ロンド最後の前哨戦、ドワルス・ドール・フラーンデレンでヴィスマ・リースアバイクが2連覇達成。マッテオ・ヨルゲンソンが独走でアメリカ人初のセミクラシック優勝を飾るなか、ファンアールトは落車し複数箇所の骨折を負った。



初制覇を目指すワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

ベルジャンクラシック最終戦として出場した留目夕陽(EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos
今年2つ目のモニュメント(5大クラシック)であるロンド・ファン・フラーンデレンを4日後に控えた3月27日(水)、セミクラシックのドワルス・ドール・フラーンデレンが開催された。舞台はベルギー北西部フランドル地方のローセラーレからワレヘムまでの188.6kmで、12箇所の急坂に加え8つの石畳区間が見所。フレミッシュ・アルデンヌを駆け巡る本大会には、ロンド前最後の前哨戦のため有力選手が集結した。

E3サクソ・クラシックを制したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がスキップし、また前回覇者クリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)は胃腸系のトラブルとサドル痛で不出場。そのためヴィスマはワウト・ファンアールト(ベルギー)をエースに据え、またヘント〜ウェヴェルヘム覇者のマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)も出場した。

序盤に形成された11名による逃げグループ photo:CorVos

留目夕陽(EFエデュケーション・イージーポスト)がベルジャンクラシック最終戦として出場した第78回大会は、序盤にカスパー・ピーダスン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)ら11名の逃げグループが成立する。一方のメイン集団はスーダルから今年リドルに移籍したティム・デクレルク(ベルギー)が牽引し、逃げのアドバンテージを約2分半の差に抑え込んだ。

そして急坂と石畳区間に突入し、残り距離が80kmを過ぎた辺りでプロトンの速度が一気に上る。風の影響もあり、ヴィスマやイネオス・グレナディアーズによるペースアップはメイン集団を分裂。急坂でイヴ・ランパールト(ベルギー、スーダル・クイックステップ)などが遅れるなか、残り68kmで10名を巻き込む集団落車が発生した。

これにはファンアールトやピーダスン、ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、リドル・トレック)にビニアム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)など強豪選手たちが含まれ、既報の通りファンアールトは鎖骨骨折と数本の肋骨を骨折。そんな混沌の中、プロトンではマグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)の加速をきっかけに7名の追走集団が形成された。

レース序盤のワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)。春のクラシック戦線からの離脱を強いられた photo:CorVos

アルベルト・ベッティオル(イタリア、、EFエデュケーション・イージーポスト)のアタックにより、人数が絞られた先頭集団 photo:CorVos

エースを失ったヴィスマはここにティシュ・ベノート(ベルギー)とマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)を入れ、EFエデュケーション・イージーポストもアルベルト・ベッティオル(イタリア)とミケル・ヴァルグレン(デンマーク)を揃える。この7名は逃げとの差を22秒まで詰める一方で、落車の影響で遅れたジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)やヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)のいるプロトンに45秒差をつけた。

シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)も集団牽引に力を貸したグループ・ベノートは残り38km地点で逃げ集団に合流を果たす。そして一時ペースが落ち着いた集団には、約20kmの単独追走の末にジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がジョイン。一方、1分半の差をつけられたプロトンではマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)やミランがアタックして追走への刺激を入れたものの、実ることはなく勝負は先頭の11名に絞られた。

アタックを成功させ、単独先頭に立ったマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

ノケルベルグ手前の残り22km地点ではベッティオルが仕掛け、それにヨルゲンソンが追従する。そこにキュングやヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)がブリッジを掛け、集団を更に絞ることに成功したベッティオルだったが、左足が痙攣したため停止。思わぬ形で勝負から脱落した。

6名に絞れた先頭ではベノートやキュングのアタックが決め手に欠くなか、残り7km地点でヨルゲンソンが飛び出す。これにキュングやドリース・デボント(ベルギー、デカトロンAG2Rラモンディアル)たちは反応できず、またベノートが追走の協調を巧みに阻害する。そのためヨルゲンソンと後続との差は残り2km地点で28秒差まで拡がり、序盤の逃げから先頭に残るアブラハムセンによる単独追走も届くことはなかった。

チーム2連覇を果たしたマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

ラポルトの不在に加え、ファンアールトの途中棄権という逆境のなかベノートと協力して掴んだ独走勝利。モビスターから移籍直後のパリ〜ニースで総合優勝を飾り、その勢いをドワルス・ドール・フラーンデレンの優勝に繋げた。

「素晴らしい。ここまでのシーズンは描いていた夢をも凌駕する結果になっている。ティシュ(ベノート)のおかげで有利な展開に持ち込むことができ、僕らは完璧な走りができた。ワンデーレースでの初勝利だ。本当に嬉しいよ」と、アメリカ出身の選手として初のセミクラシック制覇をヨルゲンソンはそう喜んだ。

女子ではマリアンヌ・フォス(オランダ)が優勝したため、ヴィスマは男女ドワーズ・ドールを制覇する快挙を果たしている。また2位を争うスプリントはアブラハムセンが先着し、3位にはキュングが入っている。

ドワーズ・ドール・フラーンデレン2024表彰台:2位アブラハムセン、1位ヨルゲンソン、3位キュング photo:CorVos

ドワーズ・ドール・フラーンデレン2024結果
1位 マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) 4:07:44
2位 ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +0:29
3位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)
4位 ティシュ・ベノート(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)
5位 ドリース・デボント(ベルギー、デカトロンAG2Rラモンディアル)
6位 ジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +0:44
7位 ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) +1:47
8位 ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
9位 マティアス・ノルスゴー(デンマーク、モビスター)
10位 トマ・ガシニャール(フランス、トタルエネルジー)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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