2023/11/18(土) - 14:56
アルゴン18がエンデュランスロードのKRYPTONをモデルチェンジ。フレームを刷新するとともにタイヤクリアランスを40Cまで拡幅、ダウンチューブストレージを備えることで、グラベルまで対応できるマルチパーパスな1台へと進化を遂げた。そんな1台をインプレッション。
元レーサーであるジュルベー・リューが経営するサイクルショップのオリジナルブランドに端を発するカナダのバイクブランド、アルゴン18。かつてはアスタナをサポートし、現在はノボ ノルディスクにバイクを供給するレーシングバイクブランドであり、イノベーションとレースDNAこそがアルゴン18の真髄だと言う。
カナダのモントリオールに構えられるラボには、カーボンレイアップやエアロダイナミクスだけではなく、悪路での振動減衰性を計測するテスト機器まで揃い、レースバイクに必要な全ての性能を検証することができる研究開発体制が整えられている。その衝撃吸収性をテストできる機械で鍛えられたモデルがエンデュランスロードのKRYPTONだ。
パリ〜ルーベのような厳しい環境下でのレースシーンや、ホビーライダーが鎬をけずるグランフォンドレースでライダーのパフォーマンスを引き出す1台と開発されている。そんなKRYPTONが2023年の4月にモデルチェンジを遂げた。
新型KRYPTONはレース、サイクリング、アドベンチャーライドまで全てをこなすオールロードとして位置付けられた。一新されたフレームとフォークデザイン、特にヘッド周りはSUMシリーズのようなエアロを意識した造形で、その他の部分は現在のレースバイクらしいシンプルなルックスに仕上げられており、ハイスピードでの走行を受け入れてくれるような印象を与える。
SUM譲りのヘッド周りはケーブル内装システムはFSAのSRSを採用し、コラム前方からケーブルをフレーム内側に挿入する設計となっている。さらにアルゴン18独自テクノロジーである3Dヘッドは健在であり、ポジションに合わせてアッパーベアリングの位置を調整可能。2つのテクノロジーを採用することで、トレンドのケーブル内装によるエアロ強化と、3Dヘッドによる剛性強化の2つを同時に果たすことに成功している。
そして新型KRYPTONの最大の特徴はタイヤクリアランスが34mmから40mmへと拡幅したこと。これまでもオールロードとしてのキャパシティはあたが、さらにタイヤ幅を広げることでグラベルと呼ばれるカテゴリーに接近。オフロードといえども路面状況が千差万別な中で、どこでも走れるようなロードバイクとしてKRYPTONは変貌を遂げている。
このクリアランスを備えてグラベルと位置付けられないのは、グラベルが40C〜45Cタイヤが標準となりつつあるため。さらに目的や走る場所によってベストなタイヤが非常に細分化される中で、KRYPTONがカバーするのはあくまでもロードやライトグラベルであり、がれた砂利道などはグラベルバイクにその役割を渡している。
グラデーション的にカテゴリーが融和するエンデュランスロード、オールロードと呼ばれるセクションに位置するKRYPTONは、舗装比率の高い日本のライドシーンにこそマッチする。ロードサイクリングへの対応力の高さを備えつつも、グラベルも走れてしまう走破性は、レースバイクがレースに特化した今、ホビーサイクリストにうってつけだ。
アドベンチャーなサイクリングでライダーをサポートできるようにアルゴン18は、KRYPTONのダウンチューブ内蔵ストレージを採用した。ボトルケージ台座部分がカバーとなっており、レバー操作のみでスペースにアクセスできるため、予備チューブなどを収納しておくのにぴったり。未舗装路まで視野に入るバイクだけあり、この仕様はありがたいところ。
KRYPTONシリーズはレーススペックのKRYPTON PROとベーシックグレードのKRYPTONという2種類で展開される。今回インプレッションを行ったのはベーシックグレードKRYPTONで、フレームセットの価格は374,000円(税込)。シクロワイアード編集部員によるインプレッションをお届けしよう。
−インプレッション
アルゴン18のエンデュランスロードKRYPTONがモデルチェンジしたと聞いて、シクロワイアード編集部の藤原は俄に色めきだった。というのも、先代KRYPTON PROはエンデュランスロードらしいリラックスしたポジションにもかかわらず、足に感じるフィーリングや走行感はロードレーサーのそれでしかなく、エンデュランスロードは快適性にフォーカスするべきものという考えが一掃されたから。
今回の試乗車はKRYPTONのPROグレードではなく、レギュラーモデルのCSグレードと言う違いはあるものの、アルゴン18がエンデュランスカテゴリーで表現する最新のコンセプトはどのようなものかを体験できるのは期待しかなかった。
実際の走りとしては先代の入力した力とそのパワーに対してイメージする推進力が2:3と感じるようなシャープな加速感は鳴りをひそめつつ、1:1の割合でスッと車体が前に進むような加速を味わう。もちろん車重なども異なるため、その分を差し引いて考えたとしても、発進時のフィーリングは好感触。
その後、心地よいスピードに乗せるまでは驚くような鋭い走りでもなければ、求めるものを下回らない、常に一定ままスピードが上がっていく。サイクリングで気持ちの良い30km/h程度までライダーの入力に対して素直に応答し、巡航も過度な力を使わせない。
しかし、速度が35km/hほどを超えてくるとKRYPTONが加速や巡航に求めるパワーが1段階上がるようだ。その時に初めて今回の試乗車がレギュラーグレードであることを認識した。ハイスピードを求める場合はPROもしくはSUMシリーズがフィットし、淡々とマイペースでサイクリングを楽しむ場合はこのKRYPTONで満足ができそうだ。
直進時、コーナリングの車体の挙動も安定しているの一言。車体の姿勢を一度決めてしまえば、その姿勢で安定してくれるため、多少の振動や衝撃が加わっても不安になることなく車体をコントロールすることができる。
一方でハンドルの高さや3Dヘッド、ジオメトリーの影響か、コーナーやダンシングでバイクを倒し始める瞬間に癖はある。イメージとしては車体の傾きに対してタイミングがズレてハンドルが切れ始めるような印象で、切れ始めたらクイックに動き、イメージした通りの舵角にビタっと収まる。そして先述した通り、その状態を維持する力は強い。
テストでは28Cと30Cのタイヤで試したのだが、28Cの場合はクイック感が引き立つものの、30Cは幅広特有のマイルドな動きが車体とマッチしていた。最大40Cのタイヤクリアランスが示すように新型KRYPTONでは30C以上との相性が良さそうだ。
またテストではライトなグラベルに突入してみたのだが、先述した安定性が光るためハンドルが路面の凹凸に取られる心配がなく、ひたすらに突き進むことができた。淡々とマイペースを維持して走らせる時はKRYPTONに路面が荒れていようと関係ない。そのような走らせ方を楽しむライダーにおすすめの1台だ。
アルゴン18 KRYPTON
カラー:365A-IRIDESCENT CHARCOAL GLOSS、365B-FROSTBITE BLUE GLOSS
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL
価格:374,000円(税込)
impression:Gakuto Fujiwara
元レーサーであるジュルベー・リューが経営するサイクルショップのオリジナルブランドに端を発するカナダのバイクブランド、アルゴン18。かつてはアスタナをサポートし、現在はノボ ノルディスクにバイクを供給するレーシングバイクブランドであり、イノベーションとレースDNAこそがアルゴン18の真髄だと言う。
カナダのモントリオールに構えられるラボには、カーボンレイアップやエアロダイナミクスだけではなく、悪路での振動減衰性を計測するテスト機器まで揃い、レースバイクに必要な全ての性能を検証することができる研究開発体制が整えられている。その衝撃吸収性をテストできる機械で鍛えられたモデルがエンデュランスロードのKRYPTONだ。
パリ〜ルーベのような厳しい環境下でのレースシーンや、ホビーライダーが鎬をけずるグランフォンドレースでライダーのパフォーマンスを引き出す1台と開発されている。そんなKRYPTONが2023年の4月にモデルチェンジを遂げた。
新型KRYPTONはレース、サイクリング、アドベンチャーライドまで全てをこなすオールロードとして位置付けられた。一新されたフレームとフォークデザイン、特にヘッド周りはSUMシリーズのようなエアロを意識した造形で、その他の部分は現在のレースバイクらしいシンプルなルックスに仕上げられており、ハイスピードでの走行を受け入れてくれるような印象を与える。
SUM譲りのヘッド周りはケーブル内装システムはFSAのSRSを採用し、コラム前方からケーブルをフレーム内側に挿入する設計となっている。さらにアルゴン18独自テクノロジーである3Dヘッドは健在であり、ポジションに合わせてアッパーベアリングの位置を調整可能。2つのテクノロジーを採用することで、トレンドのケーブル内装によるエアロ強化と、3Dヘッドによる剛性強化の2つを同時に果たすことに成功している。
そして新型KRYPTONの最大の特徴はタイヤクリアランスが34mmから40mmへと拡幅したこと。これまでもオールロードとしてのキャパシティはあたが、さらにタイヤ幅を広げることでグラベルと呼ばれるカテゴリーに接近。オフロードといえども路面状況が千差万別な中で、どこでも走れるようなロードバイクとしてKRYPTONは変貌を遂げている。
このクリアランスを備えてグラベルと位置付けられないのは、グラベルが40C〜45Cタイヤが標準となりつつあるため。さらに目的や走る場所によってベストなタイヤが非常に細分化される中で、KRYPTONがカバーするのはあくまでもロードやライトグラベルであり、がれた砂利道などはグラベルバイクにその役割を渡している。
グラデーション的にカテゴリーが融和するエンデュランスロード、オールロードと呼ばれるセクションに位置するKRYPTONは、舗装比率の高い日本のライドシーンにこそマッチする。ロードサイクリングへの対応力の高さを備えつつも、グラベルも走れてしまう走破性は、レースバイクがレースに特化した今、ホビーサイクリストにうってつけだ。
アドベンチャーなサイクリングでライダーをサポートできるようにアルゴン18は、KRYPTONのダウンチューブ内蔵ストレージを採用した。ボトルケージ台座部分がカバーとなっており、レバー操作のみでスペースにアクセスできるため、予備チューブなどを収納しておくのにぴったり。未舗装路まで視野に入るバイクだけあり、この仕様はありがたいところ。
KRYPTONシリーズはレーススペックのKRYPTON PROとベーシックグレードのKRYPTONという2種類で展開される。今回インプレッションを行ったのはベーシックグレードKRYPTONで、フレームセットの価格は374,000円(税込)。シクロワイアード編集部員によるインプレッションをお届けしよう。
−インプレッション
アルゴン18のエンデュランスロードKRYPTONがモデルチェンジしたと聞いて、シクロワイアード編集部の藤原は俄に色めきだった。というのも、先代KRYPTON PROはエンデュランスロードらしいリラックスしたポジションにもかかわらず、足に感じるフィーリングや走行感はロードレーサーのそれでしかなく、エンデュランスロードは快適性にフォーカスするべきものという考えが一掃されたから。
今回の試乗車はKRYPTONのPROグレードではなく、レギュラーモデルのCSグレードと言う違いはあるものの、アルゴン18がエンデュランスカテゴリーで表現する最新のコンセプトはどのようなものかを体験できるのは期待しかなかった。
実際の走りとしては先代の入力した力とそのパワーに対してイメージする推進力が2:3と感じるようなシャープな加速感は鳴りをひそめつつ、1:1の割合でスッと車体が前に進むような加速を味わう。もちろん車重なども異なるため、その分を差し引いて考えたとしても、発進時のフィーリングは好感触。
その後、心地よいスピードに乗せるまでは驚くような鋭い走りでもなければ、求めるものを下回らない、常に一定ままスピードが上がっていく。サイクリングで気持ちの良い30km/h程度までライダーの入力に対して素直に応答し、巡航も過度な力を使わせない。
しかし、速度が35km/hほどを超えてくるとKRYPTONが加速や巡航に求めるパワーが1段階上がるようだ。その時に初めて今回の試乗車がレギュラーグレードであることを認識した。ハイスピードを求める場合はPROもしくはSUMシリーズがフィットし、淡々とマイペースでサイクリングを楽しむ場合はこのKRYPTONで満足ができそうだ。
直進時、コーナリングの車体の挙動も安定しているの一言。車体の姿勢を一度決めてしまえば、その姿勢で安定してくれるため、多少の振動や衝撃が加わっても不安になることなく車体をコントロールすることができる。
一方でハンドルの高さや3Dヘッド、ジオメトリーの影響か、コーナーやダンシングでバイクを倒し始める瞬間に癖はある。イメージとしては車体の傾きに対してタイミングがズレてハンドルが切れ始めるような印象で、切れ始めたらクイックに動き、イメージした通りの舵角にビタっと収まる。そして先述した通り、その状態を維持する力は強い。
テストでは28Cと30Cのタイヤで試したのだが、28Cの場合はクイック感が引き立つものの、30Cは幅広特有のマイルドな動きが車体とマッチしていた。最大40Cのタイヤクリアランスが示すように新型KRYPTONでは30C以上との相性が良さそうだ。
またテストではライトなグラベルに突入してみたのだが、先述した安定性が光るためハンドルが路面の凹凸に取られる心配がなく、ひたすらに突き進むことができた。淡々とマイペースを維持して走らせる時はKRYPTONに路面が荒れていようと関係ない。そのような走らせ方を楽しむライダーにおすすめの1台だ。
アルゴン18 KRYPTON
カラー:365A-IRIDESCENT CHARCOAL GLOSS、365B-FROSTBITE BLUE GLOSS
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL
価格:374,000円(税込)
impression:Gakuto Fujiwara
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