2024/04/02(火) - 17:18
アソスの最新テクノロジーが凝縮した新型ビブショーツ、EQUIPE RS SCHTRADIVARI S11は、究極の履き心地を追求した2024シーズンのワールドツアー供給モデル。前世代と比較し約15g(Mサイズ)の軽量化を果たし、フィット感、エアロ効果、サポート力、耐久性などが全方向に進化した最高峰ビブショーツをインプレッションした。
S2、S5、S7、S9 と続いてきたアソスのレーシングビブショーツの系譜。新たなS11世代のフラッグシップとして登場するEQUIPE RS SCHTRADIVARI(シュトラディバリ)S11は、サスペンダーにあしらわれるオレンジカラーが原点である初代S2を彷彿とさせる。
S11 SCHTRADIVARI には、最新のワープニット素材「Type.911」が投入された。柔軟さと堅牢さが同居するこの新たな素材が、S11の構造を大きく変えることに。
S2から9まで、過去のアソスのビブショーツにおいて大きな特徴となってきたサスペンダーの存在。しかし 「S11世代において、サスペンダーはショーツを吊り上げることが主たる役割ではない」とアソスは言う。サスペンダーはあくまでも補助的な役割で、それを裏付けるのが近年アソスが開発に力を注ぐワープニットテキスタイル「Type.911」の存在だ。
通常のニット構造が縦と横のシンプルな結合であるのに対し、ワープニット構造では繊維が多方向に絡み合うことで、より高密度かつ高伸縮な生地に仕上がる。その結果、Type.911 では全方位に均一なコンプレッションが働き、安定したフィットをもたらす。汗で濡れた状態でも繊維の結合が緩むことなく、繊維が常にライダーの身体を記憶した状態を保つ。この素材の採用により前世代にあったロールバー構造は不要になったという。
素材の進化に伴い、全体の縫製パターンも新バタフライパターンへと進化した。大臀筋を包み込む後部パネルの縫合がアーチ(円状)を描くように変更され、これにより背面のテンションが放射状に分散され、生地のシワや弛みを抑え、限り無く完璧に近いフィット感を生み出すことに。同時にこの構造は縫製部にストレスが集中しにくく、製品の耐久性向上にも寄与する。
太腿の付け根辺りには「cranKio Tec(クランキオテック)」と呼ばれるステッチが入る。前傾姿勢においては腰骨から大腿部にかけて生地の「たまり=しわ」が起きやすいもの。それを吸収する役割がこの縫い目には与えられた。ペダリング時の生地の波打ちを抑え、肌に刺激を与えない。
快適性と軽量化へのこだわりは新しいサスペンダーにも込められた。サスペンダーの前側、胸から腹部にかかるベルトには肉抜きされた特殊なメッシュ織りを採用。フロント部分のバンドが格子状になることで軽量化と通気性向上を実現、汗の蒸散性を高める。サスペンダーとショーツ生地が接合する部分は2重のループ状とすることでテンションとフィットを最適化。サスペンダー中央付近のグレーのバンドにはカーボンファイバーを混紡することで、軽量と強度をアップ、防臭・防菌効果をもたせた。
新型パッド「RS S11 insert」は 単層の9mm厚インフォーム。前作同様の厚みだが、形状は完全に見直され、大胆にスリム化された。サドルからはみ出していた部分をカットすることで得られる軽量化、そしてペダリング時に生じる内股との擦れを最小限に抑える効果がある。
パッド内部前方に設けられたオレンジ色のファブリック「Mineral Tec Surface」は柔らかな触感の素材でショーツ本体との縫い目を隠し、内側は完全にフラットな状態に。速乾性、抗菌作用、防臭効果にも優れている。
S11の裾は、切りっぱなしによるバンド無しのフラット構造を進化させた構造となる。裾端をぐるりと一周レーザーカットした切りっぱなしの状態は肌面に対して抵抗がなく、完全にフラットな状態に。硬さを感じるバンドや縫い目を無くすことで、素材本来のしなやかなフィット感を生み出す。裾のずり上がり防止には内側半周にドット状のシリコンを配置。しかもシリコンを極薄のシール状にすることでフラットな状態を保つ。
他にも細部に機能が追加される。背面の腰からパッドを繋ぐように入るセンターストライプは再帰反射プリントで、夜間やトンネル走行時の安全確保に役立つほか、垂直方向の伸縮を制御するスタビライザーの役割ももたせ、パッドを適正位置に保つ。
「ゴールデンゲート構造」はS11世代でも継続。パッド中央付近の両サイドを浮かせることでライダーの動きに追従する完璧なフィット感をもたらす。パッドに積層されたハニカム構造「3Dワッフル」が通気性を高め、汗や蒸れを素早く排出。また、パッド全面に設けられた穴は通気性を高める。
インプレッション
まず手に取った第一印象は「薄くて軽い」ということだった。歴代のSシリーズとは明らかに触感が異なる、薄手の生地になっている。実は新製品の英文情報を翻訳する前に現物を手にしたため、「これはサマーショーツなのか?」と思ってしまうほどだった。
初めて履いたときの第一印象も、生地は伸びが少ない特殊な感じがして、サイズ感が今までと違うような気がして、小さ過ぎるのか?とも思った。筆者はアソスのショーツはSサイズを常用しているため、今回選んだS11もSサイズ。しかし履くときのタイトな感じから「太ったのか?」と感じたほど。
しかしいざ脚を通し、きっちり履き終えて落ち着くと、サイズ感はちょうど良いことがわかった。伸びが悪いかと感じた生地は、むしろ自然な伸び感で締め付けなくフィットする。結局サイズ感は歴代Sシリーズと同じで、他のアソスショーツと共通だ。もし試着するときに同じように感じる人が居たら「大丈夫、サイズは間違っていないから安心して」と声をかけたい。
これが新しく採用されたワープニットテキスタイル、Type.911の初印象だ。改めて生地を手で引っ張ってみると、非常によく伸びることが分かる。しかしコンプレッションが全面に均等に効いているので、伸ばすには少し力が必要ということらしい。今までに知らない、何とも不思議な素材だ。
ライドしてみると、履いていてどこにもストレスを感じない。今までのSシリーズでもそうは感じていたが、S11を知ってしまうとそれ以上に感じる。生地が薄く、軽く、かつ着用感が気にならない。ペダリングをする脚の動きにもシワができず、自分の脚なのにシュッとした見た目が保たれていることに不思議な感じを受ける。
春前で皮下脂肪がついている時期なのに、太腿を上げたときも糸で縛ったハムのような醜い線が出ない。切りっぱなしの裾はまったく突っ張らず、しかしずり上がりもない。生地は通気性が良く、夏にはありがたい涼しさを発揮してくれそうだ。強く伸ばしても部分的に透けることもなさそうだが、非常に薄手の素材だ。
まだ肌寒い時期だったのでニーウォーマーを装着してのライドだったが、内部のシリコンドットで確実に固定できていた。シリコンドットの肌への当たりはポイント的で、夏でも汗だまりができないだろう。
ドットは脚の横に配置されるのみで、ペダリングの脚の動きに対して引っ張られる前後方向にはドットが無い。ペダリングしているとき、パンツの太腿前部あたりの生地がかすかにズレて動いているのが感じ取れる。そう、従来品はここがシリコンで固定されることで突っ張っていたのだ。僅かとはいえ、突っ張り感は不快感になるし、エネルギーロスのはず。そんな些細な発見がある。
前作までのSシリーズはサスペンダーで引っ張り上げることでパッドを固定して浮きを抑え込んだが、S11ではサスペンダーがパッドまでは伸びず、パンツ上部に接合される。それもType.911の生地特性による賜物だろう。今までよりサスペンダーの役割を感じること無く、かつパッドがフィットしている感じがある。身体全体が優しく包まれる感じ。パッドはうまく位置決めされ、ズレること無く機能しているのだ。
パッドはアソスの最高峰ビブショーツならではのストレスの無い装着感で、かつ今風の前乗りにも対応するようマイナーチェンジを受けてもいる。前荷重の攻めた乗り方でもまったく圧迫感を感じないし、ズレも皆無だ。
生地全体にコンプレッションが効いているのも気持ちがいいと感じる要因だろう。適度な着圧で見た目にも痩身効果があるように思える。
余計なパターンの切り替えやデザインは必要ない。生地で勝負と言わんばかりのシンプルなパンツだが、快適さのために考えられるアイデアすべてを盛り込んだようなS11。SCHTRADIVARIとは、バイオリンの名器ストラディバリウスにちなんだ名前だろうが、まさにビブショーツの名器だ。
EQUIPE RS SCHTRADIVARI BIB SHORTS S11
フィット感:レーシングフィット(ややタイトなフィット感)
パッドの厚み:9mm
距離の目安:10km 〜 200km
製品重量:160g(Mサイズ)
裾の長さ
スタンダード:通常のアソスのビブショーツと同じ長さ
ロング:スタンダード+3cmの長さ
速乾性 / 防臭 / PF50+
材質 : 80% ポリアミド、20% エラスタン
生産国:ブルガリア
¥43,780(税込み)
text:impression: Makoto AYANO
photo: Gakuto Fujiwara
S2、S5、S7、S9 と続いてきたアソスのレーシングビブショーツの系譜。新たなS11世代のフラッグシップとして登場するEQUIPE RS SCHTRADIVARI(シュトラディバリ)S11は、サスペンダーにあしらわれるオレンジカラーが原点である初代S2を彷彿とさせる。
S11 SCHTRADIVARI には、最新のワープニット素材「Type.911」が投入された。柔軟さと堅牢さが同居するこの新たな素材が、S11の構造を大きく変えることに。
S2から9まで、過去のアソスのビブショーツにおいて大きな特徴となってきたサスペンダーの存在。しかし 「S11世代において、サスペンダーはショーツを吊り上げることが主たる役割ではない」とアソスは言う。サスペンダーはあくまでも補助的な役割で、それを裏付けるのが近年アソスが開発に力を注ぐワープニットテキスタイル「Type.911」の存在だ。
通常のニット構造が縦と横のシンプルな結合であるのに対し、ワープニット構造では繊維が多方向に絡み合うことで、より高密度かつ高伸縮な生地に仕上がる。その結果、Type.911 では全方位に均一なコンプレッションが働き、安定したフィットをもたらす。汗で濡れた状態でも繊維の結合が緩むことなく、繊維が常にライダーの身体を記憶した状態を保つ。この素材の採用により前世代にあったロールバー構造は不要になったという。
素材の進化に伴い、全体の縫製パターンも新バタフライパターンへと進化した。大臀筋を包み込む後部パネルの縫合がアーチ(円状)を描くように変更され、これにより背面のテンションが放射状に分散され、生地のシワや弛みを抑え、限り無く完璧に近いフィット感を生み出すことに。同時にこの構造は縫製部にストレスが集中しにくく、製品の耐久性向上にも寄与する。
太腿の付け根辺りには「cranKio Tec(クランキオテック)」と呼ばれるステッチが入る。前傾姿勢においては腰骨から大腿部にかけて生地の「たまり=しわ」が起きやすいもの。それを吸収する役割がこの縫い目には与えられた。ペダリング時の生地の波打ちを抑え、肌に刺激を与えない。
快適性と軽量化へのこだわりは新しいサスペンダーにも込められた。サスペンダーの前側、胸から腹部にかかるベルトには肉抜きされた特殊なメッシュ織りを採用。フロント部分のバンドが格子状になることで軽量化と通気性向上を実現、汗の蒸散性を高める。サスペンダーとショーツ生地が接合する部分は2重のループ状とすることでテンションとフィットを最適化。サスペンダー中央付近のグレーのバンドにはカーボンファイバーを混紡することで、軽量と強度をアップ、防臭・防菌効果をもたせた。
新型パッド「RS S11 insert」は 単層の9mm厚インフォーム。前作同様の厚みだが、形状は完全に見直され、大胆にスリム化された。サドルからはみ出していた部分をカットすることで得られる軽量化、そしてペダリング時に生じる内股との擦れを最小限に抑える効果がある。
パッド内部前方に設けられたオレンジ色のファブリック「Mineral Tec Surface」は柔らかな触感の素材でショーツ本体との縫い目を隠し、内側は完全にフラットな状態に。速乾性、抗菌作用、防臭効果にも優れている。
S11の裾は、切りっぱなしによるバンド無しのフラット構造を進化させた構造となる。裾端をぐるりと一周レーザーカットした切りっぱなしの状態は肌面に対して抵抗がなく、完全にフラットな状態に。硬さを感じるバンドや縫い目を無くすことで、素材本来のしなやかなフィット感を生み出す。裾のずり上がり防止には内側半周にドット状のシリコンを配置。しかもシリコンを極薄のシール状にすることでフラットな状態を保つ。
他にも細部に機能が追加される。背面の腰からパッドを繋ぐように入るセンターストライプは再帰反射プリントで、夜間やトンネル走行時の安全確保に役立つほか、垂直方向の伸縮を制御するスタビライザーの役割ももたせ、パッドを適正位置に保つ。
「ゴールデンゲート構造」はS11世代でも継続。パッド中央付近の両サイドを浮かせることでライダーの動きに追従する完璧なフィット感をもたらす。パッドに積層されたハニカム構造「3Dワッフル」が通気性を高め、汗や蒸れを素早く排出。また、パッド全面に設けられた穴は通気性を高める。
インプレッション
まず手に取った第一印象は「薄くて軽い」ということだった。歴代のSシリーズとは明らかに触感が異なる、薄手の生地になっている。実は新製品の英文情報を翻訳する前に現物を手にしたため、「これはサマーショーツなのか?」と思ってしまうほどだった。
初めて履いたときの第一印象も、生地は伸びが少ない特殊な感じがして、サイズ感が今までと違うような気がして、小さ過ぎるのか?とも思った。筆者はアソスのショーツはSサイズを常用しているため、今回選んだS11もSサイズ。しかし履くときのタイトな感じから「太ったのか?」と感じたほど。
しかしいざ脚を通し、きっちり履き終えて落ち着くと、サイズ感はちょうど良いことがわかった。伸びが悪いかと感じた生地は、むしろ自然な伸び感で締め付けなくフィットする。結局サイズ感は歴代Sシリーズと同じで、他のアソスショーツと共通だ。もし試着するときに同じように感じる人が居たら「大丈夫、サイズは間違っていないから安心して」と声をかけたい。
これが新しく採用されたワープニットテキスタイル、Type.911の初印象だ。改めて生地を手で引っ張ってみると、非常によく伸びることが分かる。しかしコンプレッションが全面に均等に効いているので、伸ばすには少し力が必要ということらしい。今までに知らない、何とも不思議な素材だ。
ライドしてみると、履いていてどこにもストレスを感じない。今までのSシリーズでもそうは感じていたが、S11を知ってしまうとそれ以上に感じる。生地が薄く、軽く、かつ着用感が気にならない。ペダリングをする脚の動きにもシワができず、自分の脚なのにシュッとした見た目が保たれていることに不思議な感じを受ける。
春前で皮下脂肪がついている時期なのに、太腿を上げたときも糸で縛ったハムのような醜い線が出ない。切りっぱなしの裾はまったく突っ張らず、しかしずり上がりもない。生地は通気性が良く、夏にはありがたい涼しさを発揮してくれそうだ。強く伸ばしても部分的に透けることもなさそうだが、非常に薄手の素材だ。
まだ肌寒い時期だったのでニーウォーマーを装着してのライドだったが、内部のシリコンドットで確実に固定できていた。シリコンドットの肌への当たりはポイント的で、夏でも汗だまりができないだろう。
ドットは脚の横に配置されるのみで、ペダリングの脚の動きに対して引っ張られる前後方向にはドットが無い。ペダリングしているとき、パンツの太腿前部あたりの生地がかすかにズレて動いているのが感じ取れる。そう、従来品はここがシリコンで固定されることで突っ張っていたのだ。僅かとはいえ、突っ張り感は不快感になるし、エネルギーロスのはず。そんな些細な発見がある。
前作までのSシリーズはサスペンダーで引っ張り上げることでパッドを固定して浮きを抑え込んだが、S11ではサスペンダーがパッドまでは伸びず、パンツ上部に接合される。それもType.911の生地特性による賜物だろう。今までよりサスペンダーの役割を感じること無く、かつパッドがフィットしている感じがある。身体全体が優しく包まれる感じ。パッドはうまく位置決めされ、ズレること無く機能しているのだ。
パッドはアソスの最高峰ビブショーツならではのストレスの無い装着感で、かつ今風の前乗りにも対応するようマイナーチェンジを受けてもいる。前荷重の攻めた乗り方でもまったく圧迫感を感じないし、ズレも皆無だ。
生地全体にコンプレッションが効いているのも気持ちがいいと感じる要因だろう。適度な着圧で見た目にも痩身効果があるように思える。
余計なパターンの切り替えやデザインは必要ない。生地で勝負と言わんばかりのシンプルなパンツだが、快適さのために考えられるアイデアすべてを盛り込んだようなS11。SCHTRADIVARIとは、バイオリンの名器ストラディバリウスにちなんだ名前だろうが、まさにビブショーツの名器だ。
EQUIPE RS SCHTRADIVARI BIB SHORTS S11
フィット感:レーシングフィット(ややタイトなフィット感)
パッドの厚み:9mm
距離の目安:10km 〜 200km
製品重量:160g(Mサイズ)
裾の長さ
スタンダード:通常のアソスのビブショーツと同じ長さ
ロング:スタンダード+3cmの長さ
速乾性 / 防臭 / PF50+
材質 : 80% ポリアミド、20% エラスタン
生産国:ブルガリア
¥43,780(税込み)
text:impression: Makoto AYANO
photo: Gakuto Fujiwara
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