ブランドの新しい時代を切り開くハイエンドモデルとしてフルクラムが用意したSPEED 42をテスト。リム、スポーク、ハブの設計が一新され、エアロと剛性、軽量性、耐久性全てが向上したモデルを紹介しよう。



フルクラム SPEED 42

アルミ製レーシングホイールの決定版RACING ZEROをはじめロードはもちろんMTBモデルまで網羅するフルクラム。完成車にスペックインされるホイールまで手がけており、その存在はあらゆるライダーが知るブランドだ。

数多くモデルが存在する中でロード用カーボン製レーシングホイールとしてプロにまで供給されるモデルがSPEEDシリーズだ。かつてRacing SPEEDとして用意されていたフルクラムのフラッグシップモデルは、SPEEDシリーズと名前を変えても数多くのプロ選手が使用し、常に最高峰のレースでその性能を鍛え上げてきた。

SPEEDシリーズはUDカーボンが主流となる中で3K織カーボンを使用し、カーボン素材らしいルックスで存在感を長年主張してきた。そんなSPEEDシリーズが2023年にフルモデルチェンジを果たしている。その織カーボンは身を潜め、UDカーボンを採用しつつ、その仕上げに独自のテクノロジーを採用することで、他のホイールを追従させない独特な出立ちを実現。これまでのフルクラムとは違う様相は、ブランドを新時代へと進める表明でもある。

フルクラムロゴはレーザー加工で施される

そんな見た目とコンセプトを裏切らず、新型ホイールの開発には4000時間以上もラボ、風洞、実地でのテストを行い、性能を徹底的に磨き上げた。開発プロセスも今作から改められており、ハンドリングと反応性を数値化するテストから「乗り心地」を測定する手法を確立し、従来モデルを超えるホイールの実現に貢献した。

新手法はホイール重量や回転慣性、曲げ剛性、ねじり剛性、ホイールから散逸するエネルギーを測定することで、様々な性能の評価を可能としたことが特徴。具体的に、ハンドリングの評価には方向転換の際に車輪から散逸されるエネルギー、車輪の傾き、曲げ剛性から、コーナリング中のホイール状態を数値化。この測定によると新世代SPEEDは旧作と比較し最大17%の進化を確認したとフルクラムは言う。

ニップルホールが設けられておらず、リム剛性と強度に優れている

この進化を実現させたのはリム、スポーク、ハブ全てに新たな設計が加えられているためだ。先述したようにリムは3Kカーボンではなく、UDのFF100ハイモジュールカーボンを採用しつつ、レジン配合まで新設計とした。リムベッドにニップルホールを設けないMoMagテクノロジーと相まって優れた剛性と強度が確保されている。

スポークはエアロダイナミック・フラット・スポークという特別品が開発された。ストレートプル/エアロブレード式のスポークとされており、前後ともに24本のスポークが2to1システムで組み上げられる。今作ではスポーク同士が接触しないような設計と、ニップルとリムが接触する部分に特殊なプラスチック製サポートを配置する設計が採用されており、ホイールシステムとしての耐久性を大幅に向上させていることもポイントだ。

2to1システムで組み上げられている

フランジを拡大し、ボディをシェイプアップさせたハブ

新設計のハブは前世代よりフランジサイズを40%拡大しながらも、ボディは10%のサイズダウンとされた。これによってホイール全体のねじれ剛性を維持したままエアロダイナミクスを高め、マージナルゲインとして空力を求める現代のロードレース機材に相応しい進化を遂げている。搭載されるベアリングはUSB、フリーホイールのラチェットギアは36Tだ。

新型SPEEDは42mmハイトと57mmハイトの2種類。旧作の40mm、55mmから2mmずつ高くなり、内幅も19mmから23mmまでワイド化を果たし、28mm幅のタイヤを装着した際にエアロ、転がり抵抗、快適性の性能を発揮するように作られた。重量はSPEED 42は1,410g、SPEED 57は1,495g。

今回はSPEED 42をテストした。ライダーは元プロライダーの岸崇仁さんと、アウトドアスペース風魔横浜店長の高木友明さん。二人の実走派ライダーのSPEED 42への評価は如何に。



−インプレッション

「どんなバイクにもマッチするオールラウンドホイール」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

「どんなバイクにもマッチするオールラウンドホイール」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

シンプルに良いホイールですね。42mmというちょうどいいリムハイトで、重量も軽め、そして28mmタイヤに最適化されているというスペックは、まさに良い所取りといったところですが、実際に走ってみても想像通りに良い一本でした。

全ての性能のバランスが取れていて、非常に優れたオールラウンダーです。このホイール一本あれば、なんでも出来るしどこでも行ける。なので、一本で色んな用途を賄いたいという方にはうってつけでしょうね。

中でも強く感じたのは軽さです。スピードの出し入れがしやすくて、加速のキレがグッと鋭くなりますね。それでいて、フラフラするようなことも無く、ハンドリングは非常に素直で安定感があります。

一方で、エアロ性能も申し分なく、スピード維持も得意です。シリーズに57mmハイトモデルがあるので、巡航性能を重視するならそちらの方が良いのでしょうが、42mmハイトモデルで不満を感じるようなことはないでしょう。

また、今回のテストコースでは吹きっさらしの堤防区間もありましたが、横風に対しても強いですし、40mm強というハイトでありながら非常に扱いやすい印象でした。

「28mmタイヤの実力を余すところなく引き出してくれる高性能ホイール」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

やはりワイドリムというのは大きく影響しているのでしょう。昨今主流になりつつある28mmタイヤを標準としたリム形状によって、ワイドタイヤを使用した際もためらうことなく空気圧を落とせます。28mmタイヤの持つ実力を引き出せるというのは、非常に大きなメリットですね。

ルックスもシンプルな仕上げで、個人的には好印象です。合わせるバイクを選ばないマットな質感でありながら、フルクラムのホイールであることはしっかりと伝えていくような、絶妙なデザインですね。

性能面でも合わせるバイクは選ばないでしょう。軽量バイクと組み合わせれば、巡航性能を高めてくれるでしょうし、ピュアなエアロロードに履かせれば、登り性能を改善してくれるはず。それぞれのバイクの得意分野を損なうことなく、苦手とする領域を補ってくれる高性能ホイールです。

「高速走行で性能が光るホイール」岸崇仁

「スムーズに高速巡航を楽しめる」岸崇仁

35km/hほどの速度から真価を発揮するホイールでした。1,400g程度という重量もあって、漕ぎ出しや低速で走行していると重厚感が端々に現れてくるのですが、中高速域までスピードが乗れば表情が変わって、遮るものがないかのように進むのが気持ちよかったです。

ある程度スピードを乗せた状態からトルクフルなペダリングでギアを一枚一枚重くしていくと、ホイールがパワーに素直に反応してスピードもさらに乗っていき、脚に過剰なストレスをかけずに高速域に連れていってくれます。ペダリングに対する掛かりはいいんですが、一気に加速してスピードレンジを変えようとするのは得意ではなく、なだらかな曲線を描いて速度を上げていく、または高速巡航を楽に維持ことに優れているような印象がありました。

フルクラム SPEED 42

エアロ系のホイールとしてはリムハイトは低めですがホイール全体のエアロが効いているのだと思いますし、リムの内幅が太いことによる高い走破性がそうさせているんでしょう。エアロオールラウンダー系のフレームと組み合わせることでSPEED 42の魅力は引き出されると思います。

このホイールの魅力は下りの安定性にもありました。コーナリングやブレーキングの時にホイールへ力を加えている時に、ホイール自体が地面をグッと掴んでくれるので、ハイスピードでコーナーに突入しても安心してバイクをコントロールすることができます。

平地を走っていても、ダウンヒルでもスピードを落とさずに走らせ続けやすいので、長時間ライドでも楽に走れるのではないかと思いますね。極限な状態で1発の反応性が欲しくなる局面のレースよりは、常に高速域で走り続けるようなレース、例えばサーキットエンデューロで性能が生きるはずです。

フルクラム SPEED 42

フルクラム SPEED 42
タイプ:2WAY-FIT
重量:1,410g
リム素材:カーボン(FF100)
リム:DIMF
リムハイト:42mm
リム内幅:23mm
スポーク数:24本
スポーク:ステンレススチール、ダブルバテッド、ストレートプル
ベアリング:USB
フリーハブ:HG11、XDR、N3W
税込価格:446,600円



インプレッションライダープロフィール

高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)高木友明(アウトドアスペース風魔横浜) 高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

横浜駅から徒歩10分、ベイサイドエリアに店舗を構えるアウトドアスペース風魔横浜の店長。前職メッセンジャーの経験を活かし自転車業界へ。自身はロードバイクをメインに最近はレース活動にも力を入れる実走派だ。ショップはロード・MTBの2本柱で幅広い自転車遊びを提案している。

CWレコメンドショップページ
アウトドアスペース風魔横浜 HP


岸崇仁
岸崇仁

2017年に那須ブラーゼンに加入。2020年から21年シーズンはさいたまディレーブにてJCLのレースに参戦した元プロレーサー。小集団で逃げるようなサバイバルな展開を得意とした実力派。現在はロードバイクのライドコーチとして、安全・快適な走り方を伝えるとともに、各媒体でバイクインプレッションも担当する。カステリのアンバサダー。


ウェア協力:カステリ

text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO

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