パワーアップしたスペシャライズド新型Levo SL Alloyは、高いライドクオリティーと走破性をアシストパワーと融合させた1台。シングルトラックを軽快な走りでこなし、スキルを活かすことができるe-MTBだ。トレイルでのライドインプレッションで紹介する。



スペシャライズド LEVO SL ALLOY photo:Makoto AYANO

新型Levo SL Alloyは、昨年5月に発表されたLevo SL Gen2(第2世代)のアルミモデル。カーボンフレームをアルミフレームに置き換えながら無駄を削ぎ落とし、レスポンスよく走れるバイクとして開発。酷使に耐えられるタフな造りながら、ジオメトリー、キネマティクス、ショックチューニングに妥協すること無く造りこまれた。

Levo SL Alloyは自在な操作を可能にするジオメトリーと、振り回すように走れる軽さを持ち併せることが身の上。 コックピットはバイクの真ん中に乗りやすい設計で、トラクションをかけるのも、コーナーでの細かな操作もしやすい。低いBBハイト、寝かせたヘッドアングル、短めのフォークオフセットによりトレイルでの安定性と、攻めたコーナリングでの自由度を高める。ヘッドアングルは63、64.25、65.5度の3ポジションからライディングスタイルに合わせて選ぶことができる。 サスストロークはF:160mm、R:150mm(S1サイズを除く)。

アルミフレームのヘッド周り溶接痕も美しい photo:Makoto AYANO

ホイールは前後異径のマレット仕様となる。29インチのフロントホイールでトレイルでの安定性を高めつつ、27.5インチのリアホイールが機敏な旋回性を発揮。短いチェーンステーはペダリング入力への反応性も高める。リアにも安定性とトラクションが欲しい場合はリアピポッドのフリップチップを調整するだけでリアに29ホイールをセットすることもできる。

モーターユニットは新型1.2 SL Custom Rx Trail Tuned Motor photo:Makoto AYANO

搭載されるスペシャライズド自社開発の新型SL1.2モーターは前世代(Gen1)モデルよりトルクが43%(50Nm)、パワーが33%(320W)アップし、静粛でありながらスムーズで自然な動作を発揮する。容量320Whのバッテリーとの組み合わせによりEcoモードで最長5時間のライドが可能。そして160Whのレンジエクステンダーバッテリー(別売り)をボトルケージに取り付ければ航続可能距離を50%延ばすことができる。

リアショックリンケージはLevo SLとほぼ共通だ
リアショックユニットはFox Float Performance



これらを制御するのがTURBOオペレーティングシステム。トルク、 航続可能距離、乗り心地、パワーをシームレスにコントロール。ヘッドチューブ内蔵ディスプレイ「MASTERMIND TCU」により、バイク、Turbo OS、Specializedアプリとライダーを直感的に繋ぎ合わせる。「Specializedアプリ」のMicroTune機能は、3つあるモードのサポートレベルとピークパワーをカスタマイズし、モーター特性を自在に調整することができる。盗難を防ぐTurbo System Lockも備えている。

よりリニアなレバレッジ曲線を採用した新キネマティクスはサポート性や取り回しやすさに優れている一方、荒れたセクションではバイクの挙動を巧みにコントロール。ヘッドアングルとボトムブラケットハイトの調節も行うことができる。

Levo SL Alloyを小田原フォレストバイクでインプレッション

Levo SL Alloyのテストライドは、先んじて発表されたEpic 8と同じタイミングで小田原フォレストバイクで開催された新モデル発表会にて行った。メインがEpic 8だったため短い時間の試乗にはなったが、本格的なトレイルで集中的に乗り込むことができた。

フォレストバイクのトレイルでLEVO SL ALLOYを乗り込んだ photo:Makoto AYANO

新型Levo SL Alloyのベースは昨年5月にリリースされたカーボンモデルのLevo SL(Gen2)であり、心臓部は共通で、フレームがアルミからカーボンに置き換わり、パーツ構成もグレードに応じたものに置き換わったモデルと言える。カタログ重量は20.2kgだ。

カーボンモデルのLevo SLは筆者のライド仲間であるMTBプロショップの店長たち数人が自身の愛車としているが、彼・彼女らのほとんどが発売と同時にGen1から2へと即座に乗り換えたことからも、Levoへの信頼度と高評価が伺い知れる。後追いで登場したこのLevo SL Alloyは、カーボンモデルと比較すれば重量が約2kg増すものの、価格にして約20万円安い。その差をどう感じ取れるかが評価のキーとなる。

駆動系のDUBシステム+32Tフロントチェンリング photo:Makoto AYANO

登り・下り・シングルトラックと、すべてのシチュエーションで試せるフォレストバイクでのトレイルライド。Levo SL Alloyはペダルアップではパワフルに登る。モーター駆動音はGen1に比べてかなり静かになり、うなり音がほとんど気にならなくなった。登りで一緒に走る人と会話できる楽しみがあるeMTBで、静かさは割と大事な性能なのだ。そしてパワーアップのぶん全体スピードが上がり、同じ距離なら早く走りきれるだろう。Gen1比でトルクで43%、ピークパワーで33%向上したというモーターの力強さは、はっきりと感じ取れる。

そして急勾配を登ることはe-MTBの醍醐味だが、パワー任せで登ってしまう他社製モーターでは前輪が上がってウィリーしてしまうようなことはあるが、Levoのモーターは味付けが絶妙で、ペダリングによるパワーコントロールによりうまくトラクションをかけてくれる感触がある。パワフルなだけでなく、ペダル入力によって操り易く、操る楽しさがあるのだ。Gen1ではときにトルク不足で足を着いてしまうことがあったが、Gen2ではパワー自体向上しているので、テクニックさえあれば登り切れるという性能は上がっている。パワーと扱いやすさ、これらの調整具合が絶妙なのだ。

自力と比較にならないパワーに任せて登る楽しさもあるだろうが、コントロールすること自体が楽しいeMTBでは、この味付け自体が性能だ。それこそがLevoが高く評価されている点だろう。Gen2になってその性能にさらに磨きがかかっている。

リアステーもアルミ製だ photo:Makoto AYANO

登りでアルミフレームへの「ダウングレード感」を感じることはほとんどできなかった。しかし下りではカーボンのLevoと比べると、バームでの切り返しの連続するシングルトラックでその車重からくるモタつきをやや感じてしまう。車重があることで路面への吸い着き感や安定感は増すものの、左右に切り返す際の素速さはやや鈍い。ジャンプもやや低くなるだろう。これはカーボンと比べてのこと。それ以前に20.2kgの車重は他社のフルカーボン製e-MTBよりも軽いケースが多いことを記しておく。

新Levo SL Alloyの価格は72万円(税抜き)。繰り返すが、カーボン版のLevo SL Comp Carbon(実測約18kg)との重量差は約2kg。その差が価格差20万円ぶんとも言えるから、それをどう考えるかだ。「とても20万円ぶんの差が走りの差にあるとは思えない」と言えるし、「素晴らしい走りを突き詰めるなら追加で20万円を投資する価値がある」とも言える。そのあたりはそれぞれのユーザーの価値観だ。新モデルはパーツやホイールも細かくアップグレードを受けてGen1との差を微妙なものにしているから、後で交換するかも含めれば、悩ましい選択には違いない。

Turbo Levo SL Comp Alloy

価格:¥792,000 (税込)
カラー・サイズ:
Gloss Charcoal / Silver Dust / Black(S1、S2、S3、S4、S5)
Satin Pine Green / Forest Green(S2、S3、S4)

URL: https://www.specialized-onlinestore.jp/shop/g/g96824-5003/
Turbo Levo SLについて: https://www.specialized.com/jp/ja/levo-sl-gen2

text&photo:Makoto AYANO

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