グラベルの人気高まるアメリカで生まれたアドベンチャー系バイク2台を紹介する。マウンテンバイクの始祖ジョー・ブリーズが興したブランド BREEZER(ブリーザー)のINVERSIONとRADARは、オン&オフの冒険ツーリングに連れ出してくれる充実のスペックとユーティリティを誇る。



ブリーザー INVERSION X EXPERT photo:Makoto AYANO

1970年代のアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコの20km北方に位置するタマルパイス山で、ビーチクルーザーを改造した自転車で山を駆け降りる遊びから生まれたのがマウンテンバイクだ。

MTBの原型となった自作のバイクとジョー・ブリーズ氏

タマルパイス山を自作バイクで下るジョー・ブリーズ
その中心人物のひとりに、機械加工の技術と設備をもつ青年がいた。元々ロードレーサーでもあり、フレームビルダーでもあった彼の名はジョー・ブリーズ。トム・リッチー、そしてゲイリー・フィッシャーとともに「マウンテンバイクの生みの親」と称されるパイオニアだ。

そこで流行った「REPACK(リパック)」というレースに、自ら製作した自転車で出場し優勝を飾ったブリーズ。彼のもとには自転車製作の依頼が絶えず、後にBreezer(ブリーザー)と名付けられたバイクが今のマウンテンバイクの原型となった。あれから47年の時を経て、ブリーザーは今もオフロードをルーツにもつスポーツバイクとして次なるステージを歩み続けている。

MTBレジェンドでありながらもそれを誇示することなく、コミューターを中心に気軽に乗れるバイクを製品展開してきたブリーザー。「素晴らしい移動手段としての、永く使える丈夫な自転車」という価値観がジョー・ブリーズの哲学と言えそうだ。

ジョー・ブリーズ氏と日本でもヒットした初期のBREEZERのマウンテンバイク

今回ここで紹介するブリーザーの2台のバイクは、現在のアメリカでもっとも勢いのあるグラベルカテゴリーの、本来のアクティヴィティとしてのグラベルライドをターゲットとするバイク。タイムを争うレースではなく、自然の中をゆったりと、ときにチャレンジングに走り、そしてある時にはキャンプグッズやバッグ類を装着し、ライドとともに旅やトレッキング、フィッシングなどを楽しむユーティリティ性を備えたマルチパーパスバイクだ。

INVERSION
ロングツーリングも可能にするオン&オフ=Whole Road(ホールロード)バイク


ブリーザー INVERSION X EXPERT photo:Makoto AYANO

Inversion(インヴァージョン)は、ブリーザーが誇るオールロードバイクのフラッグシップ。軽量・強靭なダブルバテッド・クロモリスチール製チュービングによるフレーム&フォークは、フロント100x12mm/リヤ142x12mmスルーアクスルによる剛性の高い足回りをもつ。また最新のジオメトリーを採用することで、操作性とともに直進安定性と巡航性を追求している。

シンプルにBをかたどったヘッドマーク
シルバーの胴抜き塗装のBREEZERロゴ



標準仕様の700x40Cタイヤの組み合わせはグラベルライドに最適。クリアランスは42Cタイヤにまで対応し、 走破性を高めることができる。ダウンチューブ、シートチューブ、フォークに加えてトップチューブにもダボ(アイレット)が備わり、キャリアやマッドガード、ライトなどの直付けに対応し、拡張性も十分。

キャリアの取り付けに向くダボと太タイヤを飲み込むステー形状
トップチューブバッグ装着が可能なマウント台座



スルーアクスルにより剛性を確保。かつエンドにはダボを備える
フォーク中間のダボはバッグやボトルケージを増設しやすい



Inversion Xを一見すればオフロード走破性や積載性の高さが目を引くが、オンロードでの走行性能にも注目だ。1mを超えるロングホイールベースと低いBB下がりは、低重心化と相まって直進安定性と高速巡航性を両立。フレームチューブには非調質鋼を採用することで振動吸収性を高め、ロングライド時に路面からの微振動によるストレスを軽減する。まさに遠くまで移動する旅の相棒として心強い味方だ。

ステー内側に控えめにジョー・ブリーズのサインが入る
グラベルタイヤの定番モデルWTB RIDDLERをスペックイン



完成車ラインアップはシマノGRX 2x11速コンポーネントを搭載したInversion X Expertと、同じくGRX 2x10速コンポーネントを搭載したInversion X Compの2モデルを展開する。

INVERSION X EXPERT
価格:¥297,000(税込み)
サイズ:49cm, 52cm, 54cm
カラー:Pearl Black
コンポーネント:シマノGRX810,GRX600,GRX400ミックス
ギア比:46-30T✕11-34T
ホイール:WTB STi23 TCS disc, 700c 32H
タイヤ:WTB Raddler TCS tubeless ready 700x40
製品詳細
https://www.breezerbikes.jp/2024/product/inversion.html#product_list1



RADAR
アドベンチャーライドに適した新世代モンスターグラベル


ブリーザー RADAR X PRO photo:Akibo

Radar(レイダー)は、未舗装道も含めて旅することに適したアドベンチャーバイクだ。ダブルバテッドのクロモリチューブで構成されるフレームとフォークに、マッドガード/ラックマウントのほか5つのボトルケージ台座を装備。 街乗りはもちろん本格的なバイクパッキングまで、広いシチュエーションをカバーする一台だ。

フレームには無数のダボを備え、マッドガード、キャリア、トレーラー等を取り付けられる photo:Akibo

Radarシリーズの「深化型」と言えるフラッグシップのRadar Xは、マウンテンバイクスタンダードのブースト規格(フロント:110✕15mm、リア:148✕12mm)スルーアクスルを採用し、タイヤサイズは29 x 2.25を標準装備。最大700x58Cまで許容するという新世代の「モンスターグラベル」だ。

マウンテンバイクスタンダードの前後ブースト規格(リア:148✕12mm)スルーアクスルを採用
WTB Nineline TCS, 29 x 2.25タイヤ



荷物を積んで走るバイクパッキングやキャンピングのバイクとして考えると、Radarシリーズはダウンチューブ、トップチューブ、シートステイ、フォークにダボを備え、ラックやケージの取り付けが可能。BB下がりが75mmと低いため低重心で直進安定性が高い。クリアランスも充分にあり、荷物を積載した際の走行安定性が高いのもポイントだ。

オフロードを走るバイクとして考えると、最新のグラベルバイクで流行の超ロングリーチ&ショートステムの組み合わせとなるフォワードジオメトリーを採用し、安定性を高めつつもダウンヒルやトレイルでも高い操縦性が期待できる。なお内装ドロッパーシートポストの取付も可能だ。

トップチューブのヘッド周辺には補強ガセットが溶接される
700x53Cのオフロードタイヤが装着できるクリアランスを確保



ここで紹介するラインアップ最上位のRadar X Proは、シマノGRXコンポーネントと油圧ディスクブレーキを採用することでアドベンチャーバイクとしてのキャラクターを強めている。

セカンドグレードのRadar Xはスラムコンポ仕様となり、ケーブル引き機械式ディスクブレーキを採用。エントリーグレードのRadar Expert/Cafeは前後クイックレリーズ仕様を採用する。なおExpertグレードではフロント46x30Tのダブルチェーンリングとワイドスプロケットの組み合わせにより、急勾配や荷物を積んだ状態であっても十分なギヤ選択が可能になっている。

RADAR X PRO
価格:¥275,000(税込み)
サイズ:45cm, 48cm, 51cm
カラー:Raw Silver
コンポーネント:シマノGRX 812,GRX600,Deoreミックス
ギア比:38T✕11-42T
ホイール:WTB ST i23 TCS disc, tubeless compatible, Formula sealed bearing hubs, 14g SS spokes, 32H
タイヤ:WTB Nineline TCS, 29 x 2.25, TCS Tubeless Ready
製品詳細
https://www.breezerbikes.jp/2024/product/radar.html#product_list2



インプレッション
「そのままでも、カスタマイズしても」 拡張性が魅力の2台はこう選ぶ


アメリカ発祥のグラベルの世界的な流行と、コロナ禍以降の生活スタイルの変化でグラベル系バイクの需要が伸びている。ここで紹介するブリーザーのグラベル系バイク2モデルは、いずれもレクレーションとしてのグラベルライド、ツーリング、バイクパッキング、通勤ライドにと、個人の用途や好みに応じてカスタマイズしながらライススタイルに取り入れやすいバイクだ。

極太タイヤに対応する独特の曲げカーブを描くシートステイ photo:Makoto AYANO

INVERSIONはそのままでグラベルライド入門に適したバイクだが、バッグ類やキャリア、ケージ類の取り付けがしやすく、タイヤの交換程度でそのままオンロードメインで走るツーリングバイクにも仕立てられる、いわば現代風スポルティーフ(旅行車)でもある。

FDはバンド固定式。つまりFシングルにも変換しやすい
ケーブル外装、かつフルアウターによりメンテナンスフリーだ



ダウンチューブ下部にもボトルケージ台座を備える
ディスクブレーキホースのガイド小物も溶接で備わる



ケーブル類はフレーム外装で、かつフルアウターであるためオフロードにも強く、トラブルフリーかつメンテナンスがしやすい。シマノGRXのミックスコンポはスペアパーツや消耗品の入手性も良く、整備性も良いだろう。

ブリーザー RADAR X PRO photo:Akibo

RADARは、一見してINVERSIONと似た車種に見えるが中身は大きく異なるアドベンチャーバイクだ。MTBブースト規格採用により、どちらかといえばMTBに近いオフロード走破性をもつ「モンスターグラベル」と呼べるバイクだ。極太タイヤを装着する前提で、サスペンションフォークへの差し替えも設計の視野にあるだろう。ダボを多く備え拡張性も高いため、キャンピンググッズを積んでのグラベルツーリングで活躍するはず。

流行を取り入れたジオメトリーは特徴的で、極端にトップチューブが長い超ロングリーチフレームにショートステムを組み合わせた設計でオフロードの安定性・走破性を高めている。購入時には、その長いトップチューブゆえにサイズ合わせを慎重に行いたい。

超ワイドの46-50cm幅、12°フレアハンドルをスペック
ロングリーチ&ショートステムの組み合わせ。フレームに無数のダボを備える



RADARは「グラベルバイク以上、マウンテンバイク未満」という性格だ。あくまでドロップハンドル前提の設計のため、完成車状態ではドロップオフやテクニカルなダウンヒル区間の少ないトレイルやジープロードなど、林道系のライドに適していると言える。このまま乗るもよし、あるいは自分好みのカスタマイズでも楽しむことができそうだ。

WTB STi23 TCSリムを採用。チューブレスに即変換できる photo:Makoto AYANO

ホイール周りはいずれもWTB製のTCS=チューブレスコンパチブルシステム(チューブレスレディ)のリムとタイヤを採用しているため、容易にチューブレス化できる。

2モデルとも幅の広いワイドハンドルをスペックしているので、オフロード走行メインならそのままで良し。オンロード走行がメインなら幅の狭いハンドルに交換するなどのカスタマイズを。

2モデルとも頑丈な造りであるがゆえに車体重量が重めであり、軽快とは言い難い面がある。走りを左右する車重を軽くするためには、なるべくキャリアを介さないバイクパッキング式バッグ類を使用するのがスマートな荷物積載方法だろう。またダボが多いぶん固定ボルトも多く装着されているため、使用しないボルトは除去してダボ穴を塞いでおくと軽量化になる。(インプレッション:綾野 真/CW編集部)

キャッシュバックとフレームバッグがもらえる「READY 2 GRAVEL」キャンペーン

なおブリーザーでは現在『READY 2 GRAVEL』 キャンペーンを開催中だ。車体の購入金額から10%キャッシュバックと、人気ブランドのフレームバッグがプレゼントされるキャンペーンは9月8日まで。ここで紹介した2台もキャンペーン対象モデルだ。詳しい内容は下記のリンクまで。

キャンペーン詳細
https://breezerbikes.blogspot.com/2024/07/2ready-2-gravel.html


text&photo:Makoto AYANO