に期待したい。
「音声メディアだから伝えられるものもあると、個人的に感じています。書き物でも伝えられないような細かな部分、中学・高校での部活動や競技としての体験とは違う自転車の魅力を少しでも感じていただければ嬉しいです。また、これをきっかけにロードレースやサイクリングスポーツを身近に感じていただける人がいれば有り難いです」と西薗はいう。
過去にも佐野淳哉さんが登場した回もあるため、Side by Side Radioを聴いてみてはいかがだろうか。
Appleポッドキャスト→こちら
Spotify→こちら
Side by Side Radio WEBサイト→こちら
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COG TOKYOで開催された
Report:Gakuto Fujiwara
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2024年6月5日、佐野淳哉がSNSで引退を表明した。既に開幕していたレースシーズンのプロトンの中に佐野の姿は無かったため、その去就が注目されていた。そして全日本選手権が目前に迫ったタイミングで、佐野は言葉を紡いだ。
「事実上引退していたのですが、心の中でそれを受け入れたくなかった自分がいました。時間はかかりましたが、ようやく皆様に報告できる気持ちになれました」という言葉には、次のステージへ向かう決意と、支えてくれたファンへの感謝が込められていた。
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1月24日、西薗が主宰を務めるポッドキャスト番組「side by side radio(サイドバイサイド・レディオ、以下sxsradio)」で公開収録が行われたのだ。長年佐野をサポートしてきたダイアテックが運営するCOG TOKYOには20人のファンが集結。二人の軽快なトークにより、会場は終始和やかな雰囲気に包まれた。
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満員御礼の会場で西薗と佐野はスタンディングで収録を開始。リスナーたちがメインパーソナリティとゲストである佐野の表情とともに、話を聞けるのは公開収録ならでは。普段は耳だけで聴いていたsxsradioを目でも楽しめる至福の時間となった。
収録内容はポッドキャストを聴いてもらいたいが、二人のトークは終始軽妙で笑いが絶えなかった。会場のリスナーたちの笑い声が響きながら会話が進んでいく様子は、二人が立ったままということもあり、まるで漫才を見ているかのよう。
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西薗が今回のイベントを企画した理由は、佐野への想いだったという。「(ピークを過ぎるとサッと引退する選手もいる中)淳哉さんはピークからジリジリと後退していく選手人生でした。それでも彼の偉業は消えるわけでもない。だから引退に際して何かをやりたいなと考えていました」。
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西薗が表現する佐野の「ジリジリと後退していく生き方」に対し、佐野は「しつこいんだよね。レースを見ていても、そう思うでしょ?」と返す。その粘り強さや、ここ一番で発揮される集中力こそが佐野の選手としての生き方であり、キャリアの通奏低音として流れ続けていたことが、語られたエピソードの節々で感じさせられる。
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他にも西薗は佐野の活躍したエピソードを写真と共に披露。なかでも海外挑戦中の話はこれまで明かされていないため、トロフェオ・マテオッティやコッパ・チッタ・ディ・ストレーザーなどUCI1.1クラスで好成績を収めた時の話に、リスナーは真剣な眼差しで耳を傾けていた。そして最後には門外不出の画像や動画が公開されてしまう事態も…。
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話題が盛りだくさんな約1時間半の公開収録はあっという間に終わり、宴がたけなわとなった後もリスナーと記念撮影の時間が設けられた。
独特なファッションセンスやグッズ選び、SNSでの親しみやすいキャラクター、ファンへの気さくな接し方で、多くの人々を魅了してきた佐野の魅力が、存分に発揮されたイベントとなったのは間違いない。最後は会場に来たリスナーへはもちろん、ポッドキャストの視聴者に対して佐野からメッセージが送られたので、ぜひ聴いてみてほしい。
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今回、公開収録したエピソードは既に公開済み。Apple純正のポッドキャストアプリやSpotifyなどで「Side by Side Radio」と検索するか、こちらのリンクから聴くことができる。
公開収録のエピソード
おわりに
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「音声メディアだから伝えられるものもあると、個人的に感じています。書き物でも伝えられないような細かな部分、中学・高校での部活動や競技としての体験とは違う自転車の魅力を少しでも感じていただければ嬉しいです。また、これをきっかけにロードレースやサイクリングスポーツを身近に感じていただける人がいれば有り難いです」と西薗はいう。
過去にも佐野淳哉さんが登場した回もあるため、Side by Side Radioを聴いてみてはいかがだろうか。
Appleポッドキャスト→こちら
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Side by Side Radio WEBサイト→こちら
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Report:Gakuto Fujiwara
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