国内レースの1年を振り返る「2024年プレイバック 国内レース」。前編は、2020年以来4年ぶりに統一された国内ロードレースシリーズ「Jプロツアー」全15戦を振り返ります。
Jプロツアー再スタートの2024年
2021年のジャパンサイクルリーグ(JCL)の発足によりふたつに分かれた国内ロードレースシリーズは、2024年再び統一されることになった。Jプロツアーを主催するJBCF(一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟)は、JCLに参戦していた6チームを含む計22チームを2024年のJプロツアー登録チームとして発表。一方のJCLは2024年の参戦チームとレースカレンダーを発表せず、Jプロツアーが国内唯一のロードレースのシリーズ戦となった。
2月 鹿児島で開幕2連戦

昨年に続き鹿児島県で開幕した2024年のJプロツアー photo:Satoru Kato
2月25日に開幕した2024年のJプロツアー。第1戦鹿屋・肝付ロードレースは、10名ほどの先行集団が最終周回に吸収され、登りスプリント勝負を岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が制して優勝。昨年に続く開幕戦勝利で大会2連覇を達成した。翌日の第2戦志布志クリテリウムは、終盤に単独先行した寺田吉騎(シマノレーシング)が逃げ切ってJプロツアー初勝利。U23ランキング首位の証「ネクストリーダージャージ」を獲得した。

大会2連覇をアピールしてフィニッシュする岡本隼(愛三工業レーシングチーム) photo:Satoru Kato

寺田吉騎(シマノレーシングチーム)が優勝 photo:Satoru Kato
3月 那須ブラーゼン消滅、栃木県で復活の2連戦
鹿児島での開幕の翌日、さいたま那須サンブレイブは、「那須ブラーゼン」との提携を解消し、「さいたま佐渡サンブレイブ」となることを発表。3月初旬には栃木県内のメディアを中心に那須ブラーゼンの運営会社が事業停止したことが報じられた。近年増え続けてきた地域密着型チームだが、那須ブラーゼンの消滅はロードレースチーム運営の難しさを露呈させた。
(参照:新生ブラーゼン発足 新たな地域密着型チームを目指して、ユニフォームスポンサーを獲得して再スタートしたサンブレイブ)

ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)が優勝 photo:Satoru Kato
第3戦は「真岡芳賀ロードレース」。2021年にJCL開幕戦として行われたレースがJプロツアーとして開催されたことは何とも皮肉な話だ。3月末にも関わらず雪がちらつく寒さの中でのレースは、終盤に抜け出した4名での勝負となり、最後は地元の石原悠希(シマノレーシング)とのスプリントを制したホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)が、2シーズンぶりの優勝を決めた。

宇都宮ライトレールと並走しながらパレード photo:Satoru Kato

岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が優勝 photo:Satoru Kato
翌日の第4戦「宇都宮クリテリウム」は、開業したばかりの宇都宮ライトレールとの併走パレードののちレーススタート。集団でのスプリント勝負に持ち込まれ、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が開幕戦以来の勝利を挙げた。
4月 東西の高ステータスレース連戦

コースの一部は木が伐採されて違う風景になった群馬CSC photo:Satoru Kato

東日本ロードクラシックDAY1を制した金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム) photo:Satoru Kato

東日本ロードクラシックDAY2、フィニッシュライン前に余裕のガッツポーズを見せる橋本英也(チームブリヂストンサイクリング) photo:Satoru Kato
4月のJプロツアーはポイント配分の高い東西のレースが続いた。
4月20日、群馬サイクルスポーツセンターで開催された第5戦「東日本ロードクラシックDAY1」は、今シーズン最初の150kmを走るレース。終盤に独走に持ち込んだ金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)が優勝する大金星を挙げた。翌日の第6戦は、60kmの短距離レース。パリ五輪を控えた橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)が、海外遠征直後にも関わらず優勝した。

西日本ロードクラシックDAY1、兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が優勝 photo:Satoru Kato

西日本ロードクラシックDAY2、チームブリヂストンサイクリングが3位までを独占 photo:Satoru Kato
東日本ロードクラシックの翌週は、兵庫県の播磨中央公園での「西日本ロードクラシック」。初日の第7戦は、ロードレースとしては最短距離となる50kmのレースを兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が制して優勝。翌日の第8戦は3倍近い144kmのレースを松田祥位が制し、橋本英也、今村駿介が続いて3位までを独占。チームブリヂストンサイクリングが3連勝を決めた。
5月 おんたけで金子宗平がシリーズリーダーに

おんたけTT 2位以下に1分近い差をつけて優勝した金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム) 38分52秒 ©️JBCF

金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)がプロリーダージャージを獲得 ©️JBCF
5月、長野県王滝村でJプロツアーが初めて開催された。第9戦「おんたけタイムトライアル」は、御嶽湖の湖畔を走る個人タイムトライアル。優勝した金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)は2位に約1分差をつけて圧倒し、ランキング首位の証であるプロリーダージャージを獲得。さらに金子は翌日の第10戦「おんたけヒルクライム」も優勝して今シーズン3勝目を挙げた。
7月 猛暑の中で広島2連戦

朝から晴れて猛暑の中でのレースとなった佐木島ロードレース photo:Satoru Kato

佐木島ロードレースは中井唯晶(シマノレーシング)が優勝 photo:Satoru Kato

広島クリテリウム、レオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島)がホームレースを制した photo:Satoru Kato
7月は広島県内での連戦。第11戦佐木島ロードレースは、瀬戸内海に浮かぶ佐木島でのレース。40℃に迫る猛暑の中でのレースは、2023年Jプロツアーチャンピオンの中井唯晶が優勝。石原悠希が2位となり、シマノレーシングが1-2フィニッシュを決めた。続く第12戦広島クリテリウムは、Jプロツアーとしては5年ぶりの開催。レース中盤に先行した集団が逃げ切り、レオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島)がスプリントを制し、チームの地元に勝利を献上した。
9月 初開催の新城、南魚沼での輪翔旗

初開催の新城ロードレース、コース沿いにある「車神社」の鳥居前を通過していく集団 photo:Satoru Kato

新城ロードレース、沢田時(宇都宮ブリッツェン)がロードレース初勝利 photo:Satoru Kato
9月、アジア大会のロードレース開催が決まった愛知県の新城市で、第13戦「新城ロードレース」が開催された。Jプロツアー最長の1周16kmのコースを10周する160kmのレースは、中盤に先行した集団が逃げ切り、スプリント勝負を沢田時(宇都宮ブリッツェン)制した。これが沢田にとって初のロードレース優勝となった。

南魚沼クリテリウム、激しい雨の中、集団は水しぶきを上げて流れていく photo:Satoru Kato

南魚沼クリテリウム、松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)が優勝 photo:Satoru Kato
9月下旬は新潟県南魚沼市での2連戦。第14戦「南魚沼クリテリウム」は、秋雨前線の影響による大雨の中でのレースを、松田祥位が制して今シーズン2勝目。山本哲央が続き、チームブリヂストンサイクリングの1-2フィニッシュとなった。

経済産業大臣旗ロードレースは三国川(さぐりがわ)ダムのしゃくなげ湖の周囲を回るコース photo:Satoru Kato

経済産業大臣旗ロードレース、最終周回独走するベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島) photo:Satoru Kato
翌日の第15戦は、Jプロツアーの中で最もステータスの高い「経済産業大臣旗ロードレース」。144kmのレースは終盤に先行した6名の中からベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)が抜け出して優勝。UCIレースでの優勝経験を持つダイボールだが、これがJプロツアー初勝利となった。団体戦優勝はマトリックスパワータグが前年に続き連覇し、輪翔旗を獲得した。
最終戦の石川ロード中止で2024年シーズン終了
10月末に福島県石川町で予定されていた最終戦は中止となり、2024年のJプロツアーは全15戦で終えることになった。個人ランキング首位は金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)。2011年にJプロツアーとなって以降、初のクラブチーム所属選手の年間総合優勝となった。U23ランキングトップは寺田吉騎(シマノレーシング)、チームランキングはシマノレーシングが前年に続き首位となった。

Jプロツアー2024 年間総合優勝の金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム、写真右)と、寺田吉騎(シマノレーシング) photo:Satoru Kato

Jプロツアーチームランキング連覇を達成したシマノレーシング photo:Satoru Kato
2025年のJプロツアーは2月22日に鹿児島県で開幕。21チームが参戦する。
text:Satoru Kato
Jプロツアー再スタートの2024年
2021年のジャパンサイクルリーグ(JCL)の発足によりふたつに分かれた国内ロードレースシリーズは、2024年再び統一されることになった。Jプロツアーを主催するJBCF(一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟)は、JCLに参戦していた6チームを含む計22チームを2024年のJプロツアー登録チームとして発表。一方のJCLは2024年の参戦チームとレースカレンダーを発表せず、Jプロツアーが国内唯一のロードレースのシリーズ戦となった。
2月 鹿児島で開幕2連戦

2月25日に開幕した2024年のJプロツアー。第1戦鹿屋・肝付ロードレースは、10名ほどの先行集団が最終周回に吸収され、登りスプリント勝負を岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が制して優勝。昨年に続く開幕戦勝利で大会2連覇を達成した。翌日の第2戦志布志クリテリウムは、終盤に単独先行した寺田吉騎(シマノレーシング)が逃げ切ってJプロツアー初勝利。U23ランキング首位の証「ネクストリーダージャージ」を獲得した。


3月 那須ブラーゼン消滅、栃木県で復活の2連戦
鹿児島での開幕の翌日、さいたま那須サンブレイブは、「那須ブラーゼン」との提携を解消し、「さいたま佐渡サンブレイブ」となることを発表。3月初旬には栃木県内のメディアを中心に那須ブラーゼンの運営会社が事業停止したことが報じられた。近年増え続けてきた地域密着型チームだが、那須ブラーゼンの消滅はロードレースチーム運営の難しさを露呈させた。
(参照:新生ブラーゼン発足 新たな地域密着型チームを目指して、ユニフォームスポンサーを獲得して再スタートしたサンブレイブ)

第3戦は「真岡芳賀ロードレース」。2021年にJCL開幕戦として行われたレースがJプロツアーとして開催されたことは何とも皮肉な話だ。3月末にも関わらず雪がちらつく寒さの中でのレースは、終盤に抜け出した4名での勝負となり、最後は地元の石原悠希(シマノレーシング)とのスプリントを制したホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)が、2シーズンぶりの優勝を決めた。


翌日の第4戦「宇都宮クリテリウム」は、開業したばかりの宇都宮ライトレールとの併走パレードののちレーススタート。集団でのスプリント勝負に持ち込まれ、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が開幕戦以来の勝利を挙げた。
4月 東西の高ステータスレース連戦



4月のJプロツアーはポイント配分の高い東西のレースが続いた。
4月20日、群馬サイクルスポーツセンターで開催された第5戦「東日本ロードクラシックDAY1」は、今シーズン最初の150kmを走るレース。終盤に独走に持ち込んだ金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)が優勝する大金星を挙げた。翌日の第6戦は、60kmの短距離レース。パリ五輪を控えた橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)が、海外遠征直後にも関わらず優勝した。


東日本ロードクラシックの翌週は、兵庫県の播磨中央公園での「西日本ロードクラシック」。初日の第7戦は、ロードレースとしては最短距離となる50kmのレースを兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が制して優勝。翌日の第8戦は3倍近い144kmのレースを松田祥位が制し、橋本英也、今村駿介が続いて3位までを独占。チームブリヂストンサイクリングが3連勝を決めた。
5月 おんたけで金子宗平がシリーズリーダーに


5月、長野県王滝村でJプロツアーが初めて開催された。第9戦「おんたけタイムトライアル」は、御嶽湖の湖畔を走る個人タイムトライアル。優勝した金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)は2位に約1分差をつけて圧倒し、ランキング首位の証であるプロリーダージャージを獲得。さらに金子は翌日の第10戦「おんたけヒルクライム」も優勝して今シーズン3勝目を挙げた。
7月 猛暑の中で広島2連戦



7月は広島県内での連戦。第11戦佐木島ロードレースは、瀬戸内海に浮かぶ佐木島でのレース。40℃に迫る猛暑の中でのレースは、2023年Jプロツアーチャンピオンの中井唯晶が優勝。石原悠希が2位となり、シマノレーシングが1-2フィニッシュを決めた。続く第12戦広島クリテリウムは、Jプロツアーとしては5年ぶりの開催。レース中盤に先行した集団が逃げ切り、レオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島)がスプリントを制し、チームの地元に勝利を献上した。
9月 初開催の新城、南魚沼での輪翔旗


9月、アジア大会のロードレース開催が決まった愛知県の新城市で、第13戦「新城ロードレース」が開催された。Jプロツアー最長の1周16kmのコースを10周する160kmのレースは、中盤に先行した集団が逃げ切り、スプリント勝負を沢田時(宇都宮ブリッツェン)制した。これが沢田にとって初のロードレース優勝となった。


9月下旬は新潟県南魚沼市での2連戦。第14戦「南魚沼クリテリウム」は、秋雨前線の影響による大雨の中でのレースを、松田祥位が制して今シーズン2勝目。山本哲央が続き、チームブリヂストンサイクリングの1-2フィニッシュとなった。


翌日の第15戦は、Jプロツアーの中で最もステータスの高い「経済産業大臣旗ロードレース」。144kmのレースは終盤に先行した6名の中からベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)が抜け出して優勝。UCIレースでの優勝経験を持つダイボールだが、これがJプロツアー初勝利となった。団体戦優勝はマトリックスパワータグが前年に続き連覇し、輪翔旗を獲得した。
最終戦の石川ロード中止で2024年シーズン終了
10月末に福島県石川町で予定されていた最終戦は中止となり、2024年のJプロツアーは全15戦で終えることになった。個人ランキング首位は金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)。2011年にJプロツアーとなって以降、初のクラブチーム所属選手の年間総合優勝となった。U23ランキングトップは寺田吉騎(シマノレーシング)、チームランキングはシマノレーシングが前年に続き首位となった。


2025年のJプロツアーは2月22日に鹿児島県で開幕。21チームが参戦する。
text:Satoru Kato
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